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転機の中古マンション市場(上) 上昇相場、都心で陰り 高値で売 買成立しにくく 2017/2/2 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット商品面にある「転機の中古マンション市場(上) 上昇相場、都心で陰り 高値で売買成立しにくく」です。





 上昇を続けてきた国内中古マンション相場に陰りが見え始めた。上昇ピッチの早さに需要が追いつかず、東京都内では値下がりに転じた地域もある。新築物件は低迷が続いており、マンション市場は転機を迎えている。

中古マンションは新築の需要を吸収したが…(東京都中央区)

様子見広がる

 「中古マンションの購入希望者に様子見姿勢が広がっている。従来のような強気の価格設定は難しくなってきた」。仲介大手、野村不動産アーバンネット(東京・新宿)の木内恒夫・営業推進部長は、最近の中古マンション市場について強調する。これまで続いていた上昇力が鈍り、売り出し価格の見極めに神経をとがらせる。

 中古マンション市場は一見、活況の様相を呈している。東京カンテイ(東京・品川)によると2016年の首都圏の中古マンションの平均希望売り出し価格(70平方メートル換算)は3476万円。前年と比べて13.2%上昇した。直近の高値を付けた08年水準を超え、1994年以来の高水準だ。

 一方、新築は低迷している。不動産経済研究所(東京・新宿)によると16年の平均価格は前年比0.5%下落の5490万円で4年ぶりのマイナスとなった。販売戸数も11.6%減り、好不調の目安となる契約率70%を下回った。東京カンテイの井出武・上席主任研究員は「高額で供給が少ない新築から、中古に需要が移った」と説明する。

流通戸数横ばい

 ただ、好調に映る中古マンション市況には不透明感が強まってきた。仲介大手、三井不動産リアルティ(東京・千代田)の川上哲司・流通企画部長は、最近の価格動向の変化について「都心の先行的な調整の動きが、周辺にも広がっている」と話す。

 東京23区でも都心に近いほど価格動向の変化が鮮明だ。12月の都心6区(千代田、中央、港、新宿、渋谷、文京)の前年比上昇率は2.3%。首都圏平均の9.1%に比べると差は明らかだ。「政府の経済政策によりマンションの取引量も多かったが、最近は購入意欲が減退している」(川上氏)。都心6区以外の沿岸部の大型物件では、すでに下げに転じる物件も出てきている。

 在庫にも変化が出始めた。価格が上がっているときは売買が成立しやすいため市場に出る物件は増える傾向にあるが、16年12月の23区の流通戸数は1万1733戸と前月比で横ばいだった。東京カンテイの井出氏は「値段が高くて売買が成立しにくくなってきたため、売りに出される物件が減っている」という。

 個人だけでなく、中古マンションを買い取った後に改修して販売する業者にも影響が及んでいる。トータルエステート(横浜市)の三沢章専務は「参入企業が多いため買い取り価格が5~10%程度上昇する一方、販売価格は上がらない」と話す。

 価格が下げ基調の新築に注目する動きも出始めた。価格が下がれば、賃料を得るための投資がしやすくなるためだ。台湾の不動産仲介大手で日本でも事業を手掛ける信義房屋不動産の何偉宏社長は「現在の利回りは中古のほうが高いが、品質や設備をみて新築を投資対象とする海外投資家も多い」と指摘する。



検証 OPEC減産(下)加盟国と距離置くロシア ルーブル安で輸出に傾く? 2016/10/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット商品面にある「検証 OPEC減産(下)加盟国と距離置くロシア ルーブル安で輸出に傾く?」です。





 9月28日、アルジェリア。石油輸出国機構(OPEC)が予想外の減産で合意した産油国会合に、ロシアのノワク・エネルギー相の姿はなかった。ロシアは直前に会合への出席をキャンセル。29日には「ロシアは到達した生産水準を維持する」との声明を出した。

ロシア企業は西シベリアでの開発に力を入れる=ロイター

 OPEC加盟国のサウジアラビアなどは国営石油会社が原油生産を寡占するケースが多い。減産も政府の号令一下で進む。だがロシアでは最大の国営石油会社ロスネフチに加え、ルクオイル、スルグートネフチガス、ガスプロムネフチと、大手だけでも複数ある。

 中小の民間石油会社も競争を繰り広げる。ロシア国内の原油生産シェアの2割強を中小が占める。政府が減産を決めても「中小の石油会社の生産まで管理するのは難しい」(英調査会社のIHSエネルギーのマシュー・セイガーズ氏)。

 ロシアの油田は寒冷地にある。「生産を一度止めてしまうと再稼働に時間とコストがかかるため、企業は生産を止めたくない」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)。ルーブル安で原油の輸出採算は大きく改善、生産コストも下がっており、むしろ増産したいのが本音だ。

 ウクライナ問題を巡って欧米と対立したため、深海や北極圏の開発は技術的に難しい。ロシア企業は旧ソ連時代から続く西シベリアでの生産に力を入れる。生産中の大油田であれば、低コストで早期の増産が見込める。「早期に資金回収できるとあって、金融機関も西シベリアの開発案件の融資には前向きだ」(IHSのセイガーズ氏)

 ロスネフチも西シベリアの開発にシフトし、増産に乗り出している。プーチン大統領に近いとされるイーゴリ・セチン社長は、これまで幾度もOPECとの協調を否定してきた。

 ロシア、サウジと並ぶ産油国である米国も減産の勢いが鈍ってきた。世界的な原油の供給過剰を招いたシェールオイルは中小業者がひしめく。原油価格が上昇し経済的に合理性があれば、いつでも増産に動く。

 OPECは2017年の非加盟国の生産見通しを、日量数十万バレル上方修正した。カザフスタンで開発案件が立ち上がり、生産が増えている。OPECが合意通り減産に動けば相場が上昇し、産油国は増産の誘惑に駆られやすい。イラクなどの不満がくすぶり、合意に早くも黄信号がともる。サプライズ減産の行方は視界不良だ。

 飛田雅則、田上一平が担当しました。



検証 OPEC減産(上) 時間稼ぎ 見透かす市場 足並みに乱れ、各論先送り 2016/10/05 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット商品面にある「検証 OPEC減産(上) 時間稼ぎ 見透かす市場
足並みに乱れ、各論先送り」です。





 石油輸出国機構(OPEC)が9月28日、8年ぶりの減産で合意した。長引く原油安を踏まえ、産油国の結束力を市場に示す狙いがある。供給過剰の解消効果は薄いとの見方も多い。協調を呼びかけたロシアはむしろ増産に動いている。サプライズ減産の真価を検証する。

減産合意は市場にとって予想外だった(カタールのサダ・エネルギー相)=AP

 9月29日早朝、商社の原油トレーダーは端末で真っ先にニューヨーク原油先物の相場を確認した。価格が急反発しているのを見てホッと胸をなで下ろした。

上昇鈍いWTI

 市場予想に反する減産決定で、米指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は28日、約3週間ぶりに1バレル47ドル台に乗せた。会合前に売り持ち高を手じまっていたが、放置していたら大損は避けられなかった。

 もっともその後の上昇は鈍い。OPECが示した加盟14カ国の生産目標は日量3250万~3300万バレル。8月の生産量は3324万バレルなので24万~74万バレルの減産となる。現在の供給過剰は100万バレル程度とみられ「供給過剰をすぐ解消できるほどではない」(住友商事グローバルリサーチの舘美公子氏)。

 サウジアラビアや1月に経済制裁が解けたイランは増産でシェアを競ってきた。サウジの8月の生産量は自国の電力向け需要がピークを迎えることもあり、1~3月と比べ約50万バレル多い。米シティグループは、サウジの生産量は季節的に減るため「減産合意の意味はあまりない」と指摘する。

 合意はいつから、どの国が減産するかを示していない。各論は11月末のOPEC総会に先送りした。イランは現状の360万バレルから400万バレル超への増産を主張。政情不安で生産が低迷するナイジェリア、リビアも例外扱いとするようだが、しわ寄せがくる国が納得するかは別だ。

 「OPECの統計は我々の生産量を過小評価している」。会合後に怒りをぶちまけたのがイラクだ。8月の統計によると、自己申告ベースで日量464万バレルの生産量が、正式な生産量と見なされる石油情報会社の報告だと435万バレルになっていた。ルアイビ石油相が情報会社の担当者に詰め寄ったとも報じられた。

枠順守には疑問

 合意できても、各国が生産枠を守るか疑問が残る。WTIが1バレル10ドルを割った1986年、OPECはそれまでのシェア拡大路線を改め、生産枠を復活させた。だが翌年には各国のヤミ増産が横行。相場回復は約1年の短命に終わった。

 OPECは「大幅な値上がりは望んでいない」(マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表)との見方もある。米国のシェールオイルをはじめ非OPECの生産量が増え、シェアを奪われかねないからだ。今回の合意を「時間稼ぎ」(米ゴールドマン・サックス)と見る向きも多い。足並みの乱れを市場は見透かしている。



どうなる原油市況 識者に聞く 2016/04/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット商品面にある「どうなる原油市況 識者に聞く」です。





年末にかけ需給は均衡 英BP・チーフ・エコノミスト デール氏

――主要産油国の協議は不調に終わりました。

 「多くの市場参加者は合意を織り込んでいたため、短期的に不安定な相場となるだろう。ただ原油安を受けた需要増と、米国のシェールオイル減産は続く。年末にかけて需給は均衡し、原油価格も需給を映した水準に落ち着く可能性が高い」

 ――価格の見通しは。

 「不透明な要素が多く今後を予想するのは難しい。価格を左右するのは(1)米国のシェールオイルの生産動向(2)油田開発での投資削減の影響(3)積み上がった原油在庫の行方――の3要素だ」

 「原油価格の反発局面で、米国のシェールオイルがいつ増加に転じるかが焦点だ。銀行が生産企業への融資を絞っているうえ、労働力確保に時間がかかる可能性がある。長期的には生産効率の向上などで、2035年までに生産量は現在の2倍の日量800万バレルに達すると見ている」

 「油田開発への投資額は14年に比べ3割減るとの指摘もある。供給の伸び悩みは3~5年後に需給に響いてくるだろう」

 ――世界経済の減速懸念で需要に影響は。

 「価格低迷で世界的に原油需要は堅調だ。ガソリン利用が多い米国が顕著だが、欧州も需要は増加に転じた。中国のガソリン需要も大きく伸びる。昨年ほどではないが、今年も世界で需要の大幅増が続くと見ている」

増産続き年内は30~40ドル 仏BNPパリバ・コモディティ部門グローバル責任者 チリングイリアン氏

――供給の過剰に歯止めはかかりますか。

 「産油国はシェアを追い、増産凍結という最低限の合意すらできなかった。ナイジェリアやアラブ首長国連邦では生産量が一時的に減っているが、夏に向け再び増える。ニューヨーク原油先物は年内、1バレル30~40ドルで推移すると見る」

 「サウジアラビアが調整役を放棄し、供給を調整するのは原油価格のみだ。価格の長期低迷がコストの高い油田の減産と需要の喚起をもたらす」

 「在庫増には年内に歯止めがかかるが、在庫解消にはさらに1年以上要るだろう。世界経済の減速懸念が強まる中、個人所得の伸び悩みが原油の消費量を抑えかねない」

 ――原油価格は再び30ドルを割り込みますか。

 「米国のシェールオイル油田の多くは採算ラインが30ドル前後だ。30ドルを割れば生産調整が本格化する。シェール企業は今年産分について売値を確定しているのは2割前後で、来年は6%にとどまる。資金繰りは苦しさを増すだろう」

 ――原油安はいつまで続きますか。

 「サウジの戦略は深海やオイルサンドといった高コスト油田の開発を締め出すことだ。開発投資は削減され、2017年以降に新規油田の生産は落ち込む。需要が拡大するなか、18~19年に再び80~100ドルに上昇する可能性もある」



サウジ、原油シェア低下 主要15市場中9市場で ロシア・イラクが攻勢 イラン増産に警戒感強く 2016/04/20 本日の日本経済新聞より

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 世界最大級の産油国サウジアラビアが原油シェアを落としている。世界の主要15市場のうち9市場でシェアが低下した。ロシアなど他の産油国による販売攻勢が響いた。17日に開いた増産凍結に向けた産油国の会合で、サウジはイラン抜きでの合意を拒否した。増産姿勢を強めるイランの台頭で、シェア低下への警戒感を強めている。

 主要15市場の原油シェアを調べた英調査会社FGEによると、サウジは2015年に9市場で13年よりシェアを落とした。「市場拡大と同じペースでサウジは海外シェアを伸ばせなかった」(FGEのジェネイト・ガザコグル氏)。サウジのジュベイル外相は相次ぐ増産で原油価格が1バレル30ドル台に低迷していた3月、「シェアを維持する」と言い切ったが、戦略は空回りしている。

 サウジのシェア低下が目立ったのが中国だ。15年は15.4%と首位を守ったが、13年に比べ4ポイント低下した。輸出量も日量約99万バレルと6万バレル減った。「自動車の保有台数の増加や、原油安による国家備蓄の伸長などで需要は旺盛」(丸紅の栃本恵一・石油貿易課長)で、中国の全輸入量は日量650万バレルと19%増えたのと対照的だ。

 一方、他の産油国の中でロシアとイラクは躍進した。サウジのシェアが下がった中国は、独立系の中小製油所や石油化学企業に15年から原油の直接輸入を順次解禁、「ロシアはこの流れに乗った」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之氏)。ロシアは地理的に近く輸送コストの安い東シベリア産原油の中国への輸出を拡大。8.8%(4位)だったロシアのシェアは、15年に12.6%(2位)に拡大。サウジを超える月もある。

 イラクは価格で対抗した。米情報会社プラッツによれば、13~15年にイラク産の代表油種はサウジ産を下回る価格で推移。約1ドル安い時期もあった。イラク戦争で減った生産は、外資誘致で15年に日量約400万バレルと3倍まで拡大。イラクの中国でのシェアは9.7%と1.3ポイント上昇した。

 サウジは韓国、台湾、欧州でもイラクの安値攻勢にさらされている。米国ではシェール革命で原油の輸入が減少。南アフリカは地理的に近いアンゴラやナイジェリアからの輸入を増やした。

 足元でもシェア争いは激しい。イランの代表油種は制裁解除後にサウジ産に比べ値引きが顕著だ。米クリッパーデータによると、インドでも「3月のイランの輸出は日量50万バレル増えた」。原油輸出を解禁した米国も立ちはだかる。産油国のシェア争いが原油相場に水を差す可能性もある。



多面鏡 抹茶人気、原料の生産最高 菓子向け拡大、海外も需要 2015/12/15 本日の日本経済新聞より

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 抹茶の需要が好調だ。抹茶の原料であるてん茶の生産量は過去最高に達し、取引価格も高い。内需が菓子向けに伸びており、てん茶高が菓子の値上げにつながるケースも出てきた。需要は海外に広がり、MATCHAという言葉が米国を中心に浸透しつつある。

 「栄養バランスのとれた土壌でてん茶を作り、高級抹茶を増産している。洋菓子メーカーやコーヒーチェーンから注文が入り始めた」と話すのは総合緑茶メーカー、丸七製茶(静岡県島田市)の鈴木成彦社長。抹茶の生産量は5年で5倍の約5トンに膨らんだ。今後も年3%の伸びを見込む。

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 抹茶の産地は茶道用から発展した京都府宇治市、愛知県西尾市などが有名だ。だが、最近は煎茶の産地である静岡県や福岡県でも生産が増え始めている。

 内需が好調だ。和・洋菓子、アイスクリームだけでなく抹茶ラテ向けが増えている。抹茶はビタミンやミネラルが豊富で健康に良いイメージがあり、入れると味もまろやかになる。

 全国茶生産団体連合会によると、2014年のてん茶の生産量は1969トンと前年比1割伸びた。今年は6~7%増の2100トン前後に達しそうだ。てん茶はお茶全体の中では2~3%だが、煎茶や番茶が低迷する中で好調ぶりが際立つ。

 価格も高値にある。今年度のJA全農京都茶市場の平均単価(一番茶、11月半ばまで)は煎茶は前年度比7%安だが、初茶てん茶は1キロ4720円と27%も高い。祇園辻利(京都市)は乳製品高もあり「抹茶ソフトクリーム」など7品目を10月から平均約10%値上げした。

 需要は海外にも広がる。日本茶輸出組合の谷本宏太郎副理事長は「お茶は海外では成長市場。日本の輸出の半分近くを占める米国ではMATCHAで通じ、ジュースやラテ向けに広がっている」と指摘する。

 伊藤園では海外需要に生産が追いつかない。受注から出荷まで通常1カ月だが最近は2カ月かかる。今年度のお茶全体の輸出は前年度比1割増の約500トン。うち5割以上を抹茶や抹茶関連が占める。来年度も1割以上の増強を計画する。

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 輸出では中国勢との競合も激化。世界の抹茶を含む緑茶の輸出市場では中国産が7割と圧倒的シェアを握る。日本産は増えたといっても約1%だ。ただ、日本産の抹茶はてん茶から作るものが多いが、中国は普通の葉を粉末にしたものが中心。日本産の半値以下で攻勢をかけるので日本産も安値に巻き込まれやすい。

 こうした中で老舗の茶製造卸、松北園茶店(宇治市)は安定価格で抹茶輸出を伸ばす。今年度は12トン、3年後は16トンを見込む。北米2社との提携でニーズを分析して出荷。欧州向けも独ブローカーと組み現地の事情を探る方針だ。杉本剛社長は「日本の価値観を押しつけてはだめ。海外は糖類入りやフレーバーティーも多い。相手の嗜好に合わせる姿勢も大切」という。

 国内外でにわかに盛り上がる抹茶人気。息の長いブームにするには多様な嗜好に対応する柔軟性と工夫が欠かせない。

(浜部貴司)



シェールの衝撃 変わるガス市場(上)米が輸出、シェア争い激化 転売自由、取引柔軟に 2015/12/03 本日の日本経済新聞より

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 液化天然ガス(LNG)市場で生産国間のシェア争いが始まろうとしている。年末にも米国でシェールガスの輸出が始まり、既存の供給国に圧力をかける。中東諸国などと異なり、米国は転売に制限をつけない。柔軟な取引が広がれば、需給に応じた指標価格が育つ可能性もある。米国発のシェール革命は供給国が優位の時代に終わりを告げ、ガス市場の秩序を変えようとしている。

 米国で暮れにも輸出が始まる。第1弾の案件はメキシコ湾岸で開発された輸出基地のサビーンパス(ルイジアナ州)で、天然ガスを輸出向けに液化する最終準備が急ピッチで進む。年間生産能力は1800万トンに達し、関西電力や中部電力なども買い手に名を連ねる。

10年で生産1.5倍

 シェール革命に沸く米国では天然ガスの生産量が過去10年で5割近く増え、LNGの輸出計画も目白押しだ。サビーンパスは2008年にLNGの受け入れ基地として稼働したが、輸出拠点として生まれ変わった。

 米国全体のLNGの生産能力は19年に5000万トンを超える見通しで、世界の1割を占める。米金融大手ゴールドマン・サックスによると、同年の米国産LNGの輸出量は2550万トンとなり、世界シェアの3位となる見込みだ。

 サビーンパスの運営会社、シェニエール・エナジーのバイス・プレジデント、アンドリュー・ウオーカー氏は「米国のLNGは世界の天然ガス市場の流動性を高め、取引の力学を変えるだろう」と語る。

 米国産のLNGは転売が自由で需給に応じた柔軟な取引を大幅に増やす可能性を秘める。トレーダーが地域ごとの価格差に着目した裁定取引を手がけ、欧米に比べ割高なアジアプレミアムが縮小する期待も広がる。

中部電など備え

 日本の輸入量は計画ベースで年2000万トンに迫り、昨年の調達全体の2割に達する。中部電力は米南部ヒューストンに天然ガスの取引子会社を設立、米国人トレーダーを新たに採用した。米LNGの輸入開始に備え需給に応じた機動的な取引ノウハウの蓄積を急ぐ。

 「長期契約で調達するフリーポート(テキサス州)のLNGについて、できるだけ転売したい」。大阪ガスの本荘武宏社長は11月、トレーディングで収益を確保する戦略を打ち出した。不透明な需要の見通しが背中を押す。電力自由化で価格競争が激しくなる中、LNGは安い石炭と競合する。原子力発電所の稼働状況や再生可能エネルギーの拡大なども響く。

 電力・ガス各社は東日本大震災後に米国LNGの長期契約を相次いで結んだが、原油安で市場の環境は激変した。油価連動のLNGの供給も増え、米国のLNGが余剰となる可能性も浮上し、日本企業は調達戦略の見直しを迫られる。



多面鏡 加速する米国の原油増産 天然ガスから開発シフト 2013/11/26 本日の日本経済新聞より

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 10年前に、米国が1世紀ぶりの石油ブームに沸く光景を想像できた市場関係者がどれほどいただろうか。2011年から急速に上向いた米国の原油生産は足元で勢いを増す。

 米エネルギー省の統計で米国の原油生産量(付随ガスは含まず)は、11月15日までの4週平均が日量792万バレルまで増加し、戦略備蓄向けを除く原油の平均輸入量(760万バレル)を逆転した。国内生産が輸入を上回るのは、1994年春以来、19年半ぶりだ。

 米国の原油生産は大恐慌に沈んだ29年に初めて10億バレルを超え、70年に記録した35億バレルまで増え続けた。だが、月間で3億1千万バレル、日量換算でちょうど1千万バレルを記録した70年10月が産油国としての米国のピークだった。

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 資源枯渇で日量500万バレルを割り込むようになった04~06年には、だれもが米国の原油生産はこのまま衰退し続けると考えた。

 しかし、その時に別な変化が進行していた。米国の住宅バブルを背景にした世界同時好況と、中国をはじめとする新興国の台頭だ。

 国際市場では急増する需要に対し、供給不安が高まる。天然ガスの急騰に続き、08年には原油も1バレル147ドル台の史上最高値を記録した。価格高騰が増産と技術開発を後押しする市場機能が働いた。それが「シェール革命」である。

 テキサス州の8月の原油生産はもっとも落ち込んだ07年2月の3倍、ノースダコタ州は94年2月の13倍に急増した。ただ、急角度で立ち上がる増産には天然ガスからの開発シフトが影響している。

 住友商事エネルギー本部長として米国でのシェール事業に取り組んだ住友商事総合研究所の高井裕之社長は「メタン成分のドライガス、エタンなどを含むウエットガスともに供給過剰で採算が悪化し、掘削リグは油田の開発に移動した」と話す。

 採算ラインは100万BTU(英熱量単位)4ドル前後のシェールガスに対し、シェールオイルは1バレル70ドルほどとされる。開発企業のヘッジ売りで長期先物の20年12月取引は80ドル台を割り込んだが、余裕はある。

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 原油生産の増え方を目の当たりにすれば天然ガスのような自給達成シナリオも頭に浮かぶものの、現状では否定的な見方が多い。

 高井社長は「資源量の豊富な天然ガスと異なり、米国でのシェールオイル開発は4~5年で頭打ちとなる」と指摘する。さらに、米国で生産が増えているのはWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油と同類の軽質で低硫黄の油種だ。

 「米国も精製設備の多くは中質油種に合わせてつくってあるため、国内生産が増えても一定量は輸入せざるをえない」(英石油情報会社、アーガス・メディアの三田真己日本代表)

 米国の原油相場は輸入や製品の輸出入を通じ国際市場とつながっている。「天然ガスと違い、米原油相場だけが急落するシナリオも考えにくい」(三田代表)。少なくとも相場が70ドル台を下回れば採算が悪化し、開発や生産は停滞する。

(編集委員 志田富雄)