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大機小機 物価目標2%の意味 2017/8/11 本日の日本経済 新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 物価目標2%の意味」です。





 7月公表の「展望リポート」で、日銀は2%の物価目標達成の時期を2019年度ごろとした。先送りはこれで6回目だが、今回の先送りが持つ意味は重い。

 というのも、19年度に入って目標を達成できても、10月に予定される消費増税を考えれば、直ちに金融緩和の「出口」に向かうことは難しい。増税の影響を見極めてからだとすると、「出口」は最速で今から3年先の20年度になるが、それまで景気拡大が続いている保証はない。

 その間に景気後退が来ても、バランスシートを目いっぱい拡大し、マイナス金利まで導入した日銀が追加的にできることは少ない。本来は財政の出番だが、安倍政権では日銀緩和依存症から財政健全化がさっぱり進んでいないため、財政の発動余地も乏しいのが現実だ。

 政府・日銀には、こうした最悪シナリオに備えた作戦の練り直しが求められる。ここでは、2%目標の意味を問い直すことが重要な柱になると思う。実際、多くの国民は物価目標の意味が理解できなくなっているのではないか。

 デフレ脱却が目標として受け入れられたのは「デフレさえ終われば力強い日本経済が戻ってくる」というリフレ派の主張を国民が半ば信じたからだろう。それがおとぎ話だったことは、アベノミクスが始まるとすぐ判明したが、それでも「物価が上がらないと景気は良くならない」という思いは共有されてきた。

 しかし今度は物価上昇が好景気に必須ではないことが分かってきた。現にエネルギー価格を除いた消費者物価の上昇率はゼロでも、有効求人倍率がバブル期を上回るほどの人手不足である。なぜ無理して2%を目指す必要があるのか、疑問に思う方が普通だろう。

 もちろん、平時のインフレ率がゼロだと平時の金利もゼロ近くになり、リーマン・ショックのような景気悪化時にも金融政策の発動余地が乏しくなる。だからせめて2%インフレ、2%強の金利水準を常態にしたいという、日銀の理屈はよく理解できる。

 だが、現在直面しようとしているのは、2%を目指して金融緩和を進めてきた結果、景気悪化時の政策余地がなくなるという逆説だ。やはり物価目標の意味を根本から問い直す必要があるのではないか。

(希)



大機小機 デフレの容疑者 2017/8/4 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 デフレの容疑者」です。





 政府・日銀のデフレ脱出作戦が大苦戦している。

 日銀は2%のインフレ目標時期をさらに延期した。6度目の延期である。政府は経済財政白書で「デフレ状況ではないが、(中略)デフレ脱却には至っていない」と総括した。デフレなのかデフレではないのか。意味不明の代表的な霞が関文学作品だろう。

 政府も日銀もインフレ目標達成を阻む犯人の割り出しに必死だが、成功しているようには見えない。

 犯人は誰か。有力容疑者の一人(一つ)はデジタル革命ではないだろうか。

 デジタル経済化が進み、世にはデジタル化された製品・サービスがあふれている。携帯電話もコンピューターも、技術進歩はとてつもなく速く、実質的な価値は著しく高まっている。品質が同じなら驚くほど安くなっている。デジタル財の限界生産費用が、限りなくゼロに近づくという特性が背後にある。

 インターネットの普及による、モノやサービスの完全競争市場化も物価下落圧力として働く。情報の検索コストは劇的に低下し、均衡価格は瞬時に見つかる。あちこちに商品価格の比較サイトが出現しているのが典型例だ。供給側に有利な情報の非対称性は薄れ、企業の超過利潤は消える。仮にコストが増えても、競争が激しく簡単には価格に転嫁できない。人件費増でもサービス価格はなかなか上がらない構造だ。

 労働市場そのものへのデジタル・情報革命の影響も小さくない。伝統的な経済理論には、雇用の特性と情報のミスマッチで、これ以上は下がりにくいという失業率の水準がある。構造的・摩擦的失業率とか自然失業率とか呼ばれる。ここを下回れば、賃金上昇に勢いがつき、物価を押し上げるという水準だ。

 日本の構造的・摩擦的失業率は3%強、米国は5%前後とされてきた。足元、実際の失業率は日本が2%台、米国が4%台前半である。だが両国とも賃金・物価へのハネ返りは弱い。

 「実は構造的・摩擦的失業率が低下している」という説がある。非正規労働者の増加など雇用の流動化に加え、ネットの普及で求人情報や求職情報が隅々まで行き渡り、ミスマッチが減少しているというわけだ。

 大胆な金融緩和――。さて的を射た政策なのだろうかと、ふと思う。

(横ヤリ)



大機小機 出光興産の新株発行を巡って 2017/7/26 本日の 日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 出光興産の新株発行を巡って」です。





 出光興産は20日付で、既存の1億6000万株の30%に当たる4800万株の新株発行を完了した。昭和シェル石油との経営統合について、経営陣と対立していた創業家側の持ち株比率は、33%台から26%台に低下したとされる。創業家側は新株発行の差し止めを求めたが、裁判所は認めなかった。この結果は驚くに値しない。

 会社法は、定款で定める株数の上限(出光の場合は4億3600万株)までは、取締役会決議での新株発行を認めている。取締役会の判断で株主の持ち株比率が低下することは、法が予定するところであり、手続きや価格が正当であれば、株主が新株発行を差し止められるのは、著しく不公正な方法による発行の場合に限定されるからだ。

 その判断に当たり、判例は「主要目的ルール」と呼ばれる基準を採用する。会社に資金需要がある場合は、副次的に他の目的があっても差し止めを認めないことを原則としている。

 もちろん、資金需要があっても、金融緩和局面では銀行借り入れの方が合理的だという考えもある。しかし、裁判所は、資金需要をどう満たすかの判断には、安易に介入すべきではないと考えているようだ。

 本件では資金需要の存在に加え、創業家側の影響力低下が限定的であることも、差し止めを認めなかった裁判所の判断の背景にありそうだ。棄権者が一定数存在する上場会社の株主総会で、経営統合のための特別決議を否決するために33.4%の議決権が必要なわけではない。創業家側の26%超の持ち株比率は、市場からの株式買い増しによっても、数%の株主を味方につけることによっても、経営統合議案を否決することができる数字だ。

 また、創業家側の反対が功を奏しなかった場合には、創業家側による株式買い取り請求権の行使もあり得る。裁判所は、差し止めを認めなかったからといって、「著しく不公正」と評価できるほど、経営陣の立場が強くなるわけではないと考えたのだろう。

 新株発行は、創業家のみならず、全ての既存株主の持ち株割合を低下させた。経営陣は近い将来、自社の企業価値が新株相当分の30%以上増加することを株主に約束したとも言え、重い責任を負ったことを忘れてはならない。

(腹鼓)



大機小機 わが国高齢化の本当の課題 2017/7/8 本日の日本 経済新聞より

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 内閣府が毎年行っている世論調査では、若者の現在の生活に対する満足度は8割を上回る高い値になっている。それはバブル期や高度成長期をも上回っているとのこと。ところが将来に明るい希望を持っているかとなると、日本の若者がそう答える割合は諸外国に比べると極めて低い。

 これから少子高齢化が急速に進む日本の本当の問題がここにある。若者が夢を持って活躍するようでなければ、経済はじり貧になり国民生活も貧しくなるばかりだからだ。

 若者の夢については、フェイスブック創設者のマーク・ザッカーバーグ氏が、先日、母校のハーバード大学の卒業式で行ったスピーチが興味深い。

 ザッカーバーグ氏は、自分は多くの起業家を見てきたが、同時に、失敗したときに路頭に迷わないだけの備え(クッション)がないために夢を追うことを初めから諦めてしまう人もたくさん見てきた。そこで自分は、誰もが新しいことに挑戦できる社会にするために、失敗した時の備え(クッション)としてベーシックインカムのような制度を検討すべきであると考えている、というのである。

 失敗した時のことを恐れ夢を追うことを諦めてしまう若者が多いのは、米国よりも圧倒的に我が国だろう。だから冒頭の世論調査のような答えになるのだ。

 人生100年時代といわれるようになり、世界中の人々が人生の途中で職を替えることが当たり前になってきた。ところが、そんな時代に日本の若者だけが失敗を恐れて社会に出たらとにかく無難に過ごすことで満足してしまうというのでは、日本の将来は暗い。

 最近は、我が国でも子育て支援についてはコンセンサスができてきた。誰もが、高齢者になれば、今日の子供たちに支えられるのだからというわけである。

 しかしながら、高齢者が今日の子供たちにしっかりと支えてもらうためには、子供たちが若者になったときに夢を持って活躍し、日本をしっかり発展させてくれなければならない。そのために、ベーシックインカムかどうかは別として、若者が夢を持って活躍することを支える仕組みを作ることが必要だ。そのために国民的なコンセンサスを創り上げていくことが、これから迎える高齢化への本当の課題だ。

(唯識)



大機小機 中国経済4つの誤算 2017/4/28 本日の日本経済 新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 中国経済4つの誤算」です。





 先の米中首脳会談でトランプ大統領は習近平国家主席に黒字削減要求を突き付けながら、北朝鮮政策での協力を引き出した。中国に様々な思惑があるにせよ、中国経済が対米強硬路線を取れるほど盤石でないことが外交面で妥協せざるを得なかった背景だろう。

 習主席は就任以来4年間、人民元高に歯止めを掛けて輸出を下支えしつつ、内需主導型経済への転換を図り、高成長から中成長への軟着陸を図ってきた。だが、4つの誤算があった。

 第一は、為替政策の誤算だ。人民元の対ドルレート上昇に歯止めを掛けたが、米国の金融出口戦略でドルが20%高騰した結果、人民元の実効レートが15%上昇して輸出が失速した。15年8月に人民元を切り下げたが、ポンド急落などで実効レートが高止まりして輸出減少が止まらない状況だ。年初来、世界貿易の回復にもかかわらず、輸出の減少(数量ベース)が続き、景気の足かせになっている。

 第二は、人民元切り下げで資本流出が始まったことだ。1年半で流出額は1兆ドルを超えた。昨年末の資本流出規制強化で、逆に対中直接投資が一段と減少し、設備投資の停滞をもたらしている。

 第三は、財政赤字の拡大だ。内需主導型への転換に伴う社会保険料や公共サービス支出増大と景気減速等による税収鈍化が背景だ。年初来、インフラ投資拡大で景気は底堅いが、財政出動で1~3月の歳出は前年同期比2割増だ。大型減税もあり、今年の財政赤字の国内総生産(GDP)比は日本を上回るだろう。

 第四は、マネー膨張だ。成長率が半減する中で2桁の融資拡大を続けた結果、中国の通貨供給量(M2)は米国の1.7倍になり、世界の3分の1を占めるに至った。年初来、引き締めに転じたが、住宅バブルが止まらず、インフレの兆しも出始めた。輸出減少、資本流出、財政赤字拡大、バブル膨張の4重苦に見舞われ、手詰まり状態だ。

 米中間の貿易不均衡是正に向けた「100日計画」で合意したが、中国はGDPの2%以上を対米貿易黒字に依存する。黒字を削減すれば成長率が低下し、財政出動で景気を支えれば財政赤字がさらに拡大する。中国は対米黒字削減という新たな重荷を抱え、一段と厳しい経済運営を迫られることになる。

(富民)



大機小機 どの世代のどの層に負担を求めるか 2017/4/19 本日の日本経済新聞より

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 わが国経済社会の足腰を強くする教育について、その財源を「教育国債」に求める議論が自民党や国会でなされている。「教育」と付いても実質は将来世代に返済を求める赤字国債だ。これに対し小泉進次郎議員など自民党若手議員が、現役勤労世代と事業者に負担を求める「こども保険」を提言。にわかに教育予算の負担をどの世代に求めるべきかの議論が始まった。

 格差社会にならぬよう、教育の機会均等の重要性については、国民全員が認めている。しかしその負担の在り方になると、コンセンサスは得られていない。

 大学までの無償化には4兆円強の財源が必要だが、それを国債発行で賄うのはナンセンスである。将来世代は自分たちに必要な公共サービスの負担もあり、教育国債の償還は追加的な負担増になる。大学に行かない者は返済だけ引き受けることになる。そもそも私立大学の半分が定員割れ状態で、無償化すれば質はますます低下する。何のための無償化か意味が不明だ。

 それに対し「こども保険」の方は、現役世代とはいえ、財源が確保されている点で筋が通っている。

 だが、教育の重要性に鑑みれば、負担は勤労世代に限定せず、高齢世代も含めた全世代で対応(つまり消費増税)すべきではないか、そう言えないのはシルバー民主主義だ、という批判がある。また、子どもがいない世帯にも保険料負担を負わせることは公的保険として成り立つのか、という問題もある。今の社会保障費が高齢者に偏っているのだから、それを削って教育に回せば、新たな財源(負担)は必要ないではないか、という正論もある。

 加えて、負担論の議論では「世代間」だけでなく、「世代内」の所得再分配まで踏み込んだ議論をすべきだという意見もある。

 具体的には、勤労所得と公的年金のダブルインカム者には給与所得控除と公的年金等控除が適用され負担が低くなることの是正や、高齢者に偏る金融所得の課税強化で、ピンポイントに「富裕高齢層」に負担増を求める議論だ。現役・高齢・将来世代のどこが負担すべきかだけでなく、所得・資産に余裕のある者が負担すべきだという議論も併せ行うべきである。「こども保険」の提言を、国民負担のあり方につないでいく必要がある。

(ミスト)



大機小機 日本経済2つのシナリオ 2017/4/6 本日の日本経 済新聞より

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 日本経済を景気循環の観点から見ると、ゼロインフレの下で労働需給や企業収益などの経済指標は非常に順調で、理想的な状況に近い。日銀が掲げる2%インフレ目標を達成できていないという表面的な問題や、人口減少を主因とする低成長という解決困難な長期問題、不人気な増税を避けるために政府が放置し続ける財政再建という中長期的課題はあるが、当面は花見酒を楽しめる状況にある。

 こうした中で、政府・日銀と日本経済のマクロバランスにとって理想的なシナリオは、2%のインフレ目標が達成できず、ごく低い物価上昇が続くことだ。そうすれば日銀はゼロ金利を継続でき、徐々に量的緩和を弱める(テーパリング)ことで、バランスシート拡大に歯止めをかけ、ゆくゆくは縮小へと巻き戻せる。

 これに対し、2%のインフレ目標が急速に達成されれば、むしろ危険な状態が引き起こされる。2%インフレの下では、短期金利で最低1%、長期金利で2%以上にまで金利を早急に引き上げないと、景気過熱のリスクが高まる。米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長の言葉を借りれば、景気回復に見合った政策金利の引き上げを怠れば、景気の過熱現象という「予想外の悪い事態(nasty surprise)」が発生しかねないからだ。

 長引いた超低金利の後の金利上昇は様々な問題を発生させる。国債価格が暴落すれば日銀は巨額の損失を背負う。20兆~30兆円程度の損失額であれば自身で処理できるが、損失額がそれ以上に達した場合、日銀は極めて長期間にわたり、赤字を出し続ける恐れがある。

 家計部門にとっても、変動金利住宅ローンの返済負担が大きなリスク要因になる。あまり知られていないが、金利が大幅に上昇した場合、約定通りに返済を行っても満期に未払い利息が残る。その一括返済を求められる事態が想定される。

 財政赤字についても、政府の利払い負担が急激に膨張して、政府赤字がコントロールできなくなる可能性がある。政府は財政再建目標について、利払いを除く基礎的財政赤字の均衡を掲げている。たとえ基礎的財政収支が均衡しても、金利が上昇すれば、政府債務の国内総生産(GDP)比率は、際限なく上昇していくことになる。

(山河)



大機小機 エビデンス対エピソード 2017/3/25 本日の日本 経済新聞より

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 米国の大学が使う経済学のあるテキストに、次のような記述がある。「政策問題に関し、エコノミストの間では常に異なった見解が存在する。しかし最も幅広い合意があるのは、自由貿易が経済全体に大きな利益をもたらす点だ」

 正統派エコノミストと良識あるジャーナリズムは、エビデンス(証左)に基づく経済政策を行うべしと長く主張してきた。しかし今、政治的な「エピソード」が経済的な「エビデンス」をしのごうとしている。

 トランプ米大統領はフォード・モーターに圧力をかけ、工場のメキシコ移転を止めた。これで800人程度の地域の雇用が守られるという。「大統領は我々の味方だ」というエピソードとなり、政治的に大きな力を持つのだろう。しかし労働市場では1日に7.5万人がリストラされ、新しい職場に移っていく。結果としてほぼ完全雇用の状況に近づきつつある。そのなかで800人の雇用維持にどんな意味があるのか。

 むしろ過剰な政府介入が経済活力をそげば、中期的に数十万人以上の雇用が失われるかもしれない。同様に、2国間の貿易収支にこだわり、無理な関税を課せば、活力がそがれることをエビデンスは示している。

 トランプ氏の登場以降、自由貿易のメリットが軽視され、政治的なエピソード重視を当然のように受け入れる風潮が広がっている。一部のエコノミストやジャーナリストの間に、政権の短期的な対応に注目するあまり、保護主義の負のインパクトが忘れられる傾向があるのは気になる。

 ある政治専門家によれば、トランプ政権には3グループが存在する。元経済人・実務家、元軍人、過激な大統領側近だ。このうち経済人と軍人のグループは、過去の経緯も踏まえ、エビデンス重視派と言っていい。一方、第3のグループは次の選挙での勝利を最大目標とし、政治的なエピソードを積み重ねようとしている。現実の米国の政策は3グループのパワーバランスで決まるというのだ。

 日本政府が大統領の主張に正面から反論するのは難しいだろう。だからこそ正統派エコノミストやジャーナリストが、声を大にしてエビデンスに基づく政策、つまり反保護主義を唱えるのが重要だ。自由な経済活動を阻害することの弊害はあまりに大きい。

(夢風)



大機小機 シェアリングエコノミーと税制 2017/2/23 本日 の日本経済新聞より

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 2月5日付本紙によると、規制改革推進会議は「ライドシェア」の解禁を検討しているとのことだ。記事によると、ライドシェアは一般のドライバーが料金を取って自家用車で利用客を送迎するサービスで、急増する訪日客の交通事情への対応が背景にあるとみられる。

 個人が持つ遊休資産(スキルなどの無形資産も含む)を使うサービスは、遊休資産の活用による収入を貸主にもたらし、借り主の利便性も高まる。こうした新たな価値を生み出す「シェアリングエコノミー」は国際的に注目されている。一方で、そこで働く人々の労働法規や社会保険料の問題が指摘されているが、税制にも対応すべき多くの問題があり、同時に検討を進める必要がある。

 世界で活動し、日本でも試行実験が始まっている配車サービスのウーバーテクノロジーズを例にとり、税制の課題を考えてみたい。

 所得税の課題としては、いかに徴税コストをかけずに公平に課税するかという点である。自家用車でウーバーの運転手をして所得を得る人の情報をどう集めるのか、ウーバーに源泉徴収義務を課すのかなどの問題だ。また被雇用者(サラリーマン)と個人事業主の線引きが曖昧になり、給与所得と事業所得の区分の問題に発展しかねない。

 消費税の課題としては、運転手は免税事業者なのか、ウーバーが消費税の納税義務を負うべきではないかなどの問題が生じる。

 より難しいのは法人税だ。ウーバーは、インターネットで配車するというプラットフォームを提供する会社で、ネットが発達した時代に国内に法人をつくる必要はなく、課税のとっかかりとなる子会社や支店を置かずに商売でき、法人課税を逃れられる。

 現に米アマゾン・ドット・コムは日本の消費者を相手に大きな利益を得ているが、日本で1銭も法人税を払っていない。米国に本社を置くウーバーは、タックスヘイブン(租税回避地)のオランダに中間持ち株会社をつくり、そこに無形資産を移して欧州でビジネスを展開しているようだ。

 現行の税制度はシェアリングエコノミーに追いついていない。ニュービジネスの芽を摘むことなく、適正公平な課税の検討を国際社会と連携しつつ進める必要がある。

(ミスト)



大機小機 新日米対話の勘定書き 2017/2/16 本日の日本経 済新聞より

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 結果だけをみれば、さきの日米首脳会談は日本にとって出来すぎの内容だ。トランプ砲の直撃を避ける日米経済対話を新設し、安全保障で米国との連帯継続という満額回答も得た。

 米は財務長官も商務長官も正式就任前の段階。「意外とまともなトランプ像」を示す思惑もあったはず。安倍晋三首相の芝生上での国際政治の指南も効いた。

 出発点が良すぎるからこそ、今後は大変だ。

 懸案を「丸投げ」した日米の経済対話は3つの分野を話し合う。まず財政・金融のマクロ経済政策、第二に経済協力、第三に2国間の貿易体制である。麻生副総理・財務相とペンス副大統領のナンバー2同士が仕切る以外、詳細は不明だ。

 2番目の経済協力は歩み寄りやすい。新幹線やリニアの技術をトランプ大統領が褒めたのも「雇用増」の果実が見えるからだろう。

 問題は残りの2つだ。双方で利益を得るウィンウィンを唱える日本の主張と「米国第一」で2国間交渉による有利な条件を勝ち取ろうとする米国のゼロサム思考は衝突する。

 特に財政政策と金融政策の協調は難問になる。米国の経済が勢い付いてドル高が続き、日本に円安の恩恵が及べば、デフレ早期脱却を目指す日本には望ましい展開。だがトランプ政権がそんな寛容なはずがない。

 現在の円安も国別で2番目に多い対日貿易赤字も、米自動車大手などのロビイングを受ける大統領の不満リストの上位にある。

 各国の通貨安誘導を「思っているより早く止める」と不敵な発言をしたトランプ氏。日米は「為替は経済対話では扱わない」というが、金融政策を話し合う以上、為替を意識した攻防が起きるのはごく自然だ。

 長期金利のゼロ固定という異例の日銀緩和は円安に作用する。米国は陰に陽にここを突いてくるだろう。少なくとも金利を押さえつけている日銀には逆風だ。

 一方で米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は米政権の積極財政策の副作用を警戒し、利上げへの意欲を隠さない。米政権にイエレン氏を阻止する覚悟があるとは限らない。ドル高抑止は微妙だ。

 皮肉にも勘定書きは日本の財政に回る可能性がある。内需拡大で米の批判をかわす発想だ。政権が消費増税の再々延期に動くなら格好の口実になる。

(仙境)