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会社研究 取り戻した成長力(4) 明治ホールディングス ブランド絞り込み利幅倍増 2015/06/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「会社研究 取り戻した成長力(4) 明治ホールディングス ブランド絞り込み利幅倍増」です。





 今春、大正生まれのお菓子がひっそりと店頭から姿を消した。明治の「カルミン」。1921年に発売され、根強いファンがいたが、94年の歴史に幕を下ろした。明治ホールディングスにとって「カルミン」は大きな商品ではない。だが、赤字を垂れ流しているわけでもないのにロングセラーを切り捨てたのは、利益重視の「選択と集中」を象徴する判断だ。

選択と集中の結果、ロングセラー商品「カルミン」は今春、製造中止になった

品目数2割削減

 2009年4月の旧明治製菓と旧明治乳業の統合以降、「強いブランドをより強く」の方針のもと、菓子部門では「アーモンドチョコ」や「きのこの山」など主力のチョコレート製品に開発やマーケティングなどの経営資源を集中させ、新商品の品目を2割減らした。

 この結果、15年3月期の売上高営業利益率は4.4%と統合直前の09年3月期の2.2%(前身2社の単純合算)から大きく向上した。この間、売上高が小幅増にとどまるなかで営業利益はほぼ倍増し、時価総額は約1兆2000億円と5倍近くに跳ね上がった。

 当初は「相乗効果はあるのか」と冷ややかな見方もあった統合だが、競争と協調の両面で好影響を広げている。

 高付加価値製品の重点化では「R―1」など機能性ヨーグルトを伸ばす乳製品部門が先行した。出遅れた菓子部門に「負けていられない」と対抗心が芽生え、商品開発や営業で利幅への意識が浸透。これが選択と集中の加速につながった。

 協調の面では、昨夏の愛知新工場内の冷蔵・常温両用の物流施設の稼働などコスト削減のほか、海外攻略でブランドの相乗効果が生まれている。

 「知ってますよ、チョコレートの明治ですね」。中国・上海市のスーパーに牛乳の商談に出向いた担当者は現地の取引先にこう話しかけられた。

 13年末に現地生産を始めたばかりの牛乳やヨーグルトは中国では新参者だが、先行した旧製菓のチョコなどを通じて「明治」は浸透済み。「明治ブランド一丸となって攻める」(中国事業推進部の五十嵐英二部長)素地はできている。中国では15年にアイスクリームの完全自社生産を始め、欧州や現地メーカーからのシェア奪取を狙う。

 5月に発表した中期経営計画の18年3月期の売上高見通しは前期実績比9%増の1兆2600億円。食品の海外売上高を6割増と大きく伸ばすのを織り込んでおり、規模を生かしたブランド展開は欠かせない。

医薬事業に期待

 もう一つの成長のけん引役が医薬品事業だ。感染症や精神疾患関連など強みを持つ新薬や後発医薬品を伸ばすとともに、「好機を常に探っている」(松尾正彦社長)というM&A(合併・買収)戦略がカギを握る。

 昨年にはインドの中堅後発医薬品のメドライクを欧米勢に競り勝って約300億円で傘下に収めた。医薬品畑出身の松尾社長は「旧製菓の一部門だった時代では考えられない規模の買収」と話す。業績拡大で財務体質が改善し、M&Aの余力は高まっている。

 選択と集中を軸とした食品2事業の改善余地もなお大きい。中計で目標とした売上高営業利益率5%は、13~15%のスイス・ネスレや仏ダノンなど海外勢やカルビーなどと比べて低い。市場の評価を高めるにはライバル並みの利益率2桁の達成の道筋を示す必要がありそうだ。

(成瀬美和)



2015/03/06 本日の日本経済新聞より「会社研究 富士フイルム 技術融合、新たな「像」結ぶか」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「富士フイルム 技術融合、新たな「像」結ぶか」です。





 写真フィルム市場収縮の危機を克服すべく富士フイルムホールディングスが進めてきた構造改革が、最終段階に入る。合理化にメドをつけ、医療分野などで一定の成果が出始めた。次は、お家芸の光学や画像からハイテク素材、医療まで幅広い技術を融合し、将来の「飯の種」を一刻も早く探り当てることだ。

技術の融合で未来のヒット商品創出を目指す(東京都港区の本社にあるOIH)

本社に「実験場」

 「20歳の肌をいつまでも保てる化粧水」「データを永遠に保存できる磁気テープ」。東京・六本木にある本社の一角。2014年1月に開設した「オープンイノベーションハブ」(OIH)では、一見、夢物語にも思える商品づくりが真剣に議論されている。

 約500平方メートルの館内には、映像、印刷や高機能フィルム、化粧品、再生医療など独自技術がずらりと並ぶ。これまで国内外の企業や大学、官公庁などから約2000人が訪れ、富士フイルムの開発部門や営業部門担当者らと知恵を出し合う。

 極秘で進めるプロジェクトの中には、近く成果が出そうなものもある。例えば、高い遮熱性能と太陽光の反射を抑える機能を持つ素材で自動車や家を包み込めば、内部の快適性が高まる。OIHは今までにない「クルマ×富士フイルム」「家×富士フイルム」で新しい市場を作り出す実験場。10年以上に及ぶ構造改革の仕上げの舞台だ。

 フィルムカメラからデジカメへの変化に直面した同社の「会社まるごと作り替え」は、00年代前半に始まった。事務機の富士ゼロックスを連結子会社化し、写真フィルム・カメラ部門で5000人を削減。その後は米診断機器ソノサイトの買収など医療分野を中心に積極的なM&A(合併・買収)を進めてきた。

 15年3月期の予想営業利益は1700億円で、01年3月期(1497億円)からの上積みは多くないが、中身は様変わりしている。

 かつて年間500億円以上の利益を出していたイメージング部門(カメラなど)は05年3月期から13年3月期まで赤字が続き、前期ようやく35億円の黒字に浮上した。今は事務機部門が1000億円弱、超音波診断装置や医薬品、液晶パネル材料といったインフォメーション部門が700億円強を稼ぐ。

 特に事務機は毎年1000億円以上の営業キャッシュフロー(現金収支)を生み、主力事業が低迷する時期を資金面で支えてきた。「00年以降で、研究開発と設備投資にそれぞれ約2兆円、M&Aに約7000億円を投じた」(古森重隆会長兼最高経営責任者)一方で60%前後の自己資本比率を維持し、財務の強さを見せつけた。

ROE7%目標

 必要に応じて身の丈を縮ませる「断捨離」を経て、M&Aなどで手駒を増やし、再成長に向けた準備は整った。今期からの3年間で2000億円強の株主配分を打ち出し、自己資本利益率(ROE)を7%に高める目標を掲げたのも、先行きの自信の表れといえる。

 株価は4000円台を回復し、08年6月以来の高値圏で推移する。ただ「売上高の伸びが小さく、コスト削減中心の利益改善に見える」(国内証券)ため、17倍台で市場平均並みのPER(株価収益率)は切り上がりにくいとの指摘もある。

 今期の予想売上高2兆4800億円はピークのまだ9割弱。アナリスト予想では、16年3月期の売上高と1株利益は3%増にとどまる。上場企業全体が来期2ケタ増益との見方が出ている中で物足りなさは否めない。

 みずほ投信投資顧問の蛭川修一氏は「単なるコングロマリット(複合企業)では成長につながらない。時間をかけて核となる商品を2つ3つ育てるべきだ」と言う。改革後の会社の姿がくっきり像を結ぶような、例えば「映す・写るでは何でも世界一」の技術や商品。成長期待を高めるには、そんなブレークスルーが不可欠だ。

(稲葉俊亮)



2015/01/10 本日の日本経済新聞より「経営者が選ぶ注目企業(5)アサヒグループHD 集中戦略が生む好循環」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「経営者が選ぶ注目企業(5)アサヒグループHD 集中戦略が生む好循環」です。





 アサヒグループホールディングスが時ならぬ増産対応を急いでいる。対象はビールではなくウイスキー。傘下のニッカウヰスキーの「竹鶴」が、NHKの連続テレビ小説「マッサン」人気で瓶詰めが間に合わない品薄状態になっているのだ。

子会社のニッカウヰスキーがドラマで注目を浴びウイスキー販売も好調だ(北海道の余市蒸留所)

 それ以外でも2014年はアサヒにとって実りの一年だった。14年12月期は4期連続で営業最高益を更新したもよう。株価は先駆けて上昇。1月に時価総額でキリンホールディングスを逆転、6月には上場来高値を塗り替えた。

高評価の収益力

 高い収益力と手厚い株主還元の両輪がかみ合い、市場の高評価につながっている。

 まず収益力。ビールが中心の国内酒類の売上高営業利益率は前期推定で12%と、キリンHD(6%)やサッポロホールディングス(3%)を上回る。それだけではない。野村証券の藤原悟史氏は「世界のビール大手と比較しても収益力は遜色ない」という。酒税の影響を除いて営業利益率を計算し直すと、アサヒは約20%。単純比較はできないが、ビール世界3位のハイネケン(オランダ、13年12月期で13%)などを上回る水準にある。

 事業自体を取り巻く環境は決して明るくない。発泡酒などを含めても国内ビール類市場は14年まで10年連続の前年割れ。昨年は消費増税の逆風もあった。アサヒは売上高、営業利益ともに大半を国内市場に依存する。

 「価値の多極化に対応すること」。泉谷直木社長は縮む市場で稼ぐ秘訣をこう表現する。好例が昨年2月に本格発売した高級ビール「ドライプレミアム」だ。350ミリリットル缶で255円前後と通常商品より30円程度高いが、シニア層を中心に増税後も高くても良いモノを求める動きは強まるとの読みが当たった。

 ドライプレミアムのヒットは利益率押し上げにつながる。高単価というだけでなく、効果が大きいのが年間1億ケース超(1ケースは大瓶20本換算)を売り上げる日本一のブランド「スーパードライ」の派生品という点だ。販促効果が高まる主力品への集中こそが高い収益力を生んでいる。

 ビールに加え、発泡酒、第三のビールでも1番手集中戦略は鮮明。主力3品の販売数量合計はビール類全体の90%に達する。4年前から5ポイント上昇し、ブランド数が相対的に多いキリンHDと比べると約9ポイントも高い。

 主力品特化で生まれるのがコスト削減余地だ。スーパードライは北から南まで8工場全てで生産する。単品を大量につくって生産効率を上げ、消費地に近く物流費も圧縮できる。今期までの3カ年中期経営計画で300億円のコスト削減目標を掲げたが、前期に1年前倒しで達成したようだ。

 浮いた資金を広告・販促費に回し、営業攻勢をかけ、シェアをとる――。数値を追うとそんな好循環が見てとれる。

 市場の高評価を支えるもう一つの柱が手厚い株主配分だ。中計では純利益の半分を毎年株主に返すと宣言した。実際前期までの2年間で合計800億円の自社株買いを実施、配当額も5割以上増やした。前期は目標を大幅に上回りほぼ「100%配分」となる見込み。

海外展開加速を

 次の課題が海外展開の加速であるのは明白。海外事業の売上高は2000億円程度しかなく、赤字が続く。時価総額は1兆7500億円まで増加したが、ハイネケンの5兆円弱、首位アンハイザー・ブッシュ・インベブは20兆円と世界大手の背中は遠い。大型M&A(合併・買収)による現状打破を、投資家は待ち望んでいる。

(伊藤正倫)



2015/01/09 本日の日本経済新聞より「会社研究 経営者が選ぶ注目企業(4)ダイキン工業 高機能空調、中国で稼ぐ」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「経営者が選ぶ注目企業(4)ダイキン工業 高機能空調、中国で稼ぐ」です。





 積極的なM&A(合併・買収)で成長力を高めてきたダイキン工業。だが、本当の強みは高機能商品を武器に、アジア・北米で地道に販売網を作り上げたことにある。

販路増強も中国での成長を促す(中国の量販店)

「空前の収益」

 「中国は史上空前の収益をあげている」。井上礼之会長は胸を張る。特に複数の室内機があっても室外機は1台で済む「住宅用マルチエアコン」が売れ筋だ。「需要はまだまだ伸びる。景気が悪くなれば、他社のシェアを奪うという考え方もある」と十河政則社長も強気だ。

 収益力を支えるのは中国人が経営する現地の販売店だ。住宅用、業務用ともに品ぞろえは競合他社をしのぐ。例えば、住宅用エアコンでは浴室乾燥や厨房の換気ができるタイプから、米アップルのiPhone(アイフォーン)など携帯端末で操作できるタイプまで幅広い。高付加価値品で富裕層中心に人気があるため値崩れしにくい。これが高い採算性を保つ強みにもなっている。

 販売店向けの営業、保守サービス研修などの支援体制も拡充してきた。「ダイキンの商品は売れる」との認識が広がり、中国の販売店数は2014年3月期の約1万4000店から今期は1万7000店に拡大。来期は2万店に達する計画だ。

 中国での空調事業の今期売上高は前期比13%増の3260億円を見込む。同国でエアコンが売れたことで、今期の連結純利益は2年連続で過去最高を更新する見通し。来期も増収増益を確保する公算が大きい。

 地域別売上高で中国は日本や北米に次いで3番目だが、利益率は日米より高く「全体の利益の3割強を中国で稼ぐ」(十河社長)。中国が約2年4カ月ぶりの利下げを決めたことを受け、ダイキンの株価は昨年12月3日に上場来高値の8289円を付けた。株式市場はダイキンを中国関連銘柄と見なすようになった。

 他社より高く売れる商品を多く投入できるのは、研究開発や生産技術の裏付けがあってこそ。「空調事業に経営資源を集中している専業の強み」(高橋孝一取締役)といえる。

 世界最大市場、北米では12年に買収した米空調大手、グッドマン・グローバルの販路を活用する。グッドマンは低価格商品を展開し、住宅用シェアで首位。全米にある約10万の販売店のうち、同社の代理店は6万店に達する。

 ここにダイキンが得意とするインバーター技術を搭載した省エネ型などを投入する。約500億円を投じて新工場を16年に稼働し、生産能力も増強する。北米で主流の製品と設備方式が異なるため、販売店や据え付け業者向けの教育が必要になる。すでに14年夏から研修を始めており、今後ダイキン商品の販路として機能させる考えだ。

財務改善が課題

 ダイキンは早くから海外進出し、M&Aで急加速した。総売上高に占める海外の比率はこの10年間で4割から7割超まで上がった。北米、中国の空調事業の売上高は国内に迫り、3市場で稼ぐ体制ができあがった。十河社長は「高付加価値品と強固な販売網で収益を上げるビジネスモデルを次はアジアなど新興国で作りたい」と語る。

 一方、グッドマン買収で有利子負債比率は13年3月期末に40.7%まで上昇した。前期末には34.5%まで下がったが、それでもグッドマン買収前より高く、支払利息は年間100億円程度にのぼる。「16年3月期までに比率を30%前後に引き下げる」(高橋取締役)方針だ。成長投資を支えるための盤石な財務基盤作りが今後の課題になりそうだ。

(早川麗)



2015/01/08 本日の日本経済新聞より「会社研究 経営者が選ぶ注目企業(3)トヨタ自動車 営業益3兆円へ国内けん引」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「経営者が選ぶ注目企業(3)トヨタ自動車 営業益3兆円へ国内けん引」です。

今、なぜトヨタが強いのか、評価・注目されているのかを明らかにした秀逸な記事です。





 トヨタ自動車の完全復活が鮮明だ。金融危機後の構造改革に円安の追い風も加わり、2015年3月期は2期連続で営業最高益(米国会計基準)の見通しで、来期の3兆円乗せを視野に入れた。原動力は国内工場の体質改善。円高下では業績悪化に苦しんだが、今や世界で最も稼げる工場に変身、復活をけん引した。

国内工場の生産性改善が最高益の原動力になっている(トヨタ自動車九州の宮田工場)

 「もはや(トヨタの)収益性は業界トップレベル」。自動車生産を統括する須藤誠一副社長は最近、こう語り始めた。慎重なトヨタとしては珍しい強気発言の背景には、懸案の国内生産改革にめどがたったことがある。

7割稼働で黒字

 削る経営。09年に初の営業赤字に転落してからのトヨタを一言でいうとこうだ。工場新設は一切停止、採用も減らし研究開発費も大幅に削減。危機前に「水ぶくれ」していた固定費構造を徹底的に軽くして、円高や販売減に直面しても利益が出せる体質になる狙いだ。

 その矢面に立ったのがお膝元の国内工場だ。設備小型化などで製造ラインの競争力を高める一方、部品メーカーなどグループをあげてコスト削減に集中的に取り組んだ。

 効果は数字になって表れた。工場が利益を出すのに必要な損益分岐点稼働率。かつて80%を切ると赤字だった。それが今は70%台でも利益を稼ぎ出す。国内工場は利幅の厚い生産車種も多く、「1ドル=100円なら世界一採算の良い拠点に転換した」(幹部)。

 この結果、前期の国内部門の営業利益は1兆5100億円と危機前の最高益だった08年3月期より700億円増えた。当時は国内生産が426万台、1ドル=114円だ。当時より生産台数が100万台近く減り、14円の円高にもかかわらず増益になったのは「真水」の収益力がそれだけ高まったことを表す。

 豊田章男社長は円高時にも「国内生産300万台体制」の死守を掲げた。取引先も含めた雇用を守り、技術優位性を保つためだが、市場では「円高に弱く、高コスト」との指摘もあった。国内の収益性を高めることで、こうした批判を力でねじ伏せてみせた格好だ。

 海外勢と比べても稼ぐ力は高い。13年度の1台あたり純利益をみるとトヨタは18万円で、高級車中心の独BMW(40万円)には及ばないが、ライバルの独フォルクスワーゲン(VW、13万7000円)を大きく引き離す。

円安で上振れも

 こうした強固な収益体質を背景に来期は一段と収益が上向きそうだ。今期の会社予想は営業利益で2兆5千億円。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「来期は営業利益3兆円」とみる。想定レートを今期1ドル=108円、来期113円として円安効果が約2千億円、販売増やコスト削減効果も織り込む。足元の円安で、さらに上振れする可能性がある。

 課題は「増える経営」へのモードチェンジにどう対応するか。国内企業の代表格として来年以降も賃上げや下請け企業への配慮を求められる立場だ。従業員、取引先、株主といった幅広い利害関係者に目配りするのがトヨタ式。削る経営で減らしてきたコストは再び膨らむ可能性がある。

 さらに世界全体で車造りの競争力を上げる生産改革「TNGA」の投資が来期から本格化する。新興国開拓で先行し、すでに回収期に入ったVWとの収益格差が縮まるのも避けられない。成長のための投資と高い収益力の両立。この課題にどう対応できるかが持続成長のカギを握る。

(二瓶悟)



2015/01/07 本日の日本経済新聞より「会社研究 経営者が選ぶ注目企業(2) 東レ 炭素繊維、最高益をけん引」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「経営者が選ぶ注目企業(2) 東レ 炭素繊維、最高益をけん引」です。





 米ワシントン州シアトルから北へ40キロ。人口10万人の町、エバレットで10億ドル(約1200億円)以上を投ずる大型工場の建設が始まった。ボーイングの「777X」主翼製造工場だ。主翼に使う素材、炭素繊維を供給するのが東レだ。「東レは非常に重要な役割を果たしている」(ボーイングのジョン・トレーシー最高技術責任者)

ボーイングからの大型受注で成長確度が高まった(東レの日覚社長(左)とボーイングのトレーシー最高技術責任者)

 昨年11月、東レはボーイングと今後10年、総額1兆円以上の供給契約を結んだ。足元の炭素繊維事業の利益率で単純計算すれば1500億円超の利益を生む。日覚昭広社長は「需要拡大地域で生産を増やす」と、米サウスカロライナ州に千億円を投じて炭素繊維の新工場を建設する計画も明らかにした。

「空」と「陸」攻略

 東レが成長力を取り戻そうとしている。2015年3月期は純利益で3年ぶりの最高益を見込む。この数年は電子部材の価格下落などで利益が伸び悩んだが、炭素繊維の急拡大が全体の利益水準を押し上げる。

 炭素繊維事業は営業利益(今期見込み)では260億円と全体の2割程度だ。絶対額では繊維、情報に次ぐ3番目の柱だが増益額はトップ。営業利益率も繊維の6%、情報の10%に対して約16%。「稼ぐ力」も際立つ。

 航空機向け需要が安定しているうえ、のびしろが大きい。自動車への搭載が始まるからだ。日覚社長は「早ければ今年にも欧州で一般車向けに供給を始める。買収したゾルテック社で増産体制も整える」という。21年3月期に炭素繊維の利益700億円を目指すが、目標を上乗せする可能性もある。空と陸の二正面攻略で、来期以降もけん引役となりそうだ。

 14年は日経平均株価が1割弱の上昇にとどまったのに対し、東レは約3割高。市場からは「炭素繊維の拡大で成長企業としての評価が高まってきた」(シティグループ証券の池田篤氏)との評価が聞こえる。

 とはいえ、この1年間の高値は999円80銭と、06年5月に付けた上場来高値(1128円)に届かなかった。06年に約16年ぶりに高値を付けたときも奇しくもボーイングとの長期契約発表が材料視された。今回は何が違うのか――。

 最高益=最高値とならなかった理由をモルガン・スタンレーMUFG証券の渡部貴人氏は「自己資本利益率(ROE)が10%に達しておらず、海外投資家からの評価を得にくい」と話す。現在のROEは前期実績で7.5%と、最高値を付けた07年3月期(10.4%)に及ばない。

ROE向上課題

 ROE向上に欠かせないのが利益率の改善だ。今期見通しで各事業の利益率を見ると、炭素繊維や情報通信は2ケタだが、他の主要事業は1ケタ台にとどまる。米デュポンに代表されるように利益率や成長期待で事業ポートフォリオを変えるのもやり方の一つだ。

 しかし、日覚社長は「ROEのために低収益事業を分離する経営はしない」と言い切る。炭素繊維など高付加価値製品を生み出せたのは、ほかでもない繊維に対する長年の研究開発の蓄積のたまものだからだ。

 となると、自己資本の抑制がカギを握る。前期末の自己資本は8590億円。最高益だった12年3月期は6271億円でROEは10%台だった。内部留保が積み上がり、ROEを押し下げたともいえる。日覚社長は「増益分は配当や設備投資、研究開発に振り向ける」と話す。今期初めて200億円規模の自社株買いを実施したが、市場の要求に応えるには内部留保のさらなる活用が必要になる。

(丸山修一)