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「同盟国、強力な貿易協定を」バノン前首席戦略官に聞く 2017/9/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「「同盟国、強力な貿易協定を」バノン前首席戦略官に聞く」です。





 【香港=粟井康夫】トランプ米大統領の最側近だったスティーブン・バノン前首席戦略官・上級顧問は訪問中の香港で日本経済新聞の取材に応じ、日本との2国間の自由貿易協定(FTA)交渉が重要との認識を示した。同氏はトランプ支持層の思想を代表する論客。米国の政策に影響をおよぼす可能性がある。

 ――対中貿易赤字をはじめ不均衡の是正が必要だと主張してきました。

 「私は決して反中派ではなく、中国に深い敬意を抱いている。だが米中の貿易関係は均衡を取り戻さなければならない。中国による過剰供給の輸出は米国の政治も動かしている。過去10年で3.5兆ドル(約385兆円)に当たる技術移転も強制された。経済戦争を続けるわけにはいかない」

 「中国企業による技術取得を狙った米企業の買収も懸念している。トランプ大統領は(知的財産権侵害に関し)通商法301条に基づく調査を始めた。過去の政権がしなかった勇気ある行為だ」

 ――環太平洋経済連携協定(TPP)は中国との経済関係を是正する解になりませんか。

 「米国は自らが一加盟国にすぎない多国間協定に入るべきではない。中国にも反中同盟のようなものと解釈されうる。貿易相手国と直接、強力な関係を結びたい」

 「米国の経済ナショナリストが望むのは日本との強力な2国間の貿易交渉だ。条件も明確だし、日本との軍事的な協力関係も絡められる。韓国にも同じ事が言えるし、ベトナムやフィリピンとも2国間で交渉したい」

 ――対日軍事関係の見直しもあり得ますか。

 「そうではない。提案しているのは、軍事的な協力関係にある国との強力な2国間の貿易交渉だ。率直に言えば、私は日本や韓国はコスト負担を増やし、自国防衛により貢献すべきだと考えている。ただこれは私の個人的な信念で、大統領や政権の考えではない」

 ――日本との貿易交渉での議題は何ですか。

 「農業だけでなく自動車、製造業の製品などあらゆる項目を含めるべきだ。米企業による日本の自動車市場への参入にも不安がある。日本と米国は非常に緊密な同盟国であり、その関係を強力な貿易協定でさらに固めるべきときだ。ただ日本側に熱意があるとは言い難い」

 ――北朝鮮問題に関して「軍事的解決はない」と発言しました。

 「米国と中国が2国間で解決策を見つけ出すのを望んでいる。トランプ大統領の11月の訪中がそのスタートになるだろう。地域の二大国が顔を合わせて議論し、解決策を探るのは理にかなう」

 ――北朝鮮情勢が深刻化しても、米韓FTAを再交渉するのですか。

 「米韓FTAは明らかに米国の役に立っていない。北朝鮮との深刻な状況が、交渉の予備協議を止めるとは思わない」

 ――トランプ政権はアジアから手を引きつつあるとの見方もあります。

 「政権発足後8カ月で多くのアジアの指導者の訪米を受け入れた。オバマ前政権の最初の数年より多い。安倍晋三首相が(当選から)数日で飛んできたのが象徴的だ」

 「中国という巨大な貿易相手国との問題を解決する必要があり、緊密な同盟国である日本の上空にはミサイルが飛んだ。大統領は世界のどの地域よりもアジアに関与してきたし、これからもそうするだろう」

 Stephen Bannon 極右的思想を掲げる米ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」会長。昨年の米大統領選でトランプ陣営の選挙参謀として「米国第一主義」のスローガンを前面に打ち出し、勝利に導いた。 新政権では首席戦略官・上級顧問に就任したが、トランプ大統領の娘婿、クシュナー上級顧問らとの対立が激化。8月に解任された。トランプ氏とは解任後も電話で話すなど良好な関係にあるとされる。63歳。



南シナ海での違法操業、拿捕船「爆破処分続ける」インドネシア海洋・水 産相 2017/8/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「南シナ海での違法操業、拿捕船「爆破処分続ける」インドネシア海洋・水産相」です。





 インドネシアのスシ海洋・水産相=写真=は23日、都内で日本経済新聞の取材に応じ、中国漁船による違法操業が相次いでいる南シナ海南端のナトゥナ諸島周辺海域で、今後も違法な外国船を拿捕(だほ)するなど厳しい措置を続ける考えを示した。スシ氏は自国の排他的経済水域(EEZ)内で拿捕した外国船を洋上で爆破して沈める強硬策をとってきた。こうした措置はさらなる違法操業を防ぐうえで「抑止力がある」として、今後も続ける方針という。

 スシ氏によると、同氏が2014年に就任して以来、インドネシアは拿捕した外国船300隻超を沈めて処分した。今後も100隻以上を同様の処分にする予定だ。

 以前は「1万隻の外国船籍がインドネシアのEEZ内で違法操業していた」が、同国の厳しい措置が奏功して違法操業は9割以上減ったという。「やめればすぐに戻ってくる」と今後も強硬策を続ける方針だ。

 漁船の爆破処分は同国の法律に基づく措置だが、前任閣僚らは対外関係に配慮しほとんど実行してこなかった。

 ナトゥナ諸島沖は中国が「中国の伝統的な漁場」と権利を主張。一方、インドネシアは7月、地図を更新して南シナ海南端のEEZを「北ナトゥナ海」と命名した。中国は反発したが、スシ氏は「インドネシア国内での呼称。他国もそう呼ぶならうれしい」と言及。違法操業の取り締まりは「特定の国を標的にはしていない」と主張する一方、「中国船は、フィリピンやタイに比べ大型だ」と指摘した。

 スシ氏は高校中退から閣僚になった異色の人物。ジャワ島南部の海辺の町の出身で、水産仲買人として買い上げた魚を近代的な加工施設で処理して販売、成功した。現在は航空会社も運営する。ジョコ政権で海洋・水産相に就任後、違法操業漁船の爆破などで国内外の注目を集めた。

(国際アジア部 松本史)



台湾蔡政権、脱・国民党路線空回り 大停電、原発見直しに逆風 20 17/8/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「台湾蔡政権、脱・国民党路線空回り 大停電、原発見直しに逆風」です。





 【台北=伊原健作】台湾で蔡英文政権への逆風が強まっている。雇用や年金の改革など看板政策に企業や高齢者が強く反発し、15日に起きた大規模停電により目玉に掲げる「脱原発」路線にも批判が強まる。前任の国民党政権との違いを打ち出して労働者層にアピールする戦略だが、足元では空回りが鮮明だ。

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 「電力不足は明らかだ。一体どうするつもりなのか」。21日午前、蔡氏の最側近として政策実行を担う林全・行政院長(首相)は、立法院(国会)で野党議員の集中砲火を浴びた。

 民主進歩党(民進党)の蔡政権は2025年の脱原発を掲げ、6基ある原発の稼働を3基に抑えている。全世帯の半数に影響が出た15日の停電は、代替電力を供給するはずの火力発電所の稼働が遅れ、電力不足への懸念が高まるなかで発生した。原因は人為的なミスだったが、批判の矛先は蔡政権に向かう。

 民放のTVBSの6月の調査では、蔡氏の支持率は21%と就任以来最低に落ち込んだ。不支持は3倍の63%に達する。「停電が支持率に一段のマイナス影響をもたらす」(台湾師範大学の范世平教授)との声が多い。

 蔡政権は8年ぶりに国民党から政権を奪回し、昨年5月に発足した。企業や公務員などに依存した国民党政治からの脱却を掲げて改革を急ぐが、これらの政策はいずれも空回りが鮮明だ。

 目玉の一つである労働者保護を強める雇用制度改革は、肝心の企業従業員からも不満の声があがる。昨年末に労働基準法を改正し、時間外手当を従来の2倍以上に引き上げた。休日出勤や残業を減らす目的だが、残業の抑制により手取りが減るなどの弊害も目立つ。

 軍人や公務員などを過度に優遇する年金制度の改革にも着手したが、受給者の猛反発を招いた。19日に台北で開かれたユニバーシアード夏季大会の開会式では、改革反対派が選手入場口付近まで侵入。約30分間選手が入場できないトラブルが発生した。

 蔡政権の一丁目一番地である「脱・中国依存」も思うように進んでいない。東南アジアとの関係を深める「新南向政策」を打ち出したが、ビザの簡略化による観光増以外の具体的な成果は乏しい。輸出に占める中国依存度は約4割に高止まりしたままだ。

 中国による圧力の影響を懸念する市民も多い。蔡政権は民進党が掲げる「台湾独立」志向を封印し、中国に対話を呼びかけた。だが中国は台湾を国と認めて外交関係を持つ国への圧力を強め、6月にはパナマが台湾と断交して中国と国交を樹立した。

 支持率低下に歯止めをかけられなければ、蔡英文総統の民進党内での求心力低下は必至だ。学者出身の蔡氏は同党内の派閥と距離を置く。野党の攻撃に加え、民進党内からも批判が高まる可能性もある。



中国「1兆円支援」でブータン接近 インドと国境対峙 2017/8/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「中国「1兆円支援」でブータン接近 インドと国境対峙 」です。





 【ニューデリー=黒沼勇史】ヒマラヤ山脈でインド軍と2カ月対峙する中国が、第三の当事国ブータンを自陣営に引き込もうと外交攻勢をかけている。中国は100億ドル(約1兆900億円)に上る経済支援をブータンに提示したとみられ、インドと共闘してきたブータンの対中姿勢は軟化する。中印は相手軍の越境を非難し合うが、ブータンを取り込めば国際社会に正当性を訴えやすくなるだけに綱引きが激しさを増している。

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チベットで演習する中国人民解放軍。中印関係は緊張している=AP

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 「インド軍の侵入場所はブータン領ではないと、ブータンが明確に伝えてきた」。中国の外交官は今月上旬、インド人記者団にこう主張した。

 “侵入場所”とは、ブータンと中国が領有権を争うドクラム地方ドラム高原で、インド陸軍と中国人民解放軍が6月から対峙する。この外交官発言が事実なら、ブータンとインドの対中共闘関係のほころびを意味する。

 ブータン政府関係者はインドメディアに即座に否定したが、インド側は疑心暗鬼に陥る。インド政府筋は今月上旬、日本経済新聞の取材に「100億ドルの投融資を中国が提案し、ブータンが中国になびき始めたとの情報を入手した」と明らかにした。100億ドルは低利融資、無償援助、直接投資のパッケージという。

 インド側も巻き返しに動く。スワラジ印外相は11日、地域経済連携の会合で訪れたネパールでブータンのドルジ外相と会談。中国に「だまされないように」とクギを刺し関係維持を迫った。

 だがドルジ氏は会談後「ドクラム情勢の平和的、友好的な解決を望む」と述べ、中国を刺激する発言は控えた。ブータン外務省は6月、中国軍の「ブータン領内での道路建設は(現状維持を決めた中国とブータンの)合意に反する」と中国を非難していたがトーンダウン。中国共産党系の環球時報は社説でドルジ発言に触れ「ブータンが中立を保ちたいのは明らか」とインドをけん制した。

 中国がブータンに接近するのは、自国の正当性を確保するためだ。インドは長年防衛協力するブータンによる「自国領内で道路建設された」という主張を根拠に、自軍をドラムに動かした。ブータンがドラムにおける領有権の主張を撤回すれば、インド軍は進軍の正当性を失い、中国領に侵犯した結果だけが残る。

 インド政府関係者によると、中印は7月、「両軍は同時・段階的に兵力を減らし、降雪期の9~10月か年末までに完全撤収する」と非公式に合意した。2期目入りをめざす中国の習近平国家主席も、モディ印首相も、自国民からの弱腰批判は避けたく「自軍が先に引いたと見なされない合意」(関係者)を交わした。

 だがカシミール地方で中印両軍が投石し合うなどいまだ緊張は解けていない。インド政府筋によると、ドクラム地方で直接対峙するインド軍は約320人、中国軍は500人弱と当初より減ったが、ブータンとの国境にはインドが1万2千人、中国が1万6千人集結する。戦闘になれば小競り合いでは済まないとの見方が強まっている。

 ▼中印両軍の対峙 中国とブータンが領有権を争うドクラム地方ドラム高原で中国人民解放軍が道路建設しているのを6月16日、ブータンが確認し、隣接するインド北東部シッキム州からインド軍も制止に乗り出し中印対峙が始まった。

 中国はインド軍の越境を非難し、インドは3カ国の国境が接する同地方での中国による現状変更を批判する。インド北部カシミール州や同北東部アルナチャルプラデシュ州に人民解放軍が越境し両軍が短期間にらみ合うことはあったが、対峙が長期に及ぶのは珍しい。



北朝鮮「中国全域射程に」 ミサイルで幹部が極秘話 北京上 空映像を公開 2017/8/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「北朝鮮「中国全域射程に」 ミサイルで幹部が極秘話 北京上空映像を公開」です。





 「弾道ミサイルは中国全域を射程に収めた」。北朝鮮幹部が内部で口にした極秘話が国境をまたぎ中国側に流れている。グアムを狙うミサイル発射の有無に世界が注目するが、実は「全中国が北朝鮮の核ミサイルの照準内」との事実も今の緊張を読み解くには重要だ。

5月21日に発射した弾道ミサイルに搭載したカメラの映像(北朝鮮の朝鮮中央テレビより)

 北朝鮮の意図がにじむ映像が公表された。5月21日、金正恩(キム・ジョンウン)委員長も立ち会う中、内陸部から中距離弾道ミサイル「北極星2」を発射した。ミサイル搭載のカメラは地上から遠ざかる様子を撮影。翌日、国営放送が公開した。

 軍事専門家の分析では、中国領内の地形を延々と映している。ミサイルは東の日本海に落ちたのに映像は西側だ。

 「中国の遼東半島が見える。西は渤海。南は黄海だ。渤海の西には北京が見えるはずだが、分厚い雲が邪魔した。映像は最後のアングルを北京上空に移し照準を定めた」

 中国領の映像公開に関しては「北京も標的にできると映像で意図を伝えた。金正恩は習近平(国家主席)を脅している」。米本土を狙うのは至難だが、北京は容易だ。

 とはいえ北朝鮮は経済的には中国頼みが明らか。石油だけではない。市場にあふれる中国製品なしに生活は成り立たない。「金正恩は中国の“半植民地”になるのを避ける手段が核兵器だと考えている。ミサイルと合わせれば経済的にかなわぬ中国と対等に話せる」。別の中朝関係者の見方だ。

 米国との国交樹立も中国依存を脱する手段だ。それは中国自身が歩んだ道でもある。1964年、中国は原爆実験に成功。67年に水爆実験、70年には弾道ミサイルで人工衛星を打ち上げた。結果は72年のニクソン訪中による国交正常化だった。

 中朝関係がこじれた要因は中国の内政にもある。中国とのパイプ役だった正恩氏の叔父、張成沢氏は2012年8月17日、北京で当時の中国トップ、胡錦濤氏と会談。複数の関係筋によると、そこで張氏から重大な提案があった。

 正恩を排し、兄の正男を中国の後ろ盾で擁立したい――。胡氏は決断できず「最高指導部会議に諮る」と伝えた。これが張氏と正男氏の運命を決めた。

 最高指導部メンバーの周永康氏は金正日時代から正恩氏と気脈を通じていた。張氏の動きを盗聴で察知し、ひそかに正恩氏側に通報した。内政の闘いに利用する思惑もあった。連絡役は後に習近平政権が摘発した国家安全省幹部の馬建氏だという。激怒した正恩氏は13年末、張氏を死刑に。今年2月、マレーシアで正男氏が殺されたのも延長線上にある。

 一方、権力闘争に敗れた周氏も汚職が理由で無期懲役に。だが罪状には国家機密漏洩も含まれる。盗聴で得た情報を正恩氏側に漏らした罪だ。

 中国のいら立ちがにじむ論評が今月11日の環球時報に載った。ポイントは2つある。(1)北朝鮮が米領を威嚇するミサイルを撃ち報復を招けば中国は中立を保つ(2)米韓同盟が軍事攻撃で朝鮮半島の支配の現状を変えるなら中国は断固阻止する。

 (1)は中朝友好協力相互援助条約にある「自動参戦条項」の不履行宣言だ。北朝鮮が攻撃されても軍事援助しない。一方、(2)では武力行使を排除しない。朝鮮戦争では米韓軍が中朝国境に迫ると、中国の人民志願軍が鴨緑江を越えた。今回も米軍が北朝鮮に踏み込めば中国軍も進入するだろう。

 北朝鮮の反撃で深刻な代価を払うだけに米国は簡単に攻撃に踏み切れない。米中朝のチキンレースは続く。

(編集委員 中沢克二)



〈止まるか挑発北朝鮮情勢を聞く〉米、ICBM凍結で取引も 韓 国外国語大学碩座教授尹徳敏氏 2017/8/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「〈止まるか挑発北朝鮮情勢を聞く〉米、ICBM凍結で取引も 韓国外国語大学碩座教授尹徳敏氏」です。





 ――2度にわたり大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮の核能力をどう見ますか。

 「常にわれわれは過小評価する傾向がある。北朝鮮は核兵器を生存のための防御用と判断しているが、祖父の代から50年以上、一貫して核ミサイルに投資し、100万単位の餓死者が出る中でも投資をやめなかった。核兵器は1940年代、ICBMは60年代にそれぞれ確立された技術だ。長期間、国家的に資源を投資している北朝鮮にとって難しいハードルではない」

中ロの履行疑問

 ――脅威のレベルは。

 「北朝鮮が(中距離の)ノドンミサイルを開発した90年代後半に韓国と日本はすでに射程圏に入っていた。5度の核実験を実施した北朝鮮が核を小型化できない方がおかしい。グアムまでも核の射程圏に入って、もはや残されたのは米本土まで攻撃できるICBMの開発だけだ」

 ――国連安全保障理事会の追加制裁決議は北朝鮮の変化を促す効果があるでしょうか。

 「加盟国が履行しなければ何の意味もないのに最も重要な中国とロシアが信頼できるかは疑問だ。中国は北朝鮮が挑発しなければいいと考えている。米国との関係が悪化するからだが、核については北朝鮮が持とうが作ろうが、大きな優先課題ではないようだ。唯一の社会主義の兄弟国である北朝鮮の崩壊を望んでいない。強力な民主主義国家の米国の同盟国である韓国と国境を向き合うのを嫌がっている」

 ――北朝鮮の次の一手をどう見ますか。

 「いまは既成事実化する段階で、自分にできる能力はすべてを見せようとするだろう。これまでも自分のスケジュールに沿って着実に実施してきた。6回目の核実験の可能性はいくらでもある」

韓国、対話は限界

 ――米政権が軍事行動に出る可能性は。

 「2つのケースがある。トランプ大統領は中国の協力を通じて問題を解決するという枠組みの中にまだいるようだが、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が引き続きICBMを開発し配備すれば、軍事オプションのほかに解決方法がないという状況まで行くこともあり得る。その場合、北朝鮮は韓国と日本に多大な被害を与えられるが、米国を滅ぼすことはできず、自分の政権が滅びる」

 「(もう一つは)北朝鮮が『ICBMを放棄できる』と話し、(開発を)凍結する一方で『我々の核能力をそのまま黙認してほしい、米国とは戦略的関係で平和協定を締結しよう』という取引を提案するシグナルを送れば、トランプ政権が交渉を開始する可能性がある。その可能性が70%あるとみている」

 ――韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮との対話も進めるべきだと主張しています。

 「2007年10月の南北首脳会談の延長線で再び太陽政策をしようとする意識が強かったが、ここ10年間の変化がわからなかったのだ。北朝鮮は今やそんな段階ではない。米国に最後の勝負をかけている」

 「北朝鮮は外交上手だ。弱点にうまくつけ込む。(日米韓中ロ)5カ国が確実に対処すれば北朝鮮を動かせる。核に固執すると大きな戦略的費用になり、政権に脅威となるというレベルの圧迫や制裁を5カ国が同時に作らなければならない」

(聞き手はソウル支局長 峯岸博)

=随時掲載

 ユン・ドクミン 最近2代の保守政権で大統領に外交・安保政策を助言。5月まで外交官を養成する国立外交院の院長を務めた。57歳



「南シナ海」中国ペース ASEAN以外の干渉排除 2017/8/7 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「「南シナ海」中国ペース ASEAN以外の干渉排除」です。





 【マニラ=鈴木淳、伊原健作】東南アジア諸国連合(ASEAN)や米国、日本、中国などが7日、フィリピンの首都マニラでASEAN地域フォーラム(ARF)など関連会議を開き、領有権を争う南シナ海問題を協議した。日米が中国の進める軍事拠点化に懸念を示したのに対し、中国は域外国の介入をけん制。ASEANと合意した紛争防止の「行動規範」枠組みを盾に、自国のペースで事を運んだとみられる。

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会議に出席した中国の王毅外相(7日、マニラ)=ロイター

 ARFでは、中国が南シナ海の島々を埋め立て、滑走路などの軍事施設の建設を進めていることについて日米などが懸念を表明。これに対して中国はかねて「当事者ではない国が介入すべきではない」と主張して日米の批判を受け付けず、ARFでも同様の主張を展開したもようだ。

 背景には中国とASEANの関係が昨年と比べて改善していることがある。6日の中国・ASEANの外相会議では、南シナ海の紛争を防ぐ「行動規範」の枠組みを承認した。ASEANは中国との枠組み合意を基本的に評価しており、中国の王毅外相は「中国とASEANとの関係は成熟期を迎えた」と強調した。

 国によって対中姿勢に違いはあったものの、ASEANは従来、中国による南シナ海の環礁の埋め立てや軍事拠点化を「深刻な懸念」などの表現でまとまって批判してきた。今回のARFなど関連会合ではこうした結束は乱れ、5日のASEAN外相会議の共同声明でも「数人の大臣から出された埋め立てへの懸念に留意する」などと弱い表現にとどめた。

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 特に対中姿勢が最も強硬だったフィリピンがドゥテルテ政権誕生後、融和に転じたことでASEAN内で南シナ海問題で中国に団結して立ち向かう機運が崩れている。ASEAN各国は貿易や投資面での中国との関係を深めていることもあり、ベトナムを除けば対中姿勢は強硬ではなくなっているのが実情だ。

 昨年7月には南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶとする中国の主張を否定した仲裁裁判所の判決が出た。ARFの前に開かれた東アジア首脳会議(EAS)の外相会議で判決に言及したのは日本など一部にとどまった。

 こうしたASEANの対応に、王毅氏は「南シナ海情勢を巡る雰囲気は過去とは異なり、積極的な進展がみられる」と誇示した。7日に当初予定していたベトナム外相との会談は直前にいったん中止。中国外交部の関係者は「2人は既に会った」と説明したが、立ち話程度にとどまった可能性がある。王氏は、環礁の埋め立てに懸念を示したのは「1つか2つの国の外相だけだ」と不快感を示していた。

 一方、米国の立場が変化したことも中国が主導権を握りやすい要因となっている。米政権は従来、南シナ海問題で国際法の順守を強く訴えてきた。だが、足元では大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射など軍事的な挑発を続ける北朝鮮の封じ込めに中国の協力が不可欠なことなどから、今年は対中批判のトーンが低下した。

 そもそも米国はトランプ政権誕生後、ASEANにどう関与するのか外交方針がはっきりしていない。オバマ前政権時代に任命していた「ASEAN大使」もトランプ氏の就任後は空席のままだ。東南アジアに積極的に関わる姿勢は今のところ見えず、中国の主張が受け入れられやすい土壌ができている。



緊迫する世界 北朝鮮、次の動きは 2017/8/3 本日の日本経 済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「緊迫する世界 北朝鮮、次の動きは」です。





 北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を相次いで発射し、脅威を強めている。対する米国の姿勢は定まらず、国際社会は打開策を見いだせないまま。緊張が高まるなか、北朝鮮の次の動きに注目が集まる。展望やポイントを識者に聞いた。(総合2面参照)

さらなる挑発行為も

 ――米国の北朝鮮政策は対話路線に向かっているのでしょうか。

南山大教授平岩俊司氏

 「トランプ氏の発言はかなり以前から手詰まり感があった。トランプ氏が軍事的圧力の可能性など激しい発言をする一方、他の幹部が融和的な態度を取るなど政権のちぐはぐさは明白だ。北朝鮮はこの状況をみて、結局、米国は軍事力を行使しないと足元を見ている」

 ――米国の誤算の原因はどこにあるでしょう。

 「北朝鮮を過小評価している。体制の安定度、軍事的技術力、外交的したたかさ、プライドの高さ、すべてに関してだ。ティラーソン氏の『敵ではない』との発言は北朝鮮にとってはまだ不十分だ。米国と対等な立場で対話したい、と条件闘争を進めるだろう。北朝鮮が『まだ踏み込める』と判断すれば、さらなる挑発もありうる」

 ――北朝鮮が米国に求めることは何でしょう。

 「核保有国として認められることだ。もし核放棄で交渉を進めれば、米朝対話の実現も難しい。たとえば核保有を前提に『凍結』ならありえる。ただ、凍結といっても複雑な過程がある」

 「米国内には『先制攻撃すれば北朝鮮は反撃しない』と見る向きもあるが、間違いなく北朝鮮は反撃しよう。そうなれば韓国や日本に駐留する米軍の家族の安全確保は難しく、常識的には考えにくい。ただ、懸案はトランプ氏が外交的な常識に沿って行動する人間ではないことだ」

(聞き手は松本史)

<核手放す可能性低く

 ――北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を相次ぎ打ちました。

早大大学院教授李鍾元氏

 「対米抑止力の確実な獲得という軍事的意図と、抑止力を土台とした米国との直接交渉という政治的意図の両面から、開発を急いでいるのだろう。金正恩(キム・ジョンウン)体制になって核をめぐる戦略的曖昧さは消えた。技術進歩に自信を深め、経済も上向くなか実戦配備に猛進している。核を手放す可能性は将来にわたり極めて低いと考えざるを得ない」

 ――米国の対北朝鮮政策をどうみますか。

 「1日にはティラーソン国務長官が『敵ではない』と対話を呼びかける一方、トランプ大統領が『戦争も辞さない』と述べたとも伝わった。米政権内での足並みの乱れを北朝鮮に突かれている」

 「米が期待する中国からの圧力強化は不発気味で、米中関係はぎくしゃくし始めた。米ロ関係が悪化してきたことも北朝鮮には有利な構図だ。中ロが主張する、北朝鮮の核・ミサイル開発凍結と引き換えに米韓軍事演習も控える『凍結論』は現実的な選択肢だが、政治的には難しい」

 ――7日のASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合に北朝鮮外相が参加する見通しです。

 「緊張緩和の糸口が探られる期待を持ちたいが、北朝鮮の態度軟化は望みにくい。対話に応じる姿勢を示すか不透明だ。むしろ緊張をあおる行動に出ることも考えられ、全く楽観できない」

(聞き手は篠崎健太)



アフリカに延びる「一帯一路」 中国、鉄道整備を加速 2017/8/1 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「アフリカに延びる「一帯一路」 中国、鉄道整備を加速」です。





 中国がアフリカで鉄道整備を加速している。ケニアで首都と港を結ぶ鉄道が開通、エチオピアでは隣国ジブチの港湾を結ぶ鉄道が完成間近だ。物流や経済の活性化に期待がかかる。習近平国家主席が進める中国と欧州を結ぶ独自経済圏をつくる「一帯一路」構想にアフリカも組み込まれている。中国は各地の鉄道計画を資金などで後押しする意向で中国依存が高まるとの懸念の声もある。

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ケニアでは中国の支援で鉄道を建設した(5月30日)=AP

 「ケニアの新たな歴史の始まりだ」。首都ナイロビと貿易港モンバサを結ぶ高速鉄道が5月に開通した際、ケニアのケニヤッタ大統領は海外メディアにこう強調した。

 隣国のエチオピアでも首都アディスアベバとジブチを結ぶ鉄道が間もなく開通する。内陸国エチオピアは輸出港へ大量輸送できる鉄道の整備が課題だった。従来はトラックで3日かかっていた輸送時間は、鉄道で12時間以下と大幅に短縮する。

 西アフリカではナイジェリアの首都アブジャとカドゥナを結ぶ路線が昨年に開通した。沿岸部の商業都市のラゴスへ延伸する計画も進む。

 アフリカ側は経済発展には鉄道や港湾などのインフラが必要だが、多額の資金が必要だ。一方、中国は鉄道や港湾など交易路を整備し、独自の経済圏をつくり影響力を及ぼすことができる。

 米ジョンズ・ホプキンス大学の調査によると、中国の融資の中で輸送インフラが最も多い。鉄道の総工費はケニアで約30億ドル、エチオピアは約40億ドルとみられ、大半は中国の融資だ。中国依存が高まれば、政治や経済面での自由が制約されるとの指摘もある。

(ナカラ・モザンビーク北東部にて、飛田雅則)



中印「一帯一路」巡り摩擦 国境地帯で1カ月にらみ合い 2017/7/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「中印「一帯一路」巡り摩擦 国境地帯で1カ月にらみ合い」です。





 【ニューデリー=黒沼勇史、北京=永井央紀】インド陸軍と中国の人民解放軍が6月半ばから、国境地帯で対峙を続けている。交戦はまだないもようだが、それぞれ相手側の「越境」を非難している。これまでも国境で対立してきた両国だが、対峙が1カ月を超えるのは異例。長引く背景には中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」を巡る対立があり、インド洋での摩擦も激しさを増す。

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「あなたは国境を越えた、引き返してください」と書いた横断幕を掲げる中国人民解放軍の兵士=AP

 インド側の説明によると、両国の軍隊が対峙するのはインドが防衛協力するブータンの西部のドクラム高原。領有権争いは未決着だが、1990年代までのブータン・中国間の合意文書で現状維持を確認した区域だ。一方、中国側はインド軍が中印境界を越えて中国領に入ったと主張する。

 インド関係者によると、インド軍はブータン国内に1千~1500人が駐屯し、隣接するインド北東部に1万2千人以上を配備。一方、人民解放軍については、ドクラム高原内外で5千人前後と推定するものの、中国領内で控える後方支援部隊の規模は不明という。

 ブータン外務省によると、今回の摩擦は「6月16日に中国陸軍がドクラム地区で自動車走行が可能な道路建設を始めた」ことがきっかけ。インド外務省も「一方的に3カ国国境を決めるいかなる取り組みも(2012年の中印)合意に対する違反だ」と非難した。

 これに対し中国外務省の報道官は記者会見で写真をかざして反論。「インドはブータン保護を隠れみのにして境界を越えた」とも強調し、一歩も引かない構えを見せた。

 中国軍の道路建設は止まったもようだが、にらみ合いは4週間以上続く。インド陸軍が人民解放軍から120メートルの距離に設営したとの情報もあり、小規模な戦闘は一触即発との見方も強まる。

 中国がドクラム高原を支配すると、インドはミャンマーとバングラデシュに挟まれた北東部7州と本土を結ぶ陸路を遮断されるリスクが高まる。

 中国がインドへの反発を強めるきっかけとなったのは、習近平国家主席肝煎りの構想「一帯一路」に関する5月の国際会議だ。インドがパキスタンと領有権を争うカシミール地方が、同構想の関連事業の対象地になっていることに反発したインドは代表団の派遣を拒否。習氏の顔に泥を塗られた中国は反発した。

 人民解放軍はこれまでもカシミール地方などインド領に侵入し道路建設の構えを見せた。だが、昨年まで駐中インド大使だったアショク・カンタ氏は取材に対し、中国側が「インド軍の撤退が対話の前提条件」として外交解決の糸口さえ与えない点で「従来と全く異なる」と指摘する。「人工島に滑走路を設け実効支配の既成事実を作る、南シナ海での動きと極めて似ている」とも語る。

 ▼中国とインドの関係 中国の人民解放軍が1951年、チベット・ラサに進駐し59年の「チベット動乱」を武力で鎮圧するとインドと中国の国境を巡る緊張関係が高まった。後にノーベル平和賞を受賞するダライ・ラマ14世はインドに亡命政府を樹立している。米ソのキューバ危機が起きた62年には中印国境紛争が勃発。インドはカシミール地方などで支配地の一部を失っている。

 領土や安全保障を巡る摩擦が続く一方、経済の交流は活発になってきた。最近は中国の携帯電話メーカーのインド進出や自動車大手によるインド生産の発表が相次ぐ。中国企業はインド市場を有望視し、インド側も製造業の強化や雇用の創出につながると期待する。