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中国、インドに急接近対米けん制へ首脳会談 2018/4/24 本日の日 本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「中国、インドに急接近対米けん制へ首脳会談」です。





 【北京=高橋哲史、ニューデリー=黒沼勇史】中国がインドに急接近している。習近平(シー・ジンピン)国家主席は27~28日に湖北省の武漢にインドのモディ首相を招き、非公式の首脳会談を開く。米国との貿易摩擦が激しくなるなかで、領土や中国の巨大経済圏構想「一帯一路」をめぐって対立してきたインドとの関係改善を急ぐねらいが透ける。

中国の習主席(右)とインドのモディ首相は緊張緩和を探る(16年10月、インド南部ゴア)=ロイター

 武漢での中印首脳会談は、22日に中国の王毅外相とインドのスワラジ外相が北京で会談し、急きょ決まった。王毅氏は記者会見で「新たなスタートラインから両国関係をより良く、より速く発展させなければならない」と語った。

 中国側が強く働きかけたとみられる今回の首脳会談は異例ずくめだ。モディ首相は昨年9月に、新興5カ国(BRICS)首脳会議に参加するために福建省のアモイを訪れたばかり。しかも、今年6月には山東省の青島で開く上海協力機構(SCO)に出席する。1年足らずの間に中国を3回も訪問することになる。

 習主席が北京でなく、わざわざ地方に出向いて外国首脳を迎えるのも、国際会議を除けばめずらしい。3回連続で訪中するモディ首相に配慮し、少しでもインドに近い武漢に自ら足を運ぶかたちをつくったとみられる。

 1962年に武力衝突し、いまなお国境紛争を抱える中印は常に緊張関係にある。特に中国が一帯一路を打ち出してからは、安全保障上の脅威になりかねないとみたインドが警戒を強めている。昨年5月に中国が世界の首脳らを集めて北京で開いた一帯一路の国際会議に、インドは代表を送らなかった。昨年6月に中国とブータンの国境で中国が道路建設を始めた際は、ブータンの要請を受けたインド軍が出動し、約2カ月半にわたって中印両軍が一触即発の状況で対峙する危機まで起きた。今年2~3月にはモルディブ近海で海軍が一時にらみ合った。

 中国が安全保障の面で対立してきたインドへの接近を急ぐ背景に、貿易戦争を仕掛けるトランプ米政権を揺さぶるねらいがあるのは明らかだ。

 米国との交渉を有利に進めるために、中国は保護主義に反対して自由貿易を守る側のリーダーとして、仲間づくりに余念がない。南アジアの大国であるインドを自陣に引き込めば、米国に対抗するうえで優位な状況をつくれる。

 習氏が3月の憲法改正で2030年代を見据えた長期政権へのレールを敷くなか、インドの側にも習政権との過度な緊張は避けた方が得策との判断がある。ネール大のコンダパリ教授は「今回の首脳会談で大きな合意はなさそうだが、昨年の中国とブータンの国境で起きたような軍事的な緊張関係に陥らない方針で一致するのではないか」と予想する。

 インドが中国との緊張緩和を探っているようすは、国内に約12万人いる亡命チベット人の扱いをみても鮮明だ。インドはチベットを中国の一部と認めず、インド北部にある亡命政府を支援する一方、昨年から亡命チベット人にインドのパスポートを取るよう促し始めた。亡命チベット人にインド人になるよう求めているに等しい。

 モディ首相はかつて国境問題の解決と引き換えに、ダライ・ラマ14世の没後にはチベットからの亡命受け入れを止める方向で習主席と非公式に協議したとされる。パスポートの問題は、モディ首相がその地ならしに動き始めた表れともとれる。

 中国の一帯一路構想はインドがパキスタンと領有権を争うカシミール地方を通過するため、インドには譲りにくい一線だ。ただ「同地方に触れない形での協力について、今回の首脳会談で話し合う可能性はある」(コンダパリ氏)との見方も出ている。



習氏はサプライズに弱い?首脳の表情「情報戦」 分析結果、外交 動かす 2018/4/21 本日の日本経済新聞より

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 外交舞台における首脳の表情は会談で交わされる言葉よりも雄弁に語ることがある。27日に板門店で開かれる南北首脳会談でも、初めて韓国側に足を踏み入れる北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の表情に注目が集まるが、それを映像などで常にフォローし、徹底的に分析する日本や欧米の担当官の存在はあまり知られていない。

トランプ氏は夕食会のサプライズで習氏(左)を出し抜いた(2017年4月)=ロイター

 米国やイスラエルの情報機関で発達した顔や表情の分析作業は業界用語で「フェイシャルプロファイリング」と呼ばれる。米国では米中央情報局(CIA)などの情報機関が主要国の首脳のニュース映像などを収集し、心理学などを専門とする担当官が性格や精神状態を分析。医師出身の担当官は健康状態も推定する。

 分析結果は首脳の外交戦術にも影響を与えている。「極めて慎重な性格で、準備を怠らないのでミスは少ない。しかし、予想を超えるサプライズに弱い」。対中交渉にかかわってきた日米外交筋によると昨年4月の米中首脳会談の前に、こんな習近平(シー・ジンピン)国家主席の顔の分析結果が情報機関からホワイトハウスに報告された。

 その後、トランプ大統領は米南部フロリダ州パームビーチで開いた夕食会でシリアへの空爆を命じたことを習氏に唐突に伝達した。米側の説明によるとケーキを食べていた習氏は驚きのあまりとっさの反応ができないまま「幼い子どもに対してガスを使うような野蛮な相手であれば仕方ない」と攻撃を是認した。これは中国が掲げてきた内政不干渉の主張にそぐわない発言で、トランプ氏に一本取られた格好になった。関係者は「米情報機関にとって大きな得点となった」と振り返る。

 日本でも2010年代に入ってから外務省が中心となって首脳の顔分析に本格的に着手。主要国との首脳会談の前には外部の2~3人の心理学などの専門家に依頼し、表情などに基づく総合的な分析を提出させている。

 世界では治安目的の利用も徐々に広がっている。イスラエルで14年に発足した新興企業「フェイセプション」のソフトウエアは動画や写真に映った顔の特徴を詳細に分析。割り出した性格から公共の安全に脅威になり得る特徴を持った人を識別する。

 こうした技術への依存には「冤罪(えんざい)を招きかねない」との批判もある。とはいえ、ビッグデータや人工知能(AI)によって分析精度が今後向上していくのは間違いないようだ。民間企業でもトップ間の交渉準備のための利用が想定される。

(田中孝幸)



米、技術移転の強制懸念中国の知財侵害「4つの手口」経済損失5兆円規 模か 2018/3/26 本日の日本経済新聞より

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 【ワシントン=鳳山太成】トランプ米政権は中国の知的財産の侵害を巡って制裁措置を発動する方針を決めた。背景にあるのは電気自動車など国際競争が激しい分野で中国に先端技術を奪われたとの懸念だ。外資規制に伴う技術移転の強制や技術を盗むためのサイバー攻撃を特に問題視し、年間500億ドル(約5兆2000億円)の損失を被ったと主張する。

米国はEVなどの先端産業での中国の知財侵害を警戒する(中国のEV組み立て工場)=ロイター

 トランプ大統領は22日、米通商代表部(USTR)の報告書に基づき、中国からの輸入品に制裁関税を課すと表明。報告書は主に4つの手口で米国企業の技術が奪われたと主張した。

 4つの手口のうち最も問題視するのは中国の外資規制だ。新たな市場が広がるプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)などの新エネルギー車を例に挙げた。「中国が自動車を外資に開放したのは、国有企業を近代化するよう米国企業から技術を移転させることが目的だった」と断じた。

 米国が主張する手口は(1)高い関税で輸入品を締め出し、中国市場に入りたい外国企業には国内生産を求める(2)中国企業との合弁会社設立を条件とし、合弁会社はバッテリーなど中核技術の知財を保有しなければ製品を売れない規制を設ける(3)最終的には技術を中国側に渡さなければ事業ができない――の段階を踏む。

 報告書が引用した米中ビジネス評議会の17年調査によると、中国に進出する米国企業のうち19%が中国への技術移転を「直接」求められた経験があると答えた。このうち、技術移転を要求した主体は合弁相手の中国企業が67%と多いが、中央政府や地方政府との回答も多かった。要求を受け入れて技術を渡した企業が3割を占めた。

 中国企業によるM&A(合併・買収)を中国政府が後押ししているとも主張した。中国政府系ファンドが中国の印刷機器大手が米プリンター大手、レックスマーク・インターナショナルを買収できるよう資金支援したことを例に挙げた。買収元の中国企業は米レックス社から特許侵害で訴えられていた。

 米国企業の技術を盗み出すためのサイバー攻撃も指摘した。取り上げたのは2014年の事例だ。米司法省は米国企業のコンピューターに侵入して情報を盗み出したなどとして中国人民解放軍の当局者5人を起訴した。中国国有企業の不当廉売を当時訴えていた鉄鋼大手USスチールは、軽量で強度の高い製品の開発情報が流出した。

 米国企業が中国企業に技術を供与する契約を結ぶ際、差別的な扱いを受けているとも主張した。中国政府に契約内容を通知しなければ、受け取った特許権使用料を本国に送金できないという。こうした主張はあくまで米国の調査によるもので、中国は受け入れられないとして報復措置を検討している。



プーチン帝国の行方(上)圧勝演出透けるおびえ 大規模不正で投 票水増しか 広がる不満忠誠試す 2018/3/21 本日の日本経済新聞より

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 プーチン大統領が通算4選を果たした18日のロシア大統領選。選管の発表によると得票率は7割を超えた。プーチン氏は「高い信頼の表れだ」と誇ってみせたが、有力な政敵を事実上排除したうえで、執拗に高い投票率や得票の演出にこだわる姿勢には、不満を募らす国民に対する独裁者のおびえも透ける。およそ四半世紀も続くことになった「プーチン帝国」はどこに向かうのか。

大統領選当日の18日、自身の選挙本部で演説するプーチン大統領=ロイター

不正行為が相次ぎ報告された(18日、ロシア中西部タンボフで投票箱に複数枚の投票用紙を詰め込んでいるとみられる男の様子)=AP

 有権者が途絶えた隙をうかがって選挙管理委員の女性が素早く投票用紙を箱に差し込む。別の委員が差し出した新たな用紙を受け取り、また投票箱へ。もう一人の女性も加わり、慣れた手つきで次から次へ投票箱に用紙を突っ込んでいく。

 モスクワ南東部リュベルツィ市の投票所で行われた組織ぐるみの票水増しの一部始終を監視カメラがとらえた。映像は監視団体が18日昼にインターネット上に公開。繰り返し再生された。選管は責任者らを解任し、不正票を無効にすると発表するなど、火消しに追われた。

実際は55%?

 「投票率70%、得票率70%」。政権は今回の選挙でこんな高い目標を課した。プーチン圧勝が確実な選挙への関心は低く、政権はなりふり構わず投票率のてこ入れに動いた。複数の有権者は役所や企業の上司から投票に行くよう強制されたと取材で明かした。結果は得票率76%、投票率67%。目標をほぼクリアした。

 全国に監視・調査団を派遣した反体制派指導者ナワリニー氏は「実際の投票率は55%。政権は偽装せざるをえなかった」と大規模な不正があったと指摘する。欧州安保協力機構(OSCE)の選挙監視団も「投票率を上げるため、有権者に不適切な圧力がかけられた」と批判した。

 当選が確実だった選挙でここまで票集めに躍起になったのはなぜか。「あらゆる勢力ににらみをきかせ、政権の安定を保つには国民の絶対的な支持を示す必要がある」。政府に近い筋は選挙前にこう説明した。

 ロシア憲法は連続3選を禁じており、プーチン氏にとっては次の6年が最後の任期になる。本人も憲法改正による再選を否定しているだけに、これから政権内で「ポスト・プーチン」をにらんだ権力闘争が激しくなってもおかしくない。

 政権内の抗争を表ざたにした現役閣僚の汚職事件やその後の公判など、昨年から統制の緩みを示す事例も相次いでいる。プーチン氏にとっては国民の圧倒的支持を誇示できなければ政権が早々にレームダック(死に体)になり、後継を決める政治力も失う恐れがあった。

反体制封じ込め

 政権側には汚職を糾弾し、反政権デモを繰り広げる反体制指導者ナワリニー氏らの動きを圧倒的な得票で封じ込める思惑もあったようだ。景気停滞や長期支配で深刻化する行政の腐敗に不満は高まっており、反政府デモに加わる若年層は全国的に増え続けている。

 「反体制派の無許可集会をどう思うか」「秩序の変更を求める勢力に武力を行使する準備はあるか」。1月、ロシア南部北カフカス地域で従軍する兵士にこんなアンケートが配られた。ナワリニー氏ら反体制派や社会活動家の名を並べ、好きな人物をひとり選ばせる問いもあった。

 デモ隊への発砲を命じた時、部隊が執行を拒んで反旗を翻せば、政権転覆につながりかねない。忠誠心を調べるアンケートの質問には過去の独裁政権と同じ末路をたどりたくないとのおびえが透ける。プーチン氏は2016年、デモの鎮圧も任務とする大統領直属の「国家親衛隊」を創設。自らに忠誠を尽くす警護責任者を務めた人物を司令官に充てている。

 再選を決めた直後の記者会見でプーチン氏は5月に始まる新任期の体制について「人事をきょうから考え始める」と答えた。間違った決断をすれば、歴史上のロシア皇帝のように寝首をかかれるかもしれない――。圧勝を演出した選挙とは裏腹にプーチン氏の胸中はそれほど穏やかではない。



中国、経済支配強める チベット騒乱10年インフラ整備、急 成長の陰で 2018/3/13 本日の日本経済新聞より

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 【北京=多部田俊輔、永井央紀】中国のチベット自治区ラサ市で大規模な暴動「チベット騒乱」が発生してから14日で10年が経過する。中国政府は同自治区への手厚いインフラ投資で、域内総生産の成長率を全国2位の10%に引き上げたとアピールする。ただチベット族が経営する地元企業は育たず、政府と共同歩調をとる大手企業の経済支配が強まるばかり。監視の目も厳しく、チベット族は不満を募らせている。

 「3千メートルの高低差を抱える最高難度の工事に取り組む」。四川省成都市とラサを結ぶ1800キロに達する鉄道工事が近く大詰めを迎える。総投資額は2500億元(約4兆2千億円)。鉄道と前後して、高速道路や石油パイプラインも建設する大型プロジェクトだ。

恩恵は漢民族に

 同自治区では交通インフラの整備が進む。ラサと青海省西寧市を結ぶ青蔵鉄道が2006年に開通したのを手始めに、10年間で高速道路は5本開通し、地方空港も2カ所に開港した。17年の固定資産投資は10年前のほぼ10倍の2051億元まで拡大。全国平均の増加率が5倍弱だったのに比べ、著しい伸びだ。

 交通インフラの整備は観光客を同自治区に呼び込んだ。17年の観光客数は2561万人、観光収入は379億元を記録。客数は10年前の約6倍、収入は約8倍と大きな収入源に育った。モバイル決済やシェア自転車などの最新サービスも、北京などに本社を置く大手企業の進出で受けられる。

 インフラ投資をテコに経済は成長したが、「チベット族は豊かになっていない」(ラサに住むチベット族男性)との不満も漏れる。同自治区の都市可処分所得は15年前は全国平均を上回っていたが、現在は8割強の水準まで落ち込む。「観光客が落とす金はチベット族の財布から漢民族の企業に移った」とこぼす。

地元企業育たず

 納税額をもとに算出した同自治区の上位50社をみると、チベット族が経営するのは建設関連の1社だけ。残りは北京市などの大企業の子会社がずらりと並ぶ。いずれも政府の投資拡大に沿って進出した企業だ。観光業も漢民族の企業が多い。

 「税金の減免が狙いの企業も多い」と、税制度に詳しい専門家は指摘する。同自治区の企業所得税の実質税率は9%。全国の25%に比べて低い。半導体大手など多くの大手企業が進出して業績を伸ばしているように一見みえるが、「他地域への再投資などで稼いでいる」との指摘もある。

 中国政府の統計によると、10年の同自治区の漢民族の比率はわずか8%にすぎない。だが、同自治区を指導する共産党指導部の常務委員14人のうち漢民族は約6割の8人を占め、実質的な支配力を強めている。

 同自治区で1歳から育ち「蔵二代(チベットの二代目)」と主張する、トップの呉英傑・同自治区党委書記も漢民族だ。呉氏の父親は党幹部で、妻もチベット駐留軍人の家庭で育ったとされる。

 「焼身自殺は発生していない」。開会中の全国人民代表大会で開かれた同自治区の分科会で、呉氏はこう強調した。チベット騒乱10年に関する質問についても「答える必要はない。我々のチベットの情勢は安定している」と、支配者から見たチベットへの視点が強調されただけだった。



米、最強空母で中国けん制 ベトナム寄港戦争終結後初経済面での譲 歩狙う 2018/3/6 本日の日本経済新聞より

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 【ダナン(ベトナム中部)=小谷洋司、ワシントン=永沢毅】世界最強とされる米国の原子力空母カール・ビンソンが5日、ベトナム中部ダナンに寄港した。1975年のベトナム戦争終結後、米空母がベトナムに立ち寄るのは初めて。米越の関係強化を示し、海洋進出を強引に進める中国をけん制する狙いがある。中国も海軍力の強化を急いでおり、アジア太平洋での米中の勢力争いが激しくなるのは必至だ。

5日、ダナンに寄港するカール・ビンソン

 5日午前、ダナン湾に巨大な船体が現れた。甲板には艦載機がずらり並ぶ。40年以上ぶりに来る米空母を見ようと、湾を見下ろす高台にはスマートフォン(スマホ)を持つ市民が集まった。

 ダナンにはベトナム戦争中、米軍最大の基地が置かれ、両国は激しい戦火を交えた。スマホを構える市民の姿はわだかまりを感じさせない。「かつて敵対国だった両国は親密なパートナーになった」。声明でダニエル・クリテンブリンク駐越米大使は強調した。

 9日までの寄港中、文化交流などの行事が開かれる。米メディアによると、乗組員の一部はベトナム戦争中に米軍がまいた枯れ葉剤の犠牲者の追悼施設も訪れる。国防総省関係者は「負の遺産を乗り越え、安全保障面での協力レベルを大幅に引き上げる」と話す。

 米国がベトナムと安保協力を強めるのは、アジアで軍事力や経済力をテコに影響力を増す中国をけん制するためにほかならない。中国は近年、ベトナムやフィリピンなどと領有権を争う南シナ海で強引に人工島を造成し、勢力圏を広げる。

 これに対し、米国防総省は1月、中国をロシアとともに国際秩序を揺るがす「現状変更勢力」と位置づけた。その直後にマティス国防長官が訪越し、空母寄港の地ならしをした。2月にはカール・ビンソンをフィリピンのマニラに寄港させた。

 米国海軍の強さを象徴するカール・ビンソンは70機以上もの艦載機を収容し、強力な打撃力を持つ。中国初の空母「遼寧」では全く太刀打ちできない戦力で、これまでにベトナムに寄港した米艦船に比べ示威効果ははるかに大きい。

 ただ、今回は中越などが領有権を争う西沙(パラセル)諸島や南沙(スプラトリー)諸島に近いカムラン湾への寄港は避けた。中国を刺激する効果が強いカムラン湾への寄港は外交カードとして残し、中国の対応を見極める判断とみられる。

 トランプ政権は貿易不均衡の是正を求めるなど中国に安全保障、経済両面で厳しい態度で臨んでいる。ワシントンの日米外交筋は「政権はベトナムなどへの関与をカードに、中国からより良い経済面での協力を勝ちとろうとしている」とみる。

 南シナ海問題で中国に強く反発してきたベトナムにとって米国のアジアへの関与拡大は渡りに船だ。昨年ロシアから購入した潜水艦6隻をカムラン湾に配備したが、単独では中国にかなわない。

 このため、米国や日本との防衛協力の強化に踏み込んで、中国に対する立場を強める戦略を打ち出している。昨年5月には海難救助などの名目で、日本のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」をカムラン湾に受け入れた。



揺らぐ核のハードル(中)ロシア、緊張あおり譲歩迫る米に先行軍事戦略 の軸 2018/2/13 本日の日本経済新聞より

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 「ロシアは米国の盗作に対して訴えをおこすべきだ」。モスクワのシンクタンクが5日に開いたウィリアム・ペリー元米国防長官の講演会。2日発表の米国の新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」を巡ってロシアの安全保障専門家からこんな発言が飛び出した。

ロシアは核兵器の近代化を進めてきた(ロシア海軍の原子力潜水艦)=ロイター

 対ロ抑止を意識したNPRに含まれる項目の多くはロシアが追求してきた戦略と重なる。通常兵器への反撃として核兵器を使用する選択肢の提示、局地的な攻撃のための小型核兵器や新たな巡航ミサイルの開発……。「冷戦時代のように米ロが互いに相手をまねする構図になりつつある」とペリー氏も応じた。

 ロシアは1990年代末から核兵器の近代化を軍事戦略の軸に据えてきた。北大西洋条約機構(NATO)に大きく差をつけられた通常兵器の劣勢を補うためで、短距離の戦術核に重点を置いているとみられている。核の近代化で米国に20年先行しているとの米専門家の分析もある。

「NPRは賛辞」

 ロシア外務省は3日、NPRについて「反ロシア的な内容に失望した」とのコメントを発表したが、政府内ではこんな見方も浮上したという。「NPRはロシアにとって賛辞だ」。核戦力はロシアが米国に伍(ご)する大国の地位を回復するカギ。米国がNPRでロシアの優位性を認めたことを前向きに捉える声もある。

 ロシアの核戦略の原則は「紛争緩和のために紛争をエスカレートする(Escalate to deescalate)」ことにあるとされる。紛争に対し、局地的な核の先制攻撃か核を使用する構えを見せて緊張をあおり、敵を引き下がらせることを意味する。

 核戦力を背景にしたロシアの威嚇は欧米との対立を決定的にした2014年のウクライナ侵攻を機に激化した。プーチン大統領はクリミア半島併合の際に「(核戦力を臨戦態勢に置く)用意があった」と発言した。

 NATO加盟国領空に戦闘爆撃機を何度も接近させ、核兵器使用を想定した軍事演習を繰り返す。シリアでの軍事作戦でも核兵器を搭載可能な巡航ミサイルを投入し、示威行為に拍車を掛けた。

米欧の分断狙う

 狙いは心理的な圧力を掛け、ウクライナ侵攻を巡って対ロ制裁を発動する米欧諸国を分断することにある。欧州の一部で対立の激化への懸念が高まり、NATOがロシアとの対話を再開するなど一定の効果を上げている。

 米国の核戦略の転換により、ロシアはソ連崩壊の一因ともなった軍拡競争を強いられる可能性もあるが、プーチン政権は現時点でそれほど懸念していない。ロシア政府に近い筋は「欧州は果たして米国の新たな核抑止に同調するだろうか」と指摘する。冷戦期の80年代のように反核意識の強いドイツと米国の溝が広がれば、ロシアにプラスに働くとの読みもある。

 突発的な衝突のリスクをはらみながら、ロシアの核の瀬戸際戦術は止まりそうにない。



モルディブ元大統領「中国への領土割譲必至」債務返済厳しく 2018/2/13 本日の日本経済新聞より

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 【コロンボ=黒沼勇史】政治混乱が深まるインド洋の島国モルディブのモハメド・ナシード元大統領(50)は12日、隣国スリランカのコロンボで日本経済新聞の単独インタビューに応じ「対中債務は15億~20億ドル(約1600億~2200億円)に上るが、返済は不可能だ」と述べ、2019年中にも中国への領土割譲に追い込まれると危機感をあらわにした。

ナシード元大統領

 08~12年に大統領を務めたナシード氏は16年に英国に亡命した。現在は英国とスリランカを行き来し、ヤミーン現大統領の強権と中国寄りの姿勢を批判している。同大統領が非常事態を宣言した今月5日以降は、弾圧で逮捕された判事や政治家の釈放に向けて、国際社会に支援を呼びかけている。

 ナシード氏はモルディブの対外債務総額に占める中国の割合を「1月時点で75%以上に上る」と明らかにした。道路や橋梁、空港の整備資金が多く、これらについて「ムダなインフラ整備だ」と指摘。15億~20億ドルの対中債務の金利は「最終的に12%以上になる」とし「歳入が月1億ドルにすぎない我々に返済は不可能だ」と述べた。その返済期間は「19~20年に始まる」と話した。

 ナシード氏によると、ヤミーン政権下のモルディブから「中国は既に16以上の島々を買い取った」。債務返済が始まり返済が滞れば、中国は島やインフラ運営会社の「株式を求め、モルディブそのものを乗っ取る」と懸念を示す。

 いったん島々に港湾を整備すれば「軍港化は容易だ」とも強調した。昨年8月に中国が海外初の海軍基地を設けたアフリカ東部のジブチを例に挙げ、モルディブの島々が「中国の戦略インフラに転じるのはあっという間だ」と指摘した。



内向き志向、透ける限界 2018/2/1 本日の日本経済新聞より

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 穏当な「トランプ2.0」の序章であってほしい。だが大統領らしく振る舞おうと、思い直したわけではあるまい。

 「安全で強く、誇り高き米国をともに築く」。トランプ米大統領は初の一般教書演説で過激な発言を封印し、変革と融和の重要性を説いた。

 成果に対する渇望や政権維持への執着がそうさせたのだろう。11月の中間選挙を見据えた打算の匂いがぷんぷんする。

 それでもトランプ氏の本質は変わりそうにない。「経済で降伏する時代は終わった」「古臭い移民制度を改革する時が来た」――。攻撃的な表現を避けながらも、通商・移民政策では「米国第一」の姿勢を貫いた。

 「第7代大統領アンドリュー・ジャクソンを源流とするポピュリズム(大衆迎合主義)の再来だ。名誉や力を尊び、米国の主権を侵す国際的な枠組みを軽んじる特徴がある」。米著名政治学者のウォルター・ラッセル・ミード氏は、トランプ氏の経済・外交政策に巣くう内向き志向の根深さに警鐘を鳴らす。

 問題はその限界が見えてきた点にある。北米自由貿易協定(NAFTA)や米韓の自由貿易協定(FTA)の再交渉に着手しても、いっこうに結果を出せない。むしろ保護主義の修正を迫られ、環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰をにじませる始末だ。

 「これが米国の新しい時代だ」。トランプ氏が経済・外交政策の成果を誇示しても、不都合な真実は覆い隠せない。

 10年間で1.5兆ドル(約163兆円)の減税と1.5兆ドルのインフラ投資で米経済を底上げするのはいいが、やみくもにアクセルをふかしても、米連邦準備理事会(FRB)が利上げのブレーキを強く踏み込む結果にはならないか。次の景気後退局面への対応力が財政面で低下し、グローバル化への適応を促す教育や職業訓練などの予算確保も難しくなる。

 米国の国力が相対的に低下するなかで、国防費を増やし続けて「力による平和」を達成できるのか。同盟国や国際機関との結束を固め、中国やロシアより優位に立つ戦略をもっと聞きたかった。

 2010年にノーベル文学賞を受賞したペルーの作家マリオ・バルガス・リョサ氏が、ワシントンでこう警告していた。「ポピュリストはファンタジー(幻想)をリアリティー(現実)に置き換えてしまう。人々の弱みにつけ込み、本質的な問題から目をそらすのだ」

 トランプ流のポピュリズムにすがれば、安全で強く、誇り高き米国を本当に築けるのか。「現実」と「幻想」が混濁し、大事なものが置き去りになるのが怖い。

(ワシントン支局長 小竹洋之)



英、中国にそろり再接近 EU離脱後見据え 2018/1/25 本 日の日本経済新聞より

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 【ダボス(スイス東部)=小滝麻理子】英国が中国に再接近している。中国の巨大経済圏構想を後押しする投資ファンド首脳にキャメロン前首相を起用するほか、メイ首相が月内にも訪中する方向だ。欧州連合(EU)離脱後を見据え、中国との関係強化で経済成長を持続させる考え。フランスのマクロン大統領も対中外交に力を入れ始めており、欧州の主要国が対中接近を競う。

 「我々の『黄金時代』の新しい幕開けだ」。2017年末、ハモンド財務相は北京で馬凱副首相と会談し、上機嫌で語った。訪中には英中央銀行イングランド銀行のカーニー総裁らも同行。約10億ポンド(約1500億円)の通商・投資協定の締結などで合意した。

 目玉となったのは金融面の協力だ。英中は中国人民元の国際化を進めるため、中国の銀行がロンドンの外国為替市場に直接アクセスできるようにすることで一致した。

 さらに習近平(シー・ジンピン)国家主席が進める広域経済圏構想「一帯一路」を支援するための10億ポンド規模の投資ファンドを設立する方針も表明。BBCはこのファンドの議長など重要ポストにキャメロン前首相が就く見通しだと伝えた。

 キャメロン氏は16年7月までの首相時代、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)にいち早く参加を表明するなど中国重視の政策を強力に推進。英中の蜜月時代を演出したことが起用につながっているもようだ。

 このほか、HSBCホールディングスのフリント前会長が英中協力拡大の民間使節に決まった。

 メイ政権はキャメロン政権時代に比べ、中国との関係強化に慎重だった。中国の影響力拡大を警戒していたとされ、中国企業が出資する原子力発電所計画の承認を先送りしたり、親中派の政権幹部を異動させたりしてきた。

 そのメイ政権が中国との距離を縮めようとする背景には、EU離脱後の環境変化がある。

 英国は欧州単一市場から離脱することで打撃を受けるのは確実。EU以外との貿易や投資の拡大を成長の新たな原動力とする考えだ。

 その要が最大の同盟国である米国との貿易拡大だったが、このところイラン核合意やエルサレムの首都認定問題を巡ってトランプ米政権と意見が対立。対中関係を重視すべきだと判断した。

 欧州ではフランスのマクロン大統領が1月上旬、メイ首相に先駆けて中国を訪問し、習主席と会談。「一帯一路」や原子力分野での協力を打ち出した。

 関係者によると、メイ首相は1月末にも、企業関係者らとともに、中国を訪れるとみられる。「中国にとって欧州一のパートナーは英国であることを示す」(関係者)狙いという。

 もっとも、英国にとってEUは輸出入の半分を占める一方、中国は1割未満だ。中国側にとっては金融などで英国の持つノウハウを吸収する魅力は大きいが、英国にとっては短期的な経済押し上げ効果は限定的。英国の中国への再接近がトランプ政権との関係を一層、複雑なものにさせる恐れもある。