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辛言直言 世界で生きるための教育を 価値観変わる体験させよ 日本電産会長兼社長 永守重信氏 2016/01/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「辛言直言 世界で生きるための教育を 価値観変わる体験させよ 日本電産会長兼社長 永守重信氏」です。





 大学の役割を巡る議論は今年も活発化しそうだ。教養教育が重要との指摘がある一方、グローバル化に対応した人材育成が不十分との意見も強い。日本電産の永守重信会長兼社長は2014年11月から京都大学の総長顧問を務めるなど、大学への発言も積極化している。自ら創業した会社をグローバル企業へ成長させた経営者の視点から、日本の大学教育への要望を聞いた。

 ――日本の大学の現状をどのようにみていますか。

 「京大で講義もしたが、質問してくるのは中国やタイからの留学生ばっかりだ。日本の学生は『単位をもらえればいい』とばかりに静かにしていて明らかに熱意が違う。アジアからの留学生は母国に帰って起業しようとか、起業できる会社に入ろうなどと考えて、何かをつかもうとしている

 「日本の大学は世界ランキングで順位が低い。評価方法に問題があるとも聞くが、日本の学生にも、起業しようとか、海外で何かやろうといった意識をもっと持たせられないものか。海外のインターンシップにどんどん行かせるとか、価値観が変わる体験をさせてほしい

起業の意欲弱い

 ――大学もグローバル対応などの変化は掲げていますが。

 「今でも学生の就職人気ランキングには有名な大企業が、業績がよくなくても上位に並んでいる。すぐに起業しないとしても、これから伸びる会社に入って大きくしようとする学生がなぜこんなに少ないのか。大学の先生がインターンでも就職でも大企業を勧めているのではないか」

 「大学と実業界の人の行き来をもっと活発にしないといけないだろう。成績がいい学生が助手になり、そのまま教授になっていては実社会のことがわからなくなる

 ――大学には実学よりも基礎的な教養を重視すべきだとの声もあります。

 「教える順番が大事。英語の難しい文法を教える前に、しゃべれるようにするとか、まずは世界で生きていくための教育をしっかりやるべきだろう。30年くらい前と今では日本の大学の置かれた状況が違う。大学生がある程度希少だったころは一般と違う教育に意味があった。大学生が増えた今は、特に難しい学問は大学院でやる方がいい」

 「大学の中には研究が開発より格上とか、開発は生産技術より上というような意識があるようだ。一流大卒は研究か開発部門に入りたがる。仕事に順位を付けるような意識が一番の問題だろうと思っている」

 ――そうした問題は企業側でどう感じますか。

 「実は私もこの10年くらい錯覚していた。会社が大きくなったんだから立派な大学の出身者を増やそうと中途を含め積極採用してきたが、最近実績が目立っているのは、この間我慢をしていた一流大卒でない社員が多い。人生というあみだくじは1本の線を進んで失敗しても、諦めずに次に行けばもっと幸せになることもある。こんな経験をした人材の方が強い

入試で疲れ切る

 ――入学試験からもっと変えるべきだという声もあります。

 「最近の学生は入試の段階で疲れきっている。教え方のうまい塾に入ってテクニックを必死に覚え、一流大学に入っているのだろう。入った時がピークなのではなく、これから目標を持って頑張ろうとする人にチャンスを与えてほしい

 「僕は塾も行かず受験勉強もせず、学校から帰ったら家の手伝いをしていた。それでも勉強ができて、国の奨学金で職業訓練大学校(当時)に行かせてもらうことになった。亡くなった兄は『本当は京大に入れたのになあ』と後々も気にしながら、『でも入れずに頑張ったから今がある。感謝せえよ』と何度も言っていた」

 ――16年春卒の学生の就職活動の日程が混乱しましたが、どうすればいいと考えますか。

 「(15年春卒までの就活のように)4月1日の選考開始に戻すのがいいと思う。中堅企業から先に内定をもらっても(8月の)大企業の選考開始まで決めないといった状況が、非常に混乱のもとになった。新卒の一括採用には若者の雇用確保などで利点もあるとは思うが、例えば初任給については米国のように大学を卒業した時の経験などで差がつくとなれば、学生の卒業までの意識も変わるのではないか」

(大学面編集長 福田芳久、京都支社 太田順尚)

 「辛言直言」は随時掲載します。

 ながもり・しげのぶ 1944年京都府生まれ、67年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒。ティアックなどを経て73年に日本電産を創業し、社長に就き急成長をけん引。2014年から会長兼務



さあ準備会社デビュー 「パックン」、社会で役立つ会話術を伝授 2015/12/09 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「さあ準備会社デビュー 「パックン」、社会で役立つ会話術を伝授」です。





 会社に入ると学生時代とは全く異なる人々と接する機会が増えるはず。「知らない人と話せるか?」「会社の輪にとけこめるか?」「海外に適応できるか?」。そんな不安を抱いている学生も多いことだろう。パックンの愛称で知られるタレントで、日米の文化や生活の違いにも詳しく、東京工業大学で講師の経験も持つパトリック・ハーラン氏に社会に出て役立つコミュニケーションのコツを聞いた。

 日本人は意見を求められたとき、ずばっと言える人が少ない。例えばオバマ米大統領や集団的自衛権、受験制度についてどう思うか聞かれたらどう答えるか。米国の大学生は何も知らなくても堂々と自分の意見を言う。つまり、知ったかぶりが得意なのです。僕もハーバード大学で学んだのは専攻の詳細よりも、情報の収集、処理、そして発信能力といってもいい。日本の大学生はそれができてない。

 原因はDNAの違いじゃない。訓練の違い。米国では子どものころから質疑応答で授業が進む。例えば「コロンブスはなぜ米国に来たと思う?」と先生が聞く。「思う」なんだから答えは何でもいい。「暇だったから」とか、「アメフトが見たかったから」とか。先生は「いい考えだね、違う答えもあるかな」と肯定しながら話す能力を伸ばしていく。コミュニケーションは魔法じゃない。ピアノと一緒で練習すれば必ず上達する。

 反対意見を持つ人と丁々発止で議論をする経験を重ねないと、自分の意見も磨かれない。何も知らないくせにと言われるのは怖いかもしれないけれど、専門家じゃなくても意見は言える。「僕はこの政策についてこう思う。違う? じゃあ、そう見えるのが問題じゃないか」と、展開してもいい。素人の発想から大ヒット商品が生まれることもある。何も知らない人の力って半端ない。

人格・感情・言葉の力 相手の心をつかむには3つを意識してほしい

 相手の心をつかむには「エトス」「パトス」「ロゴス」の3つを意識して話してほしい。

 一番大事なのはエトス。エトスは人格による信頼性。簡単に言うと、誰がしゃべっているかということ。例えばビル・ゲイツの話は誰でも聞こうと思うよね。あまりお金がない人が投資方法について話しても信頼されない。これがエトスの違い。銀行の社屋が石造りで立派なのは建物によってエトスを上げようと演出しているから。

 大学生は石造りの本社はつくれないけど、学歴や経験、話し方からでもエトスは上げられる。例えばパソコンメーカーに入るなら、「僕は毎日パソコンと向き合って仕事をしています」と言うだけで信頼度が少し上がる。ここで重要なのは相手に合わせること。相手が常識と思うことをやってみる。非常識なことをやるとお笑いネタになっちゃうよ。

 パトスは相手の感情に訴えること。笑わせたり悲しませたり愛国心をくすぐったりして相手を動かす。欧州の難民問題が一気に注目されるようになったのは、海岸に打ちよせられた男の子の写真がきっかけ。数字で訴えるより世界の心を動かした。あれがパトス。学生なら例えば、自動車メーカーに就職したいなら、ただ働きたいというのではなく、子どもの時に両親とドライブに行った話をすることで共感を得ることができるかもしれない。物語性を盛り込むことが大事になる。

 ロゴスはロジックではなく、言葉の力。インパクトのあるフレーズを使ったり、3つにまとめてみたり。なにかに例えることも大事。安倍晋三首相は「3本の矢」など3つにまとめることが上手。でも僕は中身が伴っていないと感じるときもある。「まるで中身のない本の表紙みたいに」と、これが例え。わかりやすいでしょう。

相手に興味持ち質問 やっぱり大事なことは自分自身が楽しむこと

 社会に出て増えるのが知らない人と話す機会。まずは発言より、質問してみたらどうだろう。質問を家族、仕事、出身地などテーマ別に考えておいてもいい。相手の答えに対して、さらに質問をすることも大事。会話のキャッチボールを意識してほしい。山ほど質問のボールを置いて相手に向かって投げるだけではバッティングセンターになっちゃうからね。

 そのときに大切なことは相手に興味を持つこと。就職はある意味、異文化交流の一つ。会社という新しい環境におかれたとき、大学に戻りたいと思っていては苦しいし、成長しない。「会社って面白いな」と少しでも興味を持てれば、質問もたくさん出てくる。取引先の会社も同じこと。わくわくしてほしい。

 プレゼンテーションする機会も増える。緊張するなら「緊張しているのでどこまで伝わるかわかりませんが、内容には自信があります。いくらでも質問を受け付けます」と言ってしまってもいい。誠意を見せて緊張を武器に変えるんだ。プレゼンは一方通行と思いがちだけど、それは違う。「あなたならどうしますか?」と問いかけを入れたり、物語性を持たせたりして興味を持ってもらう工夫をしよう。資料づくりと同じくらい話す練習も必要だ。

 海外に行くときは、価値観が違う可能性を念頭にいれてほしい。見よう見まねで礼儀作法を知ることも大事だし、わからないときは聞くこと。僕は日本に20年以上住んでいるけど、変なプライドを持たずに素直に聞くことを心がけている。日本の一流大学を出ても海外では自分が赤ちゃんだと思って吸収してほしい。

 海外では「空気を読んでほしい」と思うのは甘い。相手にはっきり言わなきゃ伝わらない。でもね、やっぱり大事なことは自分自身が楽しむこと。会社でも恋愛でも海外でも、興味や愛、誠意を持てば大丈夫だから。

(聞き手は福山絵里子)



シンガポールのビジネススクールなぜ高評価 アジア開拓実践的に 国立ナンヤン工科大のNBS学部長補に聞く 2015/11/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「シンガポールのビジネススクールなぜ高評価 アジア開拓実践的に 国立ナンヤン工科大のNBS学部長補に聞く」です。





 シンガポールのビジネススクールが世界的に高い評価を集めている。小国ながら、英紙フィナンシャル・タイムズが2015年に選んだ経営学修士号(MBA)ランキングでは、上位100校の中で3校が選出され、国別の数は中国(6校)に次いでアジアで2番目。世界中の優秀な若者が集まる理由を国立ナンヤン工科大ビジネススクール(NBS)のピーター・ジュリオーニ学部長補(キャリア形成担当)に聞いた。

ピーター・ジュリオーニ氏

ナンヤン工科大のキャンパス

 ――シンガポールでMBAを取得するメリットは。

 「向こう10年にわたって最も成長するアジアに位置しているのが強みだ。NBSの教育は中国をはじめアジア市場をどう開拓するか、低所得層を照準にどのような研究開発(R&D)を進めるかなどに特化している。また、中国の台頭などの政治的リスクとどう向き合うかも考える。英語が通用し、外国人には居心地の良い環境でこうしたことを学べる場所は少ない。学費は日本円で年間約500万円と安くはないが、世界中から学生が集まる」

 ――アジアに特化した教育とは。

 「多国籍企業がアジアでどう成功したか、失敗したかといった実例を検証する。例えばアジア市場でつまずく日本企業の特徴を『トップマネジメントを日本人が占め、地元の優秀な人材に敬遠される』『日本製の高機能品をそのまま持ってくる』といった具合に分析する」

 「NBSの1年間のコース全体には50~80人程度が在籍する。授業は30人前後の規模に抑え、用意したスライドやレジュメを読むといったことはしない。討論形式で行うのが基本で、教授陣は挑戦的な議論を『ふっかける』ことを重視している」

 ――どんな学生が集まりますか。学生の進路はいかがですか。

 「アジア、欧米など20カ国以上から学生が来る。8割はシンガポール人以外だ。入学にはビジネス経験が必須で、米バンク・オブ・アメリカ、シティグループなど欧米の企業を経た学生も多い。日本の商社などからも毎年学生が来る」

 「学生の希望はアジアで働くこと。分野はIT(情報技術)、金融、製造業など幅広い。日本での就職に関心がある学生も多く、学生を連れて日本企業を回ったばかりだ。アジア進出を進める日本企業側もマネジメント層や幹部候補生として採用することに強い意欲を持っていると感じる」

 ――入学者の選抜はどのように行われますか。

 「まずは大学での成績が重要だ。全応募者に対して行う面接の際はMBAで学ぶ内容が自身のキャリアの中でどう役に立つのかをよく聞く。MBAは昇進のパスポートではないからだ。応募者の経歴や態度がほかの学生にどのような刺激をもたらすかも重視している」

 ――日本人の学生は議論が苦手だとされています。

 「確かに日本人はシャイだが、少人数のグループ議論などで意見を尋ねると、立派な考えを持っている。徐々にクラス全体で発言するよう促すと、コースを終えるころにはすっかり見違えるようになっている」

 (聞き手は国際アジア部 木寺もも子)



辛言直言 文理のあり方(上) 理系学部、英語を公用語に 米カリフォルニア大教授 中村修二氏 2015/07/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「辛言直言 文理のあり方(上) 理系学部、英語を公用語に 米カリフォルニア大教授 中村修二氏」です。





 青色発光ダイオード(LED)の開発でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は、米カリフォルニア大の教授として61歳の今もレーザー照明の研究開発の最前線に立つ。政府は世界最高水準の研究力・教育力を備えるための大学改革を目指している。英語習得で苦労したという中村氏に、実体験などから世界に通用する理系の高等教育の課題について聞いた。

 ――一連の改革の中で、政府は英語教育を強化する方針を打ち出しています。理系のグローバル人材育成に役立つでしょうか。

 「正しい方向だが、まだ全く不十分だ。世界をみると理系や文系を問わず最先端で活躍している層の大半は英語が流ちょうだ。そうした一流の人材と渡り合って認められるためには高いレベルの英語習得が不可欠だ。英語教育のレベルの低さのせいで日本は世界のグローバリゼーションの波から置き去りにされている」

島国根性改めよ

 「まだ日本の多くの大企業では英語が上手だと『あいつは語学屋だ』と嫉妬されることが多い。そんな企業文化のせいで家電メーカーなどは長く国内市場にとらわれ、欧米や中韓の企業に世界のマーケットシェアを奪われる結果となった。日本はまずこうした島国根性を改める必要がある」

 ――日本の研究者の英語力を高めるためにどのような施策が必要でしょうか。

 「少なくとも理系の学部では英語を公用語と位置づけて、学内でしゃべるときは英語に限るなどラジカルな改革が求められる。子どもが人生の早い段階で集中的に英語教育を受けられる機会を増やさないといけない。家族とともに海外で語学を習得するための休職制度を企業に設けるのも一案だろう。米国では子どもに新たな語学を身につけさせるため家族ごと外国に1年くらい移り住む例は少なくない」

 ――政府内では研究者の海外流出を懸念する声も聞かれます。

 「そういう心配をする人はグローバル化の意味をわかっていない。意欲がある優秀な人材がどんどん国外に出て活躍するのはむしろ望ましいことで、結果的に日本のためになる。私も海外で働くことで日本に貢献していると自負している」

 「何でも日本において日本人で全てやろうという考えを捨てなければいけない。日本人のノーベル賞受賞者を増やすべきだという議論も意味があるとは思えない。世界経済や人の流れがこれだけボーダーレスになっているのに、日本だけが突出して自国に強いこだわりを持ち続けている」

恵まれた点も

 ――一方、海外から見て日本の高等教育の強みはどこにあるのでしょうか。

 「国民性や道徳教育のおかげで日本人は世界のどの国民と比べても極めてまじめだ。研究開発のために必要な装置や機材を特注すれば、日本企業はきちっと与えられた図面通りに期限内に作ってくれる。米国ではそんな事例はほとんどない」

 「日本の研究者はこの点、非常に恵まれており、日本は今後も世界のイノベーションセンターの一つであり続けるだろう。ただ、新たな技術を開発しても、世界に売り込む人材が不足していたら激しいグローバル競争で負け続ける。モノ作りを商売よりも上位に置く江戸時代以来の身分制度の意識を変える必要がある」

 ――日本の暗記中心の大学受験の弊害をかねて指摘されています。

 「受験のために求められる激しい暗記作業が最も大事な生徒の学問への興味や意欲、創造性を損なう結果となっている。未開地で様々な壁をぶち破っていく人間を育てないと日本経済も大きな成長は見込めないが、異能の人材にとって息苦しい画一的な日本の教育制度ではそうした起業家タイプの人材は育ちにくい」

 ――日本のベンチャー企業育成の必要性を訴えられていますね。

 「日本ではベンチャー企業はまず国内で成功した上で海外に向かうというパターンが大半だ。私は米国で2つのベンチャー企業を経営しているが、立ち上げ段階から当然のように世界市場に照準を合わせている。ドイツや中国、台湾、シンガポールの起業家も同様だ。日本の若い世代には最初から世界進出を視野に起業してほしい」

(サンクトペテルブルクで、田中孝幸)



就職先選び「財務」を見よう ROAで安定性を評価 キャッシュフローも重要 2015/07/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「就職先選び「財務」を見よう ROAで安定性を評価 キャッシュフローも重要」です。





 今年の大学生の就職活動は売り手市場といわれ、会社も優秀な学生の囲い込みに必死だ。複数の会社から内々定をもらっている学生もいるだろう。多くの就職希望先から最終的に1社を選ぶうえで有効なのが、財務分析と自らの五感を駆使した会社の「取材」だ。自分の目と耳、足で集めた情報で最終判断し、納得のいく就職先を選ぼう。

 記者が企業を取材するときのように、就活でも事前に企業の情報を集めるのは大事だ。特に重要なのが財務情報。企業が今後も安定して存続できるのか、将来に向けて成長できるのかなど財務諸表と呼ばれるデータから読み取ることができる。

 代表的な財務諸表は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などで、決算短信と呼ばれる資料にまとまっている。企業は年4回、3カ月ごとに決算を開示している。最も注目されるのが、1年間の成果を発表する通期決算だ。

 財務情報を知るには、以前は有価証券報告書という冊子を入手する必要があった。今はインターネットで簡単に財務諸表を見られる。

 日本で多い3月期決算企業の場合、4月後半から5月中ごろにかけて、通期決算を開示する。今なら開示して間もない主要企業の決算資料を閲覧できる。過去分もホームページに掲載する企業は多く、主要な財務指標の推移を入手できる。

 就活生がまず気になるのが、企業の安定性だろう。就職して数年で経営が傾くようでは就活の苦労も水の泡だ。

 経営の安定度をはかる上で重要なデータが、貸借対照表の自己資本比率だ。自己資本比率は資本全体(総資本)のうち、どれだけを返済不要の資本(自己資本)でまかなえているかを示す。自己資本を総資本で割って算出する。

 総資本のうち借入金などは他人資本と呼ばれ、いずれ返さなければいけない。資本金や過去の利益の蓄積が自己資本だ。上場企業の自己資本比率は平均40%程度なので、この水準を上回っていれば合格圏だ。50%以上なら経営の安定度は高く、60~70%あればかなりの優良企業といっていい。

 会社を見るプロである公認会計士の平林亮子さんは、損益計算書の純利益を、貸借対照表の総資産で割って求める総資産利益率(ROA)に注目すべきだと助言する。最近は外国人株主を中心に自己資本利益率(ROE)への注目度が高いが、ROAは企業のビジネスそのものが、うまくいっているかどうか判断できる指標だ。

 ROEは自社株買いなどで改善できるので、就活生はROAに着目すべきだという。平林さんは「3年から5年遡って、ROA10%を維持できていれば、経営の安定度は高い」と判断している。

 さらに平林さんはキャッシュフロー計算書にも目を向けてほしいという。中でも営業活動によるキャッシュフローが重要だ。企業が通常の営業活動を通して、1年間にどれだけの現金、現金同等物を獲得できたかを示す。いわば企業の稼ぐ力を知ることができる。

 営業キャッシュフローを過去5年分見る。5年間プラスが続き、かつ右肩上がりなら、その企業の経営は安定しているとみてよさそうだ。自己資本比率、ROA、営業キャッシュフローを5年分遡って比較してみると、安定度の高い会社を見つけることができそうだ。

 会社は安定成長も大切だが、長く勤める前提なら、将来性も重要だ。もう1人、会社を見るプロ、投資信託会社のトップに聞いてみよう。

 投信会社は小口資金を集めて運用し、その成果を投資家に返す。だから投資対象となる企業の選別は極めて重要だ。コモンズ投信は30年後に成長している企業を選別し、投資するファンドを売り物にしている。長く勤めるのを前提にした就活生なら、コモンズ投信の目線は企業を選ぶ参考になりそうだ。

 同社の伊井哲朗社長は「これからは、海外でビジネスを伸ばせる会社でないと、将来の成長は期待できない」と指摘する。研究開発費や設備投資費にも注目するが、伊井社長は「海外売上高比率や外国人社員比率をみて、グローバル展開の可能性を判断する」という。

 役員陣のプロフィルや社員の年齢構成も、将来性を見る材料となる。これからはライバル企業は国内とは限らない。将来を展望した成長を考えるなら、海外の同業他社との比較も必要だ。

 就活の関連情報はこちらへ 大学面では就職活動中の大学生の疑問や不安にこたえる記事を掲載しています。関連情報を電子メールdaigaku@nikkei.co.jpへお寄せください。



2015/03/09 本日の日本経済新聞より「文武両道、効率で勝負 名大150キロ投手の七原さん 受験勉強、弱点を集中的に 勝てる投球、理由考え抜く」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「文武両道、効率で勝負 名大150キロ投手の七原さん 受験勉強、弱点を集中的に 勝てる投球、理由考え抜く」です。

これぐらいの年齢の時から、このような考え方ができる方は大成する、まさにその確固たる事例として取り上げます。非常にロジカルでこのスタンスに集中しているところが素晴らしく思います。地頭の違いなど、七原さんにあって自分に無いものを理由にして、自分ではまねできない、このような卑下はやめた方がよさそうです。地頭がなくともスタンスは堅持して、ご自分ができることをしっかりやることが大切と思います。





 学生スポーツの永遠のロールモデルともいえる「文武両道」を地で行く大学生が名古屋にいる。名古屋大のエース兼4番打者だった七原優介さん(22)。最速152キロの快速球でプロのスカウトをうならせてきた。野球も勉強も、徹底的に弱点と向き合って解決を試みるのが彼の流儀だ。

徹夜はしない

 ――高校からエースで4番でしたね。難関の名大に現役合格するまで、どのように受験勉強をしましたか。

 「高3の夏、愛知県予選の3回戦で敗れてしばらくは切り替えができませんでした。新人戦を見に行き、気持ちの整理がつきました。9月からは受験に向けて問題集を解き始めました」

 「勉強は弱点を埋めていく作業です。間違えたところを集中して覚えるように心がけました。休日の勉強時間は家で4、5時間くらい。徹夜は一度もしたことがありません。試験で眠くてボーッとしたら意味がないじゃないですか」

 ――具体的にはどんなやり方で勉強を。

 「日本史や生物は覚えるだけでした。数学も解き方を理解していればあとは頭の体操です。わからなければすぐに解答を見ました。要はどれだけ問題をこなすかです。英語も長文は慣れですし、単語は文法や例文の中で覚える工夫をしました」

 ――効率をかなり重視されていたとか。

 「私は朝は寝たい時間まで寝て、見たいテレビがあれば我慢せずに見る。残った時間をどこまで効率的に使って勉強するかを考えていました」

 ――効率的な勉強法を野球の練習にも応用されたのですか。

 「大学に入って強く意識するようになりました。限りある練習時間の中で、考えて練習に取り組みました」

 「高校時代の直球の最速は142キロ。大学1年生の時は4部リーグでも簡単に打たれる投手でした。そこで目標にしたのは勝てる投手です。どうしたら勝てるのか、打ちづらいのか。理由を考え続けました」

 「勉強もスポーツも急に良くはなりません。目標を持った積み重ねが大事です。直球が152キロを計測したのは大学に入学して1年以上たってからです。足りない筋肉を強化し、体幹を鍛えていたら、出ちゃった感じでした」

卒論は「部活」

 ――体育会と学業をどう両立しましたか。

 「授業には基本的に出席していました。1限目が始まる10分前には教室に着けるように、自宅を出ていました。成績は良くもなく悪くもなく。卒論の関連を除けば3年生までに単位をすべて取り終えました」

 ――文武両道は難しくなかったのですか。

 「難しいとは思います。高校も大学も部活の練習時間は短かったです。重要なのは部活は部活、勉強は勉強とけじめをつけることではないでしょうか」

 ――大学の卒論のテーマは。

 「専攻は教育社会学で、卒論のテーマは『高校の運動部活動』。日本の部活は世界的にも特殊です。なぜ勝利至上主義を貫くのか。日本の部活が成立した歴史や背景から研究しました」

 ――4月からは社会人野球の名門、トヨタ自動車に進みます。同じく国立大の豪腕で注目された田中英祐投手(京大)はロッテに入団しました。

 「すでに練習に合流していますが、体力作りの毎日です。プロ野球に行けるかは別として、目指すのは重要だと思っています。そのためには勝てる投手に成長しないと、ここに来た意味もありません」

2015/03/02 本日の日本経済新聞より「池上彰の大岡山通信 若者たちへ (34)ピケティ氏の格差論 質高い教育、社会のために」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「池上彰の大岡山通信 若者たちへ (34)ピケティ氏の格差論 質高い教育、社会のために」です。





 いまさらの感がありますが、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏のブームが続いています。「資本主義経済の下では、放っておくと格差が拡大してしまう」という主張は、国会の論戦でも取り上げられ、改めて日本の格差問題もクローズアップされるようになりました。

 主な分析は、資本収益率(r)は経済成長率(g)を常に上回り、資本を持っている人は、一般の人より豊かになるというものです。

 ただし、ピケティ氏の書いた本の題名が『21世紀の資本』というだけに、マルクスの『資本論』と比較されることが多いのですが、マルクスが言う「資本」とピケティ氏の「資本」とは内容が異なります。マルクスの資本は生産手段のこと。資本家が所有する工場などを指します。これに対してピケティ氏の資本は、利息や配当金などの収入も含まれ、資産と言った方が実態に近いのです。

 資産家ほど財産が増え、財産を相続で子孫が受け継ぎ、富める者はますます富む。わかりやすい理論です。ピケティ氏の功績はこれを膨大なデータで実証したことです。

◇ ◆ ◇

 1月末、ピケティ氏が来日すると、講演会やインタビューが目白押し。売れっ子タレントのような過酷なスケジュールをこなして離日しました。

 フランスの思想家が、これだけ日本でもてはやされるのは、1966年に来日した実存主義の哲学者ジャン=ポール・サルトル以来ではないでしょうか。

 1月31日、ピケティ氏は東京大学の本郷キャンパスで、主に東大生を対象に講演しました。これを傍聴させてもらいました。

 講演の主な内容は、著書に書かれていることの説明です。学生たちは著書を読んできているものと思われるのですが、そんなことにはお構いなしに丁寧に解説します。隣で講演を聞いていた作家の佐藤優氏は、「ピケティという人は優しいねえ。聴衆が自著を読んでいないことを前提に話をするんだから」と感想を述べます。感嘆なのか皮肉なのか不明でしたが。

 ◇ ◆ ◇

 授業後、学生からの質問は英語に限定。学生たちは見事に英語で質問します。

 ピケティ氏は、講演の中で、所得格差は教育格差につながり、裕福な家庭の子は、君たちのように質の高い教育を受けることができ、それがまた格差を固定化すると話していました。

 これを受けて、学生の質問は、「質の高い教育を受けられる僕たちのような者は、何をすべきなのでしょうか」というものでした。これには会場が沸きました。

 ピケティ氏は、「親は選べないからね」と受け、「金持ちの家に生まれたことを卑下する必要はない」と答えました。これには会場が苦笑します。

 その上でピケティ氏は、「君たちは高いレベルの教育を受けることができたのだから、それを社会のために役立てることを考えてください」と呼びかけました。

 質の高い教育を、自分のために役立てるのでなく、社会のために役立てる。これこそ、本当の意味でのエリートの姿勢なのだということを、ピケティ氏は訴えたのです。

大岡山は池上教授の活動拠点である東京工業大学のキャンパス名に由来します。日経電子版に「大岡山通信」「教養講座」を掲載しています。▼ビジネスリーダー→就活・仕事→「池上彰の大岡山通信 若者たちへ」「池上彰の教養講座」

2015/02/05 本日の日本経済新聞より「青学大、最強集団「半歩先に目標」 箱根駅伝初Vの陸上競技部・原晋監督」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「青学大、最強集団「半歩先に目標」 箱根駅伝初Vの陸上競技部・原晋監督」です。





 第91回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)で初優勝した青山学院大学陸上競技部の原晋監督(47)が日本経済新聞のインタビューに応じた。「ワクワク大作戦」を合言葉にチームの明るさを前面に打ち出し、従来の陸上界にない発想で弱小集団を強い組織に変貌させた。就任11年目で悲願を達成した原監督に躍進の秘密を聞いた。

 優勝メンバーが多くチームに残り、早くも連覇を期待する声が出ています。

 何を言ってるんですか! 選手には走る気持ちが湧いたら練習しよう、当分休もうぜ、と言いました。年に1度のビッグイベントで、大会新記録で優勝したんですよ。

 遮二無二1年間やってきたのに、明日から練習となれば誰でも嫌になる。仕事でも大きな成果を出した翌日からすぐ、働かされたらうんざりするでしょ。きっちり切り替えるためにも喜びに浸ることは大事。成功体験は脳に残り、次の意欲につながりますから。

 中国電力を退社し、OBでもない青学大の監督に就任しました。あえて新天地に飛び込んだ理由はなんですか。

 人間、退路を断って初めてエネルギーが出る。みんな頑張ってます、と言うけど実際は崖っ縁の随分と手前。僕が尊敬する坂口さん(泰氏、中国電力陸上部監督)はエスビー食品を辞め、中国電力で陸上部をゼロから立ち上げた。私が青学大に行くのも100人中、100人が反対しました。

 期待されて陸上選手として中国電力に入社したが、まったく恩返しもできずに現役を引退した。指導者として今度は逃げまい、と誓いました。

 中国電力時代、“伝説の営業マン”と呼ばれたそうですね。ビジネスでもまれた経験は選手の指導・育成に生かされていますか。

 伝説のカリスマ営業マンでしたよ。本当に(笑い)。1つの目標に向かってどう取り組むのか、鍛えられました。今でも根っからのサラリーマンという気持ちは変わりません。就任前は3~4年で箱根出場、7~8年でシード権、10年で優勝争いと大学側に僕のビジョンを説明しました。サラリーマンでも信頼を勝ち取るには、ある程度時間がかかります。陸上の指導もビジネスと同じです。

 指導する上で、工夫した点はありますか。

 ビジネスマン時代の習慣だった「目標管理シート」をチームに取り入れました。A4用紙に1年間の目標と1カ月ごとの目標、その下に個人の具体的な目標を書き込む。これを6人のグループミーティングで進捗状況など随時、チェックします。大事なのは自分で目標を決め、自分の言葉で具体的に書き込ませることです。これが選手の「自立」につながるのです。

 自分は体幹が弱いので、この練習を何回繰り返すといった具体的な数字を書かせます。もう少し速く走る、といった抽象的な目標はダメ、実現がほぼ不可能な目標設定もいけません。私は「半歩先」が口癖です。一歩一歩とよく言いますが、それより少し手前のイメージ。今できることの半歩先を見つめながら、少しずつ向上していくだけでも4年間でものすごい成長につながるのです。

 明るさ、そして「チャラさ」がチームの代名詞になっていますね。

 Qちゃん(高橋尚子選手)を育てた小出義雄さんも外向きは明るいが、厳しい練習で有名です。我々も明るさや楽しさが今は表に出ていますが、陰では血のにじむような努力をしている。(練習を見てもらうと)あれ、原さんって笑顔で楽しくなんじゃなかったの、と驚くんじゃないかな。

 陸上部を本気で強化するためには専用グラウンドを持つなど練習環境の整備も重要でしたね。

 当初は専用グラウンドがなく、強化費も少なかった。しかし、それで箱根に出られないといった愚痴は一切、吐きませんでした。与えられた環境の中でできることを探して取り組むことが大切です。ただ強くなるにはこれが必要、と大学とは粘り強く交渉しました。

 僕が言わないと動いてくれなかったんです。「改革マインド」ですね。男ですから。ぐだぐだ遠回しに言っても仕方ない。営業でもどちらかと言えば、はっきり言う方でした。うちは陸上部長が低姿勢な方。2人でバランスが取れている。僕みたいなのばかりいたら組織はつぶれちゃうけど、特攻隊長もいないとダメじゃないですか。

(聞き手は企業報道部 阿部将樹)

 はら・すすむ 広島・世羅高3年時に主将として全国高校駅伝で2位。1989年中京大卒業後、中国電力に陸上部1期生で入社。93年には主将で全日本実業団駅伝初出場。27歳で引退。社業に専念し10年間のサラリーマン生活を経て、2004年に青学大陸上部監督に就任。