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一目均衡 「破壊者」が消える市場 米州総局 山下晃 2017/11/21 本日の日本経済新聞より

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 今年6月、米アマゾン・ドット・コムが生鮮小売りホールフーズ・マーケットの買収を発表すると、世界中の生鮮食品を扱う小売り株が一斉に売られた。

 アマゾンに買収を助言した米金融大手ゴールドマン・サックスの投資部門責任者、グレッグ・レムカウ氏が、こんな小話を披露してくれた。

 「アマゾンが入ってきたらすぐ逃げろ。そのビジネスは崩壊する」

 落ちはこう続く。「だけどアマゾンが狙わないなら逃げ出した方がいい。そのビジネスは、もうからないに違いないからだ」

 アマゾンにアップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、フェイスブックを加えたIT(情報技術)の「ビッグ5」の株価は、破竹の勢いを続けている。

 IT5社合計の時価総額は、2017年に入って1兆ドル(約113兆円)増えた。主要500社合計の増加額は2.8兆ドルだから、5社だけで3分の1を占める。

 これと裏腹に、ゼネラル・エレクトリックやIBMといったかつての代表銘柄はさえない。企業や産業の新陳代謝が経済と株価をけん引する米国のダイナミズムは、なお健在のようにみえる。

 だが目を凝らすと不安の種もある。一つは、IT企業の新規株式公開が低調なことだ。

 米データトレック・リサーチによると、17年1~9月に米国で株式を新たに上場したIT企業は15社。アマゾンがサービスを始めた95年から2000年までは年平均で200社超あったのに、15年は35社、16年は25社と新顔の登場ペースは年々鈍っている。

 背景には長引く低金利とカネ余りがある。行き場をなくした投資マネーは未公開株市場へ流れ込み、企業はわざわざ上場しなくても事業資金を集めやすくなった。クラウドサービスなどの技術の進化で、事業を軌道に乗せるまでのコストが小さくなった面もある。

 また、成長のために市場を使いこなそうとする意欲が企業に薄れているようにも見える。

 音楽配信のスポティファイは新株発行も売り出しもせずに新規上場する「ダイレクトリスティング」を検討し、民泊仲介のエアビーアンドビーも同じ手法を研究しているという。

 これがまかり通れば、株式市場は創業者らの初期投資を回収するだけの場となり、投資家から広く集めたお金を成長のエンジンに変える機能は弱まる。

 もしアマゾンをはじめとするビッグ5が未上場だったら、米市場はビジネスモデルの行き詰まった企業ばかりとなり、今の活況はなかっただろう。

 データトレック創業者で、長く投資分析に携わるニック・コラス氏はこう警告する。「投資家が常に探しているのはディスラプター(創造的破壊者)だ。それが市場の外側だけに存在するのなら、株価には悪い影響しか残らない」



建設現場に週休2日制導入、工事原価7%増も 不動産会社は反発 も 2017/11/17 本日の日本経済新聞より

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 総合建設会社(ゼネコン)でつくる日本建設業連合会(日建連)は2022年3月期までに、施工現場を週休2日制に移行する方針を固めた。工事原価の7%以上の増加につながると見る建設会社が多い。施主側に一定負担を求める考えだが、不動産会社は反発している。建設需要が一段落するとされる東京五輪後をにらみ、両者のさや当てが激しくなりそうだ。

 「週休2日なんて無理と認めてきたタブーに業界の命運をかけてチャレンジする」。建設業界の人手不足を受け、日建連はこのほど「週休2日実現行動計画試案」を取りまとめた。施工現場はこれまで週休1日が多かった。会員各社に週休2日制へ移行を働きかける。

 施工を担う下請け業者は日給制が多い。週休1日から2日に単純に移行すれば実質賃下げとなるが、元請けが人手を確保するには下請けへの支払賃金を維持する必要がある。単純計算で下請け業者の日給は1.2倍となり、工期も長くなる。

 建設会社の労務費は工事原価の4割前後を占めるとされる。さらに工期が延びれば建機リース費や仮設費なども膨らむ。日建連の会員企業への調査では、週休2日へ移行すると延べ52社のうち26社が工事原価で7%以上、17社が5~7%の上昇につながると答えた。

 工事原価が7%上昇すれば影響は大きい。ゼネコン売上高上位10社の2017年3月期連結決算で試算すると、売上高と販管費が変わらず工事原価が7%増えれば7社が営業減益、3社が営業赤字に転落する。日建連の山内隆司会長(大成建設会長)は「生産性向上でコストアップを吸収する努力を重ねていきたい」としつつ、「必要な経費は請負代金に反映させる」と強調する。

 建設業界の動きに発注者側の不動産業界は反発している。不動産協会の菰田正信理事長(三井不動産社長)は「建設業の働き方改革に協力する」としたうえで「生産性向上や重層の下請け構造など、建設業がきちっと取り組みを進めることが大前提」とくぎを刺す。

 建設会社と不動産会社の関係は12年頃から変わった。かつては供給過剰を背景に建設会社が不動産会社に買いたたかれるケースが目立ったが、震災復興や五輪需要などを受けて建設会社が価格交渉で優位に立つ場面が増えた。今回の週休2日制移行を建設業界が持ち出したのもその延長線にあるとの見方もある。

 大和証券の寺岡秀明シニアアナリストは「値上げが始まるのは早くて21年3月期だが、どこまでコストに影響するか不確定要素が多い」と話す。焦点は建設需要の動向だ。東京五輪後に需要をどの程度確保できるかどうかで両者の価格交渉力が変わり、業績にも影響してくる。(大西康平、和田大蔵)



一目均衡 「灰色のサイ」を手なずけよ 証券部 土居 倫之 2017/11/14 本日の日本経済新聞より

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 2008年のリーマン・ショック後、「ブラックスワン(黒い白鳥)」という例えが金融・資本市場で盛んに言われた。成長と金融緩和が併存する「ゴルディロックス(適温)相場」が広がる今、市場では「灰色のサイ」が意識されている。

 ブラックスワンは確率は低いが、起きたときには市場に甚大な影響を及ぼすリスクのこと。黒い白鳥はめったに現れないことに由来する。

 一方、灰色のサイは、高い確率で存在し、大きな問題を引き起こすにもかかわらず軽視されがちな問題を指す。サイは灰色が普通で、普段はおとなしい。だが暴走し始めると誰も手を付けられなくなる。米国の作家、ミシェル・ワッカー氏が著書「グレー・リノ(灰色のサイ)」で示した。

 世界の金融当局者で灰色のサイに触れたのは、おそらく中国が初めてだろう。「ブラックスワンの出現だけではなく、灰色のサイのリスクも防がなければならない」。中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は4日、こんなメッセージを出した。

 周氏が考える中国の灰色のサイは、高成長の代償として積み上がった膨大な民間債務だ。国際通貨基金によると、金融を除いた中国の民間債務の国内総生産比率は2016年に235%、22年には290%に達する見通し。その水準の高さは中国経済崩壊論の論拠のひとつとされ、当事者で退任を間近に控える周氏も強い警告を発する。

 灰色のサイは世界のあちこちにいる。日本の場合は人口減少・少子高齢化だ。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、40年の日本の総人口は1億1000万人、65年には8800万人となる。うち38%に当たる3380万人が65歳以上の高齢者だ。医療費や年金など社会保障費用の急増や経済成長率の一段の低下は免れない。人口減社会は静かに訪れるが、ひずみは一気に噴き出す。

 欧米では、所得格差の拡大や固定に対する国民の反感がポピュリズム(大衆迎合主義)を招いた。

 中国の習近平(シー・ジンピン)総書記は党大会で確固たる権力基盤を確立した。日本では安倍晋三首相が10月22日の衆院選で圧勝し、政治基盤を固めた。

 安倍氏を「先進国で最も強い政治リーダー」と評価する米ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長は、「安倍首相は人口減少に対処するために移民の受け入れという政策を決断すべきだ」と提言する。

 日経平均株価は約26年ぶりの高値水準に上昇してきた。世界の投資マネーが業績が好調な日本株になだれ込んでいる。突発的なリスクとして考えられるのは北朝鮮問題ぐらいだろう。

 だが適温相場は「ぬるま湯」と同義だ。せっかく強い権限を持ったリーダーが現れても、その心地よさが灰色のサイという構造問題の解決を先送りさせるインセンティブ(誘因)になりかねない。



一目均衡 市場騰勢 景気を反映か編集委員 志田富雄 2017/10/24 本日の日本経済新聞より

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 23日の日経平均株価は過去最長の15日連騰を記録した。だが、相場上昇は日米の株価だけではない。景気の先行指標とされる商品相場も内外で高い。

 内閣府が発表する景気動向指数で、日経商品指数42種は先行指数を算出する指標のひとつに採用されている。その42種の前年同月比の上昇率は9月末値で14%台まで拡大。上昇率が1ケタ台に落ちた4~6月の減速を脱し、7年半ぶりの勢いを回復した。

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 北朝鮮情勢の不透明感はあっても内外の景気が上向き、さまざまな生産活動が盛り上がっていることは間違いない。

 ただ、指数を押し上げる商品に温度差はある。日経商品指数を構成する42品目のうち、非鉄金属と金の計8品目の上昇率は9月末時点で36%に達し、鋼材(7品目、上昇率は15%台)や石油化学製品(5品目、同12%台)を上回った。

 国際指標になるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物は、鋼板メッキなどに使う亜鉛が今月、一時1トン3300ドル台まで上昇し、リーマン・ショック前に遡る10年ぶりの高値を記録した。

 電力インフラなどの需要が多い銅も先週、1トン7000ドル台の水準を3年ぶりに回復した。

 非鉄金属、鉄鋼といった金属類は世界需要の半分近くを中国が占める。景気下支えのために中国政府がインフラ投資を増やし、金属需要の拡大につながった、というのが市場の解釈だ。

 ただ「需要は拡大しているにせよ、7月以降の非鉄上昇は急すぎる」と、マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役は指摘する。

 そこには非鉄金属や金を押し上げたもうひとつの要因がある。ドル安に連動した投機だ。

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 米インターコンチネンタル取引所(ICE)に上場するドル指数は、今年初めに付けた約13年ぶりの高値をピークに下げに転じた。6月以降はドル売り・ユーロ買いが加速し、9月上旬にドル指数は2015年1月以来の低水準に低下した。

 商品相場が大きく崩れた14~15年はドル指数が急上昇した局面であり、中国などの新興国や商品市場に滞留していたマネーはドル資産に回帰した。

 ドル安局面への転換でマネーは商品市場に向かった。だが、あらゆる商品が上昇するスーパーサイクルはもはや過去のものだ。原油も上げ基調を強めてきたとはいえ、上値はシェールオイルの増産能力が抑える。

 「商品市場での資産運用は指数連動から、上場投資信託(ETF)や個別先物への直接投資が増え、マネーは上がりやすい商品に集中しやすい」(新村代表)

 非鉄金属が需給の変化以上に急騰した理由だ。

 日米の株高も商品相場の上昇も、上向く景気に呼応したものと言える。だが、その勢いまでが景気を反映したものかは話が別だ。非鉄投機を加速したドル安には基調転換の気配も見える。



転機の消費株(2) アマゾンが呼ぶ株安進む「中抜き」 店舗収益圧迫 2017/9/28 本日の日本経済新聞より

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 「この古着、300円で売ります」。交流サイトのフェイスブックにある国際基督教大学(東京都三鷹市)のグループ。ここでは1800人超の在校生や卒業生が、手数料がいらないフリーマーケット機能を使い、洋服や家電、教科書などを売買している。

 在校生の岩田奈那子さん(21)は「写真を撮って投稿するだけなので簡単」と笑顔で語る。学内などで受け渡しするので業者が入り込む余地は無い。こんな「フリマ経済圏」が今後は全国のキャンパスで広がりそうだ。

 国内ではフリマアプリ最大手のメルカリ(東京・港)が火を付けたフリマ人気。経済産業省によると、フリマアプリを通じた個人取引の国内市場規模は2016年に推定3052億円に達した。単館の百貨店で国内最大の売り上げを誇る、三越伊勢丹ホールディングスの伊勢丹新宿本店(2685億円)をすでに上回る大きさだ。

 こうした電子商取引(EC)は売り手と買い手を直接結びつけるため、実店舗が主体の小売業にとっては「中抜き」につながりやすい。なかでも大きな脅威となっているのが、インターネット通販の米アマゾン・ドット・コムだ。

 「アマゾン恐怖銘柄指数」――。お膝元の米国では、アマゾンの成長で業績が悪化する五十数社の株価を組み入れた指数が登場している。「デス・バイ・アマゾン」という別名もあるほどだ。大手百貨店のメーシーズやオフィス用品販売のオフィス・デポなどの株価下落で、同指数は22日時点で14年末に比べて3割安い水準だ。

 日本も対岸の火事ではない。「日用品やペット用品ではアマゾンが最大の商売敵だ」。ホームセンター最大手、DCMホールディングスの熊谷寿人・取締役執行役員はこう語る。

 アマゾンは20日、日本でオフィス用品などの法人向け通販を始めたと発表した。競合するアスクルの株価は翌21日からの3営業日で8%も下落、MonotaROも14%安となった。

 店舗に足を運ばず、時間と労力を節約したい消費者は増える一方だ。「ここ2年くらいはスーパーに行った記憶がない」。都内に住む会社員の井上真理子さん(26)。日用品はもちろん、ミネラルウオーター、牛乳、納豆などの飲食料品もアマゾンで購入している。

 アマゾンは8月に高級スーパーの米ホールフーズ・マーケットを買収し実店舗にも進出。経営ノウハウを蓄積する一方、生鮮品のネット宅配拠点にも活用するもようだ。「我々もアマゾンに買収され、倉庫になってしまうのでは」。国内の大手食品スーパー幹部は危機感を強める。

 国内上場の小売業、約260社の26日の時価総額の合計は約32兆円。すべて束になっても、アマゾンの時価総額、約51兆円の6割程度と遠く及ばない。

 成長力の差も大きい。国内上場の小売業の時価総額は5年前と比べると2.3倍だが、アマゾンは5.8倍だ。株式市場は、ネット消費時代の本格到来を高らかに告げている。



一目均衡 「ピュアプレー」の時代 証券部 川上穣 2 017/9/25 本日の日本経済新聞より

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 9月12日、ニューヨーク市中心部にある高級ホテル、ピエールで2人のエドが向き合った。

 「2つの偉大な企業が一緒になり、やがて3つの事業に分割される。素晴らしい結果を生むはずだ」

 著名人が集う金融会合で、「物言う株主」といわれるトライアン・パートナーズのエド・ガーデン最高投資責任者が満足げに語った。

 その傍らでダウ・デュポンのエド・ブリーン最高経営責任者(CEO)が応じた。「トライアンの建設的な提案に感謝している」

 9月1日、米ダウ・ケミカルと米デュポンが統合し、世界最大の総合化学グループ「ダウ・デュポン」が生まれた。巨大化が目的ではない。農業・素材・特殊素材に分割し、それぞれが独立企業として上場を目指すことが最大の狙いだ。

 「官僚主義がはびこる持ち株会社を打破し、グローバルな事業部門が権限を握るべきだ」。トライアンは統合交渉で主張し続けた。大胆な3分割は株主の意向を反映したものでもある。

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 「コングロマリット(複合企業)の時代は終わった」。スウェーデンの投資会社セビアン・キャピタルの創業者は最近、英フィナンシャル・タイムズ紙にこう語った。今後5~7年の間にM&A(合併・買収)市場で起きるのは「脱・合併だ」とする。

 相乗効果の薄い事業を抱えていては経営資源が分散され、企業価値が高まらない。株主に突き動かされ、欧米企業は単一事業で勝負する「ピュアプレー」にカジを切ろうとしている。

 欧州ではデンマークの海運複合企業A・P・モラー・マースクが石油部門を仏トタルに売却すると8月に発表した。コンテナなど船舶事業に集中する。医療や産業機械に力を入れてきた独シーメンスですら「最後に明かりを消す複合企業にはならない」(ジョー・ケーザー社長)と、さらなる変革への意志を示す。

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 なぜ今、選択と集中のうねりが起きているのか。

 外資系投資銀行の首脳は「機関投資家が上場投資信託(ETF)という手段を得たのが大きい」と解説する。かつては米ゼネラル・エレクトリック(GE)のような複合企業への投資を通じて、分散投資の効果を得ることが多かった。

 だが、各国の株式や債券を自在に組み入れるETFがあれば、分散投資は容易になる。一方で企業には強みのある単一事業への特化を求め、市場平均を上回る超過収益の源泉にするようになった。

 日本では、東芝が半導体メモリー事業の売却先に日米韓連合を選んだばかり。苦肉の策としての事業切り出しが、アップルなど有力な米IT(情報技術)企業の資金拠出を促した。

 4月には、事業の切り出しを後押しする「スピンオフ税制」が国内で導入された。海外の物言う株主たちが日本企業への関心を高めているとの声も聞かれる。ピュアプレーの時代が日本でも来るのか。



世界企業 日本の立ち位置(3)労働分配率、日米欧で低調 2017/ 9/5 本日の日本経済新聞より

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 最高益なのに賃上げに慎重な日本企業。企業の生む付加価値のうち従業員の取り分を示す労働分配率は、2011年をピークに低下が続く。米国も08年の金融危機以降、低下基調にある。グローバルな企業間競争が強まるなか、ロボットを使った自動化や非正規雇用の拡大、株主還元策を重視した経営などが影響し、人件費は構造的に上がりにくくなっている。

産業ロボットは幅広い企業で導入が進む(ホンダの工場)

 労働分配率の水準を国際比較するため、経済協力開発機構(OECD)の統計を基に企業の生み出した付加価値のうち労働者の所得がどれくらいあるかを日本経済新聞社が調べた。日本の労働分配率は11年に81%のピークを付けて以降、下げ止まらない。15年は74%だった。企業業績は大幅に改善しているが、従業員の取り分は収益の伸びに追いついていない様子が浮かび上がる。

 人件費を見てみると、15年は平均395万円と、11年に比べ2%増にとどまった。一方、みずほ総合研究所によると、同じ間に日本企業のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に受取利息、配当などを加えた付加価値は、60兆円から93.2兆円に膨らんだ。

 12年末の安倍政権発足に続き、13年4月に日銀が異次元緩和を決め円安・株高が進行。足元でも収益環境は底堅い。今年度も日本企業は全体で最高益となる見通しだが、みずほ総研の高田創チーフエコノミストは「労働分配率の低下は世界的に続きそうだ」という。

 米国でも労働分配率は下落傾向をたどっている。金融危機のあった08年に83%だったのが、15年は78%まで低下。欧州連合(EU)は72%前後で停滞している。

 日米欧の労働分配率が低迷しているのは、経済の成熟化と関係が深い。金融、サービスなど非製造業の比率が上昇。製造業でもIT(情報技術)やロボットを活用して多くの仕事が人手から機械に置きかわり、賃金が伸びにくくなっている。

 企業がコーポレートガバナンス(企業統治)を重視する経営を進めている影響もある。労働分配率が下がる一方で、株主への利益還元は右肩上がりが続いているからだ。

 野村証券によると、ゼネラル・モーターズ(GM)やコカ・コーラなど米国の主要な500社は昨年1年間で自社株買いと配当を合わせて総額約9800億ドル(約108兆円)を株主に還元した。アップルやマイクロソフトといったIT大手にとどまらず、金融や製造業のオールドエコノミー企業も株主価値の向上に余念がない。

 日本国内では非正規雇用の拡大など、正社員以外の働き方が広がっている。同時に労働組合の組織率は過去最低の2割弱まで下がり、正社員を中心に物価上昇率や同業他社をにらみながらの賃金交渉は変わりつつある。春季労使交渉のテーマは目先の賃上げから働き方改革に移ってきた。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の斉藤勉エコノミストは「企業収益が高まり、賃金も上昇するサイクルが必要だ」と話す。足元では賃金の伸び悩みが消費を抑え、分配率をさらに押し下げる負の循環が目立つ。

 インフレ圧力が高まらなければ、主要国の金融政策にも影を落とす。米国では利上げがあっても、「ペースは当初の見通しよりも緩やかになりそうだ」(国内証券)との見方は多い。日本国内では依然として金融緩和の出口が見えない。

 行き場を失ったマネーが株式市場に流れ込み、世界で「ゴルディロックス」(過熱も冷え込みもない適温)相場が長期化する要因になっている。



世界企業・日本の立ち位置(1)ROE、低いといわれるが… 資 産効率、日本が米を逆転8年ぶり、構造改革で 2017/9/2 本日の日本経 済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「世界企業・日本の立ち位置(1)ROE、低いといわれるが… 資産効率、日本が米を逆転8年ぶり、構造改革で 」です。





 日本企業は欧米勢と比べて自己資本利益率(ROE)が低い――。海外投資家はたびたび言うが、モノサシを変えると異なる状況が浮かび上がる。2016年の主要企業の総資産利益率(ROA)は、日本が米国をわずかながら8年ぶりに逆転した。財務テクニックに頼らず地道に取り組んできた構造改革が、成果を生みつつある。

 16年の日本企業のROAは2.90%と、5年前と比べて0.37ポイント上昇した。米国は0.36ポイント低下の2.89%。ドイツは1.35%と0.18ポイントの上昇にとどまった。

 ROAは一般的に純利益を総資産で割って算出する。総資産とは、企業が借入金の活用も含めて積み上げた工場や店舗、現金などの全財産。それを活用し、いかに効率的に稼いだかを示す。

 一方、ROEは株主の持ち分である自己資本で利益を割って算出する。両者は効率的に稼ぐかを測る点で近い存在だが、ROEは自己資本を自社株買いなどで減らしても上昇する。財務の技法で見かけ上は改善するため、ROAの方が実態をより表すとの指摘もある。

 日本企業のROAを押し上げる原動力になったのは収益性の改善だ。ROAを構成する要素の一つである売上高利益率は、16年に約4.8%と5年前から約0.9ポイント上昇した。米企業は約9.2%と絶対水準は高いが、原油安による石油関連企業の苦戦が響いて5年前とほぼ同水準だった。

 資産を効率よく使って売り上げを積み上げたかを示す「総資産回転率」は日本が約0.6倍で、米国の約0.3倍を上回る。岡三証券の阿部健児氏は「日本企業は総資産の膨張を抑えながら利益率を高めてきた」と分析する。

 半面、総資産を自己資本で割って出す「財務レバレッジ」は約3倍と米国の4倍台より低い。同指標が高いほどROEを引き上げる効果があり、財務テクニックを駆使してROEをかさ上げする米企業の姿を映し出す。

 日本企業でROAの改善が目立つのがパナソニック。プラズマテレビからの撤退やヘルスケア事業を売却する一方、自動車部品など成長分野に集中投資して収益力を高めた。マツダも「選択と集中」で総資産を抑えつつ採算を上げ、筋肉質な体制をつくった。

 ただ、直近1年間でみると、ROAは日米独ともに低下した。稼いだ現金の使い道を見いだせていないことが背景にある。持続的にROAを高める上で、資金の有効活用は共通の課題となる。

 〈算出方法〉 日米独の主要株価指数である日経平均株価とS&P500種株価指数、独DAXの構成銘柄が対象。QUICK・ファクトセットの財務データを使用し、3月期決算企業は1~12月期に組み替えた。



相場のそもそも(2) 株の投資尺度 PER、低いほど「割安 」 2017/4/6 本日の日本経済新聞より

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 高値づかみは避けたい。投資家なら誰も思うこと。株価が割安か割高かは投資に欠かせない視点だが、見極めるのは結構難しい。

 海路にレーダーがあるように、相場の世界には投資尺度がある。代表的なのはPER(株価収益率)。株価を企業の1株当たり利益で割って算出し、何年分の利益で投資を回収できるかを測る目安だ。数値が低いほど「割安」になる。

 「50倍が普通だった」。楽天証券経済研究所の窪田真之氏は、バブルに沸いた時期を振り返る。適正とされるPERの水準は時代によって変遷する。企業の成長力が強く、投資家が先行きに自信を持てば高い水準が許容されるが、日本経済はバブル後に長期低迷。日経平均株価のPERは足元で15倍前後で推移し、今では割高・割安を見分ける基準の一つになっている。

 悩ましいのは業種や企業ごとに、ばらつきがあること。トヨタ自動車のPERは約11倍。絶対値は「割安」だが、自動車会社の収益は為替変動の影響が大きい。分母の利益が4割減れば、PERは約18倍に上昇。実は「割高」だったとなりかねない。窪田氏は「円高リスクなどへの警戒がPERを抑えている」とみる。

 一方、明治ホールディングスは約25倍。為替の影響を受けにくい食品株は足元でプレミアムがつき、20倍台が珍しくない。事業再構築が一段落したソニーは180倍に迫り、収益が回復途中にある銘柄には「期待」が織り込まれがちだ。

 投資尺度は時代を映す鏡でもある。バブル期には企業の持つ土地や株の含み益を切り口にした「Qレシオ」が活躍。PERで説明できないほど上昇した銘柄を買い上げる理由となった。

 心強い指標も万能ではない。優れたレーダーがあっても、刻々と変わる状況の判断が大切だ。特徴を理解し、投資の海原へこぎ出そう。



戦略を聞く 花王社長沢田道隆氏 世界5強入りへ、高い目 標どう実現EVA経営、現場に浸透 2017/4/1 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「戦略を聞く 花王社長沢田道隆氏 世界5強入りへ、高い目標どう実現EVA経営、現場に浸透」です。





 地道な改革で利益を積み上げてきた花王が昨年12月、大きな目標を打ち出した。自己資本利益率(ROE)や売上高営業利益率を高め、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など大手がひしめく世界の日用品・化粧品市場で5強入りを目指す。沢田道隆社長に戦略を聞いた。

 ――2020年までの中期計画の目標に15%の営業利益率(前期は12.7%)を掲げました。ずいぶんと意欲的ですね。

 「順調に成長してきたが、どこかで止まる。そのときまでに過去との連続性を断ち切って飛べれば、ちょっと落ちても前より高い位置にいられる。社員やグループ資産を見渡すと非連続に飛べるのは今しかない。この4年で将来が決まる」

 ――どうやって高い成長を目指すのですか。

 「4年間で売上高を3000億円伸ばす。おむつなどのヒューマンヘルスケア分野が一番のけん引役だ。日本、中国、ロシア、インドネシアでおむつの改良を続け、高級ブランドを維持する。生理用品や洗顔料も伸ばし、メガブランドを育成する。中国では、おむつ以外で利益の2~3割を稼げるようになった」

 「従来は売上高を5%伸ばすのに費用も5%使ってきた。だが新興国の変化は速く、前例踏襲は通用しない。現場からの積み上げでつくる予算を改め、商品開発やマーケティングをトップダウン型に切り替える」

 ――化粧品事業の改革は進んでいますか。

 「強みがあったのはポイントメークなどの周辺商品。今後はど真ん中のスキンケアを強くする。人件費をかけている百貨店や専門店で利益をしっかり出す。アジアでは、構造改革で2ケタの営業利益率が出るようになった。前期の化粧品の営業利益率は実質2.5%だったが、20年12月期に10%に高める」

 ――ROEの目標は30年12月期に20%(同18.6%)です。資本効率をどう高めますか。

 「EVA経営の浸透だ。株主の視点が入るのでROE向上に有効だ。1999年に導入し投資判断などに使ってきたが、現場が理解していると言えない。全社員をEVAが分かるように教育し、平易な表現で現場の仕事に落とし込む。徹底すれば成長軌道に乗れる」

 ――キャッシュフロー(現金収支)の使い道は。

 「設備投資は年700億~800億円、フリーキャッシュフロー(純現金収支)は1000億円程度の黒字で推移する。増配は絶対続ける。配当性向で40%が目標だ。手元資金が残れば自社株買いをやる。3000億円以上はため込まない」