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相場のそもそも(2) 株の投資尺度 PER、低いほど「割安 」 2017/4/6 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「相場のそもそも(2) 株の投資尺度 PER、低いほど「割安」」です。





 高値づかみは避けたい。投資家なら誰も思うこと。株価が割安か割高かは投資に欠かせない視点だが、見極めるのは結構難しい。

 海路にレーダーがあるように、相場の世界には投資尺度がある。代表的なのはPER(株価収益率)。株価を企業の1株当たり利益で割って算出し、何年分の利益で投資を回収できるかを測る目安だ。数値が低いほど「割安」になる。

 「50倍が普通だった」。楽天証券経済研究所の窪田真之氏は、バブルに沸いた時期を振り返る。適正とされるPERの水準は時代によって変遷する。企業の成長力が強く、投資家が先行きに自信を持てば高い水準が許容されるが、日本経済はバブル後に長期低迷。日経平均株価のPERは足元で15倍前後で推移し、今では割高・割安を見分ける基準の一つになっている。

 悩ましいのは業種や企業ごとに、ばらつきがあること。トヨタ自動車のPERは約11倍。絶対値は「割安」だが、自動車会社の収益は為替変動の影響が大きい。分母の利益が4割減れば、PERは約18倍に上昇。実は「割高」だったとなりかねない。窪田氏は「円高リスクなどへの警戒がPERを抑えている」とみる。

 一方、明治ホールディングスは約25倍。為替の影響を受けにくい食品株は足元でプレミアムがつき、20倍台が珍しくない。事業再構築が一段落したソニーは180倍に迫り、収益が回復途中にある銘柄には「期待」が織り込まれがちだ。

 投資尺度は時代を映す鏡でもある。バブル期には企業の持つ土地や株の含み益を切り口にした「Qレシオ」が活躍。PERで説明できないほど上昇した銘柄を買い上げる理由となった。

 心強い指標も万能ではない。優れたレーダーがあっても、刻々と変わる状況の判断が大切だ。特徴を理解し、投資の海原へこぎ出そう。



戦略を聞く 花王社長沢田道隆氏 世界5強入りへ、高い目 標どう実現EVA経営、現場に浸透 2017/4/1 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「戦略を聞く 花王社長沢田道隆氏 世界5強入りへ、高い目標どう実現EVA経営、現場に浸透」です。





 地道な改革で利益を積み上げてきた花王が昨年12月、大きな目標を打ち出した。自己資本利益率(ROE)や売上高営業利益率を高め、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など大手がひしめく世界の日用品・化粧品市場で5強入りを目指す。沢田道隆社長に戦略を聞いた。

 ――2020年までの中期計画の目標に15%の営業利益率(前期は12.7%)を掲げました。ずいぶんと意欲的ですね。

 「順調に成長してきたが、どこかで止まる。そのときまでに過去との連続性を断ち切って飛べれば、ちょっと落ちても前より高い位置にいられる。社員やグループ資産を見渡すと非連続に飛べるのは今しかない。この4年で将来が決まる」

 ――どうやって高い成長を目指すのですか。

 「4年間で売上高を3000億円伸ばす。おむつなどのヒューマンヘルスケア分野が一番のけん引役だ。日本、中国、ロシア、インドネシアでおむつの改良を続け、高級ブランドを維持する。生理用品や洗顔料も伸ばし、メガブランドを育成する。中国では、おむつ以外で利益の2~3割を稼げるようになった」

 「従来は売上高を5%伸ばすのに費用も5%使ってきた。だが新興国の変化は速く、前例踏襲は通用しない。現場からの積み上げでつくる予算を改め、商品開発やマーケティングをトップダウン型に切り替える」

 ――化粧品事業の改革は進んでいますか。

 「強みがあったのはポイントメークなどの周辺商品。今後はど真ん中のスキンケアを強くする。人件費をかけている百貨店や専門店で利益をしっかり出す。アジアでは、構造改革で2ケタの営業利益率が出るようになった。前期の化粧品の営業利益率は実質2.5%だったが、20年12月期に10%に高める」

 ――ROEの目標は30年12月期に20%(同18.6%)です。資本効率をどう高めますか。

 「EVA経営の浸透だ。株主の視点が入るのでROE向上に有効だ。1999年に導入し投資判断などに使ってきたが、現場が理解していると言えない。全社員をEVAが分かるように教育し、平易な表現で現場の仕事に落とし込む。徹底すれば成長軌道に乗れる」

 ――キャッシュフロー(現金収支)の使い道は。

 「設備投資は年700億~800億円、フリーキャッシュフロー(純現金収支)は1000億円程度の黒字で推移する。増配は絶対続ける。配当性向で40%が目標だ。手元資金が残れば自社株買いをやる。3000億円以上はため込まない」



一目均衡 ハーバードは見ている 編集委員 小平龍四 郎 2017/3/28 本日の日本経済新聞より

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 2月28日午前8時半、米国ボストン。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の授業に1人の日本人が招かれていた。中神康議氏。企業価値を高めるため投資先に経営・財務戦略を提言する資産運用会社、みさき投資の代表だ。

 この日の授業でチャールズ・ワング助教授は、みさきが実施した名古屋のインテリア商社サンゲツへの投資を、ケースと呼ばれる授業の教材に使った。中神氏はケースの主人公として学生との議論に参加し、自社の運用哲学や日本での企業統治(コーポレートガバナンス)改革の進捗などを約90人の学生に訴えた。

 株主の立場から経営改革を促すみさきの手法は、日本が米国から学んできた資本の論理の実践だ。米資本主義の総本山とも称されるHBSが、日本に関して研究しようとしているものは何だろうか。

 中神氏を招いたワング氏の見解はこうだ。

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 米国企業は株主の圧力を受け、あまりにも短期志向になってしまった。株主だけでなくすべてのステークホルダーを重視する日本の事例は、米国とは異なる長期志向を具現しているのではないか、と。

 ステークホルダー重視とはいっても、メインバンク制と株式持ち合いに守られた往年の日本型経営への回帰ではない。ケースに記されたのは、資本効率の向上や株主還元などについてのみさきの提案だ。ただ、その姿勢が要求ではなく説得、時間軸が四半期ではなく5年程度という点が、HBSの学生の関心を引きつけたようだ。

 「みさきに投資したい人はいますか?」。授業の始まりと終わりに学生は同じ質問をされた。始めに手を挙げたのは全体の3分の1以下だったが、議論を経た後は4分の3に高まった。「行き過ぎた短期主義への反省は本当に強いのだろう」。授業後に中神氏はこんな感想を抱いた。それと同時に、資本主義の新しいパラダイムを探そうとする貪欲な姿勢に息をのむ思いでもあった。

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 医療・介護用ロボットのサイバーダインや、新幹線の清掃会社、通称「テッセイ」。さらには日本人がシンガポールで経営する宇宙ゴミ除去のベンチャー、アストロスケール。HBSのケースで近年取り上げられた日本関連のリストを見ると、こうした企業の名前が目を引く。独自の経営哲学や技術、長期ビジョンを持つ企業ばかりだ。そこに今回、「みさき」と「サンゲツ」が加わった。

 「昔ながらの『ニッポン株式会社』の代表企業ばかりでは関心を集められない。特徴ある個別企業の変化を訴える必要がある」。HBSの日本リサーチ・センター長としてケースづくりに関わる佐藤信雄氏は最近、特にそう感じる。

 染みついた短期主義を克服しようとする米国。市場の力で競争力の立て直しをはかる日本。ハーバードが見ているのは、日米がそれぞれ資本主義の位相を進化させようともがく姿だ。



投資のあるある(1)損の悲しみは深く益と同額でも感じ方違う 2017/3/ 23 本日の日本経済新聞より

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 投資、それは心の葛藤を伴う営み。ベテラン投資家も、今春、貯蓄から投資の大海原にこぎ出した新人も皆同じ。「確かにあるある」と、陥りがちな心のワナを学び、対処法を探ろう。

 数値データを重視する経済学は、全ての人間が利潤を最大化するように行動すると規定し、理論を組み立てる。対して「人は機械ではない」と心理学的要素を加えるのが「行動経済学」だ。米国のカーネマン教授らが「プロスペクト理論」でノーベル賞を受賞した。

 クイズで理論を体験してみよう。どちらを選ぶか。

 A「無条件で100万円もらえる」

 B「コイン投げで表なら200万円もらえるが裏ならゼロ」

 次に200万の借金があると仮定する。

 C「無条件で負債を100万円減額」

 D「コイン投げで表なら全額棒引きされるが、裏ならそのまま」

 多くの被験者が選ぶのが「AとD」。だが、実はこれは矛盾した選択だ。どちらの質問でも経済的メリットの期待値は「100万円」。最初のもうけ話で堅実なAを選ぶなら、次の借金でも堅実路線Cを選ぶのが理にかなう。だが、実際に選ぶのはD。借金=損失は、脳内で恐怖体験として処理されるため、確率50%でも損を避けられるなら、可能性に賭ける。それほど「痛い」のだ。

 図はその傾向を、カーネマン教授らが実験を重ねて導き出した曲線だ。まず、人は絶対額よりも参照点(=元本)へのこだわりが大きい。そしてそこからの利益と損失の大きさに反応するが、同じ額でも感じ方が異なる。曲線は損失領域で傾きが急。10万円のもうけで得られる喜びより、10万円の損で被る悲しみは約2倍も大きいのがわかる。

 傷つきたくない人間は損失回避を優先する。次回はその習性が導く「塩漬け株」の仕組みを解説する。



人件費を考える(4) 自ら改革、商機生む アマノ、株価 は最高値視野/富士通、全社でテレワーク 2017/3/11 本日の日本経済新 聞より

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 「第2の時短ショックが起きる懸念がある」。ドイツ証券の松岡幹裕チーフ・エコノミストは働き方改革にこんな警鐘を鳴らす。

富士通エフサスは親会社に先行してテレワークを始めた(自宅で働く同社社員)

 最初のショックは1990年前後。87年の労働基準法改正で、法定労働時間が週48時間から40時間に短縮されたのがきっかけだ。これで労働投入量が減少し、企業業績が悪化。バブル経済の崩壊も相まって、長い経済停滞に突入した。

 だが30年前と違う点もある。働き方改革が刺激となって、収益を伸ばす企業が増えてきたのだ。

 例えばアマノ。残業を管理できる就業ソフトを中小企業に販売し、「労働者の味方」として知る人ぞ知る企業だ。

 2017年3月期は10年ぶりとなるソフトの更新時期。受注活動を強化していたところに「働き方改革の追い風が吹いた」(井原邦弘取締役)。純利益は5%増の88億円の見通しで、3年連続で最高益記録を塗り替える。

 そんな同社は「まず隗(かい)より始めよ」とばかりに残業削減を急ピッチで推進する。原価の5%低減、販売単価の5%引き上げ、販売費・一般管理費の5%削減を意味する「トリプル5」の目標を達成するためだ。成果をソフトに反映し、サービスの質を磨く。

 富士通が3万5000人の全社員を対象に始めるテレワーク(オフィス以外での勤務)にも似た狙いがある。「IT(情報技術)で改革に挑むのは、IT企業の責務だ」(田中達也社長)。自らが「ショールーム」となって模範を示し、新たな需要を掘り起こす。

 総務省によれば、日本の民間設備投資に占める情報化投資の割合は14年で23.4%。米国は36.8%だ。企業が積み上げてきた資本ストックに対する情報通信関連の比率では、日本が3%、米が7%と倍以上の開きがある。働き方改革は差を詰める起爆剤になり得る。

 追い風は幅広い業種に吹き、企業の福利厚生を代行するベネフィット・ワンにとっては「倍の風速だ」(白石徳生社長)。本業以外に人を割けない企業からの業務委託が増えるうえ、余暇時間の増加で福利厚生サービスの利用増も見込めるという。

 レオン自動機には、具材を生地で包む食品をつくる「包あん機」の新規受注がひっきりなしに舞い込む。人手不足の影響は小さな菓子店にも及び、「手作業から機械に切り替えている」と田代康憲社長。取引先が広がり、今期は連続で経常最高益を更新する。

 アマノ株は26年半ぶりの上場来高値更新が視野に入り、レオン株もほぼ右肩上がりだ。期待が先行している面はあるが、市場は株高で働き方改革を側面支援する。

 日本の生産年齢人口(15~64歳、中位推計)は30年に6773万人と今より850万人強減る。経済の活力を取り戻すには、女性や高齢者などの働き手を増やしつつ、「一人ひとりの生産性を高めるしかない」(野村証券の桑原真樹シニア・エコノミスト)。旗をふるのは政府だが、知恵を絞り実行するのは企業だ。



人件費を考える(2)短く働き 大きく稼ぐリンガハット、ロボ調理 ロイヤルHD、深夜営業せず 2017/3/9 本日の日本経済新聞より

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 リンガーハットの店で新たな働き手が活躍している。長崎ちゃんぽんを調理する2つのロボットだ。

リンガハットの野菜炒め機

店員はいため具合を確認するだけ

 注文をとってから最初に稼働するのが、野菜をいためるドラム型の「自動野菜炒(いた)め機」。キャベツやモヤシ、タマネギなどをいためる時間は1分足らず。ムラなく火を通す。

 野菜の入った鍋はIHヒーターがついた「自動鍋送り機」に乗せられ、右から左に自動で流れる。人が厨房でする作業は、鍋に入れた冷凍麺をひっくり返したり、具材とスープをかき混ぜたりするくらいだ。

 重い中華鍋をふるう負担がなくなったうえ、複数のちゃんぽんを同時につくれるようになった。「昔は1年の修業が必要だったのに、今は1日の研修で済む」。秋本英樹社長は目を見張る。

 ロボットが働く店は全体の9割に達した。設置にそれなりの費用はかかったが、人件費抑制の効果は大きく、2017年2月期の売上高経常利益率は30年ぶりに7%台を突破したもようだ。

 思わぬ副産物もある。ロボ導入は少人数での店舗運営を可能にし、ショッピングモールにあるフードコートへの積極出店を後押しした。フードコート店は右肩上がりで増え、今では全店の過半を占める。

 「24時間営業の業態は増えた。ファミレスに必要なサービスなのか」。ロイヤルホストを運営するロイヤルホールディングスの黒須康宏社長は、かねて24時間営業の見直しを検討してきた。

 そこを若者の生活スタイルの変化と人手不足の波が襲った。深夜の来店客が減る一方、働き手の確保が難しくなり、現場の疲労感は強まるばかり。一時は全店の約半分を占めた24時間営業を徐々に取りやめ、今年1月にはついにゼロにした。16年12月期の1日平均の営業時間は16.8時間。今期はさらに1.3時間短くなる。

 営業時間の短縮は売り上げ減に直結する。ロイホの今期の既存店売上高は2%減る見通し。だが売上高経常利益率はかえって上向き、「来期の利益率は短縮前の前期(4.6%)を超す」(黒須社長)。

 カギはメリハリのつけ方にある。店が開いている時間を短くしたのにあわせ、昼食と夕食の時間帯に出す商品を充実させた。この時間帯は単価が高めで、客足が伸びれば利益は大きく増える。

 一方、深夜営業が減った分、従業員の手当やアルバイト代がかからなくなり、人件費の伸びは抑えられた。長時間営業の見直しが従業員1人あたりの付加価値を高めたことになる。

 長時間労働の削減に手っ取り早いのは人手を増やすことだ。だが残業時間をゼロにするための雇用増に伴って発生する費用は、NTTドコモで281億円、パナソニックで207億円になる。調査会社MSCIはこう試算した。「業績への影響は無視できない」(同社の柴野幸恵氏)規模で、株主へのしわ寄せも増す。

 人口減少や過剰労働への批判で、生産性の低さを長時間労働でカバーする今までの構図はもうもたない。企業は新しい働き方を求めてもがくが、従来の発想の延長線上に解はない。



人件費を考える(1) コストから成長投資へ 2017/3/8 本 日の日本経済新聞より

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 会社の経費の大半を占める人件費。これまで企業は抑制すべきコストととらえ、不況時にはリストラの対象にしてきた。だが少子高齢化に直面した今、人件費は成長に必要な「投資」に変わりつつある。使い方を磨けば、稼ぐ力を高められるからだ。株式市場はそうした目線で企業を選別し、改革を後押しする。

■大和ハウス 賞与、労働の効率評価

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「設計集中タイム」では他の仕事を遮断する(大和ハウスの富山支店)

 政府が旗を振るずっと前に、働き方改革へ動いた企業がある。大和ハウス工業だ。

 2015年3月期に、支店単位で決める賞与の算定基準を「社員1人当たり利益」から「社員が働いた1時間当たりの利益」に切り替えた。これで「支店長の意識ががらりと変わった」(人事部の菊岡大輔次長)。

 従来は少ない人数で利益を伸ばせば評価が上がるため、残業が多くなりがちだった。新しい評価方法では残業はマイナスに働くので、部下への適正な仕事の割り振りやはかどり具合への目配りが支店長の腕の見せどころになる。

 効果はてきめん。16年3月期の残業時間は基準変更前の14年3月期に比べて約2割も減少した。残業できなくなった分、社員は仕事の効率を意識して働くようになり、営業利益は2431億円と過去最高を記録。社員の賞与も増え、改革は労使双方にとって吉と出た。

 大和ハウスは「モーレツ」の社風で知られる。それがあだとなって、11年に労働基準監督署から時間外労働の管理が不十分と是正勧告を受けた。未払い賃金を損失計上したうえ、学生にそっぽを向かれかねない状況に。「人材不足が成長の足かせになる」(菊岡次長)。危機感が背中を押した。

 団塊世代の大量退職を迎え、人材不足の解消は企業の悩みのタネだった。そこに政府が働き方改革を打ち出し、呼応するように企業は対策を練り始めた。キーワードは、従業員1人がどれだけ値打ちのある仕事をし、利益を稼いだかを示す「生産性」だ。

■戸田建 AIで従業員を支援

 戸田建設は独自の生産性の目標を18年3月期までの経営計画に埋め込んだ。従業員1人あたりの人件費と営業利益の合計が、15年3月期比13%増の1300万円になるようにする。さらに今期は「1時間あたり生産性」も加え、支店や従業員の評価の物差しにする。

 目標を現場に投げっぱなしにしてはいない。受注の選定作業を支店から本社に移し、建設現場では人工知能(AI)を活用して資材を管理する。「安全性や顧客満足を満たしながら、生産性の最大化を目指す」と鞠谷祐士専務執行役員。

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 カゴメは社員の総労働時間あたり利益目標の導入を検討する。現行の中期計画に自己資本利益率(ROE)の目標はあるが、生産性は意識していなかった。4月に在宅勤務制度を入れ、導入に向けた地ならしを始める。

 上場するニッポン株式会社の収益は過去最高水準だ。だが付加価値額に占める人件費の割合である労働分配率は12年度以降、低下している。人件費の伸びを抑えながら利益を積み上げてきたと言え、デフレを脱しきれないのはそのせいだとの見方もある。年々厚みを増す株主への利益配分とは正反対の傾向だ。

 生産年齢人口の減少が顕著になり、サービス産業を中心に人手不足感が一段と強まってきた。1人当たり人件費が増えるのは必至で、労働生産性を高めないと、結果として株主の取り分も少なくなる。

 ▼付加価値 企業が事業活動を通じて新たに生み出した価値。原価明細を続けて開示している928社を対象に人件費+減価償却費+受取利息・配当金+営業利益(単独)で計算し、労働分配率の算出に使った。 ▼労働分配率 付加価値額に占める人件費の割合。どのくらいが適正かは業種や会社の規模によって違う。日本の場合、好況時に下がり、不況時に上がる傾向がある。 ▼労働生産性 従業員1人あたりの付加価値額。数値が高いほど投下した労働力を効率よく使っていることを示す。



信頼されない日本のCEO編集委員 西條都夫 2017/2/28 本 日の日本経済新聞より

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 日本の経営者にとって、衝撃的な数字が手元にある。世界有数のPR会社、米エデルマンが毎年世界28カ国で実施する「トラストバロメーター(信頼度指標)」。各国で成人1千人強を対象に「あなたは政府やメディアを信頼していますか」を尋ねる世論調査だが、その中に最高経営責任者(CEO)の信頼度についての質問もある。

 その最新の結果を国別に並べると、日本はなんと最下位で、「CEOは信頼できる」と答えた回答者はわずか18%にとどまった。

 ちなみに1位はインドの70%。米マイクロソフトやグーグルの現CEOはインド出身者であり、「優秀なCEOは国の誇り」という感覚が国民全体に共有されているのかもしれない。

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 国別の傾向を見ると、先進国では総じてCEOへの信頼度が低い。経済全体が成熟するなかで、個別の企業もリストラを迫られ、社員や社会に痛みを強いることが多い。それがCEOに対する厳しい評価につながるのだろう。ただ同じ先進国でも日本の低さは突出し、ビリから2番目のフランス(信頼度23%)と比べても5ポイントの差がある。

 なぜこれほど信用が低いのか、不思議な気もする。東芝をはじめ企業をめぐるトラブルや不祥事は絶えないが、あえて弁護すれば、CEO個人が自分の強欲を満たすために不正を主導するといった、米国流の悪質な例は少ないと感じる。

 この疑問に対する、エデルマン日本法人のロス・ローブリー社長の仮説はこうだ。「日本の経営トップが何を考え、何をしているのか、一般の社員や社会が目の当たりにする機会が諸外国に比べて少ない。このvisibility(可視性)の低さが、信頼の低さにつながっているのではないか」――。確かに露出の少ない、なじみのない人間に対して、人々が親近感を抱いたり、その人のリーダーシップに信頼を寄せたりすることはまれだろう。

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 ではどうすればいいか。おそらく「可視性」の高さで傑出する経営者の一人が日産自動車のCEO退任が決まったカルロス・ゴーン氏だ。東日本大震災の直後に、東京電力福島原発にほど近い同社いわき工場に足を運び、「この工場は必ず復興させる」とテレビカメラの前で宣言した。

 米国企業ではユナイテッド航空のオスカー・ムニョスCEOが「visible(よく見える)経営者」として有名だ。愛嬌(あいきょう)のある風貌で各地の空港などを回り、社員と交流する。その結果、現場のモラールが目に見えて向上し、定時就航率が大きく上昇したという。

 政治への信頼が揺らぐと、増税のような「必要だが、痛みを伴う政策」を国民が拒否するようになり、国の将来が危うくなる。それと同じく、CEOへの信頼が薄いと、経営陣がいくら改革の旗を振っても社員が呼応せず、停滞が長期化する恐れがある。今の日本企業はその落とし穴にはまってないだろうか。



投資回復を呼ぶ原油高 欧州総局 黄田 和宏 2017/1/ 24 本日の日本経済新聞より

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 デフレからリフレへと世界経済の潮流が変化するなか、2017年を占う上で投資家が注目し始めているのが「資本的支出」の行方だ。世界の設備投資は2年以上にわたり低迷してきたが、原油相場の持ち直しを背景にエネルギー関連などが呼び水となり、新規投資に資金が向かう兆しが出ている。世界的に政治リスクが高まるなかでも、企業経営者は経済の回復に信頼感を強めている。

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 「世界の資本的支出は14年10~12月期以降で初めて拡大に向かう」。オランダ運用大手NNインベストメント・パートナーズの戦略担当、パトリック・ムーネン氏は、今年が世界経済の大きな転換点になると予想する。これまで企業は新規雇用や設備拡張に慎重で、M&A(合併・買収)や自社株買いを優先してきた。世界金融危機以降では最も長い投資の落ち込みを経験してきたが、ようやく光明が差しつつある。

 最大の要因は原油相場の回復だ。世界の資本的支出の約2割を占めるとされるエネルギー関連の投資はこの2年間で4割減った。米調査会社バーンスタインによると、17年は同産業の開発投資が前年比9%増に転じる見通し。原油高が続くことを前提に、20年にはピークだった14年の9割強の水準に回復するとみる。

 英大手運用会社スタンダード・ライフ・インベストメンツのグローバル戦略責任者、アンドリュー・ミリガン氏は「エネルギー産業の投資回復は他のセクターにも波及効果が大きい」と話す。足元では鉱工業生産が世界的に回復に向かい、過剰在庫に一巡感が出始めている。今後の需要増に向けた投資の好循環が起こる可能性が出ている。

 見逃せないのが資金調達にも勢いが出てきたことだ。欧州の社債市場では年初から早いペースで発行が相次ぎ、仏ソシエテ・ジェネラルによれば、ユーロ建て市場では1月の発行額が600億ユーロ(7兆3500億円)を超える見通し。投資適格社債は09年に次ぐ過去2番目の高水準に達するとみられている。

 多国籍企業が抱える巨額の現金の行方も注目だ。米トランプ政権の政策によるが、米国が法人税を大きく引き下げる可能性があり、企業のキャッシュフローが改善することで余剰資金が新規投資に向かう可能性があるためだ。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスによると、16年12月末時点で米国企業は1兆7700億ドル、欧州企業は9210億ユーロ(同6月末時点)と、過去最高水準の余剰資金を持つ。

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 NNのムーネン氏は「今後1年間の企業収益の増加率は世界全体で1割近くに達する見通しで、新規投資に必要な経営者の信頼感が高まっている」と説明する。世界経済は政治面で保護主義的な逆風を受ける一方、循環的な拡大局面に入る手前にあり、両者がせめぎ合っている。企業には、政治リスクに立ち向かい、必要な投資に踏み切れるかどうかが問われている。



戦略を聞く JT、蒸気たばこ挽回へ大規模投資 日本たば こ産業社長 小泉光臣社長 2017/1/20 本日の日本経済新聞より

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 日本たばこ産業(JT)の経営環境が急速に変化している。日本国内で米フィリップ・モリスの煙が出ない蒸気たばこ「アイコス」が急成長し、従来型の紙巻きたばこの強敵となっている。海外では英大手のブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)と米2位のレイノルズ・アメリカンが経営統合で合意し、新たなライバルが誕生する。どう迎え撃つのか。小泉光臣社長に戦略を聞いた。

 ――2016年12月期の業績は好調でした。今期はどうでしょうか。

 「前期は『ナチュラル・アメリカン・スピリット(アメスピ)』が国内で貢献した。同ブランドの米国外事業を16年に米レイノルズから買収したものだ。年間販売は目標の20億本台後半を達成できたようだ。海外では欧州が伸び、秋以降の円安で海外収益が押し上げられた面もある。抗エイズウイルス(HIV)薬の寄与で医薬品事業の営業利益は過去最高となったもようで、バランスのいい収益構造になってきた」

 「今期は読みにくい。足元の円安はトランプ政権に対する期待先行の感がぬぐえない。シェア首位の英国では喫煙リスクの明示を求める規制が強化される。販売はやや減りそうで、値下げ競争も起こるかもしれない。英国が欧州連合(EU)を離脱する影響も読み切れない。業績計画の数字は2月の決算発表ギリギリまで詰めるつもりだ」

 ――蒸気たばこアイコスにどう対抗しますか。

 「アイコスはたしかに脅威だ。同商品の伸びで、前期は国内販売見通しの下方修正を迫られた。アメスピの販売まで減るとの見方が一部にあるようだが、それは杞憂(きゆう)だ」

 「JTも蒸気たばこ『プルーム・テック』を大都市圏で発売する。吸う際の手間がかからず、香りも自然だ。供給体制の整備へ、静岡県の工場に数百億円規模の投資をすると公表した。これは最低限の数字で、需要次第で上乗せする。プルーム・テックは今後3年程度で黒字化をめざす」

 ――財務面への影響をどうみていますか。

 「株主資本が負債の約2倍あり、かなりの投資でも財務は大して傷つかない。もっとレバレッジを効かせてほしいと一部の投資家から指摘されてもいる。後顧の憂いがない規模の投資をしようと思っている。ただ、政府保有株(発行済み株式の約33%)が放出された際には自社株買いで吸収したいので、相応の現金は残しておくつもりだ」

 ――英BATと米レイノルズが経営統合します。M&A(合併・買収)戦略をどう考えていますか。

 「業界再編につながるような大型買収は難しくなってきた。今後は新興国での買収など地域的拡大につながるものが中心になるだろう。蒸気たばこや電子たばこなどの新分野では、ベンチャー企業なども対象に新たな案件を狙っている」

◆記者の目 M&A軸の成長戦略は困難に

 JTは巧みなM&A(合併・買収)で成長を続け、たばこ業界で世界3位にまでのぼり詰めた。だがここまでくると、独禁法の絡みもあって新たな大型案件は見つけづらい。「M&Aを軸とした成長戦略は厳しくなっている」(野村証券の藤原悟史氏)のが現状だ。

 新たな成長領域として有望視される蒸気たばこではやや出遅れている。株価は昨年11月に昨年来安値を付け、足元も軟調だ。「次の成長戦略」を市場は求めている。

(川路洋助)