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シンゾウとの距離 準同盟国(下) 脱EU、日本接近 後押し メイ英首相 2018/3/1 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「シンゾウとの距離 準同盟国(下) 脱EU、日本接近後押し メイ英首相」です。





 2月8日、灰色の雲が立ちこめたロンドンのダウニング街(首相官邸)。「これまでも日本とは良い関係を築いてきたが、さらに強化したい」。英首相、テリーザ・メイ(61)はトヨタ自動車や日立製作所など18社の日本企業幹部に欧州連合(EU)との離脱交渉を説明した。メイが一国の企業だけを集めたのは初めて。財務相のハモンド(62)ら閣僚3人も同席した。

メイ首相は対日重視の姿勢を明確にしている=ロイター

 日本企業の対英投資残高は米国に次ぐ。会合は首相、安倍晋三(63)からの要請を受けメイが主導した。

■共同で兵器開発

 メイは昨年8月、国際会議を除いては英首相として5年ぶりに日本を訪れた。安倍と経済だけでなく、安全保障で協力を深めることで一致。国家安全保障会議(NSC)にも出席した。

 中国に傾倒した前首相、キャメロン(51)と比べると対日重視の姿勢は明白だ。昨年12月には日英外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の共同声明で装備品の共同開発や共同訓練などの強化を明記。防衛相、小野寺五典(57)は英海軍の新空母「クイーン・エリザベス」を外国閣僚として初めて視察した。

 空対空ミサイルの共同研究を進め、試作品の製造や発射実験を始める。空母のアジア太平洋地域での展開も検討する。日本にとって同盟国の米国以外との攻撃型兵器の共同開発は最初になる。英外務省幹部は「日本はアジアでの安全保障上の最も重要パートナー。関係を次の段階に引き上げる」と言い切る。

 英外交の変化には理由がある。16年の政権交代を伴ったEU離脱の決定だ。離脱時期は19年3月。EUと自由貿易協定(FTA)を締結した場合でも今後15年間の国内総生産(GDP)が予想に比べて5%減るとの試算がある。

 英国はその打撃を和らげようと最大の貿易相手であるEUからの離脱を機に外交の射程をアジア太平洋地域に広げる。英国の対中接近を懸念してきた日本にとっても渡りに船だ。

 ともに米国を同盟国として持ち、海に囲まれた島国。メイは中国との関係にも気を使うが、民主的価値観、法の支配などを共有する日英関係とは性質が全く異なる。

 ケンブリッジ大学特別講師のジョン・ニルソンライト(53)は「事実上の『同盟』といっていいレベルに深化しつつある」と指摘。「米大統領のトランプ(71)のもとで米国の世界への関与が後退する。日英が協力してより多極的な世界秩序を構築する余地は広がっている」と分析する。

 日英は20世紀の初頭、同盟関係にあった。英国は台頭するロシアを抑止するため「栄光ある孤立」をうたった非同盟政策を転換した。日本も英国との同盟でロシアを抑えつつ国際的地位の向上を目指した。

■大事なのは忍耐

 英政府は安倍が掲げる自由で開かれたインド太平洋戦略は地域繁栄の観点から支持した。英政府高官も「将来的な環太平洋経済連携協定(TPP)への参加も選択肢だ」と認める。

 中国の影が消えたわけではない。日本に近づきながら中国国家主席、習近平(シー・ジンピン)(64)が進める広域経済圏構想「一帯一路」にもかかわり「保険」をかける。駐日大使のマデン(58)は「一帯一路と競合する必要はない。インド太平洋地域でインフラが必要なのは明らかだ」と強調する。

 メイは2月1日、初めて公式に訪れた中国・北京で習と会談し一帯一路への協力を表明。一方で26日、安倍に電話して習との首脳会談を報告し「一帯一路は国際的な規範に合致させる」と説いた。

 「永遠の同盟国も、永遠の敵国も存在しない。永遠なのは国益だけだ」。19世紀に英首相を務めた大物政治家パーマストンが残した有名な言葉だ。時々に応じて多極的に戦略を立てるのは英国のお家芸。「効果はすぐに目に見えるものではない。大事なのは忍耐だ」(英政府高官)

 「同盟」という定義にとらわれず、じっくりと関係を進める。英外交戦略には今もなおパーマストンの理念が息づく。=敬称略

(ロンドン=小滝麻理子、政治部 地曳航也)



シンゾウとの距離準同盟国(上) ターンブル豪首相 親 日・親中 揺れる振り子 2018/2/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「シンゾウとの距離準同盟国(上) ターンブル豪首相 親日・親中 揺れる振り子」です。





 1月18日、陸上自衛隊の習志野演習場(千葉県船橋市)に首相、安倍晋三(63)と来日中のオーストラリア首相のマルコム・ターンブル(63)の姿があった。2人で頑強な装甲車に乗り込み、安倍が運転席に、ターンブルが助手席に座ると記者団に笑顔で手を振り和やかな雰囲気に包まれた。

安倍・ターンブル関係はまだ構築途上だ=ロイター

 2人が乗り込んだのは陸上自衛隊が2015年に導入した豪州製の輸送防護車「ブッシュマスター」。両国の防衛協力を内外に印象付けるにはうってつけの材料だ。

潜水艦選定で溝

 防衛省は当初、ターンブル単独で視察する日程を組んでいた。直前になって安倍が「自分が案内する」と加わった。前日夕方にバルト3国など欧州歴訪から帰国したばかり。防衛省内には「安倍はターンブルとの関係を重視している」との受け止めが広がった。

 安倍が提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」は中国を意識したものだ。戦略の推進には、太平洋とインド洋に面し米国とも同盟関係がある豪州は欠かせない存在だ。

 「マルコムを招くことができてうれしい」。安倍は視察後、国家安全保障会議(NSC)の特別会合に参加したターンブルをファーストネームで呼んだ。

 前任のアボット(60)と安倍は互いに保守政治家として相性が合った。アボットは安倍を「最高の友人」と称し、安倍は豪州と「特別な関係」を築いたと誇った。日本の政府高官は、安倍とターンブルの関係を「アボットとの個人的な信頼関係と比べると、まだ及ばない」とみる。

 16年4月の次期潜水艦の選定は両者の関係にさざ波を立てた。アボットは日本の最新鋭潜水艦「そうりゅう」に関心を示し導入が有力視された。ところがターンブルは突如「国内雇用重視」の方針を打ち出しフランスを開発相手に選んだ。

 前政権で通信相だったターンブルは「指導力を発揮できていない」とアボットを追い落とし15年9月に首相に就任した経緯がある。

 ターンブルの中国との間合いも懸念材料だ。実業家時代に中国で鉱山開発に関わり、流ちょうな中国語を操る。就任当初は「親中派」と目された。息子の妻も中国出身だ。

 豪州にとって中国は輸出額の3割弱を占める最大の貿易相手国。経済界を中心に「中国との経済関係を抜きに国は成り立たない」との声もある。

 アボットは親日とされ、その前任のラッド(60)は中国通として知られた。政権によって日本、中国との距離は揺れ動く。

TPPで足並み

 ターンブルは中国への警戒を鮮明にしつつある。17年6月、シンガポールでのアジア安全保障会議。基調講演で「中国は自らのやり方に従う国に経済的に寛大にふるまう一方で、自らの国益に異を唱える相手を孤立させるかもしれない」と中国を名指しで批判した。

 同じ米国の同盟国で、民主主義や国際法に基づく秩序を重んじる日本への信頼は増す。

 「安倍首相と私は米国が環太平洋経済連携協定(TPP)の離脱を表明した時、交渉を頓挫させないよう決意した」。ワシントンで米大統領のトランプ(71)とTPP交渉への復帰を巡って協議。帰国したターンブルは25日、記者団に語った。国内で「TPPは死んだも同然」(豪州の野党党首)と冷ややかな視線にさらされてきた。米国を除く11カ国での署名が決まり、足並みをそろえてきた安倍との距離は近づいた。

 豪州は近年、短命政権が続く。ターンブルは第2次安倍政権が発足してから4人目の豪首相だ。政権が変われば、築き上げてきた準同盟国としての関係が揺らぐリスクはある。

 それでも日豪の連携は加速する。ターンブルとの接近がインド太平洋戦略を進める近道――。これは安倍の確信でもある。=敬称略(シドニー=高橋香織、政治部 加藤晶也)

 国際社会での米国の求心力低下は同盟国、日本に新たな外交戦略を迫る。中国を見据えたインド太平洋戦略の成否は日本が準同盟国と位置付ける豪印英3カ国首脳との関係と連動する。3カ国首脳と安倍晋三首相の距離を探る。

 こんな人 弁護士を経てIT(情報技術)企業を興し事業売却で富を築いた。投資銀行幹部などを歴任し、産業界に人脈が広い。知性派として知られ、同性婚を認めるなど前任のアボットよりリベラルとされる。 シドニー生まれ。幼い頃に両親が離婚し、父親に育てられた。奨学金を得て名門私立校「シドニー・グラマー」で学んだ。最近は副首相が女性問題で辞任するなど政権が揺らいでいる。総選挙に向けて体制の立て直しを急ぐ。



シンゾウとの距離(4) プーチン・ロシア大統領、実利探る「親 日家」 2018/1/18 本日の日本経済新聞より

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 「日本に嫌がらせをするつもりなんてない」。2017年4月、クレムリン(ロシア大統領府)で開いた通訳だけを介した1対1の会談。北朝鮮問題で「善処」を訴えて詰め寄る首相、安倍晋三(63)にロシア大統領ウラジーミル・プーチン(65)はこう答えた。

安倍晋三首相に親密な感情は抱いているが…=共同

 安倍が再考を求めたのは、ロシア極東ウラジオストクと北朝鮮北東部の羅先(ラソン)にロシアが新設を決めた定期航路。過去に不正送金や密輸に使われた貨客船、万景峰(マンギョンボン)号を就航させる計画が明らかになり、制裁破りの懸念が広がった。「事務的に決まったことだ」。プーチンは見直し要求をあっさり退けた。

 プーチンと安倍の会談は20回を数え、安倍の求めに応じて1対1の場も設ける。個人的な関係をテコに2国間の最大の懸案である北方領土問題を動かそうとする安倍に対し、プーチンは米国を意識した世界戦略の中で安倍を見る。極東ロシアでの経済協力への期待はあっても、世界戦略の文脈での実利は明確でない。

 プーチンが親密な関係を築く指導者には共通点がある。中国国家主席、習近平(シー・ジンピン、64)、インド首相ナレンドラ・モディ(67)、米同盟国イスラエルの首相ベンヤミン・ネタニヤフ(68)。愛国者であり、原理原則論は説かず、実利を重視する強い指導者だ。

 柔道家で「親日」のプーチンは長期政権を築く安倍も好みだが、ミサイル・核開発に突き進む北朝鮮の問題で、安倍は米大統領ドナルド・トランプ(71)と共に強硬論を展開している。

 米国への対抗もにらみ制裁に否定的なプーチンの立場と溝が広がる。欧米との対立を決定的にしたウクライナ問題でも、日本の役割は、主要国から疎外されていないことを示す一例でしかない。

 ロシアが併合したウクライナ領クリミア半島での人権侵害を非難した17年12月の国連総会決議。外交筋によると、プーチンは安倍ではなく、韓国大統領、文在寅(ムン・ジェイン、64)やフィリピン大統領ロドリゴ・ドゥテルテ(72)らに協力を求めた。共に米国の同盟国でありながら、韓国は棄権し、フィリピンは反対票を投じた。

 決議直前にはプーチンの側近、連邦安全保障会議書記ニコライ・パトルシェフ(66)と国家安全保障局長の谷内正太郎(74)がモスクワで会っていた。日本はこの会談を終えるのを待って、欧米に追随し、決議の共同提案国に名を連ねた。プーチンは、そんな安倍の胸の内を見透かす。

 プーチンは15年5月の「事件」を忘れていない。モスクワで開いた対独戦勝70年式典。ウクライナ侵攻を理由に欧米首脳がボイコットする中、ソチ五輪の開会式と同じように安倍が出席してくれると思っていた。安倍は間際まで訪ロを探ったものの、最後は米国に配慮した。

 強いロシアの復活を掲げるプーチンは日本の価値を「経済」「対米カード」から測る。欧米と激しく対峙するプーチンがいま注力するのは米国の同盟関係を揺さぶることだ。

 安倍にも「対米カード」としての価値を探るが、対独戦勝70年式典の時のように「肝心な時に米国から独立した外交ができない」との印象がぬぐえない。

 17年4月のモスクワでの会談後の共同記者発表。「ウラジーミル」とファーストネームを連呼した安倍に対し、プーチンは「安倍首相」「安倍さん」と敬称で通した。安倍との距離感を変えながら実利を探る思惑がのぞく。

 プーチンと安倍の1対1の会談時間は減少傾向にある。日本側の発表によると17年4月の安倍の訪ロ時には50分続いた。9月のウラジオストクでの会談は20分、11月のベトナムでの話し合いは15分で終わった。

 3月のロシア大統領選までは動きにくいからか。再選確実のプーチンの次期任期は6年。対日交渉を急ぐ理由はない。=敬称略

(モスクワ=古川英治)=おわり



シンゾウとの距離 世界のリーダー(1)ドナルド・トランプ 打算入り交じる蜜月 2018/1/16 本日の日本経済新聞より

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 「我々には様々なシミュレーションがある」。本題を切り出したのは米大統領、ドナルド・トランプ(71)だった。昨年11月5日の埼玉県川越市のゴルフ場「霞ケ関カンツリー倶楽部」。トランプは首相、安倍晋三(63)とのプレーの合間に歩きながら北朝鮮への軍事的な選択肢を含めた行動計画を明かした。

シンゾウ・ドナルド関係はまもなく2年目に入る=ゲッティ共同

 「率直に聞かせてくれてありがとう」と伝えた安倍にトランプは話を続けた。「北朝鮮情勢のこともある。米国からの防衛装備品の購入を増やしてほしい。現状維持ではなく、さらに、だ」。翌6日の首脳会談後の記者会見で「首相はこれから様々な防衛装備品を米国から購入することになる」と明言した。

2人の電話17回

 「ゴルフは休日の趣味と思われがちだが、私たちは、実は仕事の話ばかりしていた」。トランプは同じ日の夕食会で上機嫌にあいさつした。シンゾウ、ドナルドとファーストネームで呼び合う2人は、過去の日米首脳と比較しても、蜜月ぶりが目立つ。

 日米同盟を基軸に外交方針を組み立てる日本にとって米大統領との関係はその核心だ。こちらの意見を通すにはまずは何でも話せる関係を作らないといけない――。安倍が一昨年11月の大統領選直後にほかの首脳に先駆けて就任前のトランプと会ったのも、そんな冷静な計算からだ。

 トランプの対人関係は明快だ。「私に良くしてくれる人にはきちんと対応するが、扱いがひどかったり、私を利用しようとしたりする人間には激しく反撃する」

 昨年10月末のホワイトハウスの大統領執務室。初の日本訪問を控えて安倍と電話していたトランプは「シンゾウが言うなら考えてみる」と応じた。安倍はフィリピンで11月中旬に開く東アジア首脳会議(EAS)の意義を訴えていた。

 日中韓やベトナムを含め12日間の長丁場となるアジア歴訪で、最終日にあるEASへの出席を当初、見送るつもりだったトランプ。出発直前、一転して出席を決めた。当日の会議の開始時間が大幅に遅れたことで結果的には欠席したが、安倍の助言には耳を傾ける。

 トランプのホワイトハウス入りから1年。2人の電話は表になっているだけで17回を数え、安倍にとって前大統領バラク・オバマ(56)との4年間の回数を超えた。トランプと安倍の相性が合うのは間違いない。

 その逆にトランプは自らに寄り添わない首脳には厳しい態度に出る。就任直後、オーストラリア首相のマルコム・ターンブル(63)と難民受け入れ問題を巡って対立。「不愉快だ」と一方的に電話を切った。

政治は貸し借り

 政治が「貸し」「借り」で成り立つ以上、そこには相性や友情だけでなく、打算も混在する。問題は首脳間の相性や友情、打算が政策まで変えるのかどうか。

 1985年8月15日に靖国神社を公式参拝した当時の首相、中曽根康弘(99)は翌年の参拝を見送った。参拝した場合に良好な関係にあった中国共産党総書記、胡耀邦が国内での権力闘争で足を引っ張られかねないと懸念したとみられた。

 今は蜜月のトランプと安倍の関係もこうした局面が訪れる可能性がある。2018年11月の米中間選挙でトランプ率いる共和党が敗北、20年大統領選の再選に黄色信号がともるとき、安倍は試される。

 核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮への対応など日本の安全保障政策は米国に依存する。一方でトランプが求める防衛装備品の買い増しや、米側の一部に根強い日米の自由貿易協定(FTA)の締結は簡単にのめない。

 米中間選挙の情勢や結果次第でトランプが日本側が警戒するFTAを迫る展開もあり得る。友情と打算が入り交じるトランプと安倍の蜜月関係は2年目を迎える。

=敬称略

(ワシントン=永沢毅)

 首脳同士と国家間の関係は連動する。北朝鮮をはじめ激変する国際情勢を見据え、安倍晋三首相と世界のリーダーとの関係を描く。



シンゾウとの距離(2) 習近平氏、笑顔の下に隠せぬ不信 2018/ 1/16 本日の日本経済新聞より

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 中国の国家主席、習近平(シー・ジンピン、64)は昨年11月、首相、安倍晋三(63)との6回目の会談で唐突に12年前の話を持ち出した。「あなたは第1次政権の時、真っ先に中国を訪問されましたね」。冷え込んでいた日中関係を立て直し、「氷を砕く旅」と評価された訪中だ。

「一帯一路」を支持する相手には柔らかい笑顔をみせる(9日、人民大会堂での中仏首脳会談)

 さらに1カ月前に開いた国交正常化45周年行事に触れると「多くの閣僚と一緒に参加したことを評価しています」。写真撮影で見せた笑顔は一段と柔和になった。安倍を相手に日中関係を改善させるという習からのメッセージだった。

 習は昨年6月、内々に対日関係の改善に舵(かじ)を切っていた。「大国外交を進めるには対日関係も安定させた方がいい」との報告書に承認のサインを入れた。肝煎りの広域経済圏構想「一帯一路」に安倍が協力を表明した時期だ。10月の衆院選で安倍が大勝すると、ギアを一段上げた。

 安倍を信用したわけではない。靖国神社への再参拝や台湾への接近に対する警戒は消えず、会談のたびにクギを刺す。憲法改正の動きも平和路線の転換かと懸念する。11日には尖閣諸島周辺の接続水域に中国の原子力潜水艦が進入した。火種がなくなる気配はない。

 「日本で会えるのを楽しみにしています」。昨年12月、訪中した公明党代表の山口那津男(65)から訪日を呼びかけられた。習は笑顔でうなずきつつ「ようこそいらっしゃいました」とだけ答えた。安倍が提案した18年の相互訪問への回答は、状況を見極めてからだ。

 国民の反日感情を抱える中国にとって日本ほど敏感な相手はない。10年前、訪日した国家主席、胡錦濤(フー・ジンタオ、75)は帰国後に批判にさらされた。習は国家副主席としてそれを見た。2期目に入り権力基盤を固めたとはいえ、対日関係は踏み込みにくい。

 習の政治家としての原点は15歳で下放された陝西省の寒村で過ごした7年間だ。ノミやシラミにかまれながら暮らし、13億人を抱える国の実情を知った。地方幹部の時に受けたインタビューでは「民衆とは何かを理解したのは最大の収穫だった」と語っている。

 だからこそ民衆の反日感情には気を使う。14年の安倍との初会談では「歴史は13億人の中国国民の感情にかかわることだ」と訴えた。安倍も翌日の記者会見で「13億の人々に対する責任感がひしひしと伝わった」と理解を示した。

 習がこだわるのは中国主導の舞台に日本が参加するという構図だ。15年の首脳会談では抗日戦勝70年の記念式典へ安倍の参加を求めた。一帯一路への協力を呼びかけるのも同じ意味だ。日中の立場が既に逆転したことを日本に認めさせて、対日関係を前に進める。それが中国の民衆が受け入れやすい形だと考える。

 一帯一路の協力に積極的な自民党幹事長の二階俊博(78)を重視するのはこのためだ。国交正常化を実現した元首相、田中角栄の流れをくむ二階は歴史や尖閣諸島の問題に深入りしない。自民党の重鎮が国営中央テレビで友好を訴える姿は関係改善の環境を整える。

 習自身は今、表の場で対日関係を語るのを避けている。南京事件80年の追悼式典でも二階との面会でも、その場に同席しながら演説は第三者に任せた。「日本と距離を縮めながら、問題が起きればいつでも離れられるようにしておくためだ」。関係者は解説する。

 調整を担うのは「ハイレベル政治対話」と位置づける政治局員の楊潔?(67)と国家安全保障局長の谷内正太郎(74)の枠組みだ。1月からそろって外務次官として支えるのが孔鉉佑(58)と秋葉剛男(59)。2人は12年前、駐日公使と外務省中国課長の立場で安倍の「氷を砕く旅」をお膳立てした。「髪が薄くなったな」「お前もな」。冗談を交わせる2人が習と安倍の間合いを測る。=敬称略(北京=永井央紀)



もがく野党(上) 遠のく二大政党 元民進勢力、描け ぬ道筋 2017/12/28 本日の日本経済新聞より

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 二大政党制の到来が叫ばれた政治改革から約20年が過ぎた。一時は民主党による政権交代も経験したが、第2次安倍政権の発足以降は、55年体制をはるかにしのぐ「自民1強」の構図が強まるばかりだ。離合集散を繰り返しながら多弱への一途をたどる野党。混迷を脱する道はあるのか。

 26日に国会内で開いた民進党両院議員総会。立憲民主党と希望の党に統一会派結成を申し入れる案が示された。

 「執行部の提案通り進めてよろしい方は拍手を」。司会役の柳田稔両院議員総会長が方針の了承を求めたが拍手はまばら。会場が失笑に包まれるなか柳田氏が「では反対の方」と続けると拍手は賛成とほぼ同数だった。

 想定とは違う展開に柳田氏は困惑の表情を浮かべたが「拍手の方が多いので執行部の提案を確認します」と押し切った。しらけた空気のなかで出席していた地方議員からヤジが飛んだ。「だから笑われるんだよ」

 野党が再起の糸口をつかめずにいる。10月の衆院選を前に民進党は立憲民主党と希望の党、無所属を含む民進勢力へと3分裂した。野党第1党の立憲民主党でも衆院議席数は55にすぎず、284議席を擁する自民党には太刀打ちできない状態だ。

 巨大与党に対峙するための手っ取り早い方法は元民進党勢力の再結集だ。だが、政策の違いや感情のしこりが大きな壁として立ちふさがる。

 「希望の党とは理念政策が異なる。希望の党とは組まない」。立憲民主党の福山哲郎幹事長は26日、統一会派を申し入れるために訪れた民進党の増子輝彦幹事長の提案を即座に拒否した。

 立憲民主党は、衆院選前に希望の党の小池百合子氏が政策や理念が違う議員を合流から「排除」したことから新党を旗揚げした。少なくとも希望の党の結党メンバーを含めた統一会派の結成には乗らないとの見方が強い。

 希望の党も揺れている。民進党は統一会派の基本方針案に「安保法制の違憲部分を削り、国の安全を確たるものにする議論を進める」と盛りこんだ。結党メンバーの一人は「安保法反対にカジを切るなら何のために党を立ち上げたのか」と反発を強める。一方、民進党からの合流組の多くは安保法に反対だ。統一会派に前向きな党幹部は「党が割れるなら割ってしまえばいい」と漏らす。

 野党が抱える悩みの深さは、仮に野党勢力の再結集を果たしたところで政権交代への道筋がみえてこない点にある。

 日本経済新聞社による12月中旬の世論調査では安倍内閣の支持率は50%。一方、立憲民主、希望、民進の3党を合計しても12%にすぎない。有権者の多くは民主党政権時代から続く内部対立や離合集散にうんざりしており、同じ顔ぶれでの再結集で支持率が急速に高まる可能性は少ない。

 新たな機運をつかもうとする動きもある。

 「永田町の数合わせにはくみしない」。立憲民主党の枝野幸男代表は衆院選後、こう繰り返す。捨て身で立ち上げた党は予想外の支持を得て、街頭演説には1000人を超える聴衆が集まった。その熱気から、永田町の論理に飽きた有権者の思いを実感した。

 枝野氏は「草の根からの政治」という新たな党の形を模索していく考え。まずは政治資金。ネットを通じて献金を募ったところ「すでに1億円近く集まった」(党関係者)。企業・団体献金を受け取る自民党との違いを打ち出したい考えだ。

 有権者が交流サイト(SNS)を通じて政策論議に参加する「ネットシンクタンク」をつくる構想も浮上する。衆院選を機にSNSで自らの考えや政策を頻繁に発信するようになった。支持者からの質問や反論も多い。枝野氏はこれからは「右か左かではなく、上からか草の根からか、だ」と強調する。ただ日本でこうした活動の裾野がどこまで広がるかについては懐疑的な見方も多い。

 昭和から平成に変わろうとする1980年代後半。国内にはリクルート問題に端を発する政治不信が満ちていた。政党が緊張感を保ちながらカネがかからない政治の姿はないか――。新しい風を求め小選挙区制の導入など政治改革に奔走したのが故羽田孜首相や自由党の小沢一郎共同代表だ。

 11月中旬、都内ホテルの日本料理店。その小沢氏は熱かんを傾けながら民進党前代表の前原誠司氏にこう漏らした。「このままでは死んでも死にきれない」

 有権者に「1強」以外の選択肢を提示できない野党の責任は重い。



シンゾウとの距離(7) 麻生太郎 裏切れない二人三脚 20 17/12/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「シンゾウとの距離(7) 麻生太郎 裏切れない二人三脚」です。





 「優勝おめでとう!」。11月26日の大相撲九州場所の千秋楽。副総理・財務相の麻生太郎(77)は首相、安倍晋三(63)に代わり、優勝した横綱白鵬に内閣総理大臣杯を手渡した。

麻生氏と話す安倍首相(11月1日、国会内衆院本会議場)=ロイター

 賞杯の重さは約40キロ。羽織はかま姿の麻生がふらつくことはなかった。自ら買って出た麻生には心身の丈夫さを強調する狙いもあったのか。

 麻生が年を重ねるにつれて意識するのは、元首相で祖父の吉田茂。総理大臣杯の授与式で着ていた羽織も、かつて吉田が着ていたものだ。仕立て直して今回初めて披露した。

 10月の衆院選で圧勝して再び政権基盤を強固にした安倍。もう1人、政権内での自身の地位を押し上げたのは麻生かもしれない。麻生は2016年7月の参院選と衆院選のダブル選挙を唱えるなど終始、早期解散論を展開。安倍の17年9月の解散はその麻生の考えを受け入れたものだからだ。

 麻生は安倍との関係に自信を深める。「今後、安倍政権が崩れるとしたら俺が裏切るときだ。つまり政権は安泰だということだ」。安倍との二人三脚が政権内での麻生の戦略だ。

 麻生派は党内の第2派閥に伸長した。安倍は最長で21年9月まで政権を担うことができる見通し。麻生は「不安があるとすれば、安倍の気力と目的意識」と話す。一つの方法は憲法改正の旗を掲げ続けること。麻生はもう一つ、経済再生に向けた取り組みを促す。

 「安倍政権はまだ3番目です」。11月1日、安倍を首相に指名するための投票中の衆院本会議場。麻生は安倍の席に行き、1枚の紙を示した。首相就任時から退任するまでの日経平均株価の伸び率を記したものだ。

 戦後の歴代政権でトップは佐藤栄作の3.07倍、次いで中曽根康弘の2.87倍。いずれも長期政権だ。安倍は12月20日現在で2.23倍にとどまる。

 「総理、できるだけ長く政権を維持し、株価を上げて少なくとも中曽根さんは超えましょう」。麻生が呼びかけると、安倍はうなずき、大事に紙を受け取った。

 年齢は麻生が安倍を14歳上回る。相手が首相である以上、麻生は固有名詞ではなく「総理」と呼ぶ。閣議前に安倍より先に座る閣僚には厳しい視線を向ける。安倍も自らを立ててくれる麻生に全幅の信頼を置く。

 安倍と麻生の蜜月関係が党内でさざ波を立てることもある。11月1日の第4次安倍内閣の発足前、二階派内でこんな噂が流れた。「麻生が二階俊博(78)を幹事長から外し、麻生派の甘利明(68)の起用を画策している」「二階派の沖縄・北方相、江崎鉄磨(74)を外し、代わりに麻生派から入閣させようとしている」

 二階と1歳しか違わない麻生が警戒されるのは、その健康さゆえでもある。朝には40分ほど渋谷区の自宅周辺を足早に散歩する。

 背広姿でついていく警護官が汗だくになるほどの速足だ。健康は最大の政治力である。その健康に細心の注意を払う麻生の姿を政界は「ポスト安倍にまだ意欲あり」とみる。

 「吉田が引退したのは85歳だ」。自らの引退時期も吉田をお手本とする。次に衆院議員の任期が切れる21年10月には麻生は81歳だ。吉田は50歳でハット、60歳でステッキを持ち始めた。

 麻生も「平均寿命は当時より延びた」などと言いながら、20年ずらして70歳からハットをかぶるようになった。

 吉田が居を構えた神奈川県大磯町の邸宅には、吉田の引退後も政財界要人の来客が絶えなかった。

 麻生がステッキを持って国会内を歩くころ、吉田のような存在になれるのか。

 「麻生がキングメーカーになれる唯一の方法は安倍政権を支えることだ」。安倍側近の一人はこう分析したうえで言い切った。「麻生は安倍を『裏切らない』のではなく『裏切れない』んだ」(敬称略)



シンゾウとの距離総裁選にらむ(5)石破茂 孤高の1番手候補 20 17/12/19 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「シンゾウとの距離総裁選にらむ(5)石破茂 孤高の1番手候補」です。





 自民党元幹事長、石破茂(60)が腕を組んだまま黙って聞いていた。14日に国会内で開いた石破派会合。来年9月の党総裁選を見据えた発言が相次いだ。「国会議員の仲間を増やす努力をすべきだ」「党員票も重要になる。地方の支持拡大を優先した方がよい」

自身の政治資金パーティーであいさつする自民党の石破茂氏(11月、東京・紀尾井町のホテル)

 石破がポスト安倍の候補になって久しい。孤高の1番手候補の勝算はみえない。1993年の小選挙区導入を柱とした政治改革への対応に不満を抱き、自民党を飛び出した。新進党などを経て97年に復党した。2009年の衆院選直前、閣内にいながら当時の首相、麻生太郎(77)に自発的退陣を促したこともある。

周囲に変化の兆し

 12年総裁選で安倍晋三(63)に敗れたものの、地方票は石破が勝った。10月の衆院選での自民党圧勝で、安倍の基盤は強固になった。それは安倍と距離を置く石破の発言力低下を意味する。劣勢の石破の周囲には変化の兆しもある。

 12日夜。参院幹事長を務める吉田博美(68)とその側近、石井準一(60)が都内の日本料理店で1人の参院議員をもてなした。当選1回で石破派の中西哲(66)。中西が吉田が率いる参院の額賀派に入ったことを歓迎する会だ。事実上2つのグループを掛け持ちするのは異例。「派閥としてではなく、個人として受け入れる」と石井は語る。石破派幹部の思惑は別だ。「総裁選に向けて将来的な連携の布石になる」

 額賀派の吉田は参院自民党を束ねる。吉田の背後には、かつて参院のドンといわれ、同派になお影響力を持つ元参院議員会長、青木幹雄(83)がいる。16年7月の参院選。合区となった「鳥取・島根選挙区」に青木の長男、一彦(56)が出馬した。幹雄と微妙な関係にあるとされた石破も全面支援。一彦は当選した。幹雄と石破の接近は石破派と額賀派の協調の機運も醸し出す。

 11月13日に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで開催した石破の政治資金パーティー。「私の兄、竹下登は最高実力者だった田中角栄先生に歯向かって……」。演壇に立った額賀派で総務会長、竹下亘(71)が話し始めると、場内は静かになった。

「いつ腹固める」

 「何年干されてもやるぞという熱気を感じない。石破派が『やるぞ』と腹を固める時期はどこだろうなと、じっくり拝見させていただく」と締めくくった。石破は竹下に歩み寄り「激励の言葉をありがとうございます」と手を握った。

 竹下のこの発言は党内でも解釈がわかれる。「安倍を支える竹下が石破をけん制した」「総裁候補のいない額賀派が石破も手持ちのカードにしようとしている」。72年総裁選を争った田中角栄と福田赳夫の「角福戦争」はその後の党内抗争の起点になった。

 額賀派は田中派、竹下派、小渕派が源流。安倍の出身母体である細田派は福田派に連なる。歴史的な因縁が竹下発言を深読みさせる。ただ、来年の総裁選に向けて安倍と対決してまで額賀派が石破派と連携する展開を予測する人は少ない。

 むしろポスト安倍を見据えた「保険」に映る。竹下はいずれ額賀派を継承するとみられている。将来の首相候補と目された元経済産業相、小渕優子(44)が政治とカネの問題で辞任して以降、額賀派には衆目が一致する総裁候補がいない。

 12月11日昼。秘書がレジ袋をぶら下げて衆院第2議員会館5階の事務所に戻ってきた。その中にあるのは階下のセブンイレブンで買ってきた弁当。石破の昼食だ。政治家らと何回会食したかが人脈の尺度とされる永田町にあって「孤食」の頻度は高い。石破は「読まなければならない本や論文がたくさんある」と話す。

 石破は自室の本棚に自身が数十回は読み込んだ第35代米大統領、ジョン・F・ケネディの評伝を保管している。印象的な一文がある。「1番になりなさい。2番は負けである」(敬称略)



シンゾウとの距離総裁選にらむ(4)小泉進次郎 視線は五輪の先 2017/12/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「シンゾウとの距離総裁選にらむ(4)小泉進次郎 視線は五輪の先」です。





 自民党筆頭副幹事長の小泉進次郎(36)が首相、安倍晋三(63)との距離について問われると、語り始めた。「俺と総理が対立してるって言われるけど、いまの相撲界を見ても誰と誰が対立してるなんて本当のところはわかんないじゃん」

小泉氏の周辺は「最短で21年9月の総裁選に出る覚悟だろう」と話す

色つけたくない

 4日夜、東京・東麻布のフランス料理店「月下」で、子育て支援の財源「こども保険」をともに提唱した村井英樹(37)や小林史明(34)、福田達夫(50)とシャンパンを飲んでいた。安倍が新たな経済政策に「こども保険」を盛り込まない方針は決定済み。

 「お力をいただきありがとうございました」。進次郎は後から合流した経済財政・再生相の茂木敏充(62)に地元、神奈川・横須賀の菓子を手渡した。

 11月1日の自民党本部。政調会長の岸田文雄(60)と面会した際、進次郎は安倍が財源で提起した企業の拠出金について「党で議論していません。意思決定がおかしいです」と訴えた。面会後、進次郎は「政調会長こそ官邸に乗り込んででも総理に意見しないとダメだろ」と不満を漏らした。

 安倍が進次郎の力に頼る場面もある。衆院解散当日の9月28日、安倍は国会内で進次郎に「北朝鮮対応のために私も官房長官も思うように動けないから、よろしく」と耳打ちした。

 8月の内閣改造。安倍側は進次郎に政権の要職に就く意思があるかどうかの感触を探った。進次郎は結果として入らなかった理由を後に「あまり『色』をつけたくなかった」と明かしている。伏線はあった。安倍は7月の都議選で自身にヤジを飛ばした聴衆を「こんな人たち」と発言した。

 「俺のやりたい政治とは違う」。進次郎は反応した。特定の主義主張や支援組織にとらわれない、無党派層に世論の支持を広げる――。安倍への当てこすりとも受け取れる発言の底流には進次郎の政権戦略がある。

 自民党で税制改正論議が始まった11月22日。業界団体が党本部でプラカードを持って陳情する風景を横目に「俺こういう景色嫌いなんだよね」とつぶやいた。

 進次郎に影響を与えたのは元首相で父親でもある純一郎(75)だ。

 「進次郎君にはリーダーシップを発揮してほしい」。中学時代、三者面談で担任の先生が指摘すると「私も父が政治家だったから進次郎の気持ちはよくわかる。できる限り目立たないようにしている」と擁護した。進次郎は「オヤジが『見てるぞ』と思わせてくれたことが自信や自己肯定感につながっている」と話す。

雑巾掛けやめる

 安倍は純一郎の後任として2006年に第1次政権を発足。純一郎は安倍を後継と見定め、自民党幹事長や官房長官など要職を歴任させた。当時の純一郎と安倍と現在の安倍と進次郎の関係は異なるように映る。

 純一郎と安倍の年齢差が12歳なのに対し、安倍と進次郎は27歳ある。進次郎は年齢からいってポスト安倍の本命とはみられていない。そのことも進次郎と安倍の関係を左右しているかもしれない。

 「進次郎さんは総理になる人だ。でも今すぐなるとは本人も思っていない」。12年の総裁選で一票を投じた元幹事長、石破茂(60)が11月21日のテレビ番組で語ると、進次郎は「俺の気持ちがわかるのかな」と冗談めかした。2人はかつて閣僚と政務官でコンビを組んだ。

 来年9月の総裁選での安倍の3選支持や自身の出馬について「来年のことはわからない」としか言わない。将来の首相候補としての自負もある。「20年以降のポスト東京五輪、ポストアベノミクスを見据えた国造りが私たちの世代の責任だ」

 「まだまだ雑巾掛け」。謙遜した言い回しは、最近「いつまでも雑巾掛けをしているわけにはいかない」に変わった。周囲は進次郎の今後をこう予測する。「最短で21年9月の総裁選に出る覚悟だろう」

(敬称略)



シンゾウとの距離 総裁選にらむ(2)岸田文雄 攻めか待 ちか揺れる 2017/12/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「シンゾウとの距離 総裁選にらむ(2)岸田文雄 攻めか待ちか揺れる 」です。





 6日夜、東京・銀座のバー「ザ・ライオンズ・デン」。自民党政調会長の岸田文雄(60)が元復興相の根本匠(66)と連れだって個室に入ると、前経済財政・再生相の石原伸晃(60)と前厚生労働相の塩崎恭久(67)が迎えた。

岸田氏は「首相と政調会長には適切な緊張関係」を望む(11月、都内のホテル)

 カラオケマイクを片手にマティーニを飲んだ。岸田と根本は3杯、石原と塩崎は2杯。「あれ以来、血湧き肉躍るようなことがないねえ」。4人が思い返したのは2000年11月20日だ。

「戦は勝たねば」

 当時の宏池会(現岸田派)会長、加藤紘一が野党提出の森喜朗内閣の不信任決議案に賛成しようとして党執行部に封じられた「加藤の乱」。加藤に近かった4人は不信任案を採決する本会議直前、石原の事務所に集まった。

 「離党を覚悟した」。岸田は振り返る。出陣式は石原がつくったマティーニの一気飲みだ。それ以来、4人は「マティーニの会」と称して毎年11月20日前後に会合する。

 名門派閥とうたわれながら宮沢喜一を最後に24年以上も首相の座から遠ざかる。宏池会では加藤の首相を織り込み、「加藤の次は谷垣禎一(72)で狙う」という空気があった。そのいずれも実現しなかった。乱のきっかけはその1年前の総裁選。首相だった小渕恵三の後継1番手だった加藤が出馬し、敗北した。

 加藤と微妙な関係にあった池田行彦が総務会長に一本釣りされたが、宏池会は主要ポストから外された。加藤は焦った。「戦うときは勝たなければならない」。岸田が得た乱の教訓だ。

 その岸田は8月の内閣改造で4年7カ月務めた外相から政調会長に転じた。政調会長就任に宏池会は「首相になるための最後のピースがそろった」と沸いた。

 岸田は「外相と首相の不一致はいけないが、政調会長と首相には適切な緊張関係があったほうがいい」と違いを説明する。「上から目線で政治はできない。『正姿勢』を胸に」。11月20日、岸田は特別国会の代表質問で力説した。宏池会60周年の今年、創設者の元首相、池田勇人に関する本を読んだ。

 代表質問が決まると、そのうちの1冊をまた開いた。読み返したのは「低姿勢」と批判された池田に陽明学者の安岡正篤が「正姿勢」を助言するくだり。代表質問の原稿に加えた。

 内閣改造直前の7月20日夜、岸田は都内のホテルで首相の安倍晋三(63)と2人で食事した。「総裁の3選支持の見返りに安倍がその次は岸田を推す密約をした」「反安倍で固まらないように岸田の出馬を容認した」。党内には両説ある。

禅譲見通せず

 安倍の岸田評は「今の永田町を見渡すと次期首相の有力候補」と悪くないが、後を託すかは別だ。安倍の出身派閥である細田派と麻生、二階両派が連携すれば安倍は3選を引き寄せる。

 岸田がなるべく穏便に政権を引き継ごうとすれば、来年の総裁選で安倍の3選を支持し、その次の総裁選で細田派などの協力を得て総裁を狙う路線だ。側近の一人は「安倍さんが健在だと来年は出ない」とみる。

 ただし、次の次の総裁選で外相、河野太郎(54)を擁する第2派閥の麻生派が岸田をすんなり支持するかはわからない。副総理・財務相の麻生太郎(77)と岸田が派閥を譲り受けた元幹事長、古賀誠(77)との関係は微妙とされる。

 加藤の師の大平正芳は首相だった福田赳夫との「禅譲密約」をほごにされ、1978年の総裁選を戦って政権に就いた。その時は田中派が支えた。岸田を取り巻く状況とは異なる。

 「想像を超える社会を想像しよう」。7日の自民党本部。岸田は政調会長の諮問機関「未来戦略研究会」の初会合で熱弁を振るった。総裁選前の来年8月に報告書をまとめる。

 攻めたくても確たる勝算はなく、待ってもその間に世代を越される可能性がある。岸田は漏らす。「首相になるかどうかは運もある」

(敬称略)