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起業の軌跡 ITでアパート投資支援 土地在庫抱えず急成 長インベスターズクラウド社長 古木大咲氏 2017/2/27 本日の日 本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の新興・中小企業面にある「起業の軌跡 ITでアパート投資支援 土地在庫抱えず急成長インベスターズクラウド社長 古木大咲氏」です。





 IT(情報技術)で投資対象として賃貸アパートを経営する個人を支援するインベスターズクラウドが急成長している。用地の確保から建物の建設、経営の助言までを行う。利用者数は10万人を突破。古木大咲社長(37)は「不動産とITを組み合わせた新たな事業をつくりたい」と語る。

 21歳の時に、福岡の不動産会社に入社した。ネットで集客してアパート1棟を丸々販売する事業を立ち上げ、売上高は10億円まで伸びた。しかし拡大しようにも「ネットに投資する社内決裁が通らなかった」。2006年にインベスターズクラウドを設立した。

 リーマン・ショック時の不動産市況の悪化で倒産の瀬戸際まで追い詰められたことを教訓に事業モデルを再構築した。2年かけて滞留した土地の在庫を処分した後、自社で土地の在庫を抱えずに不動産会社から土地情報を集めてデータベースを作成した。ネット広告で集めた顧客にアパート経営に適した土地を紹介する仕組みを開発した。

 建築もITによる管理を徹底。その日に何をしないといけないか、約140項目もの業務フローを洗い出して工事の進捗を管理する。完成した建物を投資家に引き渡した時に得る収入が主な売り上げだ。

 営業担当者は個人顧客とスマートフォン(スマホ)のチャットで会話する。1人あたりの販売件数は年間10棟強と2~3棟程度とされる他社を大きく上回る。

 15年12月期に売上高は200億円を突破、株式上場も果たした。在庫を持たないモデルによって無借金経営を実現、不況に強い体質に改善した。

 上場後はIT技術者を大幅に増員し、新規事業の開発に取り組む。注力するのは民泊分野だ。民泊物件の入退室をスマホで管理したり、宿泊者の困り事を遠隔でサポートしたりする。不動産とITを融合させた事業モデルを目指す。東京五輪が開催される20年には「営業利益を(前期比約3倍)100億円に引き上げたい」と意気込む。

(鈴木健二朗)

 ふるき・だいさく 高校中退後、フリーターを経て2001年三和エステート入社。06年インベスターズクラウドを設立。鹿児島県出身。37歳。



VB、今年の展望 投資家に聞く 2017/1/9 本日の日本経 済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の新興・中小企業面にある「VB、今年の展望 投資家に聞く 」です。





 日本経済再生の起爆剤になるとして期待を集めるベンチャー企業(VB)。2016年には国内VB投資額が過去最高を更新した。投資家として存在感を高める外国人や元起業家、大企業が資金を拠出するファンド責任者に17年の注目VBを聞いた。

 2017年は拡張現実(AR)や仮想現実(VR)をただ楽しむだけでなく、仮想空間内でモノを操作できる技術が求められる。装着者の視線で映像を操作できるFOVE(東京・港)のような技術に注目する。ハコスコ(東京・渋谷)のようにスマートフォン(スマホ)で安価にVRを楽しめるVBにも着目している。

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」が家庭に浸透してくる。全ての家電製品がスマホで操作できるようになる。

 IoT向けの通信を提供するソラコム(東京・世田谷)が活躍の幅を広げそうだ。フォトシンス(東京・品川)のようにスマホによる鍵管理システムも注目だ。

 人工知能(AI)はより個人に密着した存在に変わっていく。自ら学習する人工知能を開発する、東京工業大学発ベンチャーのSOINN(東京都小平市)などが個人の感情を分析するAIを開発できると面白い。

 18~20年までに日本に計200億円を投資する計画を立てた。今年は大学の優れた技術を掘り起こす。グローバルな視点で活躍できるベンチャーを育てる。

 東工大卒業後、東京都立大学(当時)で博士号取得。米IBMなどを経て、2011年フェノックス・ベンチャーキャピタル(VC)設立。

 ドローンは巨大産業になる。ドローン・ジャパン(東京・千代田)に出資した。水田の上空でドローンを飛ばし、センサーを使って稲の生育状況を確認。自動運転で育ちの悪い所に肥料をまくことで単位面積当たりの収穫量を最大にする。

 雇用の創出にもつながる。ドローンのパイロット養成校が相次ぎ開校している。卒業生を全国に送り込めば、農家に代わって操縦する新しい仕事になるかもしれない。ラピュータ・ロボティクス(東京・中央)も注目株だ。生粋の技術系ベンチャーで制御システムを開発している。

ドローン・ジャパンはドローンで稲作の収量アップを図る

 第1次産業はあまりIT(情報技術)化されていなかったため、大きな変革が起きるだろう。投資するファームノート(北海道帯広市)は牛の首に付けたセンサーで健康状態を管理する。高級イチゴ「ミガキイチゴ」を生産するGRA(宮城県山元町)は生産技術を完全システム化した。水産系ではウミトロン(東京・渋谷)がユニークだ。人工衛星から赤潮を予測するほか、センサーで養殖魚の動きを計測することで海の汚染とエサ代を抑える。

 ちば・こうたろう コロプラ創業に参加、16年副社長を退任してエンジェル投資家に。約30社に投資。

 シェアリングエコノミーは日本でも急速に広がっている。貸会議室を展開するティーケーピー(東京・新宿)など場所を共有(シェア)するサービスが一例。貸会議室から派生した弁当手配や人材研修サービスも一括提供し、海外展開にも成功している。民泊やシェアオフィスは欧米が先行するため、日本勢は海外展開に苦しんでいる。

 米国ではウーバーテクノロジーズやカーシェアのゲットアラウンドに出資している。

 人工知能(AI)で日本が遅れているわけではない。AIを活用した社会の課題を解決できるサービスに注目している。AIを武器にいかに面白いサービスを作れるかが勝負の分かれ目になる。

 パークシャテクノロジー(東京・文京)が注目株だ。40人の研究者やエンジニアがAIの技術開発に取り組み、製品は対話システムから画像認識機能まで幅広い。

 特に日本語を対象とした言語処理に強みを持ち、NTTドコモやLINEとも提携している。

 でみち・たかき トヨタ自動車や三井住友銀行などが出資する未来創生ファンドの投資責任者。野村証券やみずほ証券で勤務。



「簡易宿所」に商機あり スマホで機器操作/機内の雰囲気演出 2016/11/07 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の新興・中小企業面にある「「簡易宿所」に商機あり スマホで機器操作/機内の雰囲気演出」です。





 全国で雑居ビルを改装しゲストハウスやホステルと名乗る宿泊施設として開業する動きが相次いでいる。法律上は「簡易宿所」と呼ばれる施設。ビジネスホテルより低料金で、従来型のカプセルホテルより快適な空間を提供でき、節約志向の出張者やインバウンド(訪日外国人)のニーズをつかんでいる。投資回収がしやすくなっていることも追い風だ。

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」。企業の参入が相次ぐが、消費者が身近に感じる機会は少ない。カプセルホテル並みの料金でこれを体験できる宿泊施設「アンド ホステル」がこの夏、福岡市に開業した。

 宿泊客は専用スマートフォン(スマホ)でドアを解錠したり、エアコンや照明など様々な機器を動かしたりできる。操作した40代の男性会社員は「将来は自宅にある色々な機器を外出先から動かせるようになると便利な世の中になる」と感じ入った様子で話す。客単価は3千~4千円。

 太陽光発電システムを販売するBIJ(東京・渋谷、木地貴雄社長)が展開する。IoT機器は親会社の取引先から提供を受けた。インバウンドに日本の最先端IoT技術もアピールできる。2017年初めにも市内に2施設目を設けるなど今後、拡大する方針だ。

 飛行機のファーストクラスを疑似体験できるカプセルホテルが、宿泊施設運営のファーストキャビン(東京・千代田、来海忠男社長)が東京・秋葉原などで展開する「ファーストキャビン」だ。ファーストクラス風の仕切りで覆うスペースに泊まれる。清潔感のある空間で、カプセルホテルを敬遠していた女性の需要も切り開いている。インバウンド急増を見越し2022年に100カ所に広げる。

 直営のほか、運営受託やフランチャイズ方式で展開する。設計事務所を母体としており、設計ノウハウも強み。用途を変える改装でも既存建物の設備を最大限に生かす工夫で投資を抑えられる。

 「直営の場合、建物オーナーの投資利回り(減価償却費、家賃支払いを除く)約30%」(同社)という。一般に約4%とされる都内ビジネスホテルを大きく超える利回りを期待できることも、強気の出店戦略を立てられる理由の1つにある。

 「カプセルホテルは抵抗感があった。友達と来て、お泊まり会ができる空間がうれしい」――。都内の20代女性はこう話す。女性が指すのは「泊まれる本屋」をコンセプトに昨秋に東京・池袋に開業した宿泊施設「BOOK AND BED TOKYO」だ。不動産仲介のアールストア(東京・品川、浅井佳社長)が運営する。漫画本など約1700冊の蔵書を備え、読書しながら眠りに落ちる体験ができる。

 新型の簡易宿所が増える背景には節約志向の高まりで出張者が宿泊代の抑制に走っていることや、安い宿泊施設を探すインバウンド急増などがある。マイナス金利の影響でマネーが高い利回りが期待できる分野に流れ込み始めていることも考えられる。>小田急電鉄が簡易宿所の建築設計ノウハウを持つ会社を買収して、沿線開発に生かすなど大企業も着目する。



起業の軌跡 アマの写真販売サイト 孫氏の半生読み一念発起 ピクスタ社長 古俣大介氏 2016/06/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の新興・中小企業面にある「起業の軌跡 アマの写真販売サイト 孫氏の半生読み一念発起 ピクスタ社長 古俣大介氏」です。





 写真投稿・販売サイトを運営するピクスタはアマチュア写真家と画像を必要とする広告制作者らを橋渡しする。1枚500円(税抜き)からと競合他社の10分の1以下の価格が強み。作品の売り上げが投稿意欲を刺激し、素材数は約1800万点、登録者は約20万人に達する。古俣大介社長が国内最大の写真素材サイトを築く原点には2人の起業家との出会いがあった。

 写真事業のヒントを得たのは2004年。ネット掲示板に子供や風景など質の高い写真が1日何百枚も投稿されていた。背景にあったのがキヤノンのデジタル一眼レフカメラ。高機能ながら手ごろな価格でヒットし「デジタルアマチュア写真家が100万人単位で出現した」。質の高い写真が評価され、売り上げが立つ場として06年にピクスタのサイトを立ち上げた。

 小売業を営む父母の背中を見て育った。起業を目標に切り替えたきっかけがソフトバンクグループの孫正義社長だ。大学時代に読んだ書籍で孫氏の半生を知り衝撃を受けた。アルバイトと遊びに明け暮れていた生活を転換、週末は経営大学院の授業に参加した。

 身近な手本が父の知人を通じて会ったウェブサービス会社ガイアックスの上田祐司社長だ。「目標から逆算して戦略を立て、資金、人、技術をどんどん引っ張る」姿勢は刺激的だった。同社に入社し、1日に18時間働いた。在籍は10カ月間だったが、起業時に相談したり、ガイアックスの社内の一部を間借りして登記するなどの支援を得た。

 ピクスタは投稿者の作品について、ネットでの販売価格を画素数に応じて決める。著作権は投稿者に帰属し、売買成立の時、売上代金の一部を「成功報酬」として投稿者が受け取る。アマといってもプロと見まがう出来栄えの作品もある。

 15年に東証マザーズに上場。国内では比肩するものがない地位を築いた今、海外事業の拡大に向けてシンガポールや台湾などに拠点を設けた。「アジアナンバーワンの写真サイト」という目標に向かいまい進する。

(森国司)

 こまた・だいすけ2000年多摩大経営情報卒。ガイアックスを経て05年にオンボード(現ピクスタ)設立。埼玉県出身。39歳



起業の軌跡 全国50万店で覆面調査 セブンイレブンで起業のヒント メディアフラッグ社長 福井 康夫氏 2016/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の中小企業面にある「起業の軌跡 全国50万店で覆面調査 セブンイレブンで起業のヒント メディアフラッグ社長 福井 康夫氏」です。





 メディアフラッグはお客を装った調査員が小売り・外食業の店舗を調べる覆面調査を行い、小売店やメーカーに販売促進策を提案する。年間のべ21万人の調査員を約50万店舗に派遣し、顧客企業の売り場再生を支援する。福井康夫社長はセブン―イレブン・ジャパンでのスーパーバイザーとしての勤務を通じて起業のきっかけをつかんだ。

 祖父も父も事業家だったことから自らも起業を志した。まず営業や金融を学ぶため当時の三和銀行に入行した。配属先の支店はスーパーや衣料品店との取引が中心だったことから小売業への関心が芽生えた。5年目の1995年に転職したセブンイレブンでの仕事で起業のヒントを得た。

 同社は当時6000程度の店を展開していたが、フェアや新商品の発売に合わせて全店舗で店づくりを意識的に統一し、集客力を高めていた。他社のコンビニはフェア初日はこれだけ統一されていない。自らも神奈川県内で本部とオーナーをつなぐスーパーバイザーとして早朝でも深夜でも担当する店に出向いて、レイアウト変更などの作業に従事し、集客力の高さを肌で感じた。

 売り場再生で試行錯誤する店は多い。福井氏はセブンイレブンで習得したノウハウをベースに売り場活性化や販売促進の支援会社であるメディアフラッグを2004年2月に設立した。

 小売店側が店頭の状況をいち早く把握し、改善につなげられるようにする覆面調査と、メーカーが大規模な販売促進策を打ち出す際に営業担当者が回りきれない店舗支援の両方を手がけることにした。調査員を募り、依頼を受けた店の近くに住む登録者を派遣。携帯メールで簡便、迅速に報告もできるようにした。

 12年に東証マザーズに上場。現在は21万人の派遣人員を抱え、年間50万店舗を手がける規模に成長した。「中途半端なベンチャーで終わりたくない」と国内で培ったノウハウをインドネシアでの市場調査やインドでの宅配便関連サービスなど海外事業に広げている。

(川崎なつ美)

 ふくい・やすお

1991年早大法卒。セブン―イレブン・ジャパンなどを経て2004年メディアフラッグ設立。千葉県出身。48歳



起業の軌跡 一律280円の焼鳥店500店展開 繁盛店に均一価格学ぶ 鳥貴族社長 大倉忠司氏 2016/04/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の新興・中小企業面にある「起業の軌跡 一律280円の焼鳥店500店展開 繁盛店に均一価格学ぶ 鳥貴族社長 大倉忠司氏」です。





 鳥貴族は大都市の繁華街ですべてのメニューを一律280円でそろえる焼鳥店を経営する。食材の値上がりで料理や酒の全部が同じ値段の均一価格店の経営は厳しくなっている。だが大倉忠司社長が率いる鳥貴族は全国に約500店を展開し、さらに1000店の新規出店も視野に入る。

 調理学校を卒業しホテル勤務などを経た大倉氏が大阪府東大阪市で居酒屋店を開業したのは1985年。20代の半ばだった。売り上げは芳しくなかった。

 浮上のヒントを起業前に客として通っていた個人経営の炉端焼き店でつかんだ。230円均一で商品を提供するその店は学生でにぎわい、大倉氏も「店の面白さにファンになった」。

 炉端焼き店の均一価格を参考に250円均一の焼鳥店に転換した。当時は100円ショップも少なく均一価格の店が珍しかったため、均一価格の中からお買い得なものを探す楽しみが受けると考えた。焼鳥店にこだわったのは昔から食べられてきた食べ物で流行に左右されないためチェーン化しやすいと思ったからだ。

 店舗網を広げるきっかけはビルの2階以上で客が入りにくい空中店舗での成功だ。2003年に大阪市の道頓堀に開業した35店目だった。「集客の難しい郊外で培った商品力が生きた」。280円(税抜き)の均一価格やチルドの鶏肉を毎日店で串打ちする焼き鳥を考案したことを指す。食い倒れの街で味と価格に敏感な若者らに支持された人気店の誕生をこう振り返る。

 店の売上高に占める家賃の割合は7.5%と、一般的な居酒屋の12~15%を大きく下回る。大半のメニューが仕入れがかさむ国産でも都市部の繁華街で均一価格を維持できる。

 280円の均一メニューは高齢者や家族連れなど、一般的な居酒屋にはない客層を呼び寄せる。15年8月~16年3月の既存店売上高は前年同期比9.7%増と、アルコール離れの風潮をどこ吹く風とやり過ごす。

 外食チェーンの多くが新たな業態に手を広げる。だが大倉氏は焼き鳥一筋をあえて貫く。「焼き鳥にかける思いを社員に訴えやすい」。21年7月期までに関西、関東、東海で1000店の出店を見据えている。

(大淵将一)

 おおくら・ただし 辻調理師専門学校卒業後、ホテルや焼鳥店に勤務。85年に鳥貴族を大阪で開業。86年に法人化した。大阪府出身。56歳



起業の軌跡 相次ぎ事業転換 細心大胆、経営は速度 ボヤージュグループCEO 宇佐美進典氏 2016/03/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の新興・中小企業面にある「起業の軌跡 相次ぎ事業転換 細心大胆、経営は速度 ボヤージュグループCEO 宇佐美進典氏」です。





 VOYAGE GROUP(ボヤージュグループ)は多彩な事業を手がけるネットベンチャーだ。最高経営責任者(CEO)の宇佐美進典(43)は、目まぐるしく変わる経営環境に翻弄された。その経験のなかで「事業が縮む予兆」に目を光らせ大胆に事業を転換。「新事業の芽を常に抱える」ことで成長力を保つ。

 広告配信、オンライン調査、ベンチャー投資――。ボヤージュは子会社で多様な事業を次々と手がける。宇佐美は「ネットビジネスのライフサイクルは3~5年。新事業を創り続けないと生き残れない」と話す。

 宇佐美の事業戦略に強烈な印象を与えたのは、創業2年後に傘下入りしたサイバーエージェントだった。その後にMBO(経営陣が参加する買収)で再び独立したが、社長の藤田晋の経営手法を役員として間近で学んだ。そのひとつが「取締役を2年で入れ替える制度」。経営陣が自分の事業に安住せず、常に新規事業への投資リスクをとり続ける企業風土を肌で感じた。

 経験が生きたのが2004年の事業転換だ。米国の流行をみて始めた祖業の懸賞サイトは順調に売上高を伸ばし、社内でも安泰ムードが漂っていた。ところが社内の反対を押し切り価格比較サイトに刷新した。「広告単価が落ち始めた……」と異変を感じたからだ。

 ひとたび単価が落ちれば売上高の低下は止まらないと判断。ネットのビジネスでは1度伸びが止まると「売上高は1年で急落する」というのが持論だ。事業転換は成功し増収を保った。

 だが、その後も経営は揺れ続ける。国内大手ポータルサイトと検索連動型の広告を手がけていたが、10年に契約を突然打ち切られ売上高の3分の1を占める主力事業が苦境に陥った。この時はウェブ広告仲介サービスで穴を埋めた。

 14年にはマザーズに上場。15年には東証一部にくら替えした。それでも「まだ取り組んでいない技術や領域がある」と金融にIT(情報技術)を活用するフィンテック分野など新事業に意欲を示す。

=敬称略

(阿曽村雄太)



起業の軌跡 「オイスターバー」広げる カキ浄化施設 決意の投資 ヒューマンウェブ社長 吉田秀則氏 2015/07/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の新興・中小企業面にある「起業の軌跡 「オイスターバー」広げる カキ浄化施設 決意の投資 ヒューマンウェブ社長 吉田秀則氏」です。





 オイスターバーの「ガンボ&オイスターバー」などを28店展開するヒューマンウェブ。今年3月に東証マザーズに上場した。飲食店運営のほか、広島県や沖縄県と連携してカキの養殖にも携わる。創業者で社長の吉田秀則(48)は「生産まで遡って国内のカキ市場を広げたい」と意気込む。

 オイスターバーとの出合いは1996年ごろ。エイベックス在籍中、海外出張で訪れた米国で初めてその存在を知った。浜焼きなどで食べることがほとんどだったため、カキがワインなどと一緒に提供されているのを新鮮に感じた。いつか事業を興したいと考えていた吉田は2000年にエイベックスを退職し、ヒューマンウェブを立ち上げた。当時33歳だった。

 1号店は東京・赤坂に開いた。カキ専門店は当時、珍しく話題性は抜群だったが、ロスや欠品が多く顧客の固定化に腐心した。そこでメニュー数を絞り生カキ中心の業態に転換。専門性を高めたことが奏功し、ほどなく月商1200万円の人気店となった。

 順調に店を増やしていったが、06年に転機が訪れる。ノロウイルスの流行だ。生食が避けられるようになり、売り上げが7割も減少。従業員への給料の支払いもままならなくなった。

 「どうせ潰れるならチャレンジしてから」。吉田は銀行や役員の猛反対を押し切って、約4千万円を投じ広島県に無菌化海水でカキを浄化する施設を建てた。食中毒の心配のないカキを作れば客が戻ると踏んだのだ。狙いは当たり、品質へのこだわりが評価され、2年ほどで客足が戻った。

 吉田のビジネスの原点は大学時代のアルバイトにある。東京・六本木のディスコで接客業の面白さに開眼し、卒業後はそのまま就職。不振店を次々に立て直した後、親会社のエイベックスに移って依田巽(当時は会長)の下で経営を学んだ。

 「100%安全なカキの養殖が成功すれば一気に市場は広がる」と吉田。競合が少ないだけに、今後は卸売りに進出しカキ市場の活性化に期する。

=敬称略

(中川竹美)

 よしだ・ひでのり 1990年日大工卒、ノヴァ・インターナショナル入社。2000年にヒューマンウェブを設立し社長に。岩手県出身



2015/01/26 本日の日本経済新聞より「起業の軌跡 「銀だこ」マザーズ上場 「作りたて」から業態拡大 ホットランド社長 佐瀬守男氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の新興・中小企業面にある「「銀だこ」マザーズ上場 「作りたて」から業態拡大 ホットランド社長 佐瀬守男氏」です。





 全国に400店以上を展開するたこ焼き店「築地銀だこ」。運営するホットランドは2014年9月に東証マザーズに上場した。たい焼き店やアイスクリーム店など新たな業態も積極的に手掛ける。創業者で社長の佐瀬守男(52)は「食べてホッとできる」という社名に込めた思いをさらに広めようと知恵を絞る。

 「小さい時からサービス業に興味があった」という佐瀬。しかし、専門学校を卒業し、群馬県桐生市の実家の機械工場に入った。

 転機は25歳の時。近くに開店したファストフード店を見て、サービス業への関心を呼び起こされた。愛車を売って得た40万円を元手に、同市内に焼きそばとおむすびの店「ホットランド」を開いた。

 じゃがバターやドーナツなども販売し、当初はそこそこ繁盛したが思い描いた水準にはほど遠い。「何が足りないのか」。たどり着いた答えが「作りたて」。それまで扱っていたのは、ほとんどが「作り置き」だったのだ。

 商品も時間帯を選ばずに売れていたたこ焼きに絞り込む。商品面での独自性として、現在に続く表面がパリパリで中がふわふわの「外パリ中フワ」を考えつく。ヒントは北京ダック。工場勤務の経験を生かし、佐瀬自身が考案した鉄板を使っており、仕上げに表面を焼き上げる。

 1997年に築地銀だこの1号店を出店。できたてにこだわり、注文後に顧客の前で焼くスタイルを導入した。しかし、当時のたこ焼きには屋外の屋台のイメージが強かったこともあり、テナントとして導入することに消極的な商業施設の担当者もいたという。

 佐瀬は自ら「外パリ中フワ」のたこ焼きを焼いて担当者に持参。「持ち帰ってもおいしい」と訴えた。人気は口コミで広がり、着実に店舗網を広げた。

 銀だこは国内で1000店まで増やしたい考え。「商品のアイデアは無数にある」。たこ焼きのように身近な食べ物にひと味違ったアイデアを加え、さらなる成長を目指す。

=敬称略

(中川竹美)

 させ・もりお

1983年東京YMCA国際ホテル専門学校卒。91年にホットランドを設立して社長に。群馬県出身。

2014/11/03 本日の日本経済新聞より 「自前のネット通販支援 自由な販促望む商店向け オープンロジ、梱包・発送を代行 BASE、サイト制作簡単」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞14版の13面(新興・中小企業)にある「自前のネット通販支援 自由な販促望む商店向け オープンロジ、梱包・発送を代行 BASE、サイト制作簡単」です。

組織内の変革が進んでいない古参企業よりも、個人事業主の方が経営効率が高い場合があり、それが物販やサービスの価格にも反映されている感がある。規模や範囲を追えない個人事業主がどのようにネットを主戦場にして戦っているか、そのエッセンスが紹介されている。

 個人商店など小規模事業者によるインターネット通販の支援に商機を見いだすベンチャー企業が増えている。楽天やヤフーといった巨大サイトへの出店だけでなく、販促面などで自由度の高い独自サイトも運営したいという要望に応える。IT(情報技術)の知識が乏しくても開設から代金回収までが可能な仕組みを提供して顧客をつかむ。

BASEで家具販売サイトを運営する飯田さん

 「商品の梱包や発送を自分たちでやっていたので、顧客が増えて困っていました」。新潟市でネット通販サイトを運営する内山さおりさんは打ち明ける。取り扱う自然食品や化粧品が人気で1カ月に100~200個を販売するようになったが、作業負担も重くなっていた。

 そこで、利用したのがオープンロジ(東京・渋谷、伊藤秀嗣代表)が10月に始めた物流サービスだ。これまでは事務所などに商品を置き、自分たちで梱包・発送していたが、今では商品は工場からオープンロジが委託する倉庫に直送され、梱包・発送から代金回収までを一括して任せる。

 利用料金は一般的なサイズで1個あたり15円。これに1日0.2円の保管料と、220円からの配送料がかかる。内山さんの場合、梱包の人件費などを含めてコストが6割削減できたという。

 楽天などでも出店者が配送を委託できる。料金もあまり変わらないというが、「料金体系などを簡素化して不慣れな人でも使いやすくした」(オープンロジ)。内山さんは「自らのサイトで独自性をアピールするためにもこのサービスは便利」と話す。

 「やっと自分のネットショップを持てた」。手作りの家具や看板などを販売する飯田智英さんは笑う。従来はウェブ制作を手掛ける友人が作ったサイトを使っていたが、商品写真の差し替えといった更新作業が難しく、「時間はあっても自分で動かせないジレンマを感じていた」。

 現在はBASE(東京・渋谷、鶴岡裕太社長)のサービスを活用。デザインは1000種類以上のテンプレート(ひな型)から選べるが、画面演出などは省略。大手サイトに比べて制作に必要な機能を8~9割程度絞り込んでいる。「最低限必要な機能だけを提供することで、専門知識がない人に使いやすくした」(鶴岡社長)

 同社は2012年末にサービスを始め、これまでに11万店舗が登録した。今年1月には三井住友カードと提携し、サイト開設後すぐにカード決済が使えるようにもした。開設のシステムは無料提供し、買い物金額の数%を手数料として得る。将来的には取り扱う商品に合わせたよりデザイン性の高いひな型などの追加機能を有料で提供することも検討する。

 個人情報の問題などからネット通販でクレジットカード決済をためらう消費者は多い。大手に比べて知名度で劣る小規模事業者はなおさらで、ネットプロテクションズ(東京・中央、柴田紳社長)が提供する後払い決済サービスを利用する事業者も増えている。

 同社のサービスは商品が到着してからコンビニエンスストアなどで後払いが可能。利用者1人当たり5万4千円の利用限度額を設定しており、購入するごとに代金分だけ限度額が減り、14日間の期限内に支払うと限度額が回復する仕組みだ。決済金額に応じた手数料が、同社の収入となる。

実店舗との融合重要

 経済産業省によると2013年の国内の消費者向け電子商取引(EC)の市場規模は11兆2000億円と前年より17.4%伸びた。すべての商取引に占めるECの割合を示す「EC化率」も3.7%と0.6ポイント上昇した。

 同省は「インターネット専業だけでなく、小売業やアパレル企業などのネット展開も進んでおり、EC化率はさらに高まる」(情報経済課)と見る。足元の成長をけん引する大手サイトに加え、「中小の取り組みの裾野も広がることが予想される」。

 個人商店など小規模事業者がECを手掛ける際に最も手軽なのが大手のモール型サイトへの出店だ。知名度から高い集客力も期待できるが、出店者が顧客情報を把握しきれず、販促メールの送付などでも制約が出るケースもある。

 すでに、大手サイトに出店している場合でも、様々な面でより自由度が高い自らのサイトも持ちたいという小規模事業者は少なくない。

 ネットコンサルティングを手掛けるD4DR(東京・港)の藤元健太郎社長も「自前のサイトはコストの安さとマーケティングの自由度の高さといった利点がある」と強調する。「中小事業者もネットと実店舗を連動させた『O2O』などのマーケティングがますます重要になる」とも話す。

 14年版の中小企業白書は「ECは企業規模の大小を問わず事業ができる可能性があるにもかかわらず、小規模事業者はまだ機会を十分に生かせていない」と指摘している。ベンチャー企業がサービスの幅を広げていることはECの裾野の拡大にもつながりそうだ。