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一般社団 相続に課税 「税逃れ」を問題視で改正 経営 者に対応せまる 2018/3/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「一般社団 相続に課税 「税逃れ」を問題視で改正 経営者に対応せまる」です。





 業界団体やスポーツ団体、福祉団体などで広く使われている一般社団法人に対し、2018年度の税制改正で課税が強化される。これまで相続税が事実上課せられなかったことから、一般社団法人を活用した「相続税逃れ」も横行。これが問題視されたためだ。どう対応するか、頭を悩ませる企業経営者や資産家も増えそうだ。

(押野真也)

 「どうしたらいいか、正直困っている」。東京都大田区で物流関連企業を営む70代の男性経営者は頭を抱える。既に設立した一般社団法人を活用して、相続税なしで息子2人に自社株式の一部や不動産などの資産を相続させようと考えていた。だが、今回の税制改正でもくろみが外れた。

 一般社団法人を使う節税の仕組みはこうだ。まず法人を設立して自らが理事に就任する。そこに自らが保有する株式や不動産などの資産を移転。理事が資産を管理する形とする。親の死亡などを受けて子などが理事に就けば、実質的に資産も継承できる。これまでは相続税がかからなかったため、相続税を支払うことなく子に資産が移る。

セミナーで紹介

 こうした手法はここ数年で広まり、税理士やファイナンシャル・プランナーが開く「節税セミナー」などで紹介されてきた。この男性も税務相談で面識があった税理士から手法を教わり、有効な節税策と考えて資産を移転した。登記などにかかる費用や税理士に対する手数料などで約150万円を支払ったという。

 相続税がかからなかったのは、社団法人は株式会社と違い、企業の株式に当たる「持ち分」という概念がないためだ。だがこうした手法に対しては、「税逃れ」だとする批判も根強かった。

 今回の税制改革では、一般社団法人の役員に占める同族者の割合が2分の1を超えるなどの「特定一般社団法人」には、相続税を課税できるようになる。個人から法人に資産を移転する際の課税要件も明確になった。関連法案が成立すれば4月1日から適用される。

 ビジネス・ブレイン税理士事務所(東京・港)の畑中孝介所長は「(従来の仕組みは)誰が考えても明らかにおかしな制度だった。課税されるのは当然だ」と話す。

 一般社団法人は法務局に登記するだけで設立でき、監督官庁はない。理事1人と社員2人を確保し、定款をつくるだけで手軽に法人格を取得できる。かつて公益法人に対する監督官庁の関与が強く癒着の温床になったとの反省から、08年施行の法律で生まれた制度だ。

 手軽に設立できることから法人の数は増え続けている。東京商工リサーチによると、16年に5996団体が設立され「17年も増加傾向にあるとみられる」(情報本部の後藤賢治課長)という。この中には節税目的での設立も多いとみられ、課税強化後はこの傾向に変化が出る可能性もある。

企業に影響も

 上場企業の戦略にも影響が及びそうだ。一般社団法人を設立する例は多いが、将来の相続などで課税対象になりそうなところもある。大量保有報告書によると、インテリア大手のオリバーは一般社団法人の「大川」に自社株を14.27%割り当て、接骨院チェーン運営のアトラは「みどり会」に40%以上を割り当てた。いずれも理事に創業者や創業家が就いており、資産を相続する場合は課税対象となりそうだ。

 金型メーカーの不二精機は16年に「千尋会」を設立。自社の「長期の安定株主」とするため、創業家が保有する自社株式8.36%を割り当てた。社団の理事職は創業家が占め、同社は「今後、対応を協議する」という。

 外部から理事を招いて同族者の理事の割合を2分の1以下にすれば相続税の課税対象にはならない。一方、税理士の畑中氏は「外部人材を増やせば支配権を維持できなくなり『乗っ取り』されるリスクもある」とも話す。過去に設立した一般社団法人については3年間の経過措置もあるとはいえ、一般社団は対応策を詰めておく必要がある。



支配権争い時の増資 資金調達の合理性カギ出光、議論に一石経営 陣の説明責任増す 2017/7/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「支配権争い時の増資 資金調達の合理性カギ出光、議論に一石経営陣の説明責任増す」です。





 出光興産は20日を払込日とする1200億円規模の公募増資を実施した。昭和シェル石油との合併に反対して新株発行の差し止めを求めていた創業家の即時抗告を東京高裁が棄却したためだ。一連の問題は、大株主の影響力低下を伴う増資がどこまで認められるかという議論に一石を投じた。

裁判所の決定により、出光興産と昭和シェル石油の合併は前進(横浜市中区)

 今回はっきりしたのは、資金調達という主要目的に必要性・合理性があれば、仮に支配権を維持する目的が含まれていたとしても、それが主目的でない限り裁判所は差し止めないという点だ。牛島信弁護士は「増資の理屈が通っていれば裁判所は認める」と話す。

 裁判所は出光の増資について「支配権を巡る実質的な争いで自らを有利な立場に置く目的が存在した」と創業家の影響力を低下させる目的があったとした。この目的自体は不当となる。

 一方で、増資目的のうち借入金の返済については必要性・合理性があると認めた。創業家の影響力低下と資金調達という目的が併存するとし、総合して「主要目的が不当とは認められない」と判断した。中村直人弁護士は「新株発行の主要目的ルールをそのまま当てはめた判断だ」と話す。

 出光は株主総会の数日後の取締役会で増資を決めた。浅見隆行弁護士は、これが「裁判所が『増資後直ちに合併承認議案を臨時株主総会に諮る恐れが高いと認められない』と判断する根拠になった」ともみる。

 もっとも、資金調達の使途を示せば全て問題なしとするわけではない。裁判所は増資目的のうち、戦略的な投資については新株発行で資金を調達する必要性・合理性を認めなかった。

 増資で創業家の持ち株比率は株主総会で拒否権を持つ3分の1超から2割台に下がる。合併作業は進みやすくなるとの見方が多い。

 そこで、もう一つの疑問が浮上する。経営方針に反対する大株主がいる場合、合理的な理由がある公募増資ならば今後も認められるのか、ということだ。

 議論は分かれる。遠藤元一弁護士は「公募増資は第三者割当増資に比べ、経営陣に反対する株主の影響力を弱める確実性が弱いと高裁が言及したことは、今後の司法判断に影響を与えそうだ」とみる。これに対し島田邦雄弁護士は「今回は裁判所が認めるギリギリの事例だったという印象だ」とし、「今後、他の案件でも『公募増資なら増資は認められる』という前例になるとは思わない」と話す。

 会社法に詳しい別の弁護士は「借入金がない大企業はほとんどなく、借入金返済目的の増資が認められるなら『何でもあり』というのとほぼ同じだ」と、似た例が続くことを危惧する。

 突き詰めれば「会社は誰のものか」という長年議論されてきたテーマに結びつく。所有という意味では株主のものだが、長期的な成長のために何をすべきかを考えるのが株主総会で選任された経営陣の責務だ。増資するなら、成長への道筋を明示する必要がある。

 持ち合い解消で安定株主が減るなか、大株主と経営陣が対立する例は今後も増えそう。中村弁護士は「経営陣は『合理的な経営をしている』と理解してもらう努力を、これまで以上に尽くす必要がある」と話す。



都内の起業手続き一元化窓口 登記・国税も月内可能に開設2年弱、煩 雑さ解消 2016/12/5 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「都内の起業手続き一元化窓口 登記・国税も月内可能に開設2年弱、煩雑さ解消」です。





 起業に必要な手続きを1カ所でできるようにと昨年4月開設された「東京開業ワンストップセンター」の利用が低迷している。起業につながったのは月数件ほど。ワンストップをうたいながら、法人設立登記と国税の手続きがセンターで完結しない煩雑さが一因だ。ようやく年内には2つの手続きも可能になる見込みで、関係者は利用増に期待している。

東京開業ワンストップセンターは何度でも相談を受け付ける(東京都港区)

 センターは外資系企業やベンチャー企業を呼び込む狙いから国家戦略特区で設置が認められた。国と東京都が共同で運営。東京・赤坂の日本貿易振興機構(ジェトロ)本部の一角に設けられたオフィスには、法人の定款認証をはじめ、登記、税務(国税・都税)、年金・社会保険、入国管理の8つのブースが並ぶ。

 公証人や司法書士、税理士、社会保険労務士といった専門家が常駐。相談に応じるだけでなく、書類も受け付ける。申請・届け出手数料以外は無料で、相談は何度でも可能。外国人は通訳や翻訳サービスも受けられる。

 起業を果たした人からは好評だ。「必要な手続きが手にとるように分かり、スムーズだった」。今年8月に営業コンサルティング、シェルパワークス(東京・千代田)を興した米倉達哉社長(46)は話す。3回訪問し、役員状況や株主構成などの定款への記載の仕方などを公証人に細かく説明してもらったという。

 訪日中国人向けビジネスを手掛けるアクロスジャパン(同・港)の孫涛社長(47)は「自分で調べる手間を省け、約1週間で手続きできた。創業後の支援も充実してもらえるとうれしい」。

 ただ11月までの利用は延べ1688人に上る一方、申請・届け出は106件。1社で複数の手続きをすることが多く、会社設立数はより少ない。

 実は手続きは完全に一元化されてはいない。昨年10月には国家戦略特区法改正で公証人が公証役場以外で業務する特例が認められ、定款認証もできるようになったが、登記と、青色申告の申請など国税関連の手続きは依然として法務局と税務署に出向く必要がある。

 政府は今年6月の「日本再興戦略」で、センターについて「すべての事務に範囲を拡大し、利便性の抜本的な向上を図る」と表明。内閣府は年内をめどに登記と国税手続きもできるように、所管する法務省、国税庁と運用を調整中だ。

 内閣府は利便性向上をきっかけに、起業を増やしたいと意気込む。都も「知名度の低さもネックになっており、PRに力を入れたい」(政策企画局)と期待を寄せる。

 ジェトロが昨年、外資系企業を対象に実施した調査によると、日本でビジネスを行う阻害要因として「行政手続き・許認可の複雑さ」との回答が最も多かった。内閣府は「今後はすべての手続きを電子申請できるようにもしたい」(地方創生推進室)とする。起業を増やして経済成長の底上げにつなげるには、手間やコストの削減に向けたさらなる工夫が求められる。

(青木茂晴)



「カリスマ経営者も一機関」 セブン&アイ人事決着 冨山和彦氏に聞く 鈴木氏、辞める必要なし 2016/04/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「「カリスマ経営者も一機関」 セブン&アイ人事決着 冨山和彦氏に聞く 鈴木氏、辞める必要なし」です。





 セブン&アイ・ホールディングス(HD)の鈴木敏文会長が自身が提案した幹部人事案を拒まれ、退任した。待ったをかけたのは社外取締役が半数を占める指名報酬委員会だ。オムロンの社外取締役として同社社長人事の決定にかかわる冨山和彦・経営共創基盤最高経営責任者に企業統治の観点から、今回の事態の評価を聞いた。

 ――鈴木氏の人事案が拒まれました。

 「鈴木氏が卓越した経営者であることは間違いないが、オーナーではない。どんなカリスマであっても、公器である上場会社の最高経営責任者(CEO)は業務執行を担う『機関』だ。執行機関であるCEOが、専権事項のように後継者を選ぶことは許されない」

 「だから鈴木氏側が出した人事を(監督機関である)取締役会が拒んだことは、企業統治が機能したと高く評価できる。それを担った社外取締役の方々は素晴らしい。今回の事案は、日本の企業統治史上に残る快挙だ」

 ――鈴木氏の退任で経営が混乱しませんか。

 「そもそも鈴木氏は人事案が通らなかったことで辞める必要はない。欧米の上場企業ではCEOの意見が取締役会に却下されることは珍しくない。M&A(合併・買収)だって止まることがある。国会に例えれば1本の法案が通らなかっただけのこと。そのたびに提案した大臣や首相が辞任するだろうか」

 「もっと言うと、今回の事態で経済界やメディアが驚いたり、大騒ぎしたりするのは、日本の企業統治が『前時代的な段階』を脱却していない証拠だと思う。もうひとつの教訓は、企業の取締役会は次期社長の選任に、常に最重要課題として取り組んでいなければならないということだ」

 ――冨山さんはオムロンの社長指名委員会の委員長を務めています。

 「同社は監査役設置会社で、社長指名委は取締役会の諮問機関だ。2011年に就任した山田義仁・現社長を選任した実績がある。社長に万一の事故があった場合の臨時の社長候補、そして将来の通常の社長交代に向けた人選も進めている」

 ――人選はどんなプロセスなのですか。

 「およそ10年のプログラムを考えている。最初は世界中から30人くらいの候補者を選び、その人たちには意図的に高いハードルを課している。評価の結果、毎年、候補者を入れ替えて現在は20人くらいに絞り込んだ」

 「社長交代時期が近づいたら候補者を3人に絞り込み、交代直前に1人を選ぶイメージだ。その時点で会社が直面している経営環境や戦略が大きな要素になる。これだけの労力をかけて現経営陣と取り組んでおり、オムロンで社長人事の混乱は考えられない」(聞き手は編集委員 渋谷高弘)

 とやま・かずひこ 1985年東大法卒、ボストンコンサルティンググループなどを経て2003年産業再生機構業務執行最高責任者。07年から現職。



サイト上のプライバシー「消して!」 削除どこまで、運営者悩む 表現の自由と綱引き 2016/03/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「サイト上のプライバシー「消して!」 削除どこまで、運営者悩む 表現の自由と綱引き」です。





 自分の名前をインターネットで検索したら、隠したい過去について書かれたサイトの情報が提示された――。誰でも検索結果を消してほしいと思うだろう。だが、検索事業者に簡単に削除してもらえるとは限らない。安易に応じれば憲法上の「表現の自由」を侵しかねないためだ。

 ヤフーは昨年3月、削除対応の基準を公表。検索結果について、プライバシー侵害かどうかを判断する要素などを例示した。以前も自社の判断で削除してきたが、今回は有識者会議を開き基準を明文化した。「社会的関心の高まりに対応した」とネットセーフティ企画部の吉川徳明マネージャー。だが公表後も運用は手探りが続いている。

 最も対応が難しい削除依頼は犯罪歴に関するもの。同社の基準は「過去の違法行為の情報は公益性が高い」と分類し慎重に構える。だが依頼者側の削除への要望は強い。

 吉川氏は「迷う案件は社内で合議する」と話す。考慮要素は「犯罪の内容、時間の経過、立場」など。だが「とらえ方は人により異なり、合意を形成しづらい」(吉川氏)。判断が難しい場合は削除しないという。

 プライバシー権は秘密をみだりに公開されず自己の情報を制御できる権利だ。判例の蓄積で認められている。憲法の幸福追求権などが根拠とされる。何を隠したいかは人それぞれで一律の判断にそぐわない面も大きい。

 検索事業者が自主的に削除しない場合、依頼者は地方裁判所に削除を求める仮処分を申し立てることが多い。グーグルやヤフーは日本各地の裁判所で対応をしている。

 2014年10月、東京地裁がグーグルに対し削除を命じる決定を出したことを皮切りに、犯罪から一定期間経過したことなどを理由に裁判所が削除を求める案件が相次ぐようになった。だが犯罪歴を消すことについては検索事業者も慎重で、争いは長引くこともある。

 係争では「検索結果画面の情報の、どの部分まで削除すべきか」が新たな争点となっている。検索結果は当該サイトに接続する「リンク(タイトル)」や「スニペット」と呼ぶ数行のサイト内容の抜粋で構成される。

 ヤフーは「スニペットが権利侵害しているなら、そこだけを削除すればいい」と主張する。リンクまで消すと侵害情報だけでなく、ページ内の適法な情報にもたどり着けなくなってしまうことを懸念するためだ。表現の自由や知る権利を守るためには、対症療法にならざるを得ないという。

 一方、依頼者の代理人を務める神田知宏弁護士は「スニペットだけが消えた状態はむしろ目を引く。リンクをクリックすればすぐページが読めるようでは、削除の意味がない」と批判する。

 さいたま地裁が今年2月に出した決定は「忘れられる権利」に言及し、犯罪歴の削除を認めた。欧州ではネット上の個人情報を消す際の根拠とされる権利だ。ただ、新しい権利のため「内容や必要性も含め議論を醸成すべきだ」と神田弁護士は指摘する。

 検索事業者と依頼者の表現の自由とプライバシー権をめぐる綱引きは、まだ一例も最高裁での決着をみていない。明確な法的規範がないなか、事業者は「難しいものはその都度、裁判所の判断に委ねていく」という対応を続けていくことになりそうだ。

(児玉小百合)



旅行者民泊、法の「想定外」空き部屋貸し出し、広がるネット仲介 2015/07/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「旅行者民泊、法の「想定外」空き部屋貸し出し、広がるネット仲介」です。





 ネットの仲介サイトを通じて不動産やクルマなどを貸す「ソーシャルシェアリング」のビジネスが広がっている。ただ自宅の空き部屋を旅行者に貸す不動産シェアリングサービスは、場合によっては貸主が旅館業法に抵触する可能性があるなど法務的な課題も抱えている。政府も規制の見直しに乗り出した。現状と今後の課題について分析する。

スペースマーケットは、現時点では基本的に宿泊物件を扱っていない(古民家を利用して開いたヨガ教室)

(児玉小百合)

 JR新宿駅から徒歩4分。ベッドは2つ。貸し切りで1泊あたり8456円――。

 米国に本社を置く「Airbnb」(エアビーアンドビー)の日本版サイトには、主に旅行者向けに一般ユーザーが貸し出す部屋の紹介が並ぶ。過去に利用した旅行者からの口コミも読める。

 2008年設立のエアビーアンドビーは世界190カ国、3万4000都市以上で事業を展開。利用者数は延べ4000万人に上る。非上場だが、米紙によると企業価値は優に1兆円を超えるという。同社などの不動産シェアサービスの広がりを受け、英国では自宅の貸し出しが大幅にしやすくなる新法が施行された。

 日本政府が目指す訪日外国人客数は30年に3000万人(14年は1341万人)。円安を追い風に観光客は急増、すでに東京など都市部ホテルの稼働率は高水準だ。20年の五輪開催を待たずに宿泊施設が不足気味になるなか、既存の遊休不動産を有効活用できる不動産シェアは課題解決の一手段になるともいわれる。

 一方で、現状では法的な課題を抱えるビジネスモデルでもある。厚生労働省によると「旅館業法上、料金を取ってヒトを宿泊させるのは『旅館業』に当たり、物件の貸主は都道府県知事から営業許可を取る必要がある」(生活衛生課)。しかし一般の貸主が床面積や暖房設備など規制をすべてクリアし、許可を得ることは現実的ではない。

貸主男性を逮捕

 実際に14年5月、無許可で自宅の部屋を貸した外国人男性が、再三の指導に従わなかったとして旅館業法違反容疑で逮捕された。エアビーアンドビーの仲介ではなかったが、厚労省は同年7月、都道府県に「自宅でも許可が必要」と通知した。

 また賃貸物件では通常、賃貸借契約に「転貸禁止規定」が含まれ、大家の許可なしにまた貸しはできない。

 事業者でも14年、ヤフーが宿泊予約サイト上で個人が所有する別荘のシェアリング仲介サービスを始めたところ、貸主が旅館業法に抵触すると指摘され、休止した。

 こうした仲介サービスで事業者は貸し手と借り手が出会う場を提供する立場であり、個々の賃貸借のトラブルについては責任を負わないのが原則だ。利用規約でもそう定められている。

 だが森亮二弁護士は「場を提供している以上、注意喚起の義務などはあり、完全に責任を逃れられるわけではない」と言う。エアビーアンドビーもサイト上で法的注意点を指摘しているが、利用者の良識に委ねられているのが実態だ。

 こうした状況を関係者はどう見ているのか。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の清沢正人専務理事は「感染症などの対策はどうなるのか。対価を得るなら、せめて簡易宿泊所程度の規制は受けるべきだ」と話す。

 シェアサービスの拡大を望む側はどうか。古民家などの時間貸しサービスを手掛けるスペースマーケット(東京・新宿、重松大輔社長)は現在、宿泊を含まないサービスを展開しているが、「法令で認められれば宿泊も手がけたい」と話す。

結論には時間

 旅館業法の規制対象でない農家での宿泊をサイトで仲介する百戦錬磨(仙台市)。上山康博社長は「民泊は大きなビジネスチャンス。ルールをきちんと定め、事業者がフェアに競争できるようにしてほしい」と訴える。

 ネットを生かした不動産サービスに詳しい水野祐弁護士は「旅館業法はネットで個人が遊休不動産を活用するような状況を想定していない。新しい価値観や文化に基づくサービスに応じた解釈や運用、法改正が必要だろう」と指摘する。

 すでに国家戦略特区では主に外国人の宿泊を想定した旅館業法規制の緩和策が打ち出されている。だが実施に必要な条例を制定した自治体はまだない。6月末に閣議決定された「日本再興戦略」では「ネットによる民泊サービスについて実態の把握などの検討を行う」とされた。ただ結論を出すのは「16年度中」(厚労省)といい、まだ時間がかかる見通しだ。