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経済観測 米経済底上げの処方箋は フィッシャー元米財務次官に聞く 2016/10/18 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「経済観測 米経済底上げの処方箋は フィッシャー元米財務次官に聞く」です。





 米国の景気は底堅い回復を維持しているが、昨年12月に続く利上げの成否や11月の大統領選の結果によっては、下振れのリスクが高まりかねない。ピーター・フィッシャー元米財務次官(現米ダートマス大学シニアフェロー)に、米経済底上げの処方箋を聞いた。

 ――いまの米経済をどう診断していますか。

 「過剰生産に苦しむ中国や低成長の日欧などに比べれば、確かに堅調といえるだろう。それでも需要が思うように増えておらず、失望感を拭えない。世界経済の減速や不安定な国際金融市場といった逆風だけでなく、米国の政策にも問題があるのではないか」

 「米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和の効果を広く浸透させ、長期金利の低下を促すことで景気を刺激できると信じてきた。そして通常は右肩上がりになるイールドカーブ(利回り曲線)の傾きを、できるだけ平たんにするよう努めてきた。その前提が必ずしも正しいとはいえない」

 ――どんな問題が生じているのでしょうか。

 「低い長期金利は借り手の資金需要を高める一方で、貸し手の資金供給を抑える方向に働く。金融機関が収益の悪化を理由に融資を絞り、景気浮揚効果を減殺している恐れがある。マイナス金利政策に踏み込んだ日欧では、まさに銀行システムが打撃を受けた

 「異例の低利があまりに長く続くと、年金や金融資産に頼る老後の生活が心配になり、消費を控えて貯蓄を増やす人たちもいる。本来なら生き残れない『ゾンビ企業』が存続し、米経済全体の生産性を押し下げている可能性もある

 ――FRBは利上げを急ぐべきだと考えますか。

 「もっと景気回復の勢いがあるうちに、早く利上げしておくべきだった。慎重になるあまり、適切なタイミングを逸してしまったのではないか。必ずしも急げとはいわないが、短期金利の誘導目標(現行年0.25~0.50%)を1%程度まで引き上げるのが望ましい。それ以上にイールドカーブの適度な傾きを取り戻すのが大事だと思う」

 「ここからは財政政策の出番だ。金融政策を正常化しながら、インフラ投資や減税で景気を下支えしてほしい。労働参加率(働く意志のある人の割合)の低下、設備投資の停滞、生産性の伸び悩みは米経済の『三大悲劇』といってもいい。これらの問題を解決する構造改革も欠かせない」

 ――次の大統領候補が保護主義に傾いています。

 「米国民はもともと楽観的だが、いまのような暗い時期が定期的にやって来る。保護貿易は米経済底上げの処方箋ではない。自由貿易を推進するとともに、その痛みを感じる人たちの支援策を講じるべきだ」

 ――日銀が長短金利を誘導する新たな金融緩和の枠組みを導入しました。

 「10年物国債の利回りを0%程度に誘導し、長期金利の下がりすぎを抑えるのは妥当だろう。イールドカーブをうまくコントロールできるかどうかに注目したい。マイナス金利はやはり間違いだ。円相場の押し下げに貢献したとしても、日本経済全体の底上げには逆効果なのではないか」

(聞き手はワシントン支局長 小竹洋之)



月曜経済観測 国内外の消費の今 価格に合理性求める 良品計画社長 松崎暁氏 2016/09/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「月曜経済観測 国内外の消費の今 価格に合理性求める 良品計画社長 松崎暁氏」です。





 小売りの現場は再び値下げ圧力が高まっている。そんなに購買力は弱いのか。「無印良品」をグローバル展開する良品計画の松崎暁社長に国内外の消費の今を聞いた。

バーゲン比率高く

 ――デフレ経済の足音が聞こえていますが。

 「昨年12月に3足1000円(消費税込み)の靴下を1200円にしたら計画通り売れず8月下旬に990円にした。戦略商品として綿の混入率を高めて上質にしたが、こちらの思いが伝わらなかった」

 「正価販売(プロパー)とバーゲンの割合では、やはりバーゲンの販売比率が高まっている。それだけ商品購入に慎重になっている証拠なのだろう。無印良品が独自で行うセールと、無印がテナント出店している商業施設のセールが重なり大幅な値引きになるとよく売れる」

 ――消費者は価格に対して神経質なのですか。

 「そうは思っていない。今年、モーター音が静かなDC(直流)扇風機を3万2000円で、そして従来の型を9800円で同時期に販売したところDC扇風機のほうが早く売り切れた。商品によって価格合理性が大きく異なってきている。そこをどう読み切るかだ。これは2014年の消費税率引き上げ以降、顕著な傾向だ」

 ――百貨店、専門店ではアパレルの販売がよくありません。

 「第2四半期の既存店舗売上高は前年同期比で1.6%減となり、第1四半期の7.3%増に比べて落ち込んだ。その理由は天候不順も若干あるが、それよりも商品在庫が足りずに売り逃しが原因で、商品があれば売れたはずだ」

 ――消費の地合いはそれほど悪くないと。

 「そうだ。必ずしも物価の下落が悪いとは考えていない。賃金は明らかに増えているので、消費に目が向く環境にはなっている。ただ、マイナス金利政策や英国の欧州連合(EU)離脱決定など未知のことが起きると消費者は先行きの不透明感を持ち消費は萎縮する。急激な為替相場の変動など新たな懸念材料が起きないことが条件だが今年度の後半からは回復するとみている」

 ――インバウンド(訪日外国人)消費はどうですか。

 「陰りは全くない。上期は前年同期比で47%増だ。主に化粧品や生活雑貨が好調だ。インバウンド消費は富裕層による宝飾品や家電製品などの高額品の買い物から一般大衆が生活に必要な商品の購入に変わってきている」

売れ筋商品は同じ

 ――海外の店舗から見えてくる消費者像は。

 「日本でよく売れる商品は欧州、中国、アジア、米国でも同じだ。国や地域の購買力によって同じ商品でも価格差はあるが無印良品が開発する商品の基本性、普遍性を世界が理解してくれるようになった。グローバル化が進み生活の基本的な部分が同質化してきているからだ」

 「ただ、長くこの仕事をしていてシンプルでわかりやすい機能をもつ無印良品の世界観と、消費者が期待する無印良品の世界観との擦り合わせが難しくなっているのは事実で、消費行動は読みづらくなっている

(聞き手は編集委員 田中陽)

 まつざき・さとる 生活美学の視点から「感じよい暮らしを探求する」。62歳。



月曜経済観測 新興国経済と世界 中国、倒産の波じわり 豊田通商社長 加留部淳氏 2016/08/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「月曜経済観測 新興国経済と世界 中国、倒産の波じわり 豊田通商社長 加留部淳氏」です。





 新興国経済の足どりが鈍い。中国経済は加速感を欠き、ロシアやブラジルなど資源国は景気低迷が続く。新興国を中心に世界経済はどこへ向かうか。アフリカを含めた動向を豊田通商の加留部淳社長に聞いた。

米消費は堅調

 ――個人消費を軸に米国経済をどうみますか。

 「消費はしっかりしている。自動車は今年も1700万台以上が売れようとしており、供給不足になっているモデルもある。ガソリンの値段が下がって大型車が売れている」

 「原油価格はそう上がらない。上値は1バレル60ドルぐらいでは。米大統領選の行方によって大きく流れが変わってしまうことはあり得るが、米国の構図はあまり変わらない」

 ――欧州連合(EU)離脱を選んだ英国や欧州の経済はどうでしょうか。

 「英国では自動車のビジネスが圧倒的に多いが、いまのところ強烈に景気が悪くなっているという印象はない。英国のEU離脱を受け、東欧出身の社員が母国に帰らなくてはならなくなると生産で影響が出るのでは、と心配している」

 ――新興国経済で注目している国・地域は。

 「中国だ。自動車は今年2600万台ぐらい売れるといわれ、依然として市場は大きい。一方で自動車の生産能力は年4千万~5千万台といわれ、鉄鋼と同じように過剰生産能力の問題があるのは心配だ」

 「あとは銀行の不良債権問題だ。当社の取引先でも規模の小さいところはポコポコ潰れている。規模の大きいところはないが、じわじわ広がっている感じだ。国有のゾンビ企業はどこかで整理しないといけないが、それをやると景気が落ちる。そのタイミングがいつか。あるいは整理をやらずにズルズルいくのか」

 ――中国経済の軟着陸は難しいのでしょうか。

 「中国経済は失速せずにうまくいくという人もいるが、当社は様子見だ。昨年1年間で全世界で1800億円程度を投資したが、中国への投資はほとんどなかった。ただ中国から逃げているわけではない」

非資源国は成長

 ――新興国経済のうち、資源国が低迷している印象があります。

 「その構図は変わらないという感じだ。ブラジルは元気を取り戻すのに時間がかかる。中東もビジネスはよくない。アフリカでも資源国であるナイジェリアやアンゴラは厳しい」

 ――他のアフリカ諸国はどうでしょうか。

 「資源国以外のところはそれなりの経済成長率を保っている。東部だとケニア、タンザニア。西部だとコートジボワールとセネガルなどだ。教育に熱心な国では人材が育ち、中間層が増えている。そういう国には事業投資をしていく」

 ――今月のアフリカ開発会議(TICAD)を機にアフリカ進出を検討する日本企業も増えそうです。

 「アフリカの人口はいまの11億人から2050年にかけて倍増する。潜在力は間違いなくある。5年から10年かかっても粘り強く事業をやり、人を育てて、社会貢献もしていくというのが当社の考え方だ。腰をすえて長期的な視点でやらないとアフリカでの商売はうまくいかない」

(聞き手は編集委員 瀬能繁)

 かるべ・じゅん 仏商社買収を機にほぼアフリカ全域で事業。63歳。



月曜経済観測 マイナス金利と住宅 先行き不安、着工数減も 大和ハウス工業社長 大野直竹氏 2016/07/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「月曜経済観測 マイナス金利と住宅 先行き不安、着工数減も 大和ハウス工業社長 大野直竹氏」です。





 アパートなど堅調だった住宅市場にマイナス金利政策はどう影響しているのか。住宅や商業施設にどんな新たな需要が生まれているのか。大和ハウス工業の大野直竹社長に聞いた。

 ――住宅市場の先行きをどう見ていますか。

 「2015年度は前年度よりも4万戸増えた。15年1月の相続増税への節税対策として賃貸住宅の建設の需要が大きく伸びた。貸家の着工は依然として底堅いが、いつまでも右肩上がりではいかないだろう」

需要喚起難しく

 「住宅着工戸数全体では今年度は昨年度より約6万戸減り、86万戸になると予測している。やや厳しめの見方かもしれないが、相続増税の効果が一段落することに加え、人口減少の影響もある。景気の先行への不透明感もある」

 ――先行きが不透明な原因は何ですか。

 「日本の景気がまるっきりだめというわけでもない。ただ中国経済の減速や英国の欧州連合(EU)離脱問題など海外の要因で、ここ数カ月、株安や円高など悩ましいことが起きている。1年先にどうなっているか消費者も不安を抱いているのではないか」

 ――マイナス金利政策の住宅市場への影響は。

 「もともと戸建て住宅を建てようと思っている人の後押しにはなるかもしれない。ただ住宅ローンの金利はすでに相当下がっており、需要喚起に効果があったとは思えない。一方、賃貸住宅は資産運用としての建設が主。家賃が変わらないなか、ローンの金利が下がればトータルの利回りはよくなるので、一定の影響は及ぼしているだろう」

 「政府も日銀も精いっぱい応援してくれている。後は民間ががんばらないといけない。むしろ金利のマイナスがもっと大きくなれば、傷つく企業が出てくる。将来の退職金の支払いに備える退職給付債務が膨らみ、積み立て不足が発生するケースなどだ」

倉庫建て替え加速

 ――住宅市場で新たな動きはありませんか。

 「アパートやマンションなどの賃貸住宅で、趣味のためという理由で部屋を借りる人が増えてきている。書道や工作をしたり、絵を描いたりするなど目的はいろいろあり、ここ1、2年需要が強まっている」

 「根底には、日本の住宅はやりたいことをすべて完結できるほど広くないという事情がある。所得の多い層を中心に、自分の空間で自分の技術をもっと高めたいという思いがあるのだろう。核家族化による住宅需要の変化の流れの一つだ」

 ――商業施設の建設にも力を入れていますね。

 「コンビニエンスストアなどライフスタイルの変化から生まれる需要に応えている業種は成長している。時間や場所を問わずに消費活動を行えるインターネット通販が様々な分野で拡大している影響も大きい。新たな消費ニーズに応えるため、物流施設の開発が全国で盛んになっている」

 「昔の倉庫と違い、買った商品が消費者のイメージと違ったときに返品を受け付けたり、1日に何回も配送したりするなど様々な機能が求められる。控えめに見て、いまの倉庫の7割は対応が難しく、それだけ建て替えの需要がある」

(聞き手は編集委員 吉田忠則)



月曜経済観測 アベノミクスと株式市場 追加政策ないと上値重く 野村ホールディングスCEO 永井浩二氏 2016/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「月曜経済観測 アベノミクスと株式市場 追加政策ないと上値重く 野村ホールディングスCEO 永井浩二氏」です。





 日経平均株価は前年比で2割ほど低い水準にとどまる。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が27日閉幕したが、アベノミクスへの株式市場の信認が低下しているとの指摘も多い。実態はどうか。証券最大手、野村ホールディングスの永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)に聞いた。

為替の前提狂う

 ――2016年の株式相場は市場関係者にとって誤算続きのようです。理由は何でしょうか。

 「最大の要因は外国為替相場だ。昨年末時点で今年は1ドル=120~130円で推移すると想定していたが、最近は1ドル=110~120円と円高・ドル安方向に修正された。米国は経済面では予想どおり利上げ基調になったが、政治的に円安・ドル高を認めない姿勢に転じた」

 「為替の前提が変わると企業業績にも影響が出る。16%程度伸びると見ていた15年度の企業の1株利益は資源安も響き、ほとんど横ばいだった。16年度は12%程度伸びそうだが、それを前提にしても年末の日経平均株価は1万9000円程度ではないか」

 ――外国人投資家も売り越しの姿勢が目立つようになりました。アベノミクスへの信認が下がっているのでしょうか。

 「今のところ大きな失望感が広がっているわけではない。アベノミクスが始まってから日本株は随分と上がった。世界経済に不透明感が強まる今、外国人投資家がとりあえず利益の確定に出るのは自然なことだ。いわば、アベノミクスの利食い売りだ」

 「外国人投資家が売却して得た現金を再び日本株に投じるかどうかが重要。安倍政権が掲げた脱デフレへの期待が従来よりも後退しつつある。政策対応が何もなければ、日本経済への悲観論が強まる。日本国債の格付けへの影響は非常に気になるが、消費税の引き上げには慎重な判断が必要だろう。財政がどこまで出動できるかについても市場の関心は高い」

 ――市場から見たグローバル経済のリスクは何でしょうか。

 「まず6月23日の英国の国民投票が挙げられる。仮に英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めれば、ポンドだけでなくユーロも売られるのではないか。これは翻って円高圧力が強まることを意味する。パナマ文書の問題もお金の流れや各国の政治への影響が読み切れない」

 「米大統領選の行方も混沌としており、市場の不確実性を高めている。米市場関係者が警戒を強めているのを感じる」

世界で流動性低下

 ――リーマン・ショックからすでに8年目です。金融機関経営にどんな変化が起きていますか。

 「規制が強化され、金融機関が市場取引に関するリスクを取りにくくなった。今後の規制がどうなるかを見通すのが難しいため、バランスシートを使って流動性を供給する業務は縮小している」

 「こうした事情から、株式、債券を問わず世界中の金融市場で流動性が低下している。ちょっとした出来事で株価などが乱高下しやすくなっているのも、背景には金融規制の影響も横たわっている」

(聞き手は編集委員 小平龍四郎)

 ながい・こうじ 2012年就任。「野村をつくりかえる」と言い続ける。57歳。



月曜経済観測 もたつく景気、住宅需要は 都心マンション軸に堅調 三菱地所社長 杉山博孝氏 2016/05/09 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「月曜経済観測 もたつく景気、住宅需要は 都心マンション軸に堅調 三菱地所社長 杉山博孝氏」です。





 個人消費が振るわず景気回復が足踏みを続けるなか、住宅投資は今後のけん引役として期待できるのか。三菱地所の杉山博孝社長に聞いた。

資源安が影響

 ――景気の現状は。

 「年初思っていたより芳しくない。円高・株安や、原油をはじめとする資源安が企業業績に影響してきているのかなと思う」

 ――海外経済は心配ではありませんか。

 「米国の不動産ビジネスは堅調だ。欧州もロンドンを中心にビジネスを広げたいが、英国が欧州連合(EU)から出るか、出ないかは一つの懸念材料だ」

 ――このところ国内の住宅着工の動きは持ち直しつつあります。

 「昨年1年間の住宅着工戸数は前年を上回り、底堅いものがある。今年も堅調にいく見込みだ」

 ――マンション販売価格の上昇が、かえって需要を冷やしませんか。

 「上がっているのは間違いないが、住宅価格の平均値のことだ。たとえば団塊の世代が夫婦二人になって都心生活を楽しみたいということで、都心部の物件への需要が多くなっている。若い人も共働きが当たり前になり、湾岸部のマンションを夫婦で購入している」

 「どうしても都心は物件価格が高くなるので平均価格はいかにも上がっているように見えるが、住宅を初めて取得する人が求める郊外のマンション価格はそんなに上がっていない」

 ――来年4月に消費税率が10%になると、その前の駆け込み需要とその後の反動が気になりませんか。

 「前回の8%時に駆け込み需要は若干あったが、政府が住宅ローン減税などで手を打ったのであまり影響はなかった。今回も大きな影響はないと思うが、住宅投資は日本経済全体にとっても重要なので何らかの追加策は政府に要望したい」

消費増税は必要

 ――10%への消費増税は予定通りやるべきですか。

 「国際的な日本の信認を得るという意味でも、消費税を上げることは必要だ。そのタイミングは安倍晋三首相が状況をみながら的確に判断するだろうが、財政の健全化を考えると増税を避けてはいけない」

 ――日銀のマイナス金利政策による住宅市場への影響はありますか。

 「マイナス金利の導入は総じていえばプラスに働くと思う。ただ、かなりの低金利が続いていたので、これで一挙に新規の住宅購入者が増えるかどうか、現時点で見極めはできない」

 ――外国企業の動向をどうみていますか。

 「東京・大手町に海外から日本に進出する企業の手助けをする施設をオープンしたが、入居する半分以上が海外の企業だ。米国のIT(情報技術)系からすると『これだけ質の高い人口1億人の市場は他にない』と新ビジネスを日本で成長させたいという。海外の魅力的な企業をどれだけ連れてこれるか、官民一体で取り組まなくてはならない」

 ――熊本地震をどうみましたか。

 「本当に深刻だ。ある程度の震度の地震が1回では大丈夫だったとしても、それが何回か来ることによって建物が崩れているようなことがあった。我々も深刻に考えないといけない」

(聞き手は編集委員 瀬能繁)

 すぎやま・ひろたか 東京・丸の内から開発エリアをさらに拡大。66歳。



月曜経済観測 米利上げの行方は 物価次第、当面は様子見 元FRB理事 フレデリック・ミシュキン氏 2016/04/04 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「月曜経済観測 米利上げの行方は 物価次第、当面は様子見 元FRB理事 フレデリック・ミシュキン氏」です。





 米連邦準備理事会(FRB)が世界経済や金融市場の動向を見極めながら、昨年12月に続く利上げのタイミングを探っている。その環境はまもなく整うのか。フレデリック・ミシュキン元FRB理事に聞いた。

急ぐ理由がない

 ――米経済の現状をどうみていますか。

 「景気の底堅い回復が続いている。足元の失業率は5%で、もはや完全雇用に近い状態にある。それでも賃金が伸び悩み、前年比2%の物価上昇率目標を達成できていない。物価予想(インフレ期待)が低下しているのは心配だ」

 「最大の懸念は世界経済の減速だろう。中国や欧州、日本の景気がもたつき、米経済の足を引っ張りかねない。市場の地合いにもまだ不安が残る。FRBが利上げを急ぐ理由は、いまのところ見当たらない

 ――FRBが今年想定する利上げは、4回から2回に修正されました。

 「もともと4回は無理だと思っていた。2回ならまだ理解できる。要は米国の物価次第だ。現時点でインフレ圧力が急速に強まる兆候はなく、当面は様子を見るのではないか」

 「いまは利上げが遅れるよりも、早すぎて失敗するリスクの方が大きい。物価上昇率が目標を下回っているうちは、利上げを見送るべきだろう。もちろんインフレ圧力が予想以上に強まり、2回以上の利上げを迫られる可能性も残る」

対話手法改善を

 ――市場との対話に問題はないでしょうか。

 「市場が不安定さを増した要因の中には、FRBのコミュニケーションに対するいら立ちもある。利上げの時期や回数をにじませるような対話術が、かえって市場の予想をゆがめ、逆の効果をもたらしている面は否めない。経済指標の動きに沿って利上げの是非を判断するという対話術に徹した方がいい。イエレン議長も統計重視の対話に傾いているが、まだまだ改善の余地があるはずだ」

 ――日本や欧州が採用しているマイナス金利政策をどう評価しますか。

 「中央銀行に預けたお金に手数料を課すマイナス金利は、金融機関の収益を圧迫する恐れがある。金利の低下や融資の拡大に有効かどうかも確信が持てない。FRBが導入をためらっていたのはそのためだ

 「先進国の中銀は経済の底上げを目指し、ゼロ金利政策や量的金融緩和を駆使してきた。それでも物価が上昇しにくいという共通の悩みを抱える。日本や欧州はほかに良い政策手段を見つけられず、やむなくマイナス金利を導入したのだろう。ひとつの実験ではあるが、有効に機能するかどうかはわからない」

 ――日本経済の課題はどこにあるでしょうか。

 「安倍晋三政権下で大胆な金融緩和に踏み切ったのは良かったが、期待通りの成果が出ていない。そこで消費増税を敢行し、国民がお金を使わなくなってしまった。当面は財政出動で景気を下支えし、中長期的に国の債務を圧縮する工夫も必要ではないか」

 「日本の人口減は深刻だ。輸出産業に比べて内需産業の生産性が低いといった問題もある。移民の受け入れや女性の活用を含めた構造改革が欠かせない

(聞き手はワシントン支局長 小竹洋之)

 Frederic Mishkin 米コロンビア大教授。2006~08年にFRB理事。65歳



月曜経済観測 価格で見る世界景気 成長の芽は南半球にあり JT社長 小泉光臣氏 2016/03/28 本日の日本経済新聞より

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 世界的に景気の足踏みが続くが、そんな中でモノの価格はどう動いているか。たばこから見た各国の景気を日本たばこ産業(JT)の小泉光臣社長に聞いた。

値上げは不可欠

 ――4月から国内で主力商品の「メビウス」を10円値上げします。

 「消費増税に先送り論も出る中で、なぜだと思うだろう。だが、日本は喫煙人口の高齢化や減少もあって1997年を境に市場が縮んでいる。値上げで収入を補う必要がある」

 「本来ならデフレ脱却がはっきりしたら。例えば日銀の言う『物価上昇率2%』が見えたときにするのが王道だろう。だが、そうなるのがいつかがはっきりせず、指をくわえて待つのはどうかと思った。顧客は一時的に離れるだろうが、それでも今年12月期決算の営業利益への影響はプラスマイナスゼロになる。値上げしなければマイナス成長だ」

 ――日本では今後も値上げで利益を守るのですか。

 「きれいごとかもしれないが、利益は顧客から一時的に預かったもの。それを研究開発に充てて新しい価値を商品に加えるのがあるべき姿だ。たばこにも味、香りと技術の進化があり、そういうものを商品にきちっと反映していく。どの分野でもそうだろうが、日本はよりプレミアムな市場にしていかないといけない」

ロシア減収重く

 ――たばこで世界3位。他の国々はどうですか。

 「JTにとって最大の海外市場、ロシアは天然資源への依存度が高く、ウクライナ問題の経済制裁もあって経済の回復が期待薄だ。GDP(国内総生産)の伸びは昨年がマイナス3.8%、今年も約0.6%のマイナスだろう。物価上昇も続く」

 「当社も4回値上げしたが収入の減少は補えていない。ルーブル安で円換算の売上高も目減りする。ロシアでは販売シェアで1、3位の銘柄を持つが、可処分所得が減っている間はもっと値ごろ感のある商品が必要だと感じている」

 ――欧州は。

 「経済は堅調だ。だが難民問題で社会保障費が増え、財政悪化懸念がある。欧州連合(EU)から離脱するかどうかの英国民投票もあり、ポンドの価値がどうなるか、モノやカネの流れがどうなるかで価格や投資戦略にも影響がある」

 ――今後期待する国は。

 「人口が増えるアジアとアフリカ。地政学リスクもあるが中東が魅力的だ。面白い現実がある。貧しい国ではたばこの1本買いが中心だが、1人あたりGDPが一定水準に達すると20本のパッケージで買う人が急増する。さらにある水準になると『ウィンストン』など国際的な銘柄を買う」

 「数字は企業秘密だが、いま力を入れているのがエジプトやスーダンだ。20本で買うところまで来て、もうすぐ国際的商品を買い始める時期に入る。タンザニアは1本買いからパッケージ買いへの移行期。100カ国以上に進出しているが、白地図に発展の段階を書き込みながら、価格戦略や企業買収を練っている」

 「南半球は全般に成長市場が多い。北半球は大半の国で需要が縮小している。世界全体では横ばいから微減。そういう構図だから投資するなら南半球になる」

(聞き手は編集委員 中山淳史)



月曜経済観測 原油安の行方は 持ち直しまで1年以上 出光興産社長 月岡隆氏 2016/02/29 本日の日本経済新聞より

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 原油の国際相場は一時1バレル30ドルを下回り、12年ぶりの安値を記録した。世界経済への影響も大きい原油相場の行方を、出光興産の月岡隆社長に聞いた。

現在は下げすぎ

 ――原油相場の下落が止まりません。

 「長期的に見れば現在の水準は下げすぎだろう。ただ、原油市場が供給過剰に陥り世界の在庫が積み上がった状況では短期的に下げが加速しやすい。国際的な相場形成に影響力を持つ米先物市場では投機マネーの売りも目立つ」

 ――有力産油国の間では増産に歯止めをかける動きも出てきました。

 「サウジアラビアなどがこれ以上増産しないことで合意した背景には、ベネズエラやロシアなどが経済的に追い込まれていることがある。しかし、石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC諸国が協調減産にまで踏み込む可能性は小さい」

 「現在の状況は石油危機後の1985~86年に似ている。当時も北海油田など新たな供給源が台頭し、サウジは需給の調整役をやめた。今回はロシアの増産に加え、米国を中心にシェールオイルの開発が進んだ。サウジが市場シェアを失ってまで減産に踏み切ることは考えにくい」

 ――需給調整のカギはシェールにあると?

 「開発や生産のコストが下がったとはいえ、シェール企業の採算は悪化している。今後は経営に行き詰まったシェール企業が石油メジャーの傘下に入り、メジャー主導で減産が進む展開を予想する。ただ、需給が均衡しても、これだけ在庫が積み上がると相場回復には時間がかかる。あと1年以上は必要だろう」

40~50ドル水準に

 ――原油相場はどれくらいの水準まで回復すると予想しますか。

 「油田の開発コストを踏まえれば40~50ドルあたりではないか。相場がさらに上がるかどうかは世界経済の動向にかかる。株式市場が原油相場の動きを気にするのも、その背後に中国を中心とした新興国経済の変調があるからだ」

 「原油安は日本経済にとって恩恵も大きいが、新興国経済の変調は輸出に逆風だ。こうした状況で企業は安心して投資できない。通貨安などに直面する新興国経済の混乱を収拾し、世界経済が成長への好循環を取り戻すことが重要だ」

 ――供給過剰の現状は、日本にとって海外で資源の権益を獲得する好機です。

 「米国政府による原油輸出解禁は、日本にとって調達の選択肢が増えることになる。資源を持たない日本は新たな権益確保も着実に進める必要がある。だが、資源関連企業の多くは相場急落で財務内容が悪化し、投資に踏み切る余力がなくなっている。資源の継続確保に日本全体でどう取り組むかの議論も必要だ」

 ――国内では石油業界の再編が進みます。

 「国内需要が縮小する中で石油業界が適正な利益を確保するためには過剰設備と過当競争、複雑な流通構造の問題を改善しなければならない。東京商品取引所などがけん引し、公正で透明性の高い価格指標をつくる努力も大切だ。業界全体で競争力を高める取り組みが求められる。元売りの統合はその一歩だ」

(聞き手は編集委員 志田富雄)

 つきおか・たかし 昨年7月に昭和シェル石油と経営統合で基本合意。64歳



経済観測 世界景気リスクどう評価 中国発の金融危機ない 2016/02/09 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「経済観測 世界景気リスクどう評価 中国発の金融危機ない」です。





 年明け以降、世界の株式・商品市場が大きく揺れ、経済の先行きにも不透明感が漂っている。リスクの所在はどこにあり、どのような政策対応が必要か。財務官の浅川雅嗣氏に聞いた。

 ――世界経済のリスクをどう評価していますか。

 「大きなリスク要因は2つある。中国と原油だ。中国については、過剰設備や過剰債務の調整が短期間で済まないことは分かっているし、中国当局も問題には取り組んでいる。ただ金融市場は待ってくれない」

情報発信に課題

 ――中国発のリーマン・ショック再来の懸念は。

 「当時は、米国の証券化商品を通じリスクが世界中に拡散し、疑心暗鬼が信用収縮とドルの流動性枯渇を招いた。今の問題は中国の実体経済とエネルギー価格で、世界的な流動性問題など起きていない」

 ――中国株は下げ、人民元は安くなっています。

 「株価や為替の調整はある程度、自然な動きだと思う。問題は当局の措置がアドホック(場当たり)であるとの認識を市場に抱かれ、振れを増幅している点だ。市場とのコミュニケーションの改善が大切だ」

 ――中国経済が失速する可能性はありますか。

 「中国は製造業からサービスへの移行過程にある。ただし過剰投資を減らすペースに応じて消費が伸びないと、全体の経済成長は鈍化する。投資から消費への移行を長期的にどう進めるか。この点も当局の積極的な情報発信が重要になる」

 ――円相場や日本株への影響はどうでしょう。

 「為替のレベル感はコメントしないが、常に日々の動向をにらみ、過度の変動の有無には注意を払っていく。外国勢の関心は日本株から離れているが、戻ってくる時に備え成長戦略の中身を固めるのが大切だ」

 ――原油については。

 「中東ではサウジアラビアが財政赤字に陥り、その穴埋めのためには、原油価格が下がっても、原油を売り続けざるを得ない。加えて経済制裁の解除されたイランからの供給が増える。新興国経済の減速は需要を下押しする。下落圧力はすぐには収まらないだろう」

原油安に恩恵も

 ――原油安が世界経済に及ぼす影響はどうですか。

 「当面は産油国を中心に下方リスクだが、日本のような消費国にとっては原油安は良いことだ。海外に流出していた購買力が、原油が下がる分だけ国内にとどまるからだ。米国にしても、石油産業の投資にはマイナスだが、消費者にはプラスだ。差し引きでみたら、悪い話ばかりではない」

 ――日本が議長国であるG7(7カ国)の課題は。

 「G7財務相会議で取り上げる世界経済のテーマは、中国の構造調整と米利上げに伴う金融政策の正常化、欧州の関心事である難民問題だ。米国の金融政策に関しては、米連邦準備理事会(FRB)の慎重なかじ取りを信頼している」

 「国際金融システムの安全網について、アジアではチェンマイ・イニシアチブの実効性の向上に取り組んでいる。開発では、日本が率先して質の高いインフラ作りを進めたい。国際税制や金融規制もG7のテーマとして取り上げていく」

(聞き手は編集委員 滝田洋一)