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副業しやすく ルール修正厚労省、本業との労働時間合算など検討 「働き方」整合性も課題 2017/11/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「副業しやすく ルール修正厚労省、本業との労働時間合算など検討 「働き方」整合性も課題」です。





 複数の職場で働く人をめぐる就労管理のルールが変わる可能性が出てきた。厚生労働省は複数の勤務先での労働時間を合算する仕組みの見直しを考える。組織をまたぐ就労管理は実態に合わないだけでなく、従業員の副業を阻む要因になっているためだ。厚労省は心身に悪影響を及ぼす長時間労働を避けることにも配慮しながら、慎重に見直しを探っていく。

 厚労省は労働関係法制に詳しい学者らでつくる会議で2018年に検討を始める予定。労働基準法を改める可能性を考えながら、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の場で労使を交えて議論をする。早ければ20年の国会に法案を出し、21年に仕組みを変える。

 いまの労基法は労働時間の管理について、労働者がいくつかの企業で働く場合にはすべて合計するのが前提だ。ある人がいくつかの企業で1日8時間といった法定時間を超えて働くと、法律の上では残業代がもらえることになっている。

 例えば昼間に「本業」のA社で8時間、夕方以降に「副業」のB社で2時間働いている場合、法律の原則ではB社が残業代を支給する。わずか2時間しか働いていないB社が残業代を支給する義務を負い、B社のコストがかさんでしまう。こうしたルールの存在が日本で副業が広がらない一因とされている。

 実際には「本業」と「副業」の企業がそれぞれの労働時間を互いに把握するのは難しい。そのため「ルールが有効に機能していない」(労働法に詳しい小西康之・明治大教授)という面もある。産業医の面談など従業員の健康管理にまつわる義務を、どちらの企業が果たすのかもあいまいになっている。

 厚労省はこうした実態を踏まえルールの見直しが必要だと見ている。海外には労働者が自らを労働時間規制の対象外とすることを選べる制度などがある。同省は海外の事例も参考にしながら、いまの規定をどう改めるか議論していく。

 長時間労働を無くそうと政府が旗を振る「働き方改革」とどう整合させるかも課題になる。政府は早ければ19年度にも残業時間に年720時間といった上限規制をつくる。仮に勤務先ごとに完全に別々の就労管理になれば、ある労働者がいくつかの職場をまたいで異常な長時間労働を続けても、外部から見つけにくくなってしまう。

 離職せず別の仕事に挑める「副業」はキャリアや技能の向上につながる利点がある。半面、「本業」がおろそかになるなどの懸念が経営側に強い。

 中小企業庁の14年度の調査では企業の85.3%が副業を認めていない。政府は人々が副業にも取り組みやすい環境づくりを目指している。



頂は8兆円訪日消費倍増の道(下)「観光公害」乗り越えろ新税、使い道 見えにくく 2017/11/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「頂は8兆円訪日消費倍増の道(下)「観光公害」乗り越えろ新税、使い道見えにくく」です。





 秋の行楽シーズンまっただ中の街角にため息が漏れた。訪日客急増を受けて、JR京都駅発の市営バスは、乗るまでに時に50人以上の列ができる。「5本見送ることもありますよ」。京都市内に住む40代の男性会社員は話す。混雑の度合いも、東京の通勤ラッシュ時に引けを取らない。

訪日客増のあおりで市営バスには長蛇の列ができる(JR京都駅前)

 京都府を訪れた外国人観光客は2016年時点で661万人となり、15年比で4割増えた。地元経済にとってうれしい悲鳴のはずなのに、日常生活を送る人からはこんなつぶやきも出始めた。「観光公害」――。

 観光地・祇園を含む東山地区で最近、ホテルや旅館、ゲストハウスなど正規の宿泊施設ではなく、ワンルームマンションに消えていく訪日客の姿が大幅に増えた。認証事業者を通さないヤミ民泊。ある旅館の関係者は「数は分からないが、おかげで稼働率が落ち始めた」と漏らす。

 京都市は来秋から宿泊税を導入する。日本人も対象にし1人1泊200~1000円を宿泊代に上乗せする。新税導入でヤミ民泊のあぶり出しや取り締まり強化の効果も狙うが、客足が伸びる中での負担増が観光需要に響きかねない。とかく「税をとって、使い道をどうする」という要の視点が見えにくい。

出国税で負担増

 日本から出国する人に課す新税「観光促進税」(出国税)の早期導入に傾く国も、スタンスは同じだ。

 19年度にも導入し、訪日客だけでなく日本人も対象とし、1人1000円を求めることで固まってきた。ではその先は。400億円ほど税収が増えた分を「地域の文化をいかした観光政策」や「出入国管理の強化」などに振り向けるというが、今のところ、これまでの関係省庁の予算の拡充にしか映らない。

 観光庁の17年度予算は200億円ほど。国全体の観光関連予算は15年度時点で3千億円を超えており、法務省、文化庁、農林水産省などがそれぞれ観光庁と似通った事業を抱える。

 例えば法務省はすでに出入国審査の充実に向けた予算がある。新税が観光を名目にした負担増やバラマキにつながりかねない。14日の自民党の観光立国調査会でも「野放図な歳出(拡大)につなげてはいけない」とクギを刺す声が出た。

予算配分明確に

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの塚田裕昭氏は「20年の旅客目標は射程圏内でも8兆円目標は厳しい」と話し、少なくとも政府は「いろいろな国の人が長く滞在できるような環境整備に予算を回すべきだ」と続ける。厳しい財政事情に考慮しつつ、いまある3千億円ほどのお金に新税の分を加え、目標達成に向けた「最適な配分」の絵を示す必要がある。

 観光業は人口減に直面する日本にあって、数少ない成長産業といえる。国際観光収入が世界で最も多い米国は年間20兆円を稼ぎ、日本の目標の約3倍を手にした。フランスも体験を楽しむ「コト消費」のメニューを充実させ、年8千万人を超える観光客が訪れる。5合目の今、明快で具体的な戦略をもう一度練り上げる時期が来た。

 馬場燃が担当しました。



頂は8兆円 訪日消費、倍増への道(上) 実るか「超 オモテナシ」 2017/11/16 本日の日本経済新聞より

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 訪日外国人の消費額が今年初めて4兆円を超えそうだ。中国人観光客らによる爆買いは一服したが、足元では堅調だ。政府の最終目標は2020年に今の2倍の8兆円だ。夢物語にさえ映るこの目標に向けて、現在地と課題を探った。

 11月上旬、東京・渋谷の料理教室に笑顔がはじけた。「マユコズリトルキッチン」は訪日客向けの料理教室で、オーナーの岡田真由子さんの自宅で一緒に日本食を作る。

■見え始めた天井

 この日のメインは巻きずしと豚のしょうが焼き、初めてダシからとった味噌汁に「自分で作るととてもおいしい」との声があがる。カナダから親子3人で参加したエイプリール・ヘネガーさんは、日本流のおもてなしに感心しきりだった。

 

日常生活の再現が「コト消費」につながる(東京都渋谷区のマユコズリトルキッチン)

費用は1人あたり1万1千円で、参加者は日本の料理や観光の話題で盛り上がる。人気はスシ、ギョーザ、お好み焼き。口コミ旅行サイト「トリップアドバイザー」ではおよそ500人が最高評価の5点を投じ、欧米からの予約が相次ぐ。岡田さんは料理を通じて「普通の日常生活を体験してもらいたい」と語る。

 訪日客の動向はその数も消費額も見かけのうえでは好調だ。客数は11月4日で16年の2403万人を突破した。消費も1~9月で3兆円を超え、16年の同じ時期より15%伸びた。

 ただ内実には壁と天井がちらつく。

 8割強のアジア勢のほとんどが団体客で、個人客よりお金が落ちにくいとされいずれ伸びは陰る。実際に何に使ったかも依然買い物が最も多く、「娯楽・サービス」は全体の3%どまりだ。岡田さんのような「コト消費」を喚起する取り組みは広がっていない。

■動き出す「1泊100万円」構想

 

「従来の観光では問題解決にならない」。観光庁が10月末に開いた訪日消費に関する検討会で、田村明比古長官はこのままでは目標の8兆円達成は難しいとの認識をにじませた。

 訪日消費は現在1人あたり約15万円で、目標にはさらに消費を積み上げて、20万円に引き上げないと届かない。国に妙案は乏しいが、地方には「超」がつく独自のおもてなしに動く企業もある。

 鹿児島県霧島市の温泉リゾート施設「天空の森」。JR九州の豪華周遊列車「ななつ星」が立ち寄ることでも人気を集める。東京ドーム13個分に相当する60ヘクタールの敷地にある宿泊施設は3棟しかない。料金は1泊で1人15万~25万円だ。

 オーナーの田島建夫さんは10億円弱を投じ、25年をかけて今のリゾート施設に仕立てた。昨年、海外の富裕層が3泊で400万円を使い、大自然の中でゆっくりと過ごした。

 田島さんは「地域の個性を最大限にいかし新たな観光のスタイルを打ちだす」と意気込む。来春、プライベート機による送迎や有名シェフの料理なども加えた「究極の貸し切りサービス」を始める予定だ。「1人1泊で最低100万円」の構想が動き出した。

 消費8兆円へ種はある。あとは芽吹き実るか。官と民の知恵と工夫で、金額と客層の裾野を広げなければ頂にはたどりつけない。時間はあと3年しかない。



所得税改革3年程度かけ実現 宮沢自民党税調会長 2017/11/10 本日の日本経済新聞より

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 自民党の宮沢洋一税制調査会長は9日、日本経済新聞のインタビューで改めて所得税改革への意欲を示した。今後3年ほどかけて実現を目指す。各種控除を見直して所得の再分配を強化するほか、多様な働き方を税制面で後押しする狙いもある。ただ、高額所得者の負担が重くなりすぎると働く意欲をそぐ懸念もある。納税者の財布に直結するだけに丁寧に議論を進める。

 宮沢氏は「今年は基礎控除と給与所得控除の見直しを議論する」と表明した。所得税改革は課税所得の計算にあたり一律38万円を差し引ける基礎控除や給与から一定額を差し引く給与所得控除を見直す大がかりなものとなる。

 所得税は所得金額から基礎控除など一定額を引いた上で税率をかける。税率は所得額につれて高くなる累進構造になっており、高所得者ほど控除の恩恵が大きくなる。宮沢氏は「逆進的なものをどう考えるのかという観点がある」と指摘。基礎控除については、高所得者の控除減額や低所得者に有利な税額控除方式の導入を検討するとした。

 給与所得控除は会社員が実際にかかった経費ではなく、概算で一定額を給与収入から差し引く仕組み。副業やフリーランスとして働く人が増え、システムエンジニアなど企業に雇用される労働者に近い「雇用的自営業」は自営業者の3割弱にまで拡大した。会社員中心の税制は時代遅れになりつつある。

 宮沢氏は「請負契約などの形態で仕事をしている人が多くなっている」と強調。働き方の変化を踏まえて見直しを検討する。高額な報酬を得ている高齢者の年金課税も見直す方向だ。

 もっとも一連の改革は高所得者の負担を増やし、低所得者の負担を減らす方向になる。宮沢氏は「2019年度改正、20年度改正まで視野に入れなければいけない」と指摘。「相当に慎重な議論をしないといけない。性急に結論を出せる話ではない」と述べ、慎重に議論を進める意向をにじませた。

 所得税改革は「取れるところから取る」という批判もつきまとう。高所得者狙い撃ちの増税は働く意欲を阻害しかねない。宮沢氏も「勤労意欲をそぐことがあっては身もふたもない」と話した。

 加熱式たばこの税率引き上げは「どの程度まで上げられるか考えないといけない」と話した一方、紙巻きたばこについては「私の中で(税額を)上げるという判断はしていない」と述べるにとどめた。森林整備に充てる新税の森林環境税は「消費増税の導入後にならざるを得ない」としながらも導入する方針を示した。



財政規律 未来からの警鐘(2) インフラ維持ずしり「第 2の社会保障費」防げ 2017/11/9 本日の日本経済新聞より

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 203X年。人口100人に満たない東北のある農村で、恒例の年度末の道路工事が始まった。高齢の建設作業者の動きはおしなべて鈍い。過疎化が進んだ地域では若者が村を去り、半分以上が空き家だ。先日90歳の誕生日を迎えた女性は作業を遠目にしながらつぶやいた。「誰も車で通らない道なのに、なぜ工事を毎年続けるのかしら」――。

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 日本の公共投資が曲がり角を迎えている。国土交通省の試算では、道路や港湾などのインフラ維持費は33年度に最大5.5兆円に上る。13年度に比べ2兆円ほど増える。東洋大学の根本祐二教授は「今後50年で約450兆円のインフラ更新予算がいる」という。日本の財政の根幹を揺るがしかねない重い負担だ。

 戦後の日本は国土の開発を拡張し続けてきた。バブル経済が崩壊し、日本がデフレに入った後も公共投資は景気対策の主軸として膨らんだ。公共事業予算は1998年度のピークで15兆円。道路や橋になりふり構わずお金を投じた。

 公共投資にメスを入れた時期もあった。06年、当時の小泉政権は公共投資を5年にわたり3%削る方針を掲げた。当時の竹中平蔵総務相は「ムダな公共事業はどうして出るのか。予測が過大で、後から不要になる」と指摘。人口変化を踏まえた見直しを求めた。

 縮む日本の姿とは逆行し、公共投資は一段と膨らむ気配がある。18年度予算の概算要求額は前の年度比16%増の6兆円超。被害の大きい自然災害が相次ぎ、防災や減災の対策費を増やす。前例踏襲型の予算を続けると、インフラの維持補修はどんどん積み重なる。

 「今やっていることでも捨てることもある」。国交省の若手官僚による政策提言会。30年に向け、こんな意見が出た。公共投資を主管する役所も将来への不安に覆われている。30代の男性官僚は「公共投資を増え続ける『第2の社会保障費』にしてはいけない」と語る。国土の未来図を視野に入れ、予算をうまく再配分する必要がある。

(馬場燃、石橋茉莉)



賃金迷路(2) 富はスーパースターに 労働分配率、世界で低 下 2017/11/1 本日の日本経済新聞より

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 技術革新が賃金を抑えているのではないか。そんな見方が世界で広がっている。世界の人たちの暮らしぶりを変えた米アップルや米フェイスブックなどのネット企業は、労働集約的な伝統産業ほど雇用を生まないためだ。企業が稼いだ利益は資本家に集中し、労働者に回りづらくなっている。

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 「労働分配率の低下とスーパースター企業の興隆」。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のデービッド・オーター教授が5月に発表した論文が注目されている。アップルや米アマゾン・ドット・コム、フェイスブックといった経済成長を生む革新企業が、賃金増の逆風になっているとの仮説を打ち出した。

 例えばフェイスブック。利用者数は世界で20億人、株式時価総額は59兆円に達する。しかし従業員数は2万人と、17年3月時点の連結で36万人いるトヨタ自動車の18分の1だ。巨額の利益はおのずと、株主や革新的なビジネスモデルを作り出した人に向かう。創業者のマーク・ザッカーバーグ氏は8兆円もの資産を持つ。

 オーター教授によると、米国で顕著なこの傾向が「国際的にも起きている」。従業員の給料を国内総生産(GDP)で割った「労働分配率」は先進各国で低下傾向をたどる。その分、資本家への配分が増えている。

 こうした企業は「高収益でもあまり実物投資はせず、M&A(合併・買収)を優先する傾向が強い」(富士通総研の早川英男氏)。アマゾンは137億ドル(約1.5兆円)でホールフーズを買収。米グーグルも多くのベンチャー企業を取り込んできた。ここで莫大な富を手にするのは買収される企業の株主。従業員の賃金には及びにくい。

 経済学者はこれまで、労働分配率が下がれば、いずれ人手の割安さが意識され、給料は上がると考えてきた。だがスター企業の存在感が高まると、その構図が世界で変わった。労働組合は米国でも弱くなり、働く人たちが経営者から給料を引き出す力は落ちた。

 革新はスター企業に限らない。小売店や工場など労働集約的な仕事の現場でも人工知能(AI)やロボットの活用が広がる。米マクドナルドはスマートフォンや店舗のタッチパネルで注文・決済できるシステムを急展開している。単純な作業は次々と機械に置き換わっている。

 国際労働機関(ILO)の分析では、主要国の生産性は直近の16年間で19%ほど上昇したが、実質賃金の伸びは9%ほどにとどまった。機械の力で生産性が上がっても、労働者には十分還元されていない。一方で世界の株式時価総額は90兆ドル(1京円)を超え、過去最高の更新を続ける。世界の年間GDP(78兆ドル)との差は開く一方だ。

 新興国への生産移転と空洞化を経験した先進国は、イノベーションが停滞する経済を推進する力と信じてきた。信じてきた革新は今、ほんの一部の企業が主導している。イノベーションが競争ではなく寡占を生むなら、成長の果実も寡占される。



民泊法、来年6月施行 宙に浮く監視法案衆院選で審議に遅れ 201 7/10/25 本日の日本経済新聞より

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 政府は24日の閣議で住宅に旅行者を有料で泊める住宅宿泊事業法(民泊法)の施行日を2018年6月15日に決めた。しかし衆院選の影響で、非合法な「ヤミ民泊」事業者への監視体制の強化をねらう旅館業法改正案が国会で議論できていない。取り締まりの体制が整う前に民泊法が施行されれば、民泊の健全な普及に水をさす可能性がある。

民泊特区のように合法物件を増やすことが課題(東京都大田区)

 民泊制度の柱は2つある。1つは家主や仲介業者の登録を義務づけ、政府が宿泊動向を正確に管理すること。もう1つがヤミ民泊事業者に対する監視強化だ。後者は厚生労働省が3月に旅館業法改正案を通常国会に提出した。今は規定していないヤミ民泊事業者への立ち入り検査の権限を与え、罰金の上限額を3万円から100万円に引き上げる。

 厚労省の昨年末の調べでは、8割以上の民泊は営業許可の取得を確認できなかった。「登録」と「監視」がヤミ民泊の排除に欠かせないが、監視体制に課題が残る。旅館業法改正案は先の通常国会で成立せず、継続審議入りしている。この秋の臨時国会での成立が期待されたが、突然の衆院解散・総選挙で、年内の国会審議と法案処理に暗雲が漂っている。

 民泊の仲介事業者は最大手の米エアビーアンドビーのほか、楽天が提携を決めた中国系の途家(トゥージア)などの海外勢がひしめく。だが、観光庁幹部は「問題は小規模物件を運営して把握が難しい中国系の業者」と話す。中国人同士のネットワークで部屋を貸し借りすると監視の目が行き届かない恐れがある。健全な業者とヤミ民泊が混在しかねない。

 「今のペースで訪日客が増えれば、五輪がある20年に東京や大阪の宿泊施設が足りなくなるかもしれない。民泊も必ず重要になる」(観光庁幹部)という。18年の通常国会で早めに旅館業法改正案を成立させなければ、同年6月の施行に間に合わなくなる。

(馬場燃)



砂上の安心網 革新との遭遇(2) カプセル内視鏡飲んで みた 検査しながら日常生活 2017/10/11 本日の日本経済新聞より

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 「膵臓(すいぞう)に腫瘍があります」。昨年11月、人間ドックを受けた記者(25)は目の前が真っ暗になった。まだ入社2年目。磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)といった精密検査を受けた。5月に開腹手術をし、痛みや吐き気に悩まされたが、幸い腫瘍は良性で今は術前と同じように働いている。

■自分で腸内観察

カプセル内視鏡は簡単に飲み込める

 手術はもちろん、術前の内視鏡検査は麻酔をしても苦しかった。ところが、飲み込むだけで済むカプセル型の内視鏡があるという。今まで検査しづらかった小腸を見ることができ、飲み込んだ後は日常生活ができるらしい。

 実際に検査を受けてみた。東京大学医学部付属病院(東京・文京)では小腸の疾患を対象に、年150~200件ほどカプセル内視鏡を使った検査をしている。検査室には大きなモニターや細長い内視鏡がずらりと並ぶ。しかし、消化器内科の山田篤生医師(42)は「使うのはカプセルとレコーダーのみです」という。

撮影データはレコーダーで確認できる(東京都文京区の東大病院)

 口から飲み込んだカプセルが消化管内を撮影する。その場で撮った写真を無線で送り、腹部につけた受信機を経てレコーダーに保存する仕組みだ。

 「消化管内の空気を消す水で飲んでください」と言われ、渡されたのは指でつまめるほどのカプセル。片側にカメラがついており、長さは26.2ミリメートル、直径は11.4ミリメートル。うっかり滑らせて落としてしまわないか心配になる。最初こそ冷たい感覚が喉にひっかかったものの、すぐ食道を経て胃の中へ流れていった。

 飲み込んだ後はどこにあるのか意識できない。肩掛けのレコーダーで数秒前に撮影した画像を確認できる。初めて見た自分の消化器は思いの外きれいだった。すぐに帰社して「これが胃で、これは小腸です」と同僚に見せて回った。

■処置はできない

 通常の内視鏡検査では医師がリアルタイムで映像を確認する。今回使用したカプセルの場合、腸内をめぐる6~8時間の間に約6万枚の画像を撮りためてから解析する。そのため異常があるか判断するまでに時間がかかる。

 しかし、内視鏡の挿入のように技術は求められないため「解析にかかる30分を差し引いても医師の負担は少ない」(山田氏)。別のカプセルメーカーのオリンパスにも話を聞いてみたところ、出血部分がより赤く見えるように画像を自動で処理し、解析を手助けする工夫をしているという。

 患者の体に優しく、医師の負担も少ない。そんな夢のような検査だが、通常の内視鏡のようにその場で止血などの処置をすることができない。医師が直接確認しないと病変も発見できないため、今後は「人工知能(AI)を活用して画像を選別できるようにする予定」(オリンパス)という。

 入院や手術、復帰後の仕事……。大病を患うと乗り越えなければならない壁が次々現れる。この先、カプセルで投薬や処置ができるようになれば、治療のハードルは低くなる。存在すら感じさせない小さなカプセルがたくさんのことを告げていた。

(渡部加奈子)



財政規律 問われているもの(2)社会保障費緩むタガ 2017/10/4 本日の日本経済新聞より

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 日本の社会保障制度は持続不能だ。少子高齢化という誰の目にも明らかな現実に制度設計が追いつかない。費用を膨らませる余裕はとっくに失われている。

 「問題外、論外の話だ」。9月19日に自民党本部で開かれた厚生労働部会の終了後、厚労族の丹羽雄哉元厚生相は怒りをあらわにした。税と社会保障の一体改革の枠組みを変更し、教育無償化などに2兆円規模の財源を付け替える方針に不満を抑えきれなかった。

 借金で社会保障費を賄う状況を改め、財政健全化に踏み出す。日本の社会保障の転機となった一体改革は、当時政権を担っていた民主党(現民進党)と自民、公明の3党が膝詰めでまとめ上げた。各党を突き動かしたのは制度が持続可能ではないという危機感だ。

 高齢化で社会保障の費用は増加の一途。税と保険料を財源とする2015年度の給付費は一体改革をまとめた12年度より6兆円近く多い約115兆円に上る。団塊の世代が75歳以上になる25年度には150兆円に迫るという推計もある。

 多くのお金は高齢者のために使われている。給付費に施設整備費などを加えた高齢者向け社会支出を国内総生産(GDP)と比べると、日本は10%を超え、米国の6%、英国の7%、ドイツの8%を上回る。

 首相が打ち出した「全世代型社会保障」の考え方は、高齢者に偏る給付を現役世代にも回すという発想で、前向きな動きではある。しかし単に給付費を押し上げる要因になるとしたら、その評価はまた変わる。「後の世代に負担を回すだけでは、全世代型社会保障と言ってもごまかしでしかない」(日本総合研究所の西沢和彦主席研究員)

 75歳以上の医療費の窓口負担を現在の原則1割から2割に上げれば、1兆円規模の財源が生まれる可能性がある。高齢者の資産も加味した負担なども含め改革の方向性は見えている。各党は制度維持の覚悟を有権者に問うべきだが、聞こえの良い充実策の競い合いに終始しそうな雲行きだ。

 野放図な費用増加に一定の歯止めをかけていた政府目標のあり方が年末にかけて焦点に浮上する可能性もある。国の予算の社会保障費は30兆円を超え、自然増を16~18年度に計1兆5千億円に抑えることになっている。16、17年度の予算編成では辛うじて増加幅を5千億円以内に抑えた。18年度も最低で1300億円抑制する必要がある。

 ただ現実はこのタガが緩みかねない方向に進んでいる。財政再建の大目標が先送りされるなら、現役世代や高齢者への負担増や給付抑制を続ける意味はあるのか――。関係者の脳裏にはこんな疑問が浮かぶ。

 自民党の厚労族議員の一人は「高齢化で社会保障の需要が増えるのは当然」とした上で「ルールを律義に守れば必要な給付が行き渡らない」と強調する。

 来年度は医療と介護の公定価格である診療報酬と介護報酬の同時改定の年にあたり、年末までに改定率が決まる。加藤勝信厚労相は「(自然増を5千億円に抑える)目標達成に向けてしっかり取り組む」と予防線を張るが、社会保障の歴史にまたしても挫折の文字が刻まれることになるのだろうか。(小川和広)



財政規律 問われているもの(1)逃げ水の健全化 ツケ 先送り 止まらぬ膨張 2017/10/3 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「財政規律 問われているもの(1)逃げ水の健全化 ツケ先送り 止まらぬ膨張」です。





 日本の財政が心配だ。安易な借金頼みが続き、十分な規律が働いていない。膨らませるだけ膨らませれば、いずれはじけるのは確実。少子高齢化にあわせた社会保障制度の見直し、着実な成長をベースにした収入の確保といった、未来への安心感を高める工夫がいる。財政健全化が逃げ水のように遠ざかれば、その分、後の世代に回すツケは大きくなる。

 衆院選を控え、与野党問わず聞こえがよい話が広がっている。安倍晋三首相は「全世代型の社会保障」を掲げた。3~5歳の幼児教育・保育の完全無償化や、待機児童を解消するための受け皿整備など、若い世代への投資を手厚くするという。

 公明党は私立高校無償化を訴える。民進党の前原誠司代表も予定通りの増税に前向きで増収分を就学前教育の無償化と大学授業料減免の財源に充てる案を公約に明記していたが結局、増税凍結を打ち出した希望の党との合流方針を決めた。

使途変えても…

 政府は消費税率を8%から10%に引き上げる際、得られる5兆円強の財源のうち1兆円を社会保障に、4兆円を新たな借金減らしに充てると説明してきた。その4兆円の一部を教育無償化に回すという。「教育支出を赤字国債で賄うのと同じ」(第一生命経済研究所の熊野英生氏)。膨らむ借金のツケは未来に回る。

 日本の財政は年100兆円ほどの支出があり、税収で賄えるのは6割ほどにすぎない。足りない分は借金で穴埋めしなければならず、積み重ねた国と地方の借金は1000兆円を超える。経済規模に対する借金比率は主要7カ国(G7)の中で突出して高い。

 2012年に決めた社会保障と税の一体改革のキモは、消費税収をすべて社会保障に充てるという約束だった。教育投資の重要性はだれもが認めるが、無償化にかかる費用と得られる効果の検証は乏しい。

 税収でどれだけ政策的な経費を賄えるか示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)。これまでも黒字化目標は達成できなかった。今回は意味合いが違う。小泉政権が打ち出した11年度のPB黒字化は、金融危機を受け麻生政権が断念した。安倍政権は消費増税を2度延期。戦後2番目に長いという好景気でも届かなかった。

国のかたち映す

 増税で景気が冷え込んで税収が減れば元も子もない。といって、財政健全化を経済成長だけに頼るのは無理がある。16年度はプラス成長でも税収が落ち込んだ。健全化への近道はなく、成長と増税、歳出削減の3つをバランス良く組み合わせるしかない。

 鎮目雅人早大教授によると、日本の財政運営には大きな転機が2回あった。軍事大国に突き進んだ1930年代と、福祉元年として社会保障制度を急拡大した1970年代だ。30年代は経済成長を犠牲にし、70年代は過大な成長をあてにした。身の丈を超えた政策は財政悪化を招く。鎮目氏は「財政は国のかたちを映すもの。国がビジョンを誤ると、未来にツケを残す」と話す。

 いま、日本が抱える問題ははっきりしている。この20年で税収はほぼ横ばいだったのに対して、社会保障費は2倍以上に膨らんだ。歳出の増加分のほとんどを社会保障が占める。ここに正面から向き合わない限り、不安は消えない。日本は第2次世界大戦直後に財政破綻を経験した。歴史の教訓は生かすためにある。

(木原雄士)