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訪日客最多268万人 7月17%増、韓国・香港けん引 2 017/8/17 本日の日本経済新聞より

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 観光庁が16日発表した7月の訪日外国人客数は前年同月比17%増の268万1500人だった。航空便が増えた韓国と香港からの旅客がけん引し、単月ベースで過去最高を更新した。国・地域別で見ても、韓国、香港、中国、台湾の客数が単月で過去最高を上回った。

原爆ドームを訪れた外国人観光客(広島市)

 前年同月比の伸び率は、韓国が44%、香港が27%、台湾が13%、中国が7%と大幅に増えた。主要20カ国・地域別に見た客数は、中国が78万800人と最多だった。昨年は個人客と団体客の割合がほぼ半々だったが、今年は個人客が6割強に増えており、全体の客数を押し上げている。

 同日会見した同庁の田村明比古長官は「訪日客数は順調に伸びている。2020年の4000万人の目標に向け、長く滞在して多く消費してもらう旅行者を増やしたい」と述べた。具体的には欧米やオーストラリアを対象に国別の戦略をつくり、客数の底上げにつなげる意向を示した。

 田村長官は「地方の受け入れ環境がまだ十分ではない」とも指摘。特に東北地方の受け入れ環境が遅れており、これからテコ入れに動くという。一方で、マレーシア、インドネシア、タイの3カ国が前年同月の客数を下回った。今年は宗教上の断食明けの休暇が6月にあり、その反動で7月は減少した。



450万人の衝撃無期雇用、迫る新ルール(下)中小、賃上げに二の足乏し い余力進まぬ理解 2017/8/10 本日の日本経済新聞より

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 「無期雇用に転換しても待遇は変えない」。関東地方にある中堅スーパーの担当者はこう明言する。同社では2000人強のレジ打ちや品だしをするパート従業員が働く。このうち2018年4月に無期転換の権利を得る勤務5年超の人は約7割にのぼるが、給与体系だけでなく福利厚生なども変える予定はない。

厚生労働省はハンドブックを作り無期転換の準備を促している

 同社にはパート従業員を正社員に登用する制度が既にある。正社員になれば業務内容は変わるが、レジ打ちのパートを無期に転換しても仕事内容は有期のときと同じ。「無期転換に伴って処遇を改善するのは不合理だ」として、社内で積極的に広報する予定もない。

「決断できない」

 求人広告大手のアイデム(東京・新宿)が従業員30人以上の企業の担当者554人に聞いた調査では、契約社員が無期雇用に転換した場合に賃金を「変えない」という回答が45%で最多。一方、契約社員に聞くと、85%が現状よりも労働条件や待遇が良くなることを期待している。

 大企業は新ルールの導入を機に賃金などを正社員に近づける傾向があるが、経営基盤が弱い地方の中小はその余力が乏しい。売上高に占める人件費コストは事業規模が小さい企業ほど重いことが理由の一つだ。15年版中小企業白書によると、大企業(資本金1億円以上)の売上高固定費比率が14%なのに対し、中規模企業(同1000万~1億円未満)で20%、小規模企業(同1000万円未満)では29%を占める。

 基板加工を手掛ける群馬県の中小企業の社長は「仕事のモチベーションを上げるために基本給を上げたいが、仕事の受注量が減れば人件費が重くのしかかる。決断できない」と明かす。

 無期転換ルールの認知が進んでいないことも大きな課題だ。労働政策研究・研修機構の調査によると、従業員1000人以上の企業の91%が改正内容を知っている一方、49人以下の企業で内容を知っているのは26%にとどまる。「中小企業では人事・労務の機能が弱く、従業員にも周知できていない」(厚生労働省幹部)実態がある。

 厚労省は17年度に全国約300カ所で無期転換ルールなどを周知するセミナーを開催。今秋には経済団体や業界団体などに従業員への周知を呼びかける予定だが、現状のままでは18年4月に大きな混乱が起きる可能性がある。

雇用調整難しく

 今後、景気が変調して雇用調整の必要性が出てきた場合の対応も必要になる。

 日本の労働法制は合理的理由や社会通念上の相当性を欠く解雇を禁じている。働く人の申し出に応じて無期転換を進めれば、企業は人員削減が難しくなり新卒採用の抑制などにつながる可能性がある。日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは「雇用調整が可能な限定正社員の枠を設けるなど、企業は労使で準備を進める必要がある」と指摘する。

 島本雄太が担当しました。



不動産テック 変わる市場(下)自宅で稼ぐ・安全な民泊…続々 「シェア経済」起爆剤に 2017/8/3 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「不動産テック 変わる市場(下)自宅で稼ぐ・安全な民泊…続々 「シェア経済」起爆剤に」です。





 都内に住むある男性は約50平方メートルの自宅を活用し、小遣い稼ぎをしている。勤務で留守の間、近所の主婦らに貸し出す。部屋はママ友が食事や飲み物を持ち寄る交流の場に様変わり。忘年会シーズンは予約で埋まり、最大で月80万円の副収入になる。

仮想現実を使った内見サービスが誕生した(イオン品川シーサイド店)

 仲介を手掛けるのはスペースマーケット(東京・新宿)。スマートフォン(スマホ)を介し貸し手と借り手を引き合わせる。月5千件のニーズがあり、重松大輔社長は「人口減で空き場所は増える」とにらむ。

相乗効果を期待

 場所やモノを有効にやりとりする「シェア経済」は不動産テックにとり大きなビジネスチャンスの場。矢野経済研究所の調べによると、シェア経済は2020年度に600億円市場に拡大する。不動産テックのITがうまく働けばさらに相乗効果が期待できる。

 例えば住宅に旅行者を有料で泊める民泊。関係法も成立し、訪日客の宿泊施設不足を補う切り札として期待される。一方で施設提供者には利用者が部屋を荒らしたりまた貸ししたりするリスクがある。

 スマートロックと呼ばれる電子錠を販売するキュリオ(東京・渋谷)はソニーと連携し、スマホのアプリで解錠できる製品を開発した。だれがいつ鍵を開閉したかが分かり、部屋の出入りを正確に管理できる。安全性を高め、民泊用施設を増やす効果を期待する。

 不動産テックの新サービスや商品が相次ぐのは、数年前のフィンテック誕生期に似通う。ただ国土交通省は「不動産テックの所轄部署がどこかも決まっていない」(幹部)と反応が鈍い。

国の対応カギ

 不動産テック側から「事業の不都合や規制緩和要望を聞いてほしい」との声が漏れる。個人投資家が不動産売買を手がける中、宅建業の業務範囲の見直しや、仲介手数料の自由化が必要との指摘がある。国が管理する不動産情報を広く公開し、新築優遇の税制を改正すべきだとの見方も多い。

 「この物件はベランダが広いですよ」。イオンの品川シーサイド店。仮想現実(VR)を使った内見サービスを手がけるナーブ(東京・千代田)は7月に「どこでもストア」を開設した。双眼鏡のようなVR器具をのぞくと、詳細な間取りを3次元で確認できる。ネットによる遠隔接客で物件の特徴も教えてくれる。

 多田英起社長は「人手をかけずに効率よく内見して成約率を高める」。新技術は取引を抜本的に変える可能性がある。国も民間と対話を重ね、成長力を引き出す姿勢が欠かせない。

 馬場燃が担当しました。



不動産テック 変わる市場(上) いくらで売れる?手軽に推定 中古住宅取引、底上げ 2017/8/2 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「不動産テック 変わる市場(上) いくらで売れる?手軽に推定 中古住宅取引、底上げ」です。





 金融にITを融合したフィンテックに続くか。不動産業界でもデジタルテクノロジーが変化を迫ろうとしている。業者の情報優位で価格が見えにくい慣行に挑み、事業化を進めるベンチャーが続出。中古住宅市場の底上げや空き家対策に一石を投じる。「不動産テック」の動きと課題を追う。

コラビットの浅海社長が横浜市郊外で売却した住宅

 住宅の価格推定サービスを提供するコラビット(東京・港)の浅海剛社長は7月下旬、横浜市郊外の自宅を売却した。同社は過去の取引データと人工知能(AI)を使い「丁目単位」で住宅価格を推測する。昨年末、試しに自宅を検索したら3990万円。「意外に高い」と売りに出し、実際に3980万円で売れた。

流通の9割新築

 実は浅海社長の起業はこの自宅がきっかけ。5年前、通う会社の近くにと4080万円で買ったが、翌年にその会社が買収され、職場が都心に変わった。すぐ売りたかったが相場観がわからず「中古だと半値かも」と不安が募った。そもそも「なぜ価格がよくわからないのか」との意識が芽生え、事業化を思い立った。

 国土交通省によると住宅ストック資産額は350兆円に上り、全国に6060万戸ある。問題は流通する住宅のうち9割が新築で、中古は極端に少ないこと。購入時の価格はわかるが、取引のデータが一元的に整っていないなどの理由で、数年後の価値がどう変わったか把握するのは難しい。

 野村総合研究所の谷山智彦氏は「AIとビッグデータ解析で価格推定の新サービスが生まれた。昔は業者に依頼しないとわからなかった情報を簡単に低コストで知ることができる」と話す。マンションマーケット(東京・中央)は全国のマンション価格を推定し、月間16万人が利用している。

空き家に着目

 中古物件で深刻化しているのが空き家問題だ。820万戸に上り、住居の1割以上を占める。2030年に3割を超えるとの試算もある。国交省幹部は「空き家は不動産価格も悪化させる」と懸念する。

 これに着目するリノベーション業者がある。リノベる(東京・渋谷)はフェイスブックなどで客を募り、築20年超の「空きマンション」を改築して販売する。

 都内で3000万円前後の物件に900万円の工事費を投じ、内装を客の好みに変える。施工実績は1200件で、買い手は平均37歳。山下智弘社長は「中古の価値を高める」と話す。

 中古市場の停滞を反映し不動産価格は15年前からマイナス基調が続く。家賃を含む住居は消費者物価指数の5分の1の比重にあたり、6月も前年同月比0.2%下落と足を引っ張る。デフレを象徴する領域も、不動産テックで活性化すれば風景が変わるかもしれない。



観光資源整備に新財源、「出国税」が浮上 観光庁 2017/7/26 本日の日本経済新聞より

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 観光庁は、国内の観光資源を整えるための新しい財源の検討に入った。出国税など訪日客からも一定額を徴収する案が浮上している。この財源をもとに地方の観光施設をテコ入れし、様々な国・地域から訪日客を招き入れて、さらに地方への誘導を促すという好循環を描く。ただ金額や対象など具体化には詰めるべき課題は多く、制度設計次第では訪日客増の流れにも水を差しかねない。

 観光庁は5月に作った「観光ビジョン実現プログラム2017」で、観光施策にあてる財源確保策として「受益者の負担による方法」と書き込んだ。田村明比古長官も「全国で受け入れ環境を整備するため、出国税を検討する」と話す。欧米の例を研究中で、18年度の税制改正要望に盛り込むよう調整している。

 海外では導入例がある。英国では国際・国内線の利用客を対象に、距離などに応じて出国税を徴収。2000マイル未満のエコノミークラスで1人あたり約1900円を課金し、総額で約3800億円を一般財源に繰り入れている。フランスは欧州連合(EU)圏外に出る際に1000円弱を集め、国内とEU圏内の場合は500円強を徴収。約650億円を空港の整備などに使っている。

 日本への観光客は16年で2404万人に上り、単純計算で仮に1人から1000円徴収すると、約240億円の財源確保にはつながる。財務省は「具体策が出てくれば、年末までに検討する」としている。

 訪日客の観光は、東京、富士山、関西を巡る「ゴールデンルート」がなお中心になっており、地方へ足を運んでもらうかが課題だ。そのためには観光資源の再整備が欠かせないとみており、観光庁は新しい財源を使って地方の古民家や文化財、国立公園の整備などを想定。訪日客が、日本での体験を楽しむ「コト消費」を増やすことができるような環境を整える。

 ただ、出国税導入へのハードルは高く、現状では生煮えの部分も多い。日本人旅行客を含めるかなど、対象を訪日客に限るかどうかは未定だ。

 どのように集めるのかについても、国内の空港使用料のように飛行機代に上乗せする仕組みなどが検討課題になる。海外が人に課税してきた一方、日本は航空会社に負担を求めた経緯がある。成田空港では国際線の旅客から、サービス施設使用料と保安サービス料の名目で1人あたり2610円を徴収。新税という形での上乗せには航空会社や旅行業界などから慎重な意見がある。

 東京五輪・パラリンピックの開催が3年後に迫るなか、20年に4千万人とする訪日客の目標達成には、欧米をはじめ集客のすそ野を広げる必要がある。訪日客消費額についても現在のほぼ2倍にあたる8兆円を目指しており、全国の観光資源のテコ入れも不可欠だ。



黒田日銀総裁再任を 浜田宏一・内閣官房参与に聞く 2017/7/25 本日の日本経済新聞より

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 内閣官房参与としてアベノミクスを支える浜田宏一・米エール大名誉教授は日本経済新聞のインタビューに応じ、来年4月に任期を迎える黒田東彦日銀総裁の再任が望ましいとの考えを示した。

 ――安倍政権の経済政策をどう評価しますか。

浜田宏一  内閣官房参与

 「国民の負担になるインフレがなく雇用が拡大しているのは良い状況と考えるべきだ。2%の物価安定目標達成が悪いとは思わないが、労働・生産市場に活気がでることが一番大切だ。企業収益も良いし、国内生産も伸び国民は豊かになっている。その意味でアベノミクスは成功だったといえる」

 ――日銀の金融政策は。

 「初期段階では量的緩和の効果は大きかった。2015年ごろに金融緩和の為替市場への影響が頭打ちになったが好況は続いている。黒田総裁は全体のスポークスマンとしてうまくやっている」

 「英フィナンシャル・タイムズ紙などから出ている、黒田総裁の再任論に私も賛成だ。雇用も生産も安定させたので、再任論は自然なことだ。黒田さんは元気があるので可能ではないか」

 ――20年度の基礎的財政収支(PB)黒字化目標が難しくなり、政府は政府債務残高の国内総生産(GDP)比など新目標を模索しています。

 「普通はフローのPBが改善しないと、債務残高のGDP比も良くならない。経済成長や利払いの状況で後者だけ改善するケースもあるかもしれないが、両方の目標をみるべきだ。ただ、景気回復が不十分なのに、年度を固定して収支を無理に均衡させることには賛成できない」

 「14年の消費税率上げがなければ、アベノミクスの効果はもっと出ていた。増税でもこれだけ雇用が逼迫しているので、大丈夫だったという見方もあるかもしれないが、私は、やるべきではなかったというリフレ派の見方に近い」

(聞き手は編集委員 藤井彰夫)



ゆがむ地方財政(上) 税収「偏在」自治体の不信配分巡り奪い合 い 2017/6/28 本日の日本経済新聞より

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 地方自治体の財政を巡り、国と地方が相互に不信を募らせている。自治体に税収を配る仕組みが不透明だと地方から不満が出ている上に、国が自治体に対して「お金をため込んでいる」と批判し始めたためだ。返礼品で寄付を集める「ふるさと納税」は、自治体が税収を奪い合うという不毛な現実に直面する。地方財政の望ましい姿を考え直すべき時期にきている。

外国人消費も自治体には悩みの種(高島屋新宿店)

ネット化も一因

 「ネット時代になり、どこで消費しているかが非常にあいまいだ」。総務省の「地方消費税に関する検討会」で、論争が繰り広げられている。

 消費税は国が徴収し、税率8%のうち1.7%分を自治体の財源に回す。「消費地に帰属する」という原則のもと、商業統計や人口などのデータをもとに都道府県ごとの配分額を割り出す。ネット通販の普及が、この方式に疑問を投げかけた。

 統計上の売上高は通販会社の本社がある場所に計上され、統計に基づくとネット通販の有力事業者がいる自治体に税収が集まってしまう。総務省が今年度から配分の判断材料からカタログ通販やネット販売を外す措置をとり、「やはりおかしいのでは」との疑いが解けない。

 急増する訪日外国人も問題を複雑にする。土産物などの免税品は消費税がかからない。だが商業統計上は免税品の売り上げが加味され、販売額が多い都市部に消費税が手厚く回る。

寄付でズレ加速

 「買い物は県内で!」。奈良県のゆるキャラ「せんとくん」は街頭で訴える。奈良県は大阪府や京都府で家電や衣料品を買う「越県消費」で、すべて人口で配分した場合に比べて70億円近い税収が奪われているとする。地方ほど、住民のお金を都市に吸い上げられているかの感覚は強い。

 三重県四日市市は4月、ふるさと納税に関する非常事態宣言を出した。同市は寄付が少なく、他の自治体に寄付した住民の減税で約1億3千万円の「持ち出し」。地元の高校生などが利用する四日市あすなろう鉄道の年間運行費にあたる額を逃した。しかし、対策本部で練る案は「返礼メニューの拡充」。結局は返礼品競争に終始する。

 ふるさと納税には税収の偏在を是正する狙いもある。しかし、過剰な返礼品をもとに寄付金を集めるのは、結局は自治体同士で税収を奪い合っているにすぎない。過剰な是正は大都市の不満も生む。

 政府は消費税の10%への引き上げ時に、法人住民税を再配分して自治体間の格差を是正する制度の導入を決めた。だが、関西学院大学の小西砂千夫教授は「もう一段の偏在是正については十分に議論がされていない」と指摘する。不毛な税収の奪い合いをする前に、奪い合いが正しいかどうかの議論がいる。

(逸見純也)



反グローバル化に「明るい未来ない」 黒田総裁が批判 2017/5/9 本日の日本経済新聞より

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 日銀の黒田東彦総裁は9日、東京都内で講演し「グローバル化に背を向けた内向き志向の動きに明るい未来があるとは考えられない」と述べた。各国経済は国境を越えたバリューチェーンの構築などを通じて相互に関係を強めており、欧米で広がる保護主義的な動きは「21世紀の現実とは相いれない」と強くけん制した。

 黒田総裁は「経済のグローバル化が所得格差を悪化させた」といった主張に対し、「経済のグローバル化によって世界の貧困状態が改善されつつあることは紛れもない事実」と反論。英国の欧州連合(EU)離脱や米国第一を掲げるトランプ政権の誕生などを念頭に、反グローバル化が新興国でなく「先進国で先鋭化する皮肉な事態が生じている」とも指摘した。



アジア開銀、制度疲労も50周年の総会閉幕 加盟国「民間資 金活用を」 2017/5/9 本日の日本経済新聞より

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 日米主導のアジア開発銀行(ADB)の総会が7日、閉幕した。ADBはアジアの成長を後押ししてきたインフラ金融の盟主だが、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に脅かされつつある。50周年の今回の総会では各国から「内なる変化」を求める声が続出した。真の敵はAIIBでなく、ADB自身の制度疲労かもしれない。

ADB総会が閉幕し記者会見する中尾総裁(7日、横浜市)

 「民間からの財源動員にもっと力を入れてほしい」(ドイツ代表団)。「国の財政に対して過度な借り入れはもうできない」(インド代表団)。総会ではADBに対する要求の声が相次いだ。

 アジアで年1.7兆ドル(約190兆円)のインフラ需要がありながら、資金の手当てが全く追いつかないのが加盟国の現状だ。財政赤字の拡大が続くベトナムは、国会が定めた国の借金の上限に近づく。「多くの国で政府支出を増やせなくなった」(ADB関係者)。徴税体制が弱く、適切な税収が確保できない。

 ADBは過去50年、主に政府に融資することでインフラ開発を支援してきた。だが、各国が巨額の開発資金を抱えきれなくなっており、このモデルが限界に達しつつある。ADBは2014年に民間マネーを政府部門に橋渡しする専門部署を設けたが、まだまだニーズに応え切れていない。

 加盟国の不満は意思決定の遅さにもある。インドのジャイトリー財務相は総会で「案件審査のスピードを上げてほしい」と注文をつけた。3千人超のADB職員の約75%がマニラの本部で働いており、アジア・太平洋の各国のニーズにきめ細かく応じるのは至難の業。ADBは現地事務所の権限を強化し、平均2年かかる審査時間を半年縮める改革を始めたが「まだ3合目ぐらい」(ADB関係者)だ。

 「AIIBが投資しかしない『専門医』とすれば、ADBは日常的に患者の病状の相談に応じる『家庭医』」(ADB幹部)。ADBがアジアの貧困脱却に貢献した過去50年の評価は高い。一方、組織が大きくなり、加盟国の目線に合わせた改革がしづらくなってきたとの指摘がある。「今後のアジアの秩序がどうなるかは、5年が勝負」(ADB幹部)。改革を進める猶予期間は長くない。

(飛田臨太郎、遠藤淳)



謎×経済 ナゾノミクス(2)財政、病院に行く私が悪い?気軽な 通院、皆の負担に 2017/5/3 本日の日本経済新聞より

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 千葉県に住む北村優子さん(仮名、24)は花粉症の薬を病院で処方してもらう。市販薬を買うよりも安いからだ。アレルギー症状を抑える「アレジオン(錠)20」の場合、ドラッグストアで買うと1錠あたり165円ほどだが、病院だと1錠で36円。診察にかかる初診料などを含めても月3000円以下とかなりお得だ。

 体調がすぐれなければ、病院に行く。こんな当たり前のことが日本で問題になっている。お金がかかりすぎているからだ。花粉症の薬を病院でもらう方が市販薬より安いのは料金の払い方に違いがあるため。病院が安売りしているわけではない。

窓口負担は3割

 病院の診察料や薬代のうち患者が窓口で払うのは原則として全体の3割で、70歳を過ぎた所得が少ない高齢者はさらに軽減される。残りは健康保険料や、国や自治体の補助でまかなわれている。厚生労働省によると、2014年度の日本国民の医療費は約41兆円。そのうち患者が直接負担したのは約5兆円で、12%にすぎない。

 健康保険料は健康な時から企業と個人が払っている。国や地方の補助も、その裏付けは税金だ。窓口で払っていないからといって、負担していないわけではない。医師の診察にもお金がかかる。ドラッグストアより病院のほうが安いというわけではない。

 国は医療制度を維持するため、17年度の予算では11.8兆円を計上した。国の予算は税収だけではまかないきれず、借金にあたる国債を発行して手当てしている。国と地方を合わせた借金は17年度末で1093兆円と先進国で最悪の水準となる見通し。高齢者が増えていくため、医療費はさらに膨らむ可能性が高い。

上がる保険料率

 政府は14年4月に消費税を5%から8%に引き上げた。19年10月には、さらに10%へ引き上げる予定だ。増税分はすべて医療や介護など社会保障費に充てるが、それでも足りないといわれている。誰もが加入する健康保険の料率も14年までの5年間で平均2~3%程度上がった。

 日本総合研究所の飛田英子主任研究員は「医療については誰もがコスト意識を持つ必要がある」と指摘する。

 政府は処方薬と同じ成分の市販薬の使用を促すため、17年1月から新しい制度を設けた。医療用から転用された市販薬の購入費用について、税金の控除を受けられる仕組みだ。薬をもらうために病院に行く人を少しでも減らす狙いがある。

 昨年10月、自民党の小泉進次郎衆院議員ら若手議員は提言をまとめ、「小さなリスクは自分で対応すべきで、公的保険の範囲を見直すべきだ」と主張した。「気軽に行ける」ことが、将来の負担につながるのが今の財政状況。見直しが欠かせない。

(吉田悟巳)