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迫真 漁業資源ウォーズ4 食守る完全養殖の夢 2017/9/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 漁業資源ウォーズ4 食守る完全養殖の夢」です。





 8月中旬の早朝。奄美大島南部の沖合で、体長2メートルほどのクロマグロが次々と船上へ釣り上げられた。バタバタと激しく動くクロマグロを数人がかりで押さえつけ、保存のための血抜きを施す。まるで天然モノのような生きの良さを見せるクロマグロは人工授精させた卵から育てた成魚の卵をふ化し、育て上げた「完全養殖」。事業化は不可能に近いとされてきたが、マルハニチログループは約30年かけて2015年の初出荷にこぎつけた。

食を自衛する上で養殖技術の発展は欠かせない(鹿児島県瀬戸内町)

 マルハニチロが1年間に出荷する完全養殖クロマグロは約300トンと、国内消費量の1%にも満たない。それでも責任者の小野寺純(48)は「自社で出荷するクロマグロすべてを完全養殖にしたい」。夢物語のように聞こえる目標だが、世界的に水産資源の不足が懸念される中「完全養殖が必要になる」からだ。広さ約3200平方メートルのいけすの中を泳ぐクロマグロの体調管理のため、担当者たちは海面からいっときも目を離さない。

 一般的な養殖は天然の稚魚を使う必要があった。稚魚の確保も難しくなっており、完全養殖が活発になっている。

 日本水産の子会社、黒瀬水産が手掛ける養殖ブリ150万尾の半数を完全養殖が占める。宮崎県串間市の沖合では台風などの被害を避けるため、広さ約100平方メートルの浮沈式のいけすを使って完全養殖に取り組む。

 ブリの旬は秋冬だが、完全養殖で春夏の端境期でも出荷できる。卵を産む親魚の産卵期を調節することで、機動的に出荷時期を設定。天然稚魚の不漁がささやかれた今年は、天然の旬である秋冬に照準を合わせた。「天然モノが不漁になっても日本中の食卓に養殖ブリを届けられる」。黒瀬水産社長の山瀬茂継(55)は自信を見せる。

 日本水産は完全養殖の魚類を増やす。大分県佐伯市にある日本水産の研究センターで4月、完全養殖のマダコのふ化に成功した。マダコの完全養殖はこれまで例がない。ほんのわずかな刺激でも稚魚が死ぬため、外部から遮断した環境で稚魚の生育に取り組む。

 世界的な水産資源の争奪戦に翻弄されるだけでは、日本の食は守れない。天然モノを補完する役割だった養殖が主役に躍り出ようとしている。(敬称略)

 佐々木たくみ、原島大介、中戸川誠、湯前宗太郎が担当しました。



京都市、民泊も課税 18年秋に1人1泊200〜1000円 2017/9/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「京都市、民泊も課税 18年秋に1人1泊200~1000円」です。





 京都市は来年10月の導入をめざす宿泊税の概要をまとめた。ホテルや旅館だけでなく民泊への宿泊者にも幅広く課税するのが特徴。税額は最高1000円と東京都などより高額にし、観光振興の財源を確保する。宿泊税を財源に観光客を呼び込むのは世界の潮流。観光政策で欧米に後れを取る日本にとって、国内随一の観光地の取り組みは観光立国の試金石になる。

 京都市の宿泊税は宿泊料金に応じて200円、500円、1000円の3段階。公平性の観点から宿泊料金にかかわらず、民泊を含む全施設の宿泊客に課税する一方、高い宿泊料金を支払う富裕層らは税額が大きくなる仕組みにした。税収は年間45億円超と東京都のほぼ2倍を見込む。

 京都市の観光客はこの12年間で1000万人増え、違法民泊や交通機関の混雑などの問題が市民生活に影響を及ぼしている。税収は観光振興に加え、交通網整備などにも充てる見通しだ。

 京都市では宿泊施設の不足を背景に民泊の存在感が増している。来年施行する住宅宿泊事業法(民泊法)は、新たに民泊を始める事業者の自治体への届け出を義務付け、宿泊税を徴収するのはこうした民泊事業者が対象になる。

 京都市が昨年公表した民泊などの仲介サイトの実態調査によると、サイトが仲介する宿泊施設の7割弱が無許可の民泊に該当したとしている。こうした民泊が宿泊税徴収を怠った場合、市はさかのぼって課税する構え。徴税漏れを避けるため、民泊の仲介サイトに徴収業務を委託することも検討する。

 東京都は現在、民泊に宿泊税を課していないが、8月の都税制調査会では「税の公平性の観点から考えれば、民泊も課税対象にすべきだ」との意見が目立った。ただ徴収方法など実務的な課題が多く、具体化はしていない。京都市の民泊課税がうまくいけば一つのモデルになり、各地に広がる可能性がある。

 欧米の観光先進地は宿泊税を徴収し、観光PRや景観保全の財源に充てている。パリやローマはホテルのランクなどに応じて課税している。税額が大きいのは文化財保護などに使っているローマで5つ星ホテルの場合、7ユーロ(約920円)。京都市の1000円はこれに近い水準になる。

 観光政策に詳しい京都府立大学の宗田好史副学長は「質の高い観光に財源の確保は必須で、観光先進国の欧米には宿泊税を設けているところが多い。受け入れ体制整備には1人あたり1000円程度は必要だ」と話している。



迫真 漁業資源ウォーズ1「漁場も商売も奪われた」 2017/9/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 漁業資源ウォーズ1「漁場も商売も奪われた」 」です。





 8月14日。まだ夜も明けきらぬ北海道根室市の花咲港にサンマを積んだ船が続々と帰ってきた。今年初の本格水揚げとなったこの日の漁は700トン。だが、北海道さんま漁業協会副会長の小杉和美(63)の表情は晴れない。「魚がやせている」

 北海道のサンマは1匹150~180グラムが中心だった。だが年々、やせ形が増え、今年は120グラムが中心。イワシより細い。

 3~4年前から、日本の排他的経済水域(EEZ)の近辺に中国や台湾の巨大な漁船が集結するようになった。操業効率が良い「虎網」という網や水中灯など最新機器を備える。

 不漁の背景には海水温の変化など様々な要因が絡み合っている。ただ、日本の漁獲量が過去最低となる半面「中国や台湾の水揚げ量は過去最高となっている」(水産研究・教育機構東北区水産研究所の木所英昭)。全国さんま棒受網漁業協同組合によると、2016年の水揚げ量は10万9000トン。2年前の半分、8年前の3分の1に減った。

 中国でサンマを食べる習慣はない。なぜ、漁獲する船が増えたのか。

 「東日本大震災が契機となった」と話すのは北海学園大学教授の浜田武士(48)。日本は缶詰として青魚を食するロシアにサンマやサバを多く輸出してきた。しかし震災後、ロシアが日本からの水産物の輸入を停止。代わりに台湾船や中国船がロシアへの輸出用に漁獲を増やした。浜田は言う。「日本は漁場も商売も奪われた」

 「そういう縛りはうけたくない」。7月中旬、サンマの乱獲防止を目的に北太平洋漁業委員会(NPFC)が札幌市内のホテルで開いた会議。日本が提案した国別の漁獲枠の創設に対し、中国政府代表者は語気を強めた。

 ロシア、韓国も中国に同調し日本案の採用は見送りに。会議に出席した水産研究・教育機構理事長の宮原正典(62)は「中国を説得するのは前途多難だ」とため息をつく。来年以降再協議するが、話し合いが前進するかどうかは不透明だ。

 カツオ水揚げ量20年連続日本一の宮城・気仙沼。例年、最盛期の7~10月は1日に500~1000トンの水揚げがあった。しかし「今は多くて400トンくらい」(気仙沼漁業協同組合)。

 なぜ減ったのか。一因とみられるのがカツオの漁場である南太平洋での漁獲合戦だ。カツオはツナ缶やペットフードなど使途が多い。勝倉漁業(気仙沼市)社長の勝倉宏明(49)は「中国、台湾、米国など様々な国の漁船が入り乱れて漁獲している」と話す。

 船は年々大型化。集魚装置など最新機器を搭載し、効率のよい網で漁獲する。ツナ缶原料向けの国際指標となるタイ・バンコクの業者間取引価格は現在1トン2000ドル前後と2年前に比べ約2倍になった。

 「危険すぎて漁ができない」。甘エビやイカの漁場として知られる日本海の大和堆で7月、数十隻の北朝鮮船が違法操業しているのを福井県の漁師が確認した。流し網でイカを狙う。夜も小さな明かりしかつけないため衝突する恐れもある。

 漁師の操業自粛などにより、今夏の甘エビの漁獲高は前年比で2割以上減った。日本のEEZ内で「操業の安全が脅かされている」。三国港機船底曳網漁業協同組合の組合長、浜出征勝(73)は水産庁などに取り締まり強化を訴える。

 1980年代に養殖を合わせて1200万トンあった日本の水産物生産量は、今や3分の1の400万トンまで落ち込んだ。87年まで16年間維持した首位の座は今や昔だ。

 世界の魚介類の1人あたりの消費量は、この50年で2倍以上に増加した。欧米の健康志向の高まりや、新興国の台頭が背景にある。

 13億人を抱える中国の水産物の漁獲量は5年間で2割以上増え、いまや世界最大の消費国となった。ただ中国近海は乱獲や工業化で水産資源が減少。魚を求めて中国船は世界の海に繰り出す。日本や韓国とトラブルになる例も多く「日中韓で海洋『三国志』が始まっている」と中国メディアは書き立てる。

 都内の鮮魚店。近海物のアジは1匹300円、サバは350円、イカ398円など大衆魚は軒並み高い。仕入れ担当者は言う。「特売にする商材が見当たらない」

(敬称略)



風見鶏 日韓関係占う「爆弾」処理 2017/9/3 本日の日本経 済新聞より

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 「信念」と「国家元首」が葛藤している。就任から100日を過ぎた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対日政策に心中の揺れを感じる。歴史問題では譲らない。だが日本とは未来志向の協力関係を築く。そんな「ツートラック」路線の命運を分ける「Xデー」が刻一刻と迫っている。

安倍首相と握手する韓国の文在寅大統領(右)(7月7日、ドイツ・ハンブルク)=共同

 その1つは年末だ。2015年12月に発表した従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意を検証する韓国外務省の作業部会が報告書をまとめる。合意の再交渉を掲げて当選した大統領の意向がある。文氏は就任後も「国民の大多数が情緒的に受け入れられない」と合意に否定的な姿勢を崩していない。

 報告書に影響するのが日韓合意に基づき韓国政府が設けた元慰安婦支援の「和解・癒やし財団」を巡る点検結果だ。財団は合意時点の生存者47人のうち7割以上にあたる36人、死亡者199人のうち65人の本人や遺族らに現金を支給した(一部手続き中を含む)。

 財団理事長が元慰安婦一人ひとりと面会するため全国を渡り歩いた。だが革新系メディアや識者から「被害者側に現金を押しつけた」と批判されている。日韓合意の柱である財団活動が否定されれば、合意全体が揺らぐ。点検作業を率いる鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)女性家族相は強硬な合意反対派として知られる。

 「進歩(革新)系の支持者に応えなければならない」。大統領選の文陣営の一人は年末の作業部会の報告書について厳しい検証結果を予告する。文氏は市民団体などの急進的な左派・革新系勢力から再交渉へ突きあげられる恐れがある。

 「国家間の約束が破られるようなら韓国に出向いてお祝いする気にはなれない」と日本政府関係者はけん制する。文氏がドイツで安倍晋三首相と会談し、18年2月の平昌冬季五輪に合わせて訪韓するよう招請したのは今年7月のことだ。

 平昌五輪後、文氏が来年前半に訪日する構想もある。慰安婦合意の検証を受けた韓国政府の出方次第で、文氏が提案した首脳間の「シャトル外交」に暗雲が垂れこめる。来年10月には韓国側で対日関係発展の契機にもくろむ日韓共同宣言20周年が控えている。

 文氏は学生時代から反軍事独裁・民主化運動に身を置いた筋金入りの「反日帝(日本帝国主義)」「反保守」だ。半面、首脳会談での振る舞いなど「反日」ではないと日本政府はみる。

 2度目の韓国駐在で日本人の「韓国離れ」を感じる。ソウル市内を循環するバスにプラスチック製の慰安婦少女像が乗り日本の大使館や領事館前に次々と少女像や徴用工像が設置・計画される。知韓派を自任する友人は「身内から非難めいた視線を浴び韓国に行きづらくなった」とこぼす。慰安婦合意後、翌16年の日本人観光客が25%増えた後、今年は伸びが鈍化しているのは北朝鮮情勢の緊迫だけが原因ではないだろう。

 今年11月にも想定される日本開催の日中韓首脳会談が文氏の初来日になる。安倍首相とは北朝鮮問題での連携を確認した8月25日の電話協議で「日韓間の懸案を適切に管理する」と申し合わせた。韓国では8月末にも結果を出す予定だった女性家族省による元慰安婦支援財団の点検作業が9月以降も続くことになった。文政権に迷いもみえる。

 日韓の「時限爆弾」はそれだけではない。日本植民地支配時代に労働に従事した朝鮮半島出身の元徴用工が日本企業に損害賠償を求め、文氏が理解を示した問題も韓国最高裁判所の判決が早晩下される。自らが持ち出した2つの懸案をどう扱うか。日韓関係を生かすも殺すも文氏の胸三寸だ。

(ソウル支局長 峯岸博)



大企業の労働分配率、46年ぶり低水準 4〜6月 2017/9/3 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「大企業の労働分配率、46年ぶり低水準 4~6月」です。





 企業の利益のうち労働者の取り分を示す労働分配率が下げ止まらない。財務省の4~6月の法人企業統計調査によると、資本金10億円以上の大企業の分配率は43.5%だった。高度経済成長期だった1971年1~3月以来、約46年ぶりの低水準を記録した。人件費は増えているものの、四半期ベースで最高益を記録した収益環境と比べると賃上げの勢いは鈍い。

 労働分配率は付加価値額に対する賃金などの割合で表す。付加価値額は人件費や経常利益、減価償却費、支払利息等を合計した。季節性をならすため過去4四半期の平均をとった。資本金10億円未満の中堅・中小企業は69.8%で、92年7~9月以来の低さとなった。

 人材をつなぎとめるための賃上げなどで人件費は増えている。大企業は今年4~6月に人件費を前期比1.7%増やした。1991年10~12月以来の高い伸びだ。中堅・中小企業は0.1%と伸び悩んだが、2014年7~9月以来プラスが続いている。

 ただ、収益環境の改善と比べると賃上げのペースは緩やかだ。17年4~6月の経常利益は統計を比較できる1954年以降、四半期ベースで最高を記録した。16年度の内部留保は400兆円を突破し、過去最高を更新した。

 労働分配率は世界的に低下傾向にある。国際通貨基金(IMF)は、IT(情報技術)を活用した自動化など技術革新の進展が先進国の分配率低下の大きな要因だと分析。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは「株主重視や労働組合の組織率低下といった変化で、労働者の交渉力が落ちたことも分配率の低下につながっている」と指摘する。



真相深層 韓国、弱い政府の泥縄 徴用工や慰安婦の合意軽 視 市民団体席巻、底流に保革分裂 2017/9/1 本日の日本経済新聞 より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 韓国、弱い政府の泥縄 徴用工や慰安婦の合意軽視 市民団体席巻、底流に保革分裂」です。





 日本統治時代に労働力として動員されて日本企業で働いた朝鮮半島出身の徴用工や従軍慰安婦をめぐり、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、日韓両政府の結んだ協定や合意を蒸し返すような発言を繰り返して物議を醸した。「未来志向の日韓関係」(文氏)に逆行すると日本側には懸念が強い。韓国でなぜ国家間の取り決めが軽視されるのか。市井の人々はどうみているのか。

 31日も徴用工像はそこに立っていた。ソウル中心部の竜山(ヨンサン)駅前広場は国有地。竜山は米軍基地や日本人の駐在員家族が多く住む地区にも近い。像を設置した市民団体に鉄道施設公団は8月末までの撤去要請文を送っていた。

 主導したのは労組、全国民主労働組合総連盟(民主労総)など2団体を中心とする市民グループ。ソウルの日本大使館前にある慰安婦少女像と同じ彫刻家が制作し、像のそばの石碑には「強制動員された朝鮮人がここ竜山駅から列車に乗り出発した」とある。

民心の反発懸念

 日韓両政府はともに、1965年の国交正常化の際に結んだ請求権協定で、徴用工の未払い賃金や被害補償などの請求権問題は解決済みとの立場をとる。だが、文氏は、徴用工個人の日本企業への請求権は消滅していないとの認識を示した。

 ソウルの南大門市場で市民に聞いてみた。「政府同士が合意しても当事者間で解決すべき民事の問題は残る」(20代会社員)との意見が多い。韓国は87年の民主化以降、軍事独裁時代の反省から「官」の力が低下した。帝王と称される大統領の一方で「弱い政府」が特徴だ。とりわけ革新系政権下では「被害者の声を反映していない」(30代店員)とみれば、政府間の合意より人権を重視する立場が支持される。

 弱い政府が極度に恐れるのが、正義のニュアンスを持つ世論=民心だ。市民団体やメディアによって助長されて巨大化する。道路や国有地に無許可の慰安婦少女像や徴用工像が置かれても、行政は民心の反発を恐れて撤去に二の足を踏む。

 韓国には「国民情緒法」という目に見えない最高法規があるといわれる。文氏は「最終的かつ不可逆的な解決」を盛った2015年の日韓両政府の慰安婦合意についても「国民の大多数が情緒的に受け入れられない」と日本側に伝えている。

市民は使い分け

 合意軽視の風潮は分断国家の内部対立が底流にある。70代女性は「朴槿恵(パク・クネ)が約束したものは信頼できない」と語気を強めた。日本との請求権協定や慰安婦合意に導いたのは朴正熙、槿恵父娘。歴代保守政権の政策を「積弊」と呼び「積弊の清算」を訴えて当選した文氏は「そのまま受け入れるわけにはいかない」(周辺)。保守と革新が交互に政権を握った韓国は政策の継続性が保たれにくい。

 日本政府への反感が「日本嫌い・日本人嫌い」につながらないのも韓国人の特徴だ。韓国暮らしで日本人が被害に遭った話は聞かない。むしろ韓国人は日本人とわかると得意げに日本語で話しかけてくる。日本人の印象は「清潔」「礼儀正しい」と総じて好意的。日本旅行は相変わらずの人気で街に居酒屋があふれ、書店の日本コーナーには若者が群がる。「日本に対して過去と現在、歴史とその他を使い分ける『ツートラック』の国民性」(大学教授)がある。

 南大門で30代女性は「日本の友人とは歴史の問題を話さないようにしている」。60代男性は「大使館前に少女像を置くようなやり方で感情を表現したくない」と話した。歴史教育を受けた誰もが抱く「反日」感情は、普段はしまわれていて、歴史が話題になると一斉に引きだされる。その使い分けには驚くばかりだ。

 日本大使館前の少女像付近で日本政府に謝罪や賠償を要求しているのは左派・革新系団体の「常連」が多い。竜山駅の徴用工像の前で足を止める韓国人の通行人を見つけるのも難しい。像への関心が広がっているようにはみえない。文政権が国内向けに「過去」をクローズアップすることによって日本人を韓国から遠のかせている現実がある。

(ソウル支局長 峯岸博)



迫真 訪日消費 第2幕(下)日本人ともっと話したい 2017/ 8/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 訪日消費 第2幕(下)日本人ともっと話したい」です。





 シンガポールから来たイズワン・ダニエル(28)は22日の夜、東京都渋谷区の焼肉店「牛門」に向かった。注文したのは3千円のセット。メニューにはイスラム教の戒律に沿った認証の表示がある。「これなら安心して食べられる」。同行した母とジュースで乾杯した。

ハラル対応のレストランが増えている(東京都渋谷区の焼肉店)

 親子では初の訪日。出発前にネットでレストランや観光地の情報を念入りに調べた。ムスリムのダニエルは豚肉や酒を口にしてはいけない。牛肉や鶏肉も調理法などに「ハラル」というルールがある。驚いたのはそのルールに対応した店が多いこと。「何年か前に仕事で来た時はこんなになかったよ」。最初の晩は「初めて見た」というハラル対応の焼肉店を選んだ。

 ムスリム向けに情報を発信するハラールメディアジャパン(東京・渋谷)によると、ハラル対応のレストランは東京など大都市中心に約800店ある。1~2年で急増した。最近はモスクをスマートフォンで探せるサービスも登場。安心して滞在を楽しめる環境が整ってきた。

 訪日客といえば中国人の印象が強いが、伸び率が高いのは東南アジアや南欧など。イスラム教徒の多いインドネシア人も今年1~7月に前年同期比35%増えた。訪日2回以上のリピーターが6割を超え、消費の主体は買い物から体験に移っている。国民性や宗教の違いに着目すれば裾野はまだ広がる。

 「日本の鉄道が本当に時間通り来るのか楽しみにしていたんだ」。スペイン人のエマ・アレッシ(29)は地下鉄の銀座線が時刻表通りに発着する場面をうれしそうに振り返った。「スペインの鉄道は頻繁に遅れるから」。台湾から来たリー・レン・チェン(42)が感銘を受けたのは道路やトイレの清潔さ。「日本は完璧すぎる」と興奮気味に話した。感動のツボは様々だ。それがネットを通じて世界に広がり訪日の連鎖を起こす。

 爆買い失速で沈滞ムードが漂った訪日消費。客数増とともに息を吹き返し、訪日消費額は1~6月に2兆円を突破した。政府は2020年、通年で8兆円の目標を掲げる。この流れを勢いづけるのに何が必要か。観光で大阪に来たプエルトリコ人のオマール・パチェコ(29)はこう言った。「英語を話せる日本人が少ないのは残念。日本人ともっと話をして、日本のことを知りたい」

(敬称略)

 中山修志、栗本優、大林広樹、花田亮輔、下野裕太、山本紗世、西岡杏、平嶋健人が担当しました。



忖度しすぎ?シルバー民主主義 負担増受け入れる素地 2017/8/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「忖度しすぎ?シルバー民主主義 負担増受け入れる素地」です。





 年金は少しでも多く、医療・介護や税の負担は少しでも小さく――。若者に比べて高齢者を優遇する「シルバー民主主義」政策が財政を悪化させてきた。お年寄りがこれからますます増えるなか、目先の痛みを強いる財政再建など、とても支持を得られない。だがこうした常識を覆す研究が出てきた。諦めるのはまだ早い。(木原雄士)

商店街を歩くお年寄り(東京都豊島区)

 お年寄りの政治への影響力は大きい。直近3回の衆議院選挙の平均投票率は20代が39%なのに対し、60代は75%だった。2025年には、有権者の6割が50歳以上になる。病院の窓口負担を増やしたり、年金の給付額を減らしたりするのは難しくなるというのが霞が関や永田町の常識だ。

 政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にする。それなら選挙制度を変えるしかない。そこで親が子どもの分まで投票する「ドメイン投票」や、年齢が若いほど1票の価値を高める「余命投票」などが真剣に議論されてきた。

 しかし、本当に単純な世代間対立で語れるのかと異議を唱える研究が最近、出てきた。

 鶴光太郎慶大教授らが全国の6128人に税制と社会保障に関する考え方を聞いたところ「増税をして社会保障を拡大する必要がある」とした人が20代では29%で、60代では40%だった。高齢になるほど高くなる。高齢者はすでに社会保障の恩恵を受けており、実利の面から増税と社会保障充実の組み合わせを選んだ可能性がある。

 一方、20代で最も支持を集めたのは「増税をせず社会保障を拡大する」というただ乗りで、35%を占めた。高齢者に比べてすぐに社会保障の恩恵を感じにくいため、増税への支持が少ないようだ。調査では政府やまわりの人への信頼が低く、ゴミのポイ捨てや年金の不正受給などに目をつぶる「公共心の低い人」ほどただ乗り政策を選ぶ傾向もあった。

 財務総合政策研究所の広光俊昭氏は仮想の国の財政政策について、負担を30年後に先送りするか、現世代と将来世代が分かち合うかを10~70代の447人に聞いた。

 先送りは、30年後に付加価値税(消費税に相当)が10%から25%に、年金給付が月10万円から5万円になる。分かち合いは付加価値税が20%、年金給付は7万円の状態がずっと続く。

 30代は67%が、60代は54%が分かち合いを支持。「将来世代」役を1人置いて討議をすると、分かち合いを選ぶ割合はさらに高まった。広光氏は「政策選択には個人的な利害と公共的な判断が併存して働く」とみる。

 「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度(そんたく)しているだけ。きちんと説明すれば高齢者もある程度の負担増を受け入れる」。「シルバー民主主義」(中公新書)を書いた八代尚宏・昭和女子大学特命教授はいう。

 ただ、お年寄りの理解を得ても財政再建のハードルは高い。莫大な国の借金が若者の不安につながっている。鶴氏は「若い人でも目先の利益を重視する傾向がある」と話す。教育年数が短く、時間あたりの所得水準が低い人ほど、小さな負担で大きな受益を求めがちという。世界的に所得格差の不満が高まるなか、新たな人気取りは財政再建をより難しくする。

■財政再建、成長頼み限界

 日本で財政悪化に対する危機感が高まりにくいのは、日銀の金融政策によって長期金利が低く抑えられているためだ。安倍政権は消費増税を2回先送りし、経済成長による債務残高の国内総生産(GDP)比の改善を優先する。しかし痛みを避けた財政再建など、夢物語だ。

 ゴールドマン・サックス証券の試算によると、長期金利がゼロ%のまま推移しても、債務残高GDP比を改善させるのは難しい。長期金利が1.5%まで上昇するなら、債務残高GDP比を一定に保つには、常に名目2%以上の高い成長が必要だ。2000年度以降の日本の成長率は、平均0.2%。成長頼みの財政再建は無理がある。

 しかも25年には団塊の世代が75歳以上となり、社会保障費が急増しかねない。国際通貨基金(IMF)は7月末に、日本に対し消費税率を15%に引き上げることや所得税の課税ベースの拡大、年金の支給開始を67歳以上に後ろ倒しすることなどを提言。急激な増税などで不況にならないよう、0.5~1%ずつの小幅な消費税率引き上げを求めた。

 消費税率が上がるのは19年10月の予定。足元の堅調な景気を受け、エコノミストの間では「増税時期を前倒しすべきだ」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)との声も出てきた。政界では「3度目の増税延期」がささやかれるが。



202X年、人余り再び? AI導入で省力化進む 1000の業務 、ロボに/社内にも余剰人員 2017/8/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「202X年、人余り再び? AI導入で省力化進む 1000の業務、ロボに/社内にも余剰人員」です。





人手不足の風景もあと数年?

 人手不足でほぼ完全雇用の状態とされる日本経済。だが企業が一斉に人工知能(AI)導入などの省力化投資に動き始めたことで次第に余剰人員が膨らみ、2020年代には完全失業率が再び上昇に転じるとの観測も出ている。人余りへの逆戻りを防ぐには、省力化で生産性が高まった社会に対応できるよう人材投資を積極化し、技能を高める環境づくりが必要だ。

 「将来的に300億台のロボットが人間と同じように働くと、天文学的な産業になる」。日本電産の永守重信会長兼社長はロボット産業の将来性をこう語る。企業の省力化投資ブームを追い風に、自動化ロボットに周辺部品を組み合わせたシステムを外販する新事業に乗り出す。

 人口減に景気回復が重なり、働き手不足は深刻化の一途をたどる。6月の完全失業率は3%を割り込み、有効求人倍率は1.51倍に達した。一般事務職に限ると0.31倍にとどまるなど職種別にばらつきはあるが、担い手確保のカベに直面する多くの企業は、ロボットなどで労働力を置き換える動きを強めている。

 内閣府によると、機械メーカーが今年4~6月に受注した産業用ロボットの金額は1717億円と、前年同期より49%増えた。特需で生産が追い付かないところも多く、6月末の受注残高も1年前より32%増えて3843億円となった。

 IT(情報技術)投資も旺盛だ。日本政策投資銀行の調査によると、大企業の今年度の情報化投資は5582億円と、前年度比28%増を見込む。設備投資全体の8.2%を占める。

 京セラやKDDIは11月に、インターネットを使った水道の自動検針の商用利用を兵庫県姫路市の家島諸島で始める。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を業務の効率化に役立てる。検針が難しい地域での作業を無人化し、人手不足の解消にもつなげる狙いだ。

 企業の収益拡大と設備投資増などの好循環も始まりつつあるものの、労働の担い手がいなければ事業拡大やサービス維持に支障を来しかねない。企業がロボットやAIで徹底した効率化に取り組むのは必然の流れとはいえ、この動きが加速すると長期的には余剰人員が膨らむ可能性もある。

 日本経済新聞と英フィナンシャル・タイムズ(FT)による共同の調査研究では、人が携わる約2千種類の仕事(業務)のうち3割はロボットへの置き換えが可能という結果が出た。日本に絞ると5割強の業務を自動化できるという。

 リクルートワークス研究所(東京・中央)は機械による代替などで離職や失職が増えると完全失業率が上昇に転じ、25年に最大5.8%まで上がるとはじいた。09年7月などに記録した過去最高を上回る。

 失業者だけでなく、技術の高度化などへの対応が遅れ、企業が社内に抱える潜在的な余剰人員も増える恐れがある。同研究所の試算では25年時点で最大497万人。15年の401万人から100万人近くも増える。みずほ証券の上野泰也氏は「AIの発達が速いため、新たな雇用の受け皿が整う前にホワイトカラーを中心に余剰人員があふれ、失業率も上昇に転じる」と懸念する。

 第一生命経済研究所の永浜利広氏は「AIなどで効率化に成功した企業は社員に一段と高い水準の能力を求める。失業者が増える一方、企業の人手不足感も和らがない」とみる。勝ち組人材がはっきりしてくるに従って賃金格差も広がりやすくなり「所得の再分配機能がより重要になってくる」。

 経済界からも「徹底した効率化に伴う技術革新は、余剰人員を生み出すリスクもある」(丸紅の国分文也社長)といった懸念が上がる。



真相深層 中国国有企業、止まらぬ巨大化 習氏主導で合併 相次ぐ 2017/8/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 中国国有企業、止まらぬ巨大化 習氏主導で合併相次ぐ 」です。





 中国で国有企業の合併が相次いでいる。仕掛ける共産党が掲げるスローガンは「より強く、より優れ、より大きく」。世界で戦える巨大な国有企業をつくる構想は、権力集中を進める習近平総書記(国家主席)の政権戦略と密接に絡む。

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 石炭大手の神華集団と、発電大手の中国国電集団が合併へ――。2日、国有企業の大型再編を伝えるニュースに、業界関係者は色めき立った。

 北京で開かれた公開のフォーラムで、国電幹部が明らかにしたのを受けた報道だった。ところが主催者は翌日、奇妙な対応を取った。「上の指示で、国電の幹部が発言した部分だけ会議録を渡せなくなった」。合併を表明した発言を事実上なかったことにしたのだ。

 関係者は「発言は事実だ」と認めたうえでこう解説した。「国電幹部は党の許可を取らずに話してしまったのだろう」

 中国には国務院(政府)が所管する「中央企業」と呼ばれる大型の国有企業が現在、99社ある。神華と国電はいずれも中央企業だ。当局はいま、猛烈な勢いでその統合を進めている。

 当局の背中を押すのが、共産党中央と国務院の連名で2015年8月にまとめた「国有企業改革の深化に関する指導意見」だ。「世界一流の多国籍企業を育てる」との目標を掲げ「20年までに決定的な成果を上げる」とぶち上げた。「より強く……」のスローガンもこの中に出てくる。

 数値目標は設けなかったが、当時110社あった中央企業を40社程度に集約する案を念頭に置いていた。期限まであと3年。自動車大手の中国第一汽車集団と東風汽車公司などをはじめ、ここにきて多くの統合構想が浮上してきた背景には当局の焦りがのぞく。

 15年の指導意見は、共産党が国有企業改革で前面に出る根拠にもなっている。「習総書記のたび重なる指示を受け、改革の方向性と基本ルールを明記した」。国務院の担当幹部は当時の記者会見で、意見が「習氏の意向」であると強調した。

 習氏の狙いを理解するには、06年末に胡錦濤前政権がまとめた国有企業改革の指導意見を振り返る必要がある。

 中央企業を再編し、グローバルな競争を勝ち抜く巨大な企業集団をつくる発想自体は変わらない。しかし、あくまで主役は国務院で、党は余計な口を挟まないという姿勢をにじませていた点が15年と大きく異なる。

 それが裏目に出た。国有企業は既得権を守るために統合を渋り、再編は遅々として進まなかった。党高官や引退した長老らの利害が複雑にからみ合い、胡指導部はひどくなる一方の汚職に手をつけられなかった。

 12年に最高指導者の地位に就いた習氏は、党が国有企業をコントロールできていない状況に危機感を抱いたはずだ。

 反腐敗闘争を通じて国有企業の幹部を次々に摘発し、党の指示を忠実に守る人物を新たに送り込んだ。経営上の重要な決定にあたって党の意見を事前に聞かなければならないとする規定を定款に書き込ませ、党の意のままに動く企業グループを次々につくり出した。

 1990年代後半に当時の朱鎔基首相が取り組んだ国有企業改革とはだいぶ違う。朱氏は非効率な国有部門を小さくし、民間部門を育てて競争を喚起しようとした。80年代に実現した日本の国鉄や電電公社の分割民営化を研究し、参考にした。

 習氏は逆だ。国有企業を集約してさらに大きくし、国内である程度の独占を認める。中国勢どうしの消耗戦を避け、世界に出ていく発想だ。

 習政権下で合併してできた鉄道車両の中国中車や、海運業の中国遠洋海運の存在感は世界で無視できない。低価格を武器にますますシェアを高め、他国の企業との競争を有利に進めている。

 だが、国や党の思い通りになる巨大な紅(あか)い企業が世界の市場でわがままに振る舞えば、自由で健全な競争をゆがめかねない。必ずしも経済合理性だけで動かないとされる中国企業の巨大化に警戒感が強まる。(中国総局長 高橋哲史)