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変わる金融の黒子たち(上)債権回収、企業再生担う利払い猶予や役員派 遣 2017/9/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「変わる金融の黒子たち(上)債権回収、企業再生担う利払い猶予や役員派遣」です。





 貸出債権を二束三文で買い取り、厳しい取り立てでサヤを抜く――。1990年代後半の金融危機時のイメージで「債権回収」という言葉を聞くと、苛烈な取り立てを思い起こしがちだが、実態は大きく変わっている。

資金の不安払拭

 「利払いをいったん止めますからまず納税しましょう」。あおぞら銀行傘下のあおぞら債権回収(あおぞらサービサー)の担当者はある宿泊施設の経営者に切り出した。同施設の債権を地方銀行から買い取ったのがあおぞらサービサー。銀行への利払いを優先し税金を滞納していた。施設を維持するために必要な修繕費用も思うようにひねり出せず、客足がさらに遠のく悪循環に陥っていた。

 そこで担当者が選んだのが利払いの猶予だ。経営者の資金繰りの不安を取り除いてあげれば本業に集中でき、業績の改善につながりやすくなる。本業支援のために人材も派遣する。「再生の近道になるなら我慢する」。あおぞらサービサーの新川洋司取締役は話す。

 一般的に債権回収業者(サービサー)に持ち込まれるのは、担保などを処分したうえで銀行がこれ以上、回収するのは難しいと判断した貸出債権だ。かつて銀行は貸出債権をひとまとめにして売却し、不良債権を処理してきた。ただ不良債権そのものが減っている。

 金融庁によると、2017年3月期の全国銀行の不良債権額は前年同期比8%減の7兆7240億円。過去最低を更新し続けており、5年間で34%も減った。案件の減少に伴い、債権回収業者も企業再生に軸足を移している。たとえば額面10億円の債権を3億円で購入。再生後に4億円の債権として銀行に譲り渡すビジネスだ。1億円がサービサーの利益になる。

 独立系の山田債権回収管理総合事務所(山田サービサー)も再生に力を入れる。同社が経営再建を主導したサービス業者は、もともと銀行が外資系ファンドに債権売却した取引先だ。余裕資金ができると返済への充当を強く求められ、先行きが見通せなかった。

3年で新規融資

 外資ファンドから債権を買い取った山田サービサーは返済条件を緩和。役員の派遣を含め徹底的に事業再生を進め、3年間で地域金融機関による新規融資にこぎ着けた。山田晃久社長は「我々は金融機関から再び融資を受けられるようになるまでのセットアッパー(中継ぎ役)だ」と話す。

 サービサーが再生を請け負うことで銀行にとっては正常先が増え、当事者の企業は債務を減らせる。サービサーも企業をよみがえらせれば利益を得られる。あおぞらサービサーの新川氏は「三方一両得」と表現する。債権回収の現場は企業の終わりではなく、再生の始まりに変わりつつある。

 金融危機から20年。不良債権時代の終わり、IT(情報技術)化の進展などで、金融の黒子たちの役割も変わってきた。その現場を追う。



中小・個人融資、新旧手法競う AI判定や「芸者ローン」 2017/8/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「中小・個人融資、新旧手法競う AI判定や「芸者ローン」」です。





 信用力の見極めが難しいとされる中小企業や個人事業主への融資審査で新旧の手法が競い合っている。新興勢は人工知能(AI)によるデータ解析で信用力を判断し、地域金融機関などは「人物の見極め」といった伝統的な手法を改めて深掘りしている。

 リクルートホールディングスは9月をめどに子会社を通じて中小企業向けの融資を始める。まずはグループが運営する宿泊予約サイト「じゃらんネット」を利用している旅館などの宿泊事業者を対象にする。AIを使って宿泊施設の過去の利用状況などのデータを解析し、信用力を割り出す。

 融資を受けられず事業を拡大できない企業などを目の当たりにしてサービスを始めたという。「(企業が)いざという時に資金の手当てができるようにする」(リクルート)として申し込みから数日内での融資をめざす。

 インターネット専業のジャパンネット銀行もクラウド会計ソフトのfreee(フリー、東京・品川)と連携し、AIを使った与信審査を始めた。企業の業績や資金データなどを瞬時に把握・分析し、信用力を見極める。やはり申し込みから融資の実行までは数日しかかからない場合が多い。

 対照的に職員の「目利き力」を重視しているのが地域の金融機関だ。

 「第一勧業信用組合さんは丁寧に話を聞き、融資に応じてくれた」。東京・浅草で芸者さんとして働く鹿島菊乃さん(41)はこう語る。自分の飲食店を2015年末に開業しようとした際、大手行はまともに相手にしてくれず、知人に紹介された第一勧業信組で融資をようやく得られた。

 地域の需要に特化した「コミュニティローン」を同信組は提供している。通称「芸者ローン」もその一つ。芸者さんの着物購入や独立するための資金を融通する。昨年10月から定型化し、鹿島さんのような芸者さんに合計約5千万円を貸し出した。

 決め手の一つが「人づて」だ。事業計画を精査したり、直接の面会で人物を確認したりするのはもちろん、取引関係などを通じて信頼できる企業などからの紹介も重視する。「信頼の輪」を生かして、貸し出しを増やしている。(塩崎健太郎)



アベノミクスで増えぬ新規開業 融資の二重保全が壁 2017/8/8 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「アベノミクスで増えぬ新規開業 融資の二重保全が壁」です。





 アベノミクス始動から4年半。安倍晋三政権が当初から課題としていたベンチャー育成が思うように進まない。原因の一つが「石橋をたたいてわたる」銀行の融資姿勢にあることが金融庁の調査でわかった。

 「開業率10%台を目指す」。2013年6月、第2次安倍政権発足後、初めてまとめた日本産業再興プランに盛り込まれた政権公約。これに対し、直近の15年度は開業率5.2%で公約水準にはほど遠い。

 新規開業の壁の一つになっているのが「二重保全」を求める銀行の融資姿勢にあるとの見方がある。不動産などの担保をとった上で万一に備え信用保証協会などの保証も求めていることが起業家の重荷になっている。

 実は政府はこの問題にすでに手を打っている。13年末に銀行界と共同で掲げた「経営者保証ガイドライン(指針)」だ。

 企業が「法人・個人の区分経理」「財務基盤の強化」「適時適切な情報開示」の3原則を受け入れれば、銀行は信用保証の解除を検討するとの内容が盛り込まれている。

 ただ運用は一向に進まない。指針に後ろ向きな銀行の説明が十分でなく、企業の間に指針が周知されなかったのが背景だ。金融庁が6月に銀行に聞いたところ、無保証融資の割合は13.5%。指針導入前に比べ数%しか改善しなかった計算だ。

 過剰な保証は円滑な事業承継も阻む。団塊世代の引退時期に入り、承継にかかる手間とコストを理由に廃業する経営者は増えている。例えば、子供などに事業を譲る「事業承継」の場合、新旧経営者から保証を取らなかった割合は約7%(1824件)。逆に新旧両者から保証を取ったのは約48%(11488件)だった。金融庁は銀行に対し保証に過度に依存しないよう「何度要請したかわからない」(幹部)が改善されないという。

 銀行にも事情がある。保証にこだわる理由の一つが“金融緩和疲れ”。昨年2月に始まったマイナス金利は収益を直撃し「金利が低いんだから、債権の保全くらいしっかりしなければ」(ある地銀の支店幹部)。現場ではこうした意識が強い。

 日銀が大量のお金を市中に回しても、企業の事業意欲に火を付けなければ、経済の好循環は生まれない。金融庁は今後1年、改めて聞き取り調査を進め、保証に依存する原因を究明する考え。対話のなかでお金の循環を良くする妙策を見いだせるか。不良債権時代の融資姿勢が残る金融機関の意識改革も必要だ。(玉木淳、鈴木大祐)



Behind the Curtain 金融業務の舞台裏(中)電話応対競争力を左右複雑 な商品、工夫し説明 2017/7/6 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「Behind the Curtain 金融業務の舞台裏(中)電話応対競争力を左右複雑な商品、工夫し説明」です。





 振り込みから住宅ローンの相談まで、利用者の疑問や困り事に電話で応対するコールセンター。インターネットバンキングが普及し支店に足を運ぶ人が減少する一方、金融商品の中身が複雑になるなかで、店に出向かずすぐに疑問を尋ねられる「電話口のコンシェルジュ」の存在感が金融業界で増している。

2000ページのマニュアルから対応部分を探し出す(島根県出雲市のりそなグループカスタマーセンター)

 「ログインができないんだけど」。電話してきた男性客に「画面の右下にオレンジ色のボタンがございますね」と、女性社員がタブレットを片手に応じる。近くには顧客と同じ目線で対応できるよう、米アップルの「iPhone」をはじめ様々な機種のスマートフォン(スマホ)などが13台ずらりと並ぶ。

 りそなグループが2005年に島根県出雲市に設けたカスタマーセンターの風景だ。大阪と埼玉県にもセンターはあるが、ここは地元の誘致で実現した同社の中核施設。約200人のオペレーターがおり、開業時の3倍超に増えた。ほぼ全員をりそな銀行の契約社員として地元で採用している。

 顧客対応など「リテール力調査」でトップ3常連のりそな。働く世代など店の営業時間中に足を運べない顧客も多く、電話で24時間受け付けサービスを提供する。センターは問い合わせを受けるだけでなく、時に営業も支える。電話で投資信託などに興味を抱いた顧客を支店につなぐのは年間6千件にも上る。

 島根にはりそなの支店はなく、大半の人員は銀行業務の経験がない。曽田明美さん(52)もその一人。自動車販売店に20年以上勤めた後、09年に転じた。彼女たちが「銀行員超え」(りそな幹部)の知識を備えているのは、各自が自身で工夫を重ねているからだ。

 金融商品の概要や手続きなどをまとめた対応マニュアルは2000ページに及ぶ。だが社員一人ひとりが使い勝手がいいように分類し、付箋を貼ったりメモを書き込んだりして自分仕様に作り込む。毎月1~2時間は資料整理のために時間を割く。

 模範対応の文例も用意しているが、型だけでは終わらせない。「模範文例はあってないようなもの」(社員)。顧客の反応が良かった受け答えは全員で共有する。現場リーダーの足立真奈美さん(46)は「引き出しは多い方がいい」と話す。

 1日に受ける電話は1000件ほど。顧客の率直な声を聞くため、りそなホールディングスの東和浩社長も年に1回は訪れる。昨秋始めたATMでキャッシュカードの磁気不良を即時修復できるサービスは、センターに「磁気カードが使えない」という問い合わせが多いことから生まれた。

 金融機関にとって問い合わせ対応の充実は顧客満足度に直結する。三井住友銀行は15年に、りそなは3月に、サービスの迅速性や正確さなどが評価されるコールセンター業務の国際品質規格「COPC」を取得した。スマホで完結するローン申し込みなどサービスが店頭の枠を超えるなか、コールセンターの実力は金融機関の競争力をも左右する。

(大島有美子)



投信「毎月分配型」曲がり角 運用難、シェア低下 2016/05/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「投信「毎月分配型」曲がり角 運用難、シェア低下」です。





 国内の投資信託で主流の「毎月分配型」が曲がり角に差し掛かっている。株式投信全体に占める純資産の比率は4月に45%と10年ぶりの低水準になった。世界的な低金利で運用難が深刻になり高い分配金の支払いが難しくなったためだ。分配金の減額や、元本を取り崩し分配金とする投信も増えている。証券・運用業界では、長期の資産形成につながる投信に切り替えてもらおうと懸命だ。

 毎月分配型は月ごとに決算し投資家に分配金を支払う投信だ。初めて登場したのは1997年で主に利回りの高い外国債券で運用し、安定した分配金が退職世代の人気を集めた。11年には株式投信に占める比率が7割に迫った。現在の純資産残高は約35兆円になる。

 毎月分配型の投信を約500万円保有する埼玉県在住の山内智子(82)さんは「年金はわずかなので月々の生活費の足しにしている」と話す。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「老後世代では毎月の安定した分配金に安心感を覚える投資家が多い」と語る。

 毎月分配型への資金流入は昨年後半、急速に細り始めた。世界で株式相場が下落し金利低下も進んだ。日銀のマイナス金利政策も運用悪化に拍車をかけた。次第に運用収益だけでは安定した分配金を賄いきれなくなる。

 投信の分配金は「普通分配金」と「特別分配金」に分けられる。この特別分配金が元本払戻金だ。ある外資系運用会社の首脳は「元本を取り崩してでも安定収入を求める顧客は少なくない」と説明するが、元本を払い出せば投信の価値が目減りし基準価格が下落する。

 運用業界は高分配からの脱却を探る。三井住友アセットマネジメントは元本を大幅に減らさないような分配金の基本方針を決めた。みずほ投信投資顧問も運用利回りが悪化した場合は「分配金引き下げの要因となるケースがある」としている。

 金融庁の幹部は「若年層の資産形成に適した投信が主軸になってほしい」と話す。証券各社は顧客から運用を一任してもらう「ラップ口座」を長期運用の柱に位置づけ営業に懸命だ。株価指数などに連動し手数料が安い上場投資信託(ETF)に期待する声もある。

 世界的な低金利時代に入り運用環境は様変わりした。もはや安定した高分配の維持は困難だ。証券会社や運用会社は過去の成功体験にとらわれず新たな商品を普及させる必要に迫られている。

(川上穣、井川遼)



風速計 減価償却見直しに揺れるリース 2015/11/10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「風速計 減価償却見直しに揺れるリース」です。





 政府の法人税改革の議論がリース業界を揺らしている。政府は法人税率を早期に20%台に引き下げる方針だが、この減税による減収を穴埋めするために減価償却制度の見直しが浮上してきたからだ。リース業界は航空機や船舶の取得で減価償却費を計上する節税策をよく使っているが、この手法に黄信号がともりつつある。

 「困ったことになった」。10月2日、東京都内のオフィスビルの一室で大手リース会社の担当者が対策会議を開いた。経済産業省などから減価償却制度が見直されそうだと内々に説明を受けたことが主な議題だった。業界内には投資直後の費用計上を膨らませて税額を圧縮する「定率法」が廃止されるかもしれないとの危機感が高まっている。

 リースには業界大手が顧客のために航空機や船舶を所有するケースや、中小企業が分割所有するような形態もある。このような節税手法を活用する企業の裾野は広く、全国で1万社ともされる。節税規模は総額2千億~3千億円との見方がある。これができなくなれば税負担が重くなり、リース需要も減りかねない。

 経団連や経産省は法人減税を優先するが、借り手の航空会社や海運会社も含めて産業界には定率法の廃止に反対論も根強い。今年末の与党の税制改正論議では結論が出ないとの見方が出てきているが、来年以降も廃止の議論はくすぶり続ける。リース業界は戦々恐々としている。



米バンガード、ノーロード型投信の日本販売強化 CEO「投資文化 欠如に変化」 2015/07/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「米バンガード、ノーロード型投信の日本販売強化 CEO「投資文化 欠如に変化」」です。





 【ニューヨーク=伴百江】米国最大の投資信託運用会社、バンガード・グループは販売時に手数料を取らないノーロード投信の日本拡販に乗り出す。アベノミクスによる環境変化を好機と判断した。ウィリアム・マクナブ会長兼最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に対し、直販や提携による販路の拡大をめざす意向を示した。

ウィリアム・マクナブ会長兼CEO

 ――バンガードの投信への資金流入が加速している理由は。

 「ここ4~5年は毎年、過去最大の資金流入となっている。2015年上半期はすでに昨年の実績を55%上回っている。低コストの運用や運用戦略の明確な説明のほか、投信販売の事業モデルの変化も大きい。投資家から預かった運用資産額に基づいて手数料を受け取るファイナンシャル・アドバイザー(FA)が普及し、低コストな当社の投信を推奨するFAが増えた」

 ――日本の状況は。

 「当社は海外事業からの運用資産が5月末時点で2550億ドル(約31兆円)を超える。このうちアジア(中国・台湾、日本、シンガポール)が600億ドルを占める。日本の運用資産は14年の1年間に60%増えた。『セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド』の運用総額は、5月下旬に1000億円を突破した」

 「日本の販売が大きく上向いたのは、アベノミクスの効果も大きい。コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化や証券投資の環境改善が進んだ。当社は昨年、米国本社のリテール販売部門のトップを、日本法人の代表に任命した。日本法人を東京・千代田区の永田町に移し、規模を拡大した。直販や提携を軸に日本の事業拡大に備え、体制を整えつつある」

 ――日本事業の難しい点は何か。

 「株式投資文化の欠如だ。最近は変わりつつあり、日本人の株式投資需要を感じるようになった。今後は日本株への投資だけではなく、グローバル投資の重要さを強調したい。過去20年間に世界中の株式に分散投資していれば、日本株や預金よりはるかに大きな利回りを確保できたはずだ」

 「もう一つの壁は投信の販売体制だ。日本では証券会社が相当な額の手数料を取る。ノーロードを重視する当社はこうした販売体制に参加するつもりはない。投資家との利益相反を避けるのが難しいからだ。いずれ日本の市場にも変化が訪れる日が来ると信じている」

 ――他社を買収する計画は。

 「可能性は極めて低い。企業文化に特色のある当社は従業員の転職率が非常に低い。投信業界で最大になったのは、他社の買収ではなく、投資家の支持を得て内から会社が大きくなったから。日本市場でも当社の投信は大きな価値をもたらすと思ってくれる投資家が増えるようにしたい」

 ――FAを通じた販売実績はどうか。

 「運用資産全体の35%がFA経由だ。10年前にはほぼゼロだっただけに大きく変化した。40%は直販、残りは確定拠出年金だ。FAの普及は世界的な傾向で、英国、カナダ、オーストラリアなどにも広がった。香港も証券規制改革でFA導入を議論している。日本でもFAが普及すれば投資家の利益にかなう」