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SBIの研究(下) 地銀と店舗客層広げる法人分野の開拓課 題に 2018/3/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「SBIの研究(下) 地銀と店舗客層広げる法人分野の開拓課題に」です。





 「30代の方が資産運用の相談に来店された。現役層の新規のお客さんは珍しいので驚きましたよ」。昨年10月、SBI証券と組んで、地銀初となる証券会社との共同店舗の運営に乗り出した清水銀行。浜松市の同店舗で働く営業担当者の阿倍伸彦さんはこう明かす。

 清水銀の行員とSBIの金融アドバイザーの2人1組で顧客をまわる。共同店舗を通じてSBI証券で口座を開設してもらい、得た手数料は折半する仕組みだ。清水銀は運用助言のノウハウを吸収でき、扱う投資信託も100本未満から2500本超に拡大。「顧客の企業経営者らの資産運用ニーズに応えられ、事業領域の拡大につながっている」と岩山靖宏常務は語る。

 一方、SBI証券には地方の富裕層にアプローチできるメリットがあり、「地銀との共同店舗は今後、20程度に増やしたい」(高村正人社長)。投信の供給などで協力する金融仲介業で提携する地域金融機関も増えており、現時点で京葉銀行や愛媛銀行など15行にのぼる。今後30行に拡大する予定だ。

 SBIがこうした新しい試みに経営資源を割けるのは、本業であるインターネット証券が好調さを保っているからだ。

 同社の有価証券報告書によると、SBI証券の総合口座数は17年3月末までの10年間で年平均10%増加。最大手の野村(同3%の伸び)を大きく上回る。口座数は17年末に400万超と大和証券を抜き、今後4~5年で業界首位の野村証券(約530万)を逆転する可能性がある。

 SBIは99年に実施された株式売買委託手数料の自由化を受けてネット取引に参入。それ以来、手数料を業界最安水準に保って若年層を取り込んできた。顧客の年代は30~50代の現役層が7割を占める。一方、対面型の大手証券は60代後半~80代前半の高齢者層が中心で、大きな違いがある。

 18年にスタートした積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)では首位を走る。大手証券や3メガバンクなど11社合計でみた場合、シェアは3割を超え、2位以下を突き放す。税制優遇で資産運用への関心が高まり、「女性を含めた投資初心者の口座の開設が目立つ」(SBIホールディングスの北尾吉孝社長)。

 課題は収益面にある。17年4~12月期は株高が追い風になったほか、ベンチャー投資も収穫期を迎え、連結純利益は364億円と前年同期比で45%増加した。それでも純利益の規模は野村ホールディングスの約5分の1にすぎない。

 高採算の法人事業の差が大きい。時間をかけて企業と関係をつくる必要があり、SBIは新規株式公開(IPO)の幹事獲得では一定の成果が出ているものの、増資や債券の引き受けでは及ばない。次世代送金などフィンテック関連の事業や、地銀との連携をどう実際の収益につなげていくかもまだ見えない。SBIが推し進める「複合経営」の成否がはっきりしてくるのはこれからだ。

 川上穣、野村優子が担当しました。



商工中金改革の壁(下)「赤字でも有望」融資へ問われる目利き力 2018/ 1/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「商工中金改革の壁(下)「赤字でも有望」融資へ問われる目利き力」です。





 「地銀の中で、レイジー(怠惰)な頭取はどのくらいいるのか」。2017年12月11日の商工組合中央金庫(商工中金)の在り方検討会。座長の川村雄介氏(大和総研副理事長)は問いかけた。

 相手はゲストとして講演した日本動産鑑定の森俊彦会長(元日銀)。銀行に“目利き力”向上を助言するプロだ。商工中金の主戦場である中小企業融資で、担保や保証に頼らず経営者や将来性を見てお金を貸す民間銀行が少ないと指摘したことへの質問だった。森会長が「やり抜いているのは両手程度」と答えると、場が静まりかえった。

 大規模な不正があったにもかかわらず、検討会の提言の矛先が商工中金の解体に向かわなかったのは、こうした議論を通じ、委員の間に中小企業に対する民間銀行の融資が不十分という見方が広がったためだ。

 数字に表れているのが銀行の期間1年以内の短期融資。20年で約3分の1に減った。金融庁が不良債権とみなし、銀行が及び腰になった影響が大きい。目利きする頻度が落ち、能力を磨く機会も減った。担保や保証で融資判断せざるを得ない悪循環を生んでいる。

 商工中金も十分民業補完できていたとは言えない。金融庁の検査では不正の起きた危機対応融資の3割、約7000億円が黒字の正常先だった。

 そこで検討会は改革提言に「ミドルリスク層への事業モデル転換」を掲げた。ミドルリスク層とはざっくりいえば赤字企業。赤字でも経営者の資質や事業の将来性を見極めたうえで積極的に貸す金融機関への転換を求めた。森会長の試算では、再生や成長の可能性がある赤字企業は、全国380万社のうち最低150万社はあるという。

 民間銀行はこうした企業への融資には及び腰。この「金融空白地」を商工中金が埋めるなら存在意義はあるというのが検討会の考え方だ。「レイジーバンクが多数あるなら完全民営化して競争で民間銀行を脅かした方が効果がある」(経営共創基盤代表の冨山和彦委員)。商工中金の改革を通じ民間銀の経営体質に活を入れるねらいもある。

 実現は容易ではない。目利き力がないままにリスクのある融資を増やせば生き永らえるだけの“ゾンビ企業”を生み、自身の体力も失うだけだ。

 先駆けてミドルリスク層への融資を打ち出した青森県のみちのく銀行は10年超、山形県のきらやか銀行も8年経てなお道半ば。最も進む石川県の北国銀行も組織に根付くまで10年かかった。3月からの新体制が、不正で失った信頼の回復と並行して、どこまでスピード感を持って事業構造を変えられるかが問われる。

 玉木淳、竹内康雄、辻隆史が担当しました。



金融取材メモ ヤマト値上げ羨むメガ銀手数料上げへ問われる「汗 のかき方」 2018/1/10 本日の日本経済新聞より

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 「値上げしてもさほど批判されない企業もある。銀行はどうかと自問している」。メガバンク首脳の念頭にあるのはヤマト運輸が宅配便の料金を27年ぶりに引き上げたことへの反応。メガ銀も両替を手始めに手数料上げを模索するが批判はくすぶる。ともに社会インフラを担う両者の違いは何か。

全銀協の平野会長は「コストに見合う手数料をもらうのが基本」と話す

 「やっぱり往復2000円台から3000円台に上がると一瞬ためらう」。東京都の30代会社員はゴルフバッグを宅配便で送るたびに値上げを実感している。値上げはないに越したことはないが企業がサービスを維持するには「適正な対価」が必要。値上げ前からヤマトが運転手不足とネット通販の急拡大でパンク寸前だったのは知れわたっていた。大手行幹部は「要は値上げしてもどれだけ『仕方ないな』と思ってもらえるか」とみる。

 突き詰めると利用者が値上げを受け入れるかどうかは、企業側の努力の見え方と代わりが利くかにかかっている。ヤマトの場合は「何度も再配達してもらって無料というのは申し訳ない」という感情とパンクされたら困るサービスという“条件”を満たしたことが非難の嵐にならない理由のようだ。

 もっとも、現場の「汗」が見えやすい宅配便と銀行では事情が異なる。たとえば、メガバンクが一斉に手数料上げに動いている両替。窓口はわかるが、両替機での手数料まで上げることに批判もある。ただ両替機に頻繁に新札を補充するには人手が必要で、その新札を日銀に取りにいくのにもコストがかかる。

 銀行はATMや振込手数料の引き上げ、口座維持手数料の徴収なども視野に入れる。ただマイナス金利政策による苦境を訴えても、3メガ銀そろって純利益上位10社に入っていると「国内の実態がどうであれ、切迫感は伝わりにくい」(メガバンク幹部)。

 全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は昨年12月の記者会見で「顧客に納得してもらえるような努力をして理解してもらったうえで適正な手数料をいただく」と正攻法の重要性を説いた。供給側が適正な対価といっても顧客が離れたら元も子もない。銀行界の汗のかき方が問われる。(亀井勝司)



キャッシュレス社会の足音(上)当店は「現金お断り」 レジ作業 が大幅減 狙いは働き方改革 2017/12/19 本日の日本経済新聞より

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 日本はお金の支払いの8割がお札や小銭でやり取りされている“現金大国”だ。ネットやスマートフォン(スマホ)を使った電子決済サービスが普及する米国や中国に比べ、キャッシュレス化に向けた取り組みで遅れているが、IT(情報技術)の進展や人手不足などを背景に変わる兆しが出てきた。最前線を追う。

電子マネーで賽銭を払える神社も登場(東京都港区)

 「現金お断り」。支払いに電子マネーやクレジットカードしか使えないレストランが11月、東京都中央区に試験開業した。「狙いは働き方改革」。出店を指揮したロイヤルホールディングスの野々村彰人常務は語る。

 飲食店の従業員にとって大きな負担の一つが現金の管理。レジに記録された現金の出し入れデータとレジの中身が一致しているかを確かめる「レジ締め」と呼ばれる作業は合わなければ繰り返し確認するため40分近くかかることもある。完全に現金をなくすことでこの作業が数分ですみ、人員の効率配置につながる。

 開業して1カ月。客の入りはまだまだだが、注文前に現金が使えないことを徹底的に確認するため、いまのところ客とのトラブルはないという。

カードで祈祷料

 利用者側のキャッシュレス対応のニーズは高まっている。その波は意外なところにまで及ぶ。

 酉(とり)の市の熊手の種類の豊富さで知られる鷲神社(東京・台東)は11月から、祈祷(きとう)料をクレジットカードで支払えるようにした。「カードで支払えますか?」という問い合わせが増えてきたからだ。

 愛宕神社(東京・港)は1月4日限定で電子マネー「楽天Edy」で賽銭(さいせん)を受け付ける。読み取り端末は木造の本殿にあわせて厳かな木箱で包まれている。

投じる金額を入力し、端末にタッチするだけ。「小銭がなくても好きな金額を出せる」(楽天カードの吉田匡孝氏)

 西武信用金庫(東京・中野)など地域金融機関は、スマホなどにつなげるカード決済端末を提供するコイニー(東京・渋谷)と連携。飲食店や物産展への出展者に決済端末を導入するよう促している。訪日旅行者から「日本では意外にクレジットカードが使えない」との声がある。

 みずほ銀行によると日本で現金の流通に使われるお金は約8兆円。管理や輸送に伴う人件費、ATMなどの設備投資に膨大なお金がかかる。キャッシュレス化でこうしたコストを減らせる。

金融行動を分析

 「現金で捕捉できなかった金融行動をデータ化して、新たなサービスにつなげられる」。三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は、キャッシュレス化は新サービスを生み出すきっかけになると読む。

 中国アリババ集団のアリペイは、電子決済サービス「アリペイ(支付宝)」の利用者から集まるビッグデータを、融資の際の信用力の判断やこれまで金融機関が敬遠してきた借り手の開拓などに使っている。今後は日本でもこうした取り組みが活発になりそうだ。



モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る 危機は一瞬 で広がる日本郵政社長 長門正貢氏 2017/12/5 本日の日本経済新 聞より

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 ――米リーマン危機から来年で10年になります。金融緩和で世界の風景はどう変わりましたか。

 「成長速度もようやく元のトレンドに戻ってきた。力強さには欠けるが、どこの地域も金融緩和政策によってなんとか成長路線につなげることができている」

 ――巨額のマネーが市場にあふれていることに恐怖を感じませんか。

 「先が読みきれないリスクが生まれた。いま何が起こっていて、そこにリスクはないのか。日本銀行は440兆円もの国債を抱え、さらに上場投資信託(ETF)、要は株も買っている。いつどのように売るのか。そのペースはどのくらいかといった問題意識が市場関係者の間に明らかに芽生えている」

 ――バブルを指摘する声も増えています。

 「現象として、バブルのような状況は起きている。例えばアルゼンチンが100年債を発行したら募集額を上回る申し込みがあった。20世紀に6回デフォルトを起こしたのに、だ。イラクが発行した6年債にも応募が殺到。お金が有り余り、モノを買いたがっている人が増えている。バブル崩壊前夜との見方もある」

 ――1997年のアジア通貨危機の時は日本興業銀行(当時)にいました。

 「タイに赴任中だった。7月2日の早朝、タイの中央銀行に外銀支店長とタイの銀行頭取全員が集められ、大蔵大臣と中央銀行総裁がフロート(管理変動相場制)に移行すると宣言したことを今でも鮮明に覚えている。たった1~2週間で380億ドルの外貨準備が吹っ飛んだ。問題は一瞬にして広がると学んだ」

 ――米国が当時のように利上げし始めました。

 「アジア危機のきっかけは米国の投資家の動きだった。米国の動向には非常に注意している。欧州も日本もまだ動いておらず、何が起こるかわからない」

 ――世界の勢力図で重要な役割を担い始めた中国をどうみていますか。

 「1929年から始まった大恐慌は英国の時代だった19世紀から米国の時代に移る過渡期に起きたという分析がある。自らがリーダーだと英国は錯覚し米国は自覚していなかった。まさに今の米国と中国。当時と同じ問題が顕在化する可能性がある」

 ――日本郵政グループは総資産300兆円近い巨大金融機関です。

 「郵便と金融の2つを併せ持つ。政府系で業務上足かせが多かったため、今は突然死するリスクが相対的に少ない半面、収益力が高くない。国債の保有割合が高く、国債投資の縮小や保有資産の分散が課題だ」

 「恐れているのは合成の誤謬(ごびゅう)に陥ることだ。ゆうちょ銀行、かんぽ生命など各社はもちろんグループ全体で大丈夫か。問題が噴き出すときは一瞬。思わぬミスがないか、殺気にも似た緊張感を常にもっている」(聞き手は玉木淳)

=随時掲載

 ながと・まさつぐ 1972年旧日本興業銀行入行。国際通として知られ、シティバンク銀行会長、ゆうちょ銀社長を経て2016年から現職。69歳。



モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る物価観、家計と日銀 ズレ 慶大教授 白井さゆり氏 2017/11/28 本日の日本経済新 聞より

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 ――日銀が異次元緩和に踏み込んだ際に審議委員を務めていました。これまでの金融緩和をどう見ますか。

 「金融緩和が需要を拡大し、それによってインフレを押し上げていくという効果は、かなり限定的だった。株や為替への影響はあったが、そこから実体経済に強い波及は起きていない。結局、家計の消費がそれほど強くなかったということ」

 「日銀はデフレマインドが根強いと主張する。しかしそもそも日本は物価が下がり続けるデフレスパイラルではなかった。調査をみると、家計は物価が上がっていくと答えている。物価が上がって支出が増え、可処分所得が落ちたと感じている。政策金利の水準を取り戻すために2%のインフレを望む日銀とは分断が広がっている」

 ――日銀は具体的にどうするべきでしょうか。

 「2%の物価安定目標に上下1%を許容範囲とすればよいのではないか。物価が1%でも信認を失わずに出口戦略に迎えられるし、2%目標をあきらめていないことを周知できる。なにより家計や企業も日銀がなにがなんでも毎年2%達成を目指していると誤解するのを回避できる」

 ――大規模緩和と弱いインフレという状況はほかの先進国も同じです。

 「みんな不思議に思っている。なぜ高い成長率でも物価が上がらないのか。グローバル化が進み、自国の環境だけで賃金を上げられなくなったことや、技術を持つ人とそうでない人で二極化が起きた点も影響している」

 「ただそれだけではない。たとえば不動産価格の上昇はバブル期と違い、都市部など局所的にしか起きていない。金融機関に聞くと、世界的に株式投資は配当狙いが増えており、値上がり期待が薄い。経済成長が今後も続いていくという期待感が低いのではないか」

 「欧州も資産買い入れの縮小を始めるが、金融正常化へのペースは非常にゆっくりだ。高齢者の年金資産は利回りが低く、受給者はむりやりリスクの高い投資に乗り出している。『もう超金融緩和はやめてほしい』という声は欧州でも多い」

 ――マネーの動きがグローバル化した影響もあるのでしょうか。

 「金融緩和の効果はその国だけでなく、世界全体に波及して低金利が広がっている。実体経済が成長しているのは新興国なのに、金融政策は先進国が主導している。そこにも無理がある。新興国からすると、資本の流出入が先進国の政策に左右されてしまう」

 「金融緩和は為替が目的のようになってきた面もある。通貨安を誘導しようと政策金利を引き下げる動きにつながる。G7は為替介入しか言及しないが、自国のことだけを考えると全体の利益を損なう。まるで『囚人のジレンマ』だ」

(聞き手は高見浩輔)

=随時掲載

 しらい・さゆり 2011年から16年まで日銀審議委員。マイナス金利政策を導入の際は反対票を投じた。国際通貨基金(IMF)エコノミストなどを歴任。54歳



古民家再生、地銀が担い手担保評価難しく見極め課題 2017/10/31 本日の日本経済新聞より

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 地方銀行が各地の古民家再生ビジネスを本格化させている。ファンドや融資制度を設けて過疎化が進む地域にも企業や消費者を呼び込み、新たな融資先を開拓する狙いがある。ただ古民家は担保評価が難しく、収支計画に基づく将来性の見極めがより求められる。各地銀の「目利き力」が事業の成否を握りそうだ。

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横浜銀行は「富士屋旅館」の再生を進める(神奈川県湯河原町)

 「この旅館は湯河原のランドマーク。復活させて街ににぎわいを取り戻したい」。湯河原温泉旅館協同組合の山本一郎理事長は目を細める。来春、改装開業を予定する富士屋旅館(神奈川県湯河原町)。温泉街の中心にある江戸時代から続く老舗旅館だが、2002年に経営不振で廃業していた。

 この富士屋旅館再生の仕掛け人が横浜銀行。地域経済活性化支援機構(REVIC)などと組み計10億円を投入。事業者選定や計画策定に関わる。「湯河原は歴史的価値の高い建築物が多い」(河野辰巳地域戦略企画グループ長)

 全国地方銀行協会によると9月時点の古民家活用の取り組みは27行、34事例に上った。池田泉州銀行などは専門の融資制度を創設。第二地銀でも京葉銀行などが融資している。

 「日本の建物は時間が経つと不動産鑑定額が減っていく。古民家評価の仕組み作りが必要だ」。千葉銀行の植松克則法人営業部長は1月、菅義偉官房長官など約20人の要人を前にこう呼びかけた。政府が立ち上げた「歴史的資源を活用した観光まちづくり専門家会議」での一幕だ。

 各地で空き家が増え続けるなか、政府は20年までに200地域で古民家などを活用したまちづくりを目指す。ただ大抵の古民家は建物に価値が付かず、地方に行くほど地価も安くなるため担保評価が難しい。どの程度集客や売り上げが見込めるかなど、担保に依存しない融資判断が求められる。



日銀の孤独(中)岐路に立つリフレ政策薄れる「期待」に課題多く 2017/ 10/12 本日の日本経済新聞より

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 景気刺激のための金融緩和に積極的なリフレ派。安倍政権と黒田日銀をつないでいたこの理論が岐路に立っている。

審議委員が反対

 「いまさら追加緩和を提案するのか」。日銀内に動揺が広がった。9月21日の金融政策決定会合で、エコノミスト出身の片岡剛士審議委員が今の日銀の金融政策を「不十分」として反対票を投じたためだ。政府が人選する審議委員が、着任後初めての会合で反対票を投じるのは異例のことだ。

 異次元の金融緩和でスタートしたはずの日銀が、緩和の提案に驚く。その理由は、日銀内でのリフレ理論の変節にある。

 2013年4月の異次元緩和は「2年間で、物価上昇率を2%に引き上げる」ことを目指して始まった。だが物価上昇は鈍く、目標達成時期の先送りは6回に及ぶ。足元の消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)は0%台。ある政策委員は「金融政策だけでは限界があった」と素直に認める。

物価上昇に限界

 日銀が資金供給量(マネタリーベース)を拡大しても、人々が予想する物価上昇率はなかなか上がらない。日銀は16年9月の「総括検証」でこの点を認め、緩和の主軸を「量」から「金利」に変えた。長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作で、長い時間をかけて緩和を続けるものだ。「我々は進化した」。リフレ派と呼ばれる政策委員の一人はこう表現する。

 これは外部のリフレ派から見れば、日銀内のリフレ派は量的緩和の効果に自信を失っているように見える。このため片岡氏が緩和の追加を促す反対票を投ずると、リフレ派の有識者から高く評価する声が相次いだ。

 リフレはもともと黒田日銀の金融政策の根幹をなしていた。論争は政策に影響を及ぼしかねない。だが、異例の反対票への市場の反応は限られてもいる。金融政策への期待が薄れているためだ。

 黒田東彦氏が日銀総裁に就いた時、「デフレ脱却」という言葉は物価上昇以外に不況脱出、円高阻止、という期待をこめて一般から支持された。その後、円高是正で企業業績が改善し、景気回復は歴史的な長さに及ぶ。「ここからさらに物価上昇を求める声はほぼない」(日銀幹部)

 片岡氏が審議委員に指名された今春の日銀人事。政権に近い関係者が当初、構想したのは空いた2人の審議委員の席を両方ともリフレ派エコノミストで埋める案だった。実際には実務経験を重視して三菱東京UFJ銀行出身の鈴木人司氏が選ばれた。日銀関係者は「政権内でバランス感覚が働いた」とし、政府内にもリフレに偏りすぎない意向があったと見る。

 外部のリフレ派の一部は水面下で、日銀が国債を買い上げることで政府がより財政支出を拡大しやすくなる方策を模索している。日銀には受け入れがたい提案だ。一度は乗ったリフレの大船。だが日銀理論は再び、漂流を始めたように見える。



変わる金融の黒子たち(上)債権回収、企業再生担う利払い猶予や役員派 遣 2017/9/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「変わる金融の黒子たち(上)債権回収、企業再生担う利払い猶予や役員派遣」です。





 貸出債権を二束三文で買い取り、厳しい取り立てでサヤを抜く――。1990年代後半の金融危機時のイメージで「債権回収」という言葉を聞くと、苛烈な取り立てを思い起こしがちだが、実態は大きく変わっている。

資金の不安払拭

 「利払いをいったん止めますからまず納税しましょう」。あおぞら銀行傘下のあおぞら債権回収(あおぞらサービサー)の担当者はある宿泊施設の経営者に切り出した。同施設の債権を地方銀行から買い取ったのがあおぞらサービサー。銀行への利払いを優先し税金を滞納していた。施設を維持するために必要な修繕費用も思うようにひねり出せず、客足がさらに遠のく悪循環に陥っていた。

 そこで担当者が選んだのが利払いの猶予だ。経営者の資金繰りの不安を取り除いてあげれば本業に集中でき、業績の改善につながりやすくなる。本業支援のために人材も派遣する。「再生の近道になるなら我慢する」。あおぞらサービサーの新川洋司取締役は話す。

 一般的に債権回収業者(サービサー)に持ち込まれるのは、担保などを処分したうえで銀行がこれ以上、回収するのは難しいと判断した貸出債権だ。かつて銀行は貸出債権をひとまとめにして売却し、不良債権を処理してきた。ただ不良債権そのものが減っている。

 金融庁によると、2017年3月期の全国銀行の不良債権額は前年同期比8%減の7兆7240億円。過去最低を更新し続けており、5年間で34%も減った。案件の減少に伴い、債権回収業者も企業再生に軸足を移している。たとえば額面10億円の債権を3億円で購入。再生後に4億円の債権として銀行に譲り渡すビジネスだ。1億円がサービサーの利益になる。

 独立系の山田債権回収管理総合事務所(山田サービサー)も再生に力を入れる。同社が経営再建を主導したサービス業者は、もともと銀行が外資系ファンドに債権売却した取引先だ。余裕資金ができると返済への充当を強く求められ、先行きが見通せなかった。

3年で新規融資

 外資ファンドから債権を買い取った山田サービサーは返済条件を緩和。役員の派遣を含め徹底的に事業再生を進め、3年間で地域金融機関による新規融資にこぎ着けた。山田晃久社長は「我々は金融機関から再び融資を受けられるようになるまでのセットアッパー(中継ぎ役)だ」と話す。

 サービサーが再生を請け負うことで銀行にとっては正常先が増え、当事者の企業は債務を減らせる。サービサーも企業をよみがえらせれば利益を得られる。あおぞらサービサーの新川氏は「三方一両得」と表現する。債権回収の現場は企業の終わりではなく、再生の始まりに変わりつつある。

 金融危機から20年。不良債権時代の終わり、IT(情報技術)化の進展などで、金融の黒子たちの役割も変わってきた。その現場を追う。



中小・個人融資、新旧手法競う AI判定や「芸者ローン」 2017/8/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「中小・個人融資、新旧手法競う AI判定や「芸者ローン」」です。





 信用力の見極めが難しいとされる中小企業や個人事業主への融資審査で新旧の手法が競い合っている。新興勢は人工知能(AI)によるデータ解析で信用力を判断し、地域金融機関などは「人物の見極め」といった伝統的な手法を改めて深掘りしている。

 リクルートホールディングスは9月をめどに子会社を通じて中小企業向けの融資を始める。まずはグループが運営する宿泊予約サイト「じゃらんネット」を利用している旅館などの宿泊事業者を対象にする。AIを使って宿泊施設の過去の利用状況などのデータを解析し、信用力を割り出す。

 融資を受けられず事業を拡大できない企業などを目の当たりにしてサービスを始めたという。「(企業が)いざという時に資金の手当てができるようにする」(リクルート)として申し込みから数日内での融資をめざす。

 インターネット専業のジャパンネット銀行もクラウド会計ソフトのfreee(フリー、東京・品川)と連携し、AIを使った与信審査を始めた。企業の業績や資金データなどを瞬時に把握・分析し、信用力を見極める。やはり申し込みから融資の実行までは数日しかかからない場合が多い。

 対照的に職員の「目利き力」を重視しているのが地域の金融機関だ。

 「第一勧業信用組合さんは丁寧に話を聞き、融資に応じてくれた」。東京・浅草で芸者さんとして働く鹿島菊乃さん(41)はこう語る。自分の飲食店を2015年末に開業しようとした際、大手行はまともに相手にしてくれず、知人に紹介された第一勧業信組で融資をようやく得られた。

 地域の需要に特化した「コミュニティローン」を同信組は提供している。通称「芸者ローン」もその一つ。芸者さんの着物購入や独立するための資金を融通する。昨年10月から定型化し、鹿島さんのような芸者さんに合計約5千万円を貸し出した。

 決め手の一つが「人づて」だ。事業計画を精査したり、直接の面会で人物を確認したりするのはもちろん、取引関係などを通じて信頼できる企業などからの紹介も重視する。「信頼の輪」を生かして、貸し出しを増やしている。(塩崎健太郎)