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モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る 危機は一瞬 で広がる日本郵政社長 長門正貢氏 2017/12/5 本日の日本経済新 聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る 危機は一瞬で広がる日本郵政社長 長門正貢氏」です。





 ――米リーマン危機から来年で10年になります。金融緩和で世界の風景はどう変わりましたか。

 「成長速度もようやく元のトレンドに戻ってきた。力強さには欠けるが、どこの地域も金融緩和政策によってなんとか成長路線につなげることができている」

 ――巨額のマネーが市場にあふれていることに恐怖を感じませんか。

 「先が読みきれないリスクが生まれた。いま何が起こっていて、そこにリスクはないのか。日本銀行は440兆円もの国債を抱え、さらに上場投資信託(ETF)、要は株も買っている。いつどのように売るのか。そのペースはどのくらいかといった問題意識が市場関係者の間に明らかに芽生えている」

 ――バブルを指摘する声も増えています。

 「現象として、バブルのような状況は起きている。例えばアルゼンチンが100年債を発行したら募集額を上回る申し込みがあった。20世紀に6回デフォルトを起こしたのに、だ。イラクが発行した6年債にも応募が殺到。お金が有り余り、モノを買いたがっている人が増えている。バブル崩壊前夜との見方もある」

 ――1997年のアジア通貨危機の時は日本興業銀行(当時)にいました。

 「タイに赴任中だった。7月2日の早朝、タイの中央銀行に外銀支店長とタイの銀行頭取全員が集められ、大蔵大臣と中央銀行総裁がフロート(管理変動相場制)に移行すると宣言したことを今でも鮮明に覚えている。たった1~2週間で380億ドルの外貨準備が吹っ飛んだ。問題は一瞬にして広がると学んだ」

 ――米国が当時のように利上げし始めました。

 「アジア危機のきっかけは米国の投資家の動きだった。米国の動向には非常に注意している。欧州も日本もまだ動いておらず、何が起こるかわからない」

 ――世界の勢力図で重要な役割を担い始めた中国をどうみていますか。

 「1929年から始まった大恐慌は英国の時代だった19世紀から米国の時代に移る過渡期に起きたという分析がある。自らがリーダーだと英国は錯覚し米国は自覚していなかった。まさに今の米国と中国。当時と同じ問題が顕在化する可能性がある」

 ――日本郵政グループは総資産300兆円近い巨大金融機関です。

 「郵便と金融の2つを併せ持つ。政府系で業務上足かせが多かったため、今は突然死するリスクが相対的に少ない半面、収益力が高くない。国債の保有割合が高く、国債投資の縮小や保有資産の分散が課題だ」

 「恐れているのは合成の誤謬(ごびゅう)に陥ることだ。ゆうちょ銀行、かんぽ生命など各社はもちろんグループ全体で大丈夫か。問題が噴き出すときは一瞬。思わぬミスがないか、殺気にも似た緊張感を常にもっている」(聞き手は玉木淳)

=随時掲載

 ながと・まさつぐ 1972年旧日本興業銀行入行。国際通として知られ、シティバンク銀行会長、ゆうちょ銀社長を経て2016年から現職。69歳。



モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る物価観、家計と日銀 ズレ 慶大教授 白井さゆり氏 2017/11/28 本日の日本経済新 聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る物価観、家計と日銀ズレ 慶大教授 白井さゆり氏」です。





 ――日銀が異次元緩和に踏み込んだ際に審議委員を務めていました。これまでの金融緩和をどう見ますか。

 「金融緩和が需要を拡大し、それによってインフレを押し上げていくという効果は、かなり限定的だった。株や為替への影響はあったが、そこから実体経済に強い波及は起きていない。結局、家計の消費がそれほど強くなかったということ」

 「日銀はデフレマインドが根強いと主張する。しかしそもそも日本は物価が下がり続けるデフレスパイラルではなかった。調査をみると、家計は物価が上がっていくと答えている。物価が上がって支出が増え、可処分所得が落ちたと感じている。政策金利の水準を取り戻すために2%のインフレを望む日銀とは分断が広がっている」

 ――日銀は具体的にどうするべきでしょうか。

 「2%の物価安定目標に上下1%を許容範囲とすればよいのではないか。物価が1%でも信認を失わずに出口戦略に迎えられるし、2%目標をあきらめていないことを周知できる。なにより家計や企業も日銀がなにがなんでも毎年2%達成を目指していると誤解するのを回避できる」

 ――大規模緩和と弱いインフレという状況はほかの先進国も同じです。

 「みんな不思議に思っている。なぜ高い成長率でも物価が上がらないのか。グローバル化が進み、自国の環境だけで賃金を上げられなくなったことや、技術を持つ人とそうでない人で二極化が起きた点も影響している」

 「ただそれだけではない。たとえば不動産価格の上昇はバブル期と違い、都市部など局所的にしか起きていない。金融機関に聞くと、世界的に株式投資は配当狙いが増えており、値上がり期待が薄い。経済成長が今後も続いていくという期待感が低いのではないか」

 「欧州も資産買い入れの縮小を始めるが、金融正常化へのペースは非常にゆっくりだ。高齢者の年金資産は利回りが低く、受給者はむりやりリスクの高い投資に乗り出している。『もう超金融緩和はやめてほしい』という声は欧州でも多い」

 ――マネーの動きがグローバル化した影響もあるのでしょうか。

 「金融緩和の効果はその国だけでなく、世界全体に波及して低金利が広がっている。実体経済が成長しているのは新興国なのに、金融政策は先進国が主導している。そこにも無理がある。新興国からすると、資本の流出入が先進国の政策に左右されてしまう」

 「金融緩和は為替が目的のようになってきた面もある。通貨安を誘導しようと政策金利を引き下げる動きにつながる。G7は為替介入しか言及しないが、自国のことだけを考えると全体の利益を損なう。まるで『囚人のジレンマ』だ」

(聞き手は高見浩輔)

=随時掲載

 しらい・さゆり 2011年から16年まで日銀審議委員。マイナス金利政策を導入の際は反対票を投じた。国際通貨基金(IMF)エコノミストなどを歴任。54歳



古民家再生、地銀が担い手担保評価難しく見極め課題 2017/10/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「古民家再生、地銀が担い手担保評価難しく見極め課題」です。





 地方銀行が各地の古民家再生ビジネスを本格化させている。ファンドや融資制度を設けて過疎化が進む地域にも企業や消費者を呼び込み、新たな融資先を開拓する狙いがある。ただ古民家は担保評価が難しく、収支計画に基づく将来性の見極めがより求められる。各地銀の「目利き力」が事業の成否を握りそうだ。

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横浜銀行は「富士屋旅館」の再生を進める(神奈川県湯河原町)

 「この旅館は湯河原のランドマーク。復活させて街ににぎわいを取り戻したい」。湯河原温泉旅館協同組合の山本一郎理事長は目を細める。来春、改装開業を予定する富士屋旅館(神奈川県湯河原町)。温泉街の中心にある江戸時代から続く老舗旅館だが、2002年に経営不振で廃業していた。

 この富士屋旅館再生の仕掛け人が横浜銀行。地域経済活性化支援機構(REVIC)などと組み計10億円を投入。事業者選定や計画策定に関わる。「湯河原は歴史的価値の高い建築物が多い」(河野辰巳地域戦略企画グループ長)

 全国地方銀行協会によると9月時点の古民家活用の取り組みは27行、34事例に上った。池田泉州銀行などは専門の融資制度を創設。第二地銀でも京葉銀行などが融資している。

 「日本の建物は時間が経つと不動産鑑定額が減っていく。古民家評価の仕組み作りが必要だ」。千葉銀行の植松克則法人営業部長は1月、菅義偉官房長官など約20人の要人を前にこう呼びかけた。政府が立ち上げた「歴史的資源を活用した観光まちづくり専門家会議」での一幕だ。

 各地で空き家が増え続けるなか、政府は20年までに200地域で古民家などを活用したまちづくりを目指す。ただ大抵の古民家は建物に価値が付かず、地方に行くほど地価も安くなるため担保評価が難しい。どの程度集客や売り上げが見込めるかなど、担保に依存しない融資判断が求められる。



日銀の孤独(中)岐路に立つリフレ政策薄れる「期待」に課題多く 2017/ 10/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「日銀の孤独(中)岐路に立つリフレ政策薄れる「期待」に課題多く」です。





 景気刺激のための金融緩和に積極的なリフレ派。安倍政権と黒田日銀をつないでいたこの理論が岐路に立っている。

審議委員が反対

 「いまさら追加緩和を提案するのか」。日銀内に動揺が広がった。9月21日の金融政策決定会合で、エコノミスト出身の片岡剛士審議委員が今の日銀の金融政策を「不十分」として反対票を投じたためだ。政府が人選する審議委員が、着任後初めての会合で反対票を投じるのは異例のことだ。

 異次元の金融緩和でスタートしたはずの日銀が、緩和の提案に驚く。その理由は、日銀内でのリフレ理論の変節にある。

 2013年4月の異次元緩和は「2年間で、物価上昇率を2%に引き上げる」ことを目指して始まった。だが物価上昇は鈍く、目標達成時期の先送りは6回に及ぶ。足元の消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)は0%台。ある政策委員は「金融政策だけでは限界があった」と素直に認める。

物価上昇に限界

 日銀が資金供給量(マネタリーベース)を拡大しても、人々が予想する物価上昇率はなかなか上がらない。日銀は16年9月の「総括検証」でこの点を認め、緩和の主軸を「量」から「金利」に変えた。長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作で、長い時間をかけて緩和を続けるものだ。「我々は進化した」。リフレ派と呼ばれる政策委員の一人はこう表現する。

 これは外部のリフレ派から見れば、日銀内のリフレ派は量的緩和の効果に自信を失っているように見える。このため片岡氏が緩和の追加を促す反対票を投ずると、リフレ派の有識者から高く評価する声が相次いだ。

 リフレはもともと黒田日銀の金融政策の根幹をなしていた。論争は政策に影響を及ぼしかねない。だが、異例の反対票への市場の反応は限られてもいる。金融政策への期待が薄れているためだ。

 黒田東彦氏が日銀総裁に就いた時、「デフレ脱却」という言葉は物価上昇以外に不況脱出、円高阻止、という期待をこめて一般から支持された。その後、円高是正で企業業績が改善し、景気回復は歴史的な長さに及ぶ。「ここからさらに物価上昇を求める声はほぼない」(日銀幹部)

 片岡氏が審議委員に指名された今春の日銀人事。政権に近い関係者が当初、構想したのは空いた2人の審議委員の席を両方ともリフレ派エコノミストで埋める案だった。実際には実務経験を重視して三菱東京UFJ銀行出身の鈴木人司氏が選ばれた。日銀関係者は「政権内でバランス感覚が働いた」とし、政府内にもリフレに偏りすぎない意向があったと見る。

 外部のリフレ派の一部は水面下で、日銀が国債を買い上げることで政府がより財政支出を拡大しやすくなる方策を模索している。日銀には受け入れがたい提案だ。一度は乗ったリフレの大船。だが日銀理論は再び、漂流を始めたように見える。



変わる金融の黒子たち(上)債権回収、企業再生担う利払い猶予や役員派 遣 2017/9/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「変わる金融の黒子たち(上)債権回収、企業再生担う利払い猶予や役員派遣」です。





 貸出債権を二束三文で買い取り、厳しい取り立てでサヤを抜く――。1990年代後半の金融危機時のイメージで「債権回収」という言葉を聞くと、苛烈な取り立てを思い起こしがちだが、実態は大きく変わっている。

資金の不安払拭

 「利払いをいったん止めますからまず納税しましょう」。あおぞら銀行傘下のあおぞら債権回収(あおぞらサービサー)の担当者はある宿泊施設の経営者に切り出した。同施設の債権を地方銀行から買い取ったのがあおぞらサービサー。銀行への利払いを優先し税金を滞納していた。施設を維持するために必要な修繕費用も思うようにひねり出せず、客足がさらに遠のく悪循環に陥っていた。

 そこで担当者が選んだのが利払いの猶予だ。経営者の資金繰りの不安を取り除いてあげれば本業に集中でき、業績の改善につながりやすくなる。本業支援のために人材も派遣する。「再生の近道になるなら我慢する」。あおぞらサービサーの新川洋司取締役は話す。

 一般的に債権回収業者(サービサー)に持ち込まれるのは、担保などを処分したうえで銀行がこれ以上、回収するのは難しいと判断した貸出債権だ。かつて銀行は貸出債権をひとまとめにして売却し、不良債権を処理してきた。ただ不良債権そのものが減っている。

 金融庁によると、2017年3月期の全国銀行の不良債権額は前年同期比8%減の7兆7240億円。過去最低を更新し続けており、5年間で34%も減った。案件の減少に伴い、債権回収業者も企業再生に軸足を移している。たとえば額面10億円の債権を3億円で購入。再生後に4億円の債権として銀行に譲り渡すビジネスだ。1億円がサービサーの利益になる。

 独立系の山田債権回収管理総合事務所(山田サービサー)も再生に力を入れる。同社が経営再建を主導したサービス業者は、もともと銀行が外資系ファンドに債権売却した取引先だ。余裕資金ができると返済への充当を強く求められ、先行きが見通せなかった。

3年で新規融資

 外資ファンドから債権を買い取った山田サービサーは返済条件を緩和。役員の派遣を含め徹底的に事業再生を進め、3年間で地域金融機関による新規融資にこぎ着けた。山田晃久社長は「我々は金融機関から再び融資を受けられるようになるまでのセットアッパー(中継ぎ役)だ」と話す。

 サービサーが再生を請け負うことで銀行にとっては正常先が増え、当事者の企業は債務を減らせる。サービサーも企業をよみがえらせれば利益を得られる。あおぞらサービサーの新川氏は「三方一両得」と表現する。債権回収の現場は企業の終わりではなく、再生の始まりに変わりつつある。

 金融危機から20年。不良債権時代の終わり、IT(情報技術)化の進展などで、金融の黒子たちの役割も変わってきた。その現場を追う。



中小・個人融資、新旧手法競う AI判定や「芸者ローン」 2017/8/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「中小・個人融資、新旧手法競う AI判定や「芸者ローン」」です。





 信用力の見極めが難しいとされる中小企業や個人事業主への融資審査で新旧の手法が競い合っている。新興勢は人工知能(AI)によるデータ解析で信用力を判断し、地域金融機関などは「人物の見極め」といった伝統的な手法を改めて深掘りしている。

 リクルートホールディングスは9月をめどに子会社を通じて中小企業向けの融資を始める。まずはグループが運営する宿泊予約サイト「じゃらんネット」を利用している旅館などの宿泊事業者を対象にする。AIを使って宿泊施設の過去の利用状況などのデータを解析し、信用力を割り出す。

 融資を受けられず事業を拡大できない企業などを目の当たりにしてサービスを始めたという。「(企業が)いざという時に資金の手当てができるようにする」(リクルート)として申し込みから数日内での融資をめざす。

 インターネット専業のジャパンネット銀行もクラウド会計ソフトのfreee(フリー、東京・品川)と連携し、AIを使った与信審査を始めた。企業の業績や資金データなどを瞬時に把握・分析し、信用力を見極める。やはり申し込みから融資の実行までは数日しかかからない場合が多い。

 対照的に職員の「目利き力」を重視しているのが地域の金融機関だ。

 「第一勧業信用組合さんは丁寧に話を聞き、融資に応じてくれた」。東京・浅草で芸者さんとして働く鹿島菊乃さん(41)はこう語る。自分の飲食店を2015年末に開業しようとした際、大手行はまともに相手にしてくれず、知人に紹介された第一勧業信組で融資をようやく得られた。

 地域の需要に特化した「コミュニティローン」を同信組は提供している。通称「芸者ローン」もその一つ。芸者さんの着物購入や独立するための資金を融通する。昨年10月から定型化し、鹿島さんのような芸者さんに合計約5千万円を貸し出した。

 決め手の一つが「人づて」だ。事業計画を精査したり、直接の面会で人物を確認したりするのはもちろん、取引関係などを通じて信頼できる企業などからの紹介も重視する。「信頼の輪」を生かして、貸し出しを増やしている。(塩崎健太郎)



アベノミクスで増えぬ新規開業 融資の二重保全が壁 2017/8/8 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「アベノミクスで増えぬ新規開業 融資の二重保全が壁」です。





 アベノミクス始動から4年半。安倍晋三政権が当初から課題としていたベンチャー育成が思うように進まない。原因の一つが「石橋をたたいてわたる」銀行の融資姿勢にあることが金融庁の調査でわかった。

 「開業率10%台を目指す」。2013年6月、第2次安倍政権発足後、初めてまとめた日本産業再興プランに盛り込まれた政権公約。これに対し、直近の15年度は開業率5.2%で公約水準にはほど遠い。

 新規開業の壁の一つになっているのが「二重保全」を求める銀行の融資姿勢にあるとの見方がある。不動産などの担保をとった上で万一に備え信用保証協会などの保証も求めていることが起業家の重荷になっている。

 実は政府はこの問題にすでに手を打っている。13年末に銀行界と共同で掲げた「経営者保証ガイドライン(指針)」だ。

 企業が「法人・個人の区分経理」「財務基盤の強化」「適時適切な情報開示」の3原則を受け入れれば、銀行は信用保証の解除を検討するとの内容が盛り込まれている。

 ただ運用は一向に進まない。指針に後ろ向きな銀行の説明が十分でなく、企業の間に指針が周知されなかったのが背景だ。金融庁が6月に銀行に聞いたところ、無保証融資の割合は13.5%。指針導入前に比べ数%しか改善しなかった計算だ。

 過剰な保証は円滑な事業承継も阻む。団塊世代の引退時期に入り、承継にかかる手間とコストを理由に廃業する経営者は増えている。例えば、子供などに事業を譲る「事業承継」の場合、新旧経営者から保証を取らなかった割合は約7%(1824件)。逆に新旧両者から保証を取ったのは約48%(11488件)だった。金融庁は銀行に対し保証に過度に依存しないよう「何度要請したかわからない」(幹部)が改善されないという。

 銀行にも事情がある。保証にこだわる理由の一つが“金融緩和疲れ”。昨年2月に始まったマイナス金利は収益を直撃し「金利が低いんだから、債権の保全くらいしっかりしなければ」(ある地銀の支店幹部)。現場ではこうした意識が強い。

 日銀が大量のお金を市中に回しても、企業の事業意欲に火を付けなければ、経済の好循環は生まれない。金融庁は今後1年、改めて聞き取り調査を進め、保証に依存する原因を究明する考え。対話のなかでお金の循環を良くする妙策を見いだせるか。不良債権時代の融資姿勢が残る金融機関の意識改革も必要だ。(玉木淳、鈴木大祐)



Behind the Curtain 金融業務の舞台裏(中)電話応対競争力を左右複雑 な商品、工夫し説明 2017/7/6 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「Behind the Curtain 金融業務の舞台裏(中)電話応対競争力を左右複雑な商品、工夫し説明」です。





 振り込みから住宅ローンの相談まで、利用者の疑問や困り事に電話で応対するコールセンター。インターネットバンキングが普及し支店に足を運ぶ人が減少する一方、金融商品の中身が複雑になるなかで、店に出向かずすぐに疑問を尋ねられる「電話口のコンシェルジュ」の存在感が金融業界で増している。

2000ページのマニュアルから対応部分を探し出す(島根県出雲市のりそなグループカスタマーセンター)

 「ログインができないんだけど」。電話してきた男性客に「画面の右下にオレンジ色のボタンがございますね」と、女性社員がタブレットを片手に応じる。近くには顧客と同じ目線で対応できるよう、米アップルの「iPhone」をはじめ様々な機種のスマートフォン(スマホ)などが13台ずらりと並ぶ。

 りそなグループが2005年に島根県出雲市に設けたカスタマーセンターの風景だ。大阪と埼玉県にもセンターはあるが、ここは地元の誘致で実現した同社の中核施設。約200人のオペレーターがおり、開業時の3倍超に増えた。ほぼ全員をりそな銀行の契約社員として地元で採用している。

 顧客対応など「リテール力調査」でトップ3常連のりそな。働く世代など店の営業時間中に足を運べない顧客も多く、電話で24時間受け付けサービスを提供する。センターは問い合わせを受けるだけでなく、時に営業も支える。電話で投資信託などに興味を抱いた顧客を支店につなぐのは年間6千件にも上る。

 島根にはりそなの支店はなく、大半の人員は銀行業務の経験がない。曽田明美さん(52)もその一人。自動車販売店に20年以上勤めた後、09年に転じた。彼女たちが「銀行員超え」(りそな幹部)の知識を備えているのは、各自が自身で工夫を重ねているからだ。

 金融商品の概要や手続きなどをまとめた対応マニュアルは2000ページに及ぶ。だが社員一人ひとりが使い勝手がいいように分類し、付箋を貼ったりメモを書き込んだりして自分仕様に作り込む。毎月1~2時間は資料整理のために時間を割く。

 模範対応の文例も用意しているが、型だけでは終わらせない。「模範文例はあってないようなもの」(社員)。顧客の反応が良かった受け答えは全員で共有する。現場リーダーの足立真奈美さん(46)は「引き出しは多い方がいい」と話す。

 1日に受ける電話は1000件ほど。顧客の率直な声を聞くため、りそなホールディングスの東和浩社長も年に1回は訪れる。昨秋始めたATMでキャッシュカードの磁気不良を即時修復できるサービスは、センターに「磁気カードが使えない」という問い合わせが多いことから生まれた。

 金融機関にとって問い合わせ対応の充実は顧客満足度に直結する。三井住友銀行は15年に、りそなは3月に、サービスの迅速性や正確さなどが評価されるコールセンター業務の国際品質規格「COPC」を取得した。スマホで完結するローン申し込みなどサービスが店頭の枠を超えるなか、コールセンターの実力は金融機関の競争力をも左右する。

(大島有美子)



投信「毎月分配型」曲がり角 運用難、シェア低下 2016/05/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「投信「毎月分配型」曲がり角 運用難、シェア低下」です。





 国内の投資信託で主流の「毎月分配型」が曲がり角に差し掛かっている。株式投信全体に占める純資産の比率は4月に45%と10年ぶりの低水準になった。世界的な低金利で運用難が深刻になり高い分配金の支払いが難しくなったためだ。分配金の減額や、元本を取り崩し分配金とする投信も増えている。証券・運用業界では、長期の資産形成につながる投信に切り替えてもらおうと懸命だ。

 毎月分配型は月ごとに決算し投資家に分配金を支払う投信だ。初めて登場したのは1997年で主に利回りの高い外国債券で運用し、安定した分配金が退職世代の人気を集めた。11年には株式投信に占める比率が7割に迫った。現在の純資産残高は約35兆円になる。

 毎月分配型の投信を約500万円保有する埼玉県在住の山内智子(82)さんは「年金はわずかなので月々の生活費の足しにしている」と話す。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「老後世代では毎月の安定した分配金に安心感を覚える投資家が多い」と語る。

 毎月分配型への資金流入は昨年後半、急速に細り始めた。世界で株式相場が下落し金利低下も進んだ。日銀のマイナス金利政策も運用悪化に拍車をかけた。次第に運用収益だけでは安定した分配金を賄いきれなくなる。

 投信の分配金は「普通分配金」と「特別分配金」に分けられる。この特別分配金が元本払戻金だ。ある外資系運用会社の首脳は「元本を取り崩してでも安定収入を求める顧客は少なくない」と説明するが、元本を払い出せば投信の価値が目減りし基準価格が下落する。

 運用業界は高分配からの脱却を探る。三井住友アセットマネジメントは元本を大幅に減らさないような分配金の基本方針を決めた。みずほ投信投資顧問も運用利回りが悪化した場合は「分配金引き下げの要因となるケースがある」としている。

 金融庁の幹部は「若年層の資産形成に適した投信が主軸になってほしい」と話す。証券各社は顧客から運用を一任してもらう「ラップ口座」を長期運用の柱に位置づけ営業に懸命だ。株価指数などに連動し手数料が安い上場投資信託(ETF)に期待する声もある。

 世界的な低金利時代に入り運用環境は様変わりした。もはや安定した高分配の維持は困難だ。証券会社や運用会社は過去の成功体験にとらわれず新たな商品を普及させる必要に迫られている。

(川上穣、井川遼)



風速計 減価償却見直しに揺れるリース 2015/11/10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「風速計 減価償却見直しに揺れるリース」です。





 政府の法人税改革の議論がリース業界を揺らしている。政府は法人税率を早期に20%台に引き下げる方針だが、この減税による減収を穴埋めするために減価償却制度の見直しが浮上してきたからだ。リース業界は航空機や船舶の取得で減価償却費を計上する節税策をよく使っているが、この手法に黄信号がともりつつある。

 「困ったことになった」。10月2日、東京都内のオフィスビルの一室で大手リース会社の担当者が対策会議を開いた。経済産業省などから減価償却制度が見直されそうだと内々に説明を受けたことが主な議題だった。業界内には投資直後の費用計上を膨らませて税額を圧縮する「定率法」が廃止されるかもしれないとの危機感が高まっている。

 リースには業界大手が顧客のために航空機や船舶を所有するケースや、中小企業が分割所有するような形態もある。このような節税手法を活用する企業の裾野は広く、全国で1万社ともされる。節税規模は総額2千億~3千億円との見方がある。これができなくなれば税負担が重くなり、リース需要も減りかねない。

 経団連や経産省は法人減税を優先するが、借り手の航空会社や海運会社も含めて産業界には定率法の廃止に反対論も根強い。今年末の与党の税制改正論議では結論が出ないとの見方が出てきているが、来年以降も廃止の議論はくすぶり続ける。リース業界は戦々恐々としている。