Disruption 断絶を超えて(1) 「当たり前」もうない 逆境を成 長の起点に 2017/1/1 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「Disruption 断絶を超えて(1) 「当たり前」もうない 逆境を成長の起点に」です。





 当たり前と考えていた常識が崩れ去る。速まる一方の技術の進歩やグローバリゼーションの奔流が、過去の経験則を猛スピードで書き換えているからだ。昨日までの延長線上にない「断絶(Disruption)」の時代が私たちに迫っている。

 にゅるっ。にゅるっ。歯磨き粉に見えるペーストを押し出すと、石のように固くなっていく。形は自由自在だ。

主力の自動車エンジン用プラグ(左)から医療用の人工骨の開発に力を入れる(愛知県小牧市の日本特殊陶業)

 骨の代わりに使える医療用の人工骨。育ての親の一人、日本特殊陶業インプラント技術課の浜口泰治さんは全国の病院を飛び回り、時には医師らと手術室に入る。

 10時間近く立ちっぱなしのこともあるが、疲れはない。「今年は米国市場を開拓する。会社の新しい柱に育てたい」

 日特は車のエンジンに不可欠な点火プラグで世界市場の4割を握る。得意のセラミック技術を使い、畑違いの分野に入る。

 「今、動かないと間に合わない」。尾堂真一社長の背中を押したのは、大口取引先のトヨタ自動車が1年あまり前に打ち出した「脱・ガソリン車」宣言だった。

 2050年までにエンジンだけで走る車をほぼゼロにする――。電気自動車(EV)など次世代エコカーが増えれば、点火プラグ市場は消える。

 そのトヨタも危機感を募らせる。昨秋、豊田章男社長は取引先を集めた事業説明会で自らに言い聞かせるようにつぶやいた。「創業から80年。自動車産業は転機を迎えた。人工知能(AI)やロボティクスなどの変化を拒んではならない」

 デジタル革命でベンチャー企業も簡単に車をつくれる。すべてのモノがネットにつながるIoT、自動運転などの最新技術は製造現場のカイゼンだけでは太刀打ちできない。瞬時に過去の成功体験を時代遅れにする断絶の波が押し寄せる。

千歳、帯広間を結ぶ「とかちミルキーライナー」は、走行中のバスの現在地をスマホで確認できる(新千歳空港)

 パナソニックは今年4月1日、「AV」の看板を下ろす。テレビなどの事業は続けるが、かつての花形の2文字を名前に使う社内組織はなくなる。2年で1兆5000億円を超す最終赤字を出したのは5年ほど前。最悪期は脱しても、津賀一宏社長には緊張感が漂う。

 「まだまだ様々な手を打たないといけない」

 AVの冠を外した部隊はAI技術のチームと協力し、無人レジ「レジロボ」など一歩先の新ビジネスに挑む。

 断絶がもたらす逆境でこそ、知恵が浮かぶ。実現への技術も進化する。

 鉄道の廃線が相次ぐ北海道。道民の足として期待されるバス事業を手掛ける北都交通(札幌市)の渡辺克仁社長は「新しい公共交通のあり方をつくる」と真顔で言う。

 バスは雪などで運行が乱れやすい。つらい冬のバス待ちを減らせないか。そんな思いから、バスがどこを走っているかをスマートフォンで知らせる新サービスを始めた。

 今冬に向けてスタートできたのは、創業2年目のIT(情報技術)ベンチャー、ソラコム(東京・世田谷)の格安IoTのおかげだ。通信インフラを効率よく使うため、利用企業のコストは1日10円から。IT大手には脅威になりうるが、採用企業は4000を超す。

 古い秩序や前例を壊す断絶の力。湧き出すエネルギーを味方にして進もう。そのときは今だ。

 断絶を示す「Disruption」という英単語の由来は、粉々に砕くことを意味するラテン語にある。

 盤石に思えた事業やサービスが突然、陳腐になる。デジタルカメラの登場で消えた写真フィルム、ネット通販に押される街の本屋さん……。今までもあった断絶は、これから身の回りのあちこちで起きるようになる。

 AIなどの「第4次産業革命」が迫り、人口減の衝撃も様々な局面で断絶を生む。私たちはそんな時代に生きている。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です