Disruption 断絶を超えて (下) 10兆円VS10兆円 競い合うIT経済圏 2017/6/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「Disruption 断絶を超えて (下) 10兆円VS10兆円 競い合うIT経済圏 」です。





 サウジアラビアの首都リヤド。5月20日、ドナルド・トランプ米大統領(71)とサルマン・サウジ国王(81)が座る王宮の大広間に、ソフトバンクグループの孫正義社長(59)が呼び出された。

孫社長(写真右)とスティーブンソンCEO(同左、ロイター)は大型買収に挑み続ける

 サウジと発足させた10兆円ファンド。オイルマネーを介して米国のIT(情報技術)ベンチャーに投資する「政商」として、微妙な関係にある米国とサウジを取り持った。「小さな構えの安全運転じゃ、最前線から取り残される」。孫社長は巨額ファンドをソフトバンクの連結子会社に取り込み、退路を断った。

 前期、ソフトバンクは国内ではトヨタ自動車に次いで純利益で1兆円を稼ぎ出した。しかし、今や世界を支配するのは個人や企業のデータを吸い上げ、情報の流れを支配するプラットフォーマーだ。個人の商取引にとどまらず、車や金融、医療などあらゆる分野に入り込み、各業界をゆさぶる「断絶」。この数年で世界の時価総額は米アップルやグーグル、アマゾン・ドット・コムらが上位を独占した。

 孫氏は通信分野で買収を重ねIT業界の覇者を目指したが、顧客データを一手に握り様々な業界で支配力を高めるプラットフォーマーが形成する「経済圏」の伸長は無視できなくなった。スマートフォン(スマホ)用半導体設計で9割のシェアを握る英アームや米通信衛星のワンウェブ、自動運転車用半導体でトップの米エヌビディア……。相次ぐ出資で狙うのは次世代プラットフォーマーの「先買い」だ。

 サウジとの巨額ファンドには盟友の米オラクル創業者ラリー・エリソン氏(72)や同氏の自宅で知り合ったスティーブ・ジョブズ氏(故人)が創業したアップルも参加するなど、これまで培ってきた人脈も総動員する。相次ぐ巨額投資で借金は14兆円まで膨らんだが、新たな「経済圏」構築で対抗する。

 同じ通信業界に身を置くAT&Tのランドール・スティーブンソン最高経営責任者(CEO、57)は通信と放送の融合で対抗する。米衛星放送大手のディレクTVに次ぎ、10兆円をかけてニュースや映画などを手掛ける米タイムワーナーの買収を進める。

 企業買収を繰り返し米国の地方通信会社を全米トップにした「買収王」エドワード・ウィテカー氏(75)に仕え、「規模は競争力を意味する」という米通信業界の伝統を引き継いだ。タイムワーナーは3回目の大型買収への挑戦だ。

 トランプ大統領はこの買収に反対するが、「このまま死を待つわけにはいかない」と意に介さない。迫り来る第5世代通信(5G)時代のプラットフォーマーの盟主として君臨することを狙う。

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)の開発、それを後押しする5Gの普及で「世界で飛び交うデータ量は2020年までの10年で40倍になる」(米IDC調べ)。

 スマホ時代の勝者はアップルやグーグル、アマゾンだったが、次の10年も勝者でいられる保証はない。

 藤本秀文、工藤正晃、杉本貴司、佐竹実、川上尚志、諸富聡、稲井創一が担当しました。



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