Disruption 断絶を超えて(4) 石油の世紀の終わり 国境を越え る「新結合」 2017/1/5 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「Disruption 断絶を超えて(4) 石油の世紀の終わり 国境を越える「新結合」」です。





 船体は全長134メートル、前方にはヘリポート。いくつものプール、室内で岩登りを楽しめる崖までしつらえてあるという。夢の「メガヨット」の価格は5億ユーロ(約600億円)。購入客が分かると、中東ウオッチャーたちは騒然とした。

 客の名はサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子。31歳と若く王位継承の順位は2位だが、型破りな行動で世界に名をはせる。

ムハンマド副皇太子は孫氏と出会って6週間後にファンド設立で調印=ロイター

 2015年に国防相に就くや隣国イエメンの内戦で軍事介入に踏み切り、自ら国境近くの前線に赴いたこともある。経済の司令塔である経済・開発評議会議長も兼務し、時価総額2兆ドル(約230兆円)とされる国営石油、サウジアラムコの上場プランを進める。

 型破りの副皇太子とサウジを襲う断絶は、20世紀に生まれた「石油の時代」の終わりだ。北米発のシェール革命でサウジは石油市場の価格決定権を失った。石油需要そのものも次世代エコカーなどの普及で頭打ちになりかけている。

 「車種によっては売値が22%も下がった」。サウジの首都リヤドで、ある自動車ディーラーは天を仰ぐ。昨年9月に政府が公務員の手当を削減すると、個人消費が冷え込んだ。国民の暮らしはさえないが、副皇太子は改革の手を緩めない。

 世界有数の投資国に変わる。アジアと欧州、アフリカの物流の要になる。自らが描く国家経済計画「ビジョン2030」は大胆、そしてスピーディーだ。

 「2020年までに石油がなくてもやっていけるようにする」。副皇太子は豪語する。大胆な構想には「夢物語だ。どうせ、失敗する」という外野の声が付きまとうが、一向に気にしない。

ソフトバンクグループの孫正義社長

 「手を組めるかもしれませんね」。昨夏、東京・元赤坂の迎賓館でソフトバンクグループの孫正義社長を初めて知った。世界の投資家を驚かせた10兆円ファンド構想の始まりだった。

 誰もが想像できないスケールの「新結合」は出会いからわずか6週間で決まった。副皇太子のスケール感が型破りなら孫社長も「大ぼら」と呼ぶ高い目標を掲げ、大胆な判断をためらわない。

 携帯電話ビジネスはスマートフォンとともに成熟した。寡占を前提に謳歌した高収益時代は終わりが近い。断絶が迫る。

 「守りに入りかけている己を恥じ入る」。巨額買収を決める際、孫社長はツイッターでつぶやいたこともある。似た者同士の2人の発想力や決断は国籍の違いも業種の垣根も邪魔できない。

 「普通の会社にしていく」。昨年暮れ、筆頭株主である官民ファンド、産業革新機構の追加支援が決まったジャパンディスプレイ。本間充会長が記者会見で口にしたのは、つつましい再建目標だった。日立製作所と東芝、ソニーの液晶パネル事業を統合して発足したが、「日の丸」主導の再生の道は険しい。

 グローバルな競争に挑む難局は、古めかしい官民連携で乗りきれるだろうか。少なくとも、副皇太子や孫社長を「ほら吹き」と笑うだけでは済まされない。それが断絶の時代に流れる空気だ。



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