Disruption 断絶を超えて(5) なくなる「世界の工場」 渡り鳥 生産からの卒業 2017/1/6 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「Disruption 断絶を超えて(5) なくなる「世界の工場」 渡り鳥生産からの卒業」です。





 あるはずの縫い目のないセーターやワンピースが、淡路島を望む和歌山市内のニット工場で次々に編み込まれている。

手作業に代わってロボットが靴を生産するスピードファクトリー=アディダス提供

 ファーストリテイリングがニット編み機世界最大手の島精機製作所と共同で昨秋設けたイノベーションファクトリー。

 「世界最高の技術」。柳井正会長兼社長がほれ込む島精機と取り組むのは、これまで手つかずだった生産技術の革新だ。柳井氏は「(今自分たちが)変わらなければ産業がなくなる」という強い焦りを感じている。

 背景にあるのはファストリの成長を支えてきた低賃金の国に生産地を移す渡り鳥生産の断絶だ。

 米ボストンコンサルティンググループによると、2015年時点で中国の製造コストは人件費の高騰などで米国を100とすると95に達した。先行きの厳しさからファストリは昨秋、20年度に5兆円をめざす売り上げ目標を撤回した。島精機との協業には生産技術に磨きをかけることで商品価値を高め、人件費の増加を吸収する狙いがある。

 渡り鳥をやめ本国に戻ろうとする会社もある。

 スポーツ用品の世界大手、独アディダスが見据えるのは人件費に左右されない生産体制だ。

 ドイツ南部アンスバッハ。アディダスは本社近くに設けたスピードファクトリーで24年ぶりに靴の国内生産を再開する。

 人手頼みだった工程の見直しを可能にしたのは、産業用ロボットや、あらゆるモノがネットにつながるIoTをフル活用する第4次産業革命だ。

 「アジアから6週間かけて欧州に運んでいたのでは間に合わない」。新興国頼みの生産に異議を唱えたのは前社長のヘルベルト・ハイナー氏。「消費者ニーズは多様化し、流行の移り変わりも速まっている」と説得、体制刷新にカジを切った。

 アディダスがめざすのは、ロボットによる多品種少量生産だ。顧客が求める製品をいち早く提供。IoTで販売店と工場を直結し、店の在庫に応じて生産をきめ細かく調整し、ムダを極力なくす。米国でも近くロボット工場を稼働、日本でも新設する構想がある。

 賃金高騰で「世界の工場」の座を追われる中国勢は「時間を金で買う」戦略で猛追する。

 国際ロボット連盟によると、中国の産業用ロボットの販売台数は15年で6万7000台。世界需要の3割を占め、13年からは世界最大の市場だ。

 東芝詣で――。川崎市にある東芝の白物家電部門の本拠地には、昨年6月に同部門を買収した美的集団の幹部が日参する。「中国中心的な独自のやり方を見直す」。顧炎民副総裁は語る。美的は低コスト生産をバネに家電の世界大手にのし上がったが「量で成長できる時代は終わった」。

 美的は産業用ロボットの世界大手、独クーカの買収手続きも近く完了する。商品テコ入れと工場のロボット化の両面で手を打った。

 「世界の工場」が落日を迎えるなかで加速する第4次産業革命。断絶の先の勝者が誰になるかはまだはっきりしていない。



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