Financial Times中国が見る北朝鮮の価値 米軍を阻む「緩衝」 2017/4/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「[Financial Times]中国が見る北朝鮮の価値 米軍を阻む「緩衝」」です。





 「中国の善き息子と娘たちよ、一心団結せよ。米国にあらがい、朝鮮を守り、米帝の狼(おおかみ)どもを打ち破れ」。朝鮮戦争で米軍と戦った中国義勇軍の歌だ。最近はほとんど耳にしないが、北アジアでの今の中国の基本的な戦略志向にも通じるものがある。

7日、首脳会談を終えて握手するトランプ大統領(左)と習近平国家主席(パームビーチ)=ロイター

■トランプ氏発言で切迫感

 中国は今も「米国に抵抗し(北)朝鮮を守っている」が、経済面では状況が一変した。米中は相互依存を深め、2国間貿易は昨年、5000億ドル(約54兆6000億円)を超えた。中国共産党幹部の子弟を含め、米国の大学で学ぶ中国人留学生は数十万人にも上る。中国企業が昨年、米国企業の買収に使った金額は510億ドルと、その前の年の3倍に膨らんだ。

 では、なぜ中国は北朝鮮をかばうのか。北朝鮮は恐らくあと数年で米国本土に届く核兵器を開発するとみられ、近隣諸国の脅威となっている。中国は世界最大の経済大国より孤立した独裁国家との関係を優先して何の得になるのか。

 トランプ米大統領が今月初め、「もし中国が北朝鮮問題を解決しないなら、我々がする」と警告したことで、こうした疑問が切迫感を帯びてきた。トランプ氏は朝鮮半島近海への空母の派遣を命じた。マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)も、北朝鮮が新たな核実験をしたら、米国は「他の行動」に出ると示唆した。

 米国の狙いは北朝鮮に核開発をやめさせることだ。だが、中国には大きな葛藤をもたらす。中朝の同盟関係は、中国は世界で地歩を築くために建国来、欧米と戦ってきたとの主張に根差す。両国は共通の利害を持つ。気まぐれな金正恩(キム・ジョンウン)委員長率いる核武装した北朝鮮が、中国にはどれほど受け入れがたくても、体制が崩壊し、朝鮮半島全体が米国の安全保障の傘の下に入るよりはましだと考えているのだ。

■揺るがない中朝関係

 米戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャー氏は「米国の軍事同盟国に囲まれているこの地域では、中国は戦略的安定が必要で、それは北朝鮮が国境をはさんで存在することで保たれている」と言う。同氏はトランプ氏がこの状況を何としても変えようとしているが「中朝関係は危機が起きない限り揺らがない」と見る。

 中国が北朝鮮経済に壊滅的な打撃を与えられるのは間違いない。貿易や石油供給を止め、インターネットを遮断し、金融や観光などのつながりを絶てばいいからだ。

 米国にとって不都合な真実は、米国が中国の最大の戦略的ライバルであり続ける限り、北朝鮮がいかに目に余る行動をとっても、中国は大目に見ようとすることだ。

 南シナ海などで米中対立が激化する中、中国が米国の歓心を買うため北朝鮮を見限る可能性があるという考えは、希望的観測でしかない。緊張緩和のために中国が北朝鮮に多少圧力をかけることはあり得るが、アナリストらはその程度では正恩氏に核開発をやめさせることはできないと考えている。

 中国の優先事項は、米軍が北朝鮮との国境を流れる鴨緑江沿いまで迫り来る事態を防ぐため、北朝鮮を生かし続けることなのだ。

 「北朝鮮の南側国境のすぐ向こうには3万5000人の米軍兵士がいる」。北朝鮮問題の専門家ポール・フレンチ氏はこう話す。「正恩氏の奇異な行動や残忍な性向ばかりが話題に上るが、重要なのは北朝鮮が依然、中国にとっては緩衝国家ということだ」

by James Kynge

(2017年4月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

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