Financial Times 中国、米に対し幸運続かずワシントン・コメンテーター エドワード・ルース 2018/1/8 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「Financial Times 中国、米に対し幸運続かずワシントン・コメンテーターエドワード・ルース」です。





 トランプ米大統領にはごますりが効く。ただ、効果は持続しない。2017年、並み居るライバルを抑え、トランプ氏に最も効果的におべっかを使ったのは中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席だった。北京の人民大会堂でトランプ氏のために豪華な公式夕食会を催しただけで、同氏の頭から対中貿易不均衡や中国の人権の問題をすっかり吹き飛ばしてしまった。

 問題は、習氏が絶えずトランプ氏の機嫌をとらなければならないことだ。同氏にこびを売り続けると自尊心が傷つき、我慢できなくなる。トランプ氏へのへつらいも「収穫逓減の法則」で続けても効果は減っていき、18年は恐らくマイナスになるだろう。

 自意識が強いといえば、習氏も同じだ。中国はトランプ政権誕生後の数カ月間、責任ある行動を取れる国だとの期待を裏切らなかった。だがこれ以上の自制はなさそうだ。習氏は17年10月の中国共産党大会で、積極的に対外政策を推し進めると表明した。習氏はあらゆる肩書を手に入れ、自身の思想を党規約に盛り込んだ。個人崇拝も復活している。いまや米中関係は、途方もなく肥大した自我を持つこの2人に託されている。

 これは18年にとっては良くないことだ。しかも大きな暗雲も2つ垂れ込めている。一つは冷戦以来初めて米国にライバルが出現したことだ。習氏率いる中国は、世代交代する前に世界一の大国になるという目標を掲げる。旧ソ連と異なり、中国は米国と技術的に張り合っていける。アジア太平洋地域での米国の優位はもはや盤石ではない。もう一つは、米大統領は1時間先のことしか考えないが、中国の指導者は10年単位で物事をとらえることだ。望遠鏡を持つ習氏と鏡を見つめるだけのトランプ氏のどちらが優位かは明らかだ。

 世界は米国と北朝鮮の核をめぐる対立にばかり注目し、米中関係がどのようになるかについてはほとんど気にしていない。

 トランプ氏はいまだに中国が米国のために北朝鮮を非核化してくれると信じている。一方、同氏は対中貿易で保護主義的な措置も取りたがっている。米国は中国を筆頭に諸外国の食い物にされていると思い込んでいるからだ。「(中国が)北朝鮮問題で助けてくれないなら、前からやると言っていることをやるだけだ」と同氏は17年末、米紙に語った。今年、米国は中国に貿易で対抗措置をとり、中国政府は米国を世界貿易機関(WTO)に提訴する可能性が高い。

 米中関係悪化の影響は朝鮮半島を越え、はるか遠くまで広がる。中国は17年、アフリカのジブチに初の国外軍事拠点を設け、空母も初めて地中海に派遣した。南シナ海の軍事拠点化も加速している。

 トランプ氏と習氏のにらみ合いではどちらが先に引き下がるか。それは知る由もないが、中国は自信過剰になっているようだ。イラク戦争から米大統領選まで中国に有利なことが次々起きた。民主的に選出された指導者に、トランプ氏が侮蔑的な態度をとっていることも中国には好都合だ。とはいえ、幸運が長続きするはずはない。習氏は米フロリダ州のトランプ氏の別荘に招かれ、共に夕食を取っているさなかに、トランプ氏がシリア空爆を命じたことを肝に銘じるべきだ。中国では多くの人がトランプ氏を張り子の虎だと考えている。そうだとしても、実際に試すのは軽率といえる。

(4日付)



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