Financial Times 英EU完全離脱の衝撃 経済的コスト、膨大 米との接近優先か 2017/1/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のFINANTIAL TIMES面にある「Financial Times 英EU完全離脱の衝撃 経済的コスト、膨大 米との接近優先か」です。





 英国の首相は往々にして、任期終盤になると外部の声に耳を貸さなくなる。あたかも自身を神であるかのように思い、献身的な側近を重用して、率直に意見する助言者らを排除する。時間の経過とともに、ダウニング街10番地(英首相官邸)の外に広がる世界への視野が狭まっていくのだ。

■第2次大戦以降最大の変革の時

 前任者たちは任期が終わりに近づくと周囲に耳を傾けなくなったが、メイ氏は首相就任時からそうだった。首相になって半年も経たないうちから、幹部クラスの官僚を全く信用しなくなったため、彼らは意思決定から締め出されている。誰かがメイ氏に率直な助言をすると、メイ氏の側近らがヒステリックに近い反応を示す。どんな政府でもこれは賢明な政権運営ではない。ましてや英国が第2次大戦以来、政治的にも経済的にも最大の変革を成し遂げなければならない責任を負っていることを考えればあってはならないことだ。

メイ首相は17日、EU単一市場から完全撤退する方針を表明した=ロイター

 メイ氏は17日の演説で、英国は欧州連合(EU)の単一市場からも、関税同盟からも撤退する「完全離脱」という計画を発表した。EUとは決別するわけだ。英国がEUからの移民の流入を抑制し、EU司法裁判所のくびきから逃れたいのであれば「半分入っていて、半分出ている」という選択肢などないと述べた。

■米新政権への疑問、まかりならぬ空気

 首相はEU離脱に関し、以前は何かを手に入れれば何かを失うトレードオフという概念を一蹴していた。メイ氏は英国のための特別な協定を取り付け、ジョンソン英外相の現金な言葉を借りれば英国はいいとこ取りをするはずだった。だが4日にブリュッセルに常駐する英国のロジャーズ駐EU大使が、業を煮やして辞任した。メイ氏がやっと、ポーランドの配管工や農園で果物を摘むハンガリーの作業員といった欧州系移民を締め出すという非情な論理を受け入れたのは1月中旬を過ぎてからだ。ロジャーズ氏が当初から正しかったということのようだ。

 首相は演説で、英国がEUを離脱しても欧州とは強い絆を維持するといつもの形式的な確約をし、今や英国は新しい膨大なチャンスに恵まれ、「グローバル・ブリテン」と命名し直すべきだといった非現実的なたわ言を掲げた。だがメイ首相が提案したEUとの決別がいかに大きな経済的、地政学的コストを伴うか疑う余地はない。

 英国は、世界最大の市場に何の制約も受けずにモノやサービスを売りたい外国企業の拠点ではなくなる。企業は英国の輸出の4割以上を占めるEU27カ国向けの貿易で新たな障壁に直面する。数十にも上る第三国との貿易協定もご破算となる。経済的関係が弱まれば、政治的関係も衰退していく。英国の首相は今後、自国が欧州の一部であるのに、そこでの協議に参加しなくなる。

 それでもメイ首相が今回の方針を出したのは、トランプ米新大統領に接近したいがためなのかもしれない。米大統領選前、メイ氏はトランプ氏を危険な俗物と見なす英議会エスタブリッシュメント(支配階級)と意見を共有していた。だが今や首相官邸からは、米新政権に対する英国の称賛に疑問を投げかけるような言動は一切まかりならないというお達しが出たわけだ。トランプ氏の求めを受け、ジョンソン外相は欧州各国のイスラエルへの批判を封じるのに忙しい。エリザベス女王は今後、トランプ“ご一行様”の訪問に向けバッキンガム宮殿の準備をせざるを得ないだろう。



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