FT中国、狙うは西側の覇権 一帯一路、米国孤立は好機 2017/7/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「[FT]中国、狙うは西側の覇権 一帯一路、米国孤立は好機」です。





 今年もっと大きく報じられてよかったはずのニュースの一つが、中国と英国を結ぶ鉄道貨物輸送の新ルートの開通だ。

 1月1日に、1両の機関車がけん引する貨物列車が、中国製の工業製品を満載して浙江省義烏を出発した。列車はそれから18日かけて7カ国を通過し、約1万2000キロ離れたロンドン東端の貨物駅に到着した。

 昔のシルクロードをよみがえらせたようなこの最新ルートが経済的に成功するかどうかはまだ分からない。だが、肝心なのは経済的側面ではない。一番列車が何にも増して告げたのは、中国政府がこの鉄道に込めた地政学的狙いだ。

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イラスト Ingram Pinn/Financial Times

 最終地点にたどり着くまでには何回も列車を乗り換える必要があった。国によって線路の幅が異なるため、様々な箇所で貨物を入れたコンテナを積み替える必要が生じるからだ。最後の英仏海峡トンネルを通過する路線でもそうだった。

■特別な意味持つロンドンルート

 この列車がどんな頻度で運行されるかは不明だが、運行を手がける当局によると、海上輸送よりかなり速く、空輸より格段に低料金で貨物を運べるという。当面は月1便が目標のようだ。

 独ハンブルクやスペインのマドリードなど、欧州大陸のいくつかの都市を終着点とする中国からの同様のルートは少し前から開通していた。しかし、ロンドンは特別な意味を持つ。

 かつてのシルクロードにならい、アジアからロシア、ベラルーシ、ポーランドと抜けて西欧に至るこのルートが、今日の貿易パターンに決定的な影響を及ぼすとは考えにくい。重要なのは心理面に与える影響だ。鉄道によるネットワークが構築されたことで、アジアと欧州の心理的な距離感が縮まるからだ。

 そこには中国の習近平国家主席が描く壮大な計画がある。欧州大陸とアジア大陸の境界を取り除き、豊かな欧州各国と中国の距離感を縮めたい考えだ。

■「太平洋の世紀」、中国の台頭象徴

 外交政策の世界では、20世紀を端的に「大西洋の世紀」と呼ぶ。そう考えると、21世紀は「太平洋の世紀」と呼ぶことになる。20世紀は、大西洋の両沿岸部に位置する欧州と米国に富と権力が集中した。だが繁栄と権力は東へ、南へと次第に移動していった。「太平洋の世紀」という言葉は、中国の台頭を象徴するが、中国の興隆は太平洋の世紀という言葉だけでは説明しきれない。

 確かに中国は南シナ海の島々を自国領だと主張し、そこに人民解放軍の基地を建設して、西太平洋へと海上の覇権を拡大しようとしている。その結果、この海域で米国と衝突する可能性は十分ある。しかし、こうした緊張の高まりだけをみても、中国政府の野望を十分に理解することはできない。中国は東方に関心を向けているというより、西への関心を深めている。

 習氏の壮大な計画は「一帯一路」構想に集約できる。昔のグローバル化時代を支えた陸路、海路を復活させるという構想だ。中国は、世界の覇権を握るには巨大なユーラシア大陸を押さえることが重要だと考えている。そうした中、ユーラシア大陸でどの国が中心的な役割を果たすだろうかと言えば、言うまでもないだろう。

■世界の陸地の3分の1、人口の7割

 米カーター政権で国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務め、今年5月に死去したズビグニュー・ブレジンスキー氏は、ワシントンで最も頭の切れる戦略家だった。彼は1997年時点で既にユーラシア大陸の重要性を理解し、「(世界の)軸となる超大陸」と呼んでいた。「ユーラシアを支配する強国は、世界で最も経済生産性の高い3つの地域のうち2つ(西欧と東アジア)に対し、決定的な影響力を握ることになる。ユーラシア大陸で勢力図に大きな変化が生じたら、それは世界における米国の優位性と今後、世界に及ぼす米国の影響力に大きな打撃をもたらすことになるだろう」と指摘した。



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