パンゲアの扉 つながる世界 覆る常識(2)独占崩す革新 の波 知の力、「小」が「大」を制す 2018/4/24 本日の日本経済 新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「パンゲアの扉 つながる世界 覆る常識(2)独占崩す革新の波 知の力、「小」が「大」を制す」です。





 1月21日、ニュージーランド北島のマヒア半島で宇宙ロケットの打ち上げに成功し、搭載していた人工衛星が軌道に乗った。打ち上げたのは同国に拠点を持つロケットラボというスタートアップ企業だ。人口476万人の小国ながら、ニュージーランドは人工衛星を打ち上げる能力を持つ国家群「宇宙クラブ」への仲間入りを果たした。

ロケットラボは小型宇宙ロケット打ち上げに成功した=同社提供

コスト100分の1

 ロケットラボは創業者のピーター・ベック氏が2006年に出身であるニュージーランドで設立したのが始まり。米航空宇宙局(NASA)との契約や資金調達に有利であるなどの理由で、本社は米国に移している。それでもロケットの製造や打ち上げ拠点は現在もニュージーランドにある。

 1957年に当時のソ連が人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功した後、米国が人類をはじめて月面着陸させた。宇宙クラブに名を連ねる限られた国が技術や資金を結集し、国の威信をかけて競う舞台が宇宙だった。しかし、最近ではルワンダが人工衛星の実用化を視野に入れるなど小国が躍進する。

 カギを握るのは技術革新だ。ロケットラボはエンジンの燃焼室や燃料噴射装置の作製に3Dプリンターを活用。チタンなどの硬い金属でも複雑な形状を低コストで作ることを可能にした。新技術の活用と分業を世界規模に広げることで資本集約というものづくりの「かせ」を解き放ち、人工衛星では製造コストを最大100分の1に下げた。

 「半導体などの部品やソフトの性能は上がり、コストも安い。新技術を活用する『知』さえあれば、宇宙産業に参入するハードルは低くなった」と東大航空宇宙工学専攻の中須賀真一教授は話す。

 日本の倍となる官民合わせ年間50兆円もの研究開発投資を続ける米国と、猛進する中国。21世紀の経済の覇権を競う両国が人工知能(AI)や生命工学などでも多額の資金を注いでしのぎを削る。だが、一握りの大国が世界をリードする時代は過去のものになるかもしれない。

創薬でも変化

 開発に10年、1千億円以上の費用がかかり、巨大メーカーしか取り組めないといわれた創薬でも変化が起きている。ALS(筋萎縮性側索硬化症)は平均余命5年以内の難病で治療法を見つけるのは特に難しいとされる。それに挑戦したのが13年設立のスタートアップで社員数約150人の英ベネボレントAIだ。

 ALSの専門知識がないIT(情報技術)技術者たちがAIを使い、脳内の血流や化合物の効果などを機械学習しながら予測した。すると1週間後に可能性のある5つの治療法を見つけ出すことに成功した。

 20世紀はヒト、モノ、カネを集約し、規模がものをいった経済だった。自動車産業などがその代表例だ。だが、21世紀はITを活用した分散型の経済が発達したことで、「巨大企業の存在感は低下し、個人や小規模の事業体の役割が増すだろう」と文明評論家のジェレミー・リフキン氏はいう。

 重要なのは機動力で規模はかえって邪魔になる。知の力で「小」が「大」を制す時代が始まった。



こころの健康学 レッテルに縛られないで 2018/4/23 本日 の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のこころ面にある「こころの健康学 レッテルに縛られないで」です。





 先日インターネットを見ていたら、最近の新入社員の驚いた行動という特集が載っていた。どれも「ある、ある」で興味深く読んだが、新年度が始まると、会社でも学校でも新人の言動に関心が向く。

イラスト・大塚 いちお

 だいたいは「昔と違って今の若者は……」という論調になりがちだが、意外と同じようなことが言われ続けているように思う。私たちが若いときは大人になりきれない若者が増えた「モラトリアム人間の時代」などの表現が流行した。

 その後も「シラケ」や「オタク」などの言葉が使われたが、全体の流れとしては、若者が組織や社会に積極的に参加しなくなっていると考える年配の人が多いと思う。そういわれた若者が年を取ると、また同じような感想を若者に持つようになる。

 これが時代によって変化している若者像なのか、年齢によって変わる若者への見方なのか、私にはよくわからない。ただ、私たちはレッテルを貼ることが好きなようだ。私たち精神科医の世界でも「新型うつ病」という言葉が一時よく使われた。「うつ病」という診断名を盾にして仕事を休んで旅行に行くなど、自分勝手な生き方をしている人を指す表現で、そうした若者が増えているといわれた。

 もっとも職場のメンタルヘルスに長く携わる私には、そうした人は昔からいて、うつ病の治療は治療としてきちんと行い、労務管理は労務管理としてきちんと行えばよいことのように思えた。人にはそれぞれ個性がある。レッテルにあまり縛られないで、一人ひとりの個性を理解して接することが大事だ。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



FT トランプ氏が求める忠誠ワシントン・コメンテーターエドワード・ル ース 2018/4/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「FT トランプ氏が求める忠誠ワシントン・コメンテーターエドワード・ルース」です。





 トランプ米大統領いわく、米国は危機にひんしているらしい。「これは我が国への攻撃だ」と同氏は批判した。矛先を向けたのはシリアのアサド大統領が化学兵器を使ったとされることでもなく、ロシアによる元情報機関員の暗殺未遂事件でもない。米連邦捜査局(FBI)が9日、トランプ氏の個人弁護士マイケル・コーエン氏の事務所を捜索したことだ。

 コーエン氏は自ら認める通り、トランプ氏のためなら「ほぼ何でもやる」人間だ。大統領の不倫相手とされる元ポルノ女優に口止め料も払えば、ロシアや東欧でトランプ氏の事業の仲介役も務める。

 トランプ氏がここまで気をもんでいるのも無理はない。側近らが相次ぎ取り調べの対象となり、コーエン氏も今回、リスト入りした。フリン元大統領補佐官らと同様、コーエン氏も司法取引に応じる可能性が十分ある。

 追い詰められる度、トランプ氏は誰かをクビにする。目下の標的はコーエン氏の事務所の強制捜査を許可したローゼンスタイン司法副長官だ。同氏はモラー氏を特別検察官に任命もした。モラー氏を解任するには、まずローゼンスタイン氏を更迭すればいい。トランプ氏は過去に2度、モラー氏の解任を狙ったが断念した。もっとも、いずれ思い通りにするだろう。

 米国への攻撃の話に戻ると、危機はトランプ氏自身がもたらしている。同氏に解任されたコミー前FBI長官は、最近刊行された回顧録で、大統領が重視するマフィア的価値観について触れている。1980年代、自ら起訴したニューヨークのマフィアの家族を思い起こし、コミー氏はこう記した。「沈黙する同意の輪。ボスの完全なる支配」「忠誠心に関する規範に従い、全てに嘘をつくこと」

 この規範こそ、いまだにトランプ政権の幹部ポストが埋まらない理由だ。候補となり得る人はたいてい、大統領選挙などで「ネバー・トランプ(トランプ氏だけは絶対ダメ)」の立場をとってきた。トランプ氏の世界では、背信こそが許されざる罪だ。そのため、政権を去る幹部が後を絶たない。

 トランプ氏は共和党員の大半をこの規範で縛りつけている。同党の上層部は、もはや大統領を批判しようとしない。忠誠心か本心かの選択を迫られると、上層部は何があっても忠誠心を選んできた。ライアン下院議長は11日、11月の中間選挙に出馬しないと表明した。再選を目指さないなら、ライアン氏はトランプ氏の責任を問うこともできるはずだ。だが、多くの人は期待を裏切られるだろう。トランプ氏と関われば誰でもそうするように、ライアン氏は自分の倫理基準を下げてしまったからだ。

 トランプ氏周辺には今後、さらなる大きな試練が待ち受けている。大統領選中に民主党陣営のメールがハッキングされた疑惑に関し、モラー氏はまだ捜査を始めていない。トランプ氏の娘婿、クシュナー上級顧問の利益相反の疑惑や、トランプ陣営が内部告発サイト「ウィキリークス」と協力関係にあったという疑いについても手を付けていない。どれも深刻な事態に発展する可能性がある。

 モラー氏は人一倍厳格な人物だ。コミー氏によると、モラー氏は数年前に膝を手術した際、麻酔を断り、革ベルトをかんで痛みをこらえたという。米国がこの先の困難に立ち向かうには、そうした気概がもっと必要だ。

(19日付)



月曜経済観測 米中摩擦、中国経済への影響少ない 張燕生 ・中国国際交流センター首席研究員 2018/4/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「月曜経済観測 米中摩擦、中国経済への影響少ない 張燕生・中国国際交流センター首席研究員」です。





 米中の貿易摩擦が激しさを増している。中国経済は無傷でいられるのか。中国のマクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会で、長年にわたって政策立案にかかわってきた中国国際経済交流センターの張燕生首席研究員に聞いた。

中国国際経済交流センター首席研究員の張燕生氏

 ――米国との貿易摩擦が激しくなっています。

 「理由は簡単だ。世界に占める米国の国内総生産(GDP)は1990年の26%から、2001年には32%まで上昇した。ところが米同時テロが起き、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した01年を境に低下する。16年には24%台まで落ち込んだ」

 「中国のGDPは10年に日本を抜き、世界2位になった。世界1位と2位の経済大国が差をどんどん縮めているとき、貿易摩擦が起こるのは必然だ。中国は米国と摩擦なしでやっていけるという幻想は抱かず、しっかりと対応する準備をするしかない」

■成長目標は維持

 ――貿易摩擦は中国経済を下押ししませんか。

 「中国のGDP成長に対する輸出の貢献度は2015年、16年と2年続けてマイナスだった。このとき、輸出の不振が中国経済を下押ししたのは確かだ」

 「しかし、17年に輸出の貢献度はかなりのプラスになった。18年は仮に米国との貿易摩擦が激しくなっても17年を少し下回る程度とみている。15~16年のような状況は想定していない。18年のGDP成長率は17年の6.9%に届かないにしても、政府目標である『6.5%前後』の達成は問題ない」

 ――中国経済の内需主導への転換で貿易摩擦の影響は小さくなりますか。

 「習近平(シー・ジンピン)国家主席は昨年10月の共産党大会で、中国経済がすでに質の高い発展の段階に入ったと宣言した。よりよい生活をしたいという人民の要求を満たすのが最終目標の経済だ」

 「こうした経済はもはや輸出主導でなく、内需主導といっていい。中国は国内の消費を拡大し、世界から輸入を増やす。これに加えて巨大経済圏構想『一帯一路』に伴う発展途上国の需要を取り込めば、発展を維持できる」

 ――中国の消費の状況をどうみていますか。

 「すでにGDP成長への貢献度でみると輸出、投資、消費のうち3分の2は消費だ。単に増えているだけでなく、個性を求め、生活の質と流行を追求する多様な消費が勢いづいている。こうした消費が中国経済の構造転換を促す原動力だ。消費の裾野は農村部や中低所得層にも広がっている」

■新段階に突入

 ――投資はもう中国経済の主力ではないですか。

 「過去の投資は製造業、不動産、インフラが中心だった。これからは変わる。外国企業、民営企業、技術革新、環境と民生が投資の主役になり、中国の内側からの発展力を高める。改革開放が始まって40年になる今年、中国経済は新たな段階に入る」

 ――中国の潜在成長率はどのくらいですか。

 「6.5~7%とみている。政府の今年の成長率目標である『6.5%前後』はちょうどいい。インフレは起きないし、行きすぎた雇用や失業の心配もない」

(聞き手は中国総局長 高橋哲史)

 張燕生(ジャン・イエンション) 国家発展改革委員会で対外経済研究所長を務めた。63歳。



迫真 勃発貿易戦争(1)「ディール」世界を翻弄 2018/4/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 勃発貿易戦争(1)「ディール」世界を翻弄」です。





 「中国は開放の門をさらに大きく開く」

トランプ米大統領は同盟国・日本に対しても容赦なく米国第一の交渉姿勢を鮮明にする=ロイター

 4月10日、中国・国家主席の習近平(シー・ジンピン、64)は同国最南端のリゾート地、海南省博鰲(ボーアオ)で、外資規制の緩和など市場開放策を表明してみせた。米政権が500億ドルもの中国製品に追加関税を課す制裁案を公表したのが3月下旬。習が公の場で発言するのはそれ以降で初めてだった。米大統領のドナルド・トランプ(71)はすぐさまツイッターで「習氏の温かい言葉に感謝する」と応じ、世界の金融市場には緊張緩和の期待が広がった。

□   □

 だが、水面下の交渉は全く様相が違う。「米側は中国製造2025の計画停止まで求めてきた。ハイテクを独占するつもりか。絶対に受け入れない」。中国商務省の交渉関係者は激しく憤る。

 「中国製造2025」は、習政権がロボットや航空機分野などに資金を集中投下して、製造業を高度化する政策だ。米政権で通商政策を担当するピーター・ナバロ(68)は「中国は知的財産権の侵害で、人工知能(AI)や自動運転など未来の産業の支配をもくろんでいる」と目の敵にする。

 ナバロは大学教授だった12年に「中国がもたらす死」と題する過激な自作映画を発表。感銘を受けたトランプが16年の大統領選で協力を求め、「中国製品に45%の関税を課す」といった過激公約につながった。今の対中強硬策は、11月の中間選挙をにらんだ公約実現という側面も持つ。

 トランプは3月8日、非難の声を無視して、鉄鋼・アルミニウムの関税引き上げによる輸入制限措置に署名。世界を巻き込む貿易戦争の火蓋が切られた。波紋はすぐさま世界に広がった。

 「鉄鋼に輸出自主規制を敷いてほしい」。米商務長官のウィルバー・ロス(80)は12日、ブラジル外相、アロイジオ・ヌネス(73)にこう告げた。ブラジルは今回の関税から一時的に適用除外されている。一方的に関税を引き上げ、それを武器に相手を脅しあげ、輸出の自主規制をのませる――。米通商代表部(USTR)代表のロバート・ライトハイザー(70)が1980年代の日米貿易摩擦時で用いた手法だ。

 80年代との違いは関税引き上げも輸出自主規制の要求も世界貿易機関(WTO)ルールを逸脱した禁じ手であることだ。だが、現実にはトランプ流「ディール(取引)」に各国が屈しつつある。

□   □

 韓国は米国との自由貿易協定(FTA)再交渉を3カ月で妥結する代わりに鉄鋼輸出を直近3年の7割に抑える数量規制をのんだ。ホワイトハウス高官は「歴史的勝利」と歓喜したが、韓国の通商交渉本部長、金鉉宗(58)は「早期に交渉を終わらせる戦略だった」と苦渋の選択を振り返る。

 北朝鮮情勢が緊迫するなか、米国は駐留米軍撤退というカードをちらつかせる。安保をもテーブルに乗せるのをいとわないトランプ流交渉術。日本や、ロシアとの緊張関係を抱える欧州も、是々非々では応じきれず、ディールの世界に絡め取られていく。表向きはWTO違反を手厳しく批判する欧州連合(EU)も、水面下では「追加関税から恒久的に除外するなら、新たな貿易交渉の準備をしてもいい」と米側に持ちかけている。

 「禁じ手」がまかり通り、ルールよりディールが幅を利かせれば、戦後の自由貿易体制は足元から崩れかねない。

 初夏のような強い日差しが差す米フロリダ。日本の首相、安倍晋三はトランプの別荘で17日から2日にわたって談判し、2国間の新通商協議を始めることを決めた。トランプは安倍が求めた鉄鋼・アルミの輸入制限解除を一蹴し、会談に参加したライトハイザーらは返す刀で日本にFTAを持ちかける。同盟国・日本もトランプが仕掛けるディールと無縁ではいられない。

 「対日貿易赤字は690億ドルから1000億ドルだ」。トランプは記者会見で力説したが、対日赤字が年900億ドルを超えたことはない。ルールだけでなく事実までねじ曲げる「米国第一」の行動様式は極めて危うい。

 日本は対米黒字を減らすため、米国から原油を大量輸入して東南アジアに転売する奇策まで検討する。米国も主力輸出品のエタノールに中国から報復関税を課され、ブラジルに「買ってくれ」と押し付け始めた。貿易戦争はまだ序盤だが、世界貿易は早くもゆがみ始めている。

 ◇

 米中の対立を軸に、貿易戦争の懸念がにわかに膨らんでいる。トランプのディールに世界は翻弄される。

(敬称略)



風見鶏 「米中和解」への備え 2018/4/22 本日の日本経済 新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「風見鶏 「米中和解」への備え」です。





 10年ぶりに泊まった上海の錦江飯店は、内装を改めたのか、中に入ると以前より現代風のたたずまいを感じさせた。それでも1920年代に完成したゴシック建築は当時のままで、古き時代の上海をいまに伝える外観は変わらない。

錦江飯店の北楼(奥)と小礼堂

 もともとは、この街で暮らす英国人のために建てられた高級マンションだった。49年に新中国が成立したあと、要人向けのホテルに衣替えしてから、数奇な運命をたどる。

 常連のひとりに、建国の指導者である毛沢東氏がいた。よほど気に入ったのだろう。自ら指示し、中庭に重要な会議や宴会を開くための「小礼堂」と呼ばれる施設を設けた。

 ここが宿敵の米国と和解する舞台になるとは、さすがの毛氏も想像できなかったにちがいない。72年2月、訪中した当時のニクソン米大統領は中国の周恩来首相とともに、この小礼堂で両国の敵対関係に終止符を打つ「上海コミュニケ」に調印した。

 日本にとって忘れられないのはその前段である。

 71年7月、ニクソン氏の補佐官だったキッシンジャー氏が極秘に訪中し、周恩来氏と会談した。直後に、ニクソン氏は自身の訪中を電撃的に発表する。同盟国の日本に事前の説明はなかった。いわゆる「ニクソン・ショック」である。

 朝鮮戦争で戦火を交え、互いを激しく批判してきた米中が手を握るとは、当時だれも予想できなかった。慌てた日本は72年9月、田中角栄首相のもとで一気に中国との国交正常化まで突き進んだ。

 歴史を大きく変えた和解から半世紀近くがたち、米中は再び険悪な空気に包まれている。こんどの戦場は「経済」だ。

 今月3日、トランプ米大統領が知的財産の侵害を理由に中国への制裁関税を打ち出すと、中国はすぐさま対抗措置を発表した。報復が報復を呼び、両国は貿易戦争の泥沼にはまる一歩手前まで来ている。

 戦意をあおるような中国メディアの対米批判がすさまじい。「『抗美援朝』の意志でトランプ政権の貿易進攻をたたきつぶせ」。共産党系の環球時報に載った社説の一節である。

 「米国に抵抗して北朝鮮を助ける」という意味の「抗美援朝」は、朝鮮戦争で掲げたスローガンだ。米国が攻撃をやめないかぎり、中国はどんな犠牲を払っても戦い抜く。国民への激しい檄(げき)は、もはや言葉だけとは思えない。

 一方で、習近平(シー・ジンピン)国家主席は米国への批判を控えている。「われわれは片方が勝ち、片方が負けるゼロサムゲームに反対である」。今月半ば、海南省で開いたフォーラムではこう訴えた。

 何を意味するのか。気になるうわさを聞いた。「米国は自由貿易協定(FTA)を中国に働きかけている」。FTAかどうかはともかく、両国が貿易戦争を避けようと水面下で激しい駆け引きをしているのは確かなようだ。習氏の発言は、一定の譲歩をする用意があるというトランプ氏へのメッセージに聞こえる。

 緊迫するシリア情勢が中国に有利に働くかもしれない。ロシアと厳しく対立するトランプ政権は、中国とも貿易で戦う二正面作戦は避けたいはずだ。中国が少しでも譲る構えをみせれば、それに飛びつく可能性はゼロでない。

 日本にとっての悪夢は、米中が自分たちだけ得する合意に動くことだ。安倍晋三首相が蚊帳の外なら、それは第二のニクソン・ショックになりかねない。トランプ氏の出方が予測不能なだけに、「米中和解」への備えは怠れない。

(中国総局長 高橋哲史)



習氏はサプライズに弱い?首脳の表情「情報戦」 分析結果、外交 動かす 2018/4/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「習氏はサプライズに弱い?首脳の表情「情報戦」 分析結果、外交動かす」です。





 外交舞台における首脳の表情は会談で交わされる言葉よりも雄弁に語ることがある。27日に板門店で開かれる南北首脳会談でも、初めて韓国側に足を踏み入れる北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の表情に注目が集まるが、それを映像などで常にフォローし、徹底的に分析する日本や欧米の担当官の存在はあまり知られていない。

トランプ氏は夕食会のサプライズで習氏(左)を出し抜いた(2017年4月)=ロイター

 米国やイスラエルの情報機関で発達した顔や表情の分析作業は業界用語で「フェイシャルプロファイリング」と呼ばれる。米国では米中央情報局(CIA)などの情報機関が主要国の首脳のニュース映像などを収集し、心理学などを専門とする担当官が性格や精神状態を分析。医師出身の担当官は健康状態も推定する。

 分析結果は首脳の外交戦術にも影響を与えている。「極めて慎重な性格で、準備を怠らないのでミスは少ない。しかし、予想を超えるサプライズに弱い」。対中交渉にかかわってきた日米外交筋によると昨年4月の米中首脳会談の前に、こんな習近平(シー・ジンピン)国家主席の顔の分析結果が情報機関からホワイトハウスに報告された。

 その後、トランプ大統領は米南部フロリダ州パームビーチで開いた夕食会でシリアへの空爆を命じたことを習氏に唐突に伝達した。米側の説明によるとケーキを食べていた習氏は驚きのあまりとっさの反応ができないまま「幼い子どもに対してガスを使うような野蛮な相手であれば仕方ない」と攻撃を是認した。これは中国が掲げてきた内政不干渉の主張にそぐわない発言で、トランプ氏に一本取られた格好になった。関係者は「米情報機関にとって大きな得点となった」と振り返る。

 日本でも2010年代に入ってから外務省が中心となって首脳の顔分析に本格的に着手。主要国との首脳会談の前には外部の2~3人の心理学などの専門家に依頼し、表情などに基づく総合的な分析を提出させている。

 世界では治安目的の利用も徐々に広がっている。イスラエルで14年に発足した新興企業「フェイセプション」のソフトウエアは動画や写真に映った顔の特徴を詳細に分析。割り出した性格から公共の安全に脅威になり得る特徴を持った人を識別する。

 こうした技術への依存には「冤罪(えんざい)を招きかねない」との批判もある。とはいえ、ビッグデータや人工知能(AI)によって分析精度が今後向上していくのは間違いないようだ。民間企業でもトップ間の交渉準備のための利用が想定される。

(田中孝幸)



Deep Insight モラー特別検察官を守れ 2018/4/18 本日の日本経 済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「Deep Insight モラー特別検察官を守れ」です。





 「権力は腐敗を生む」と昔から言われているが、トランプ米大統領の場合は逆だ。いまだに信じがたいことだが、世界で最も古い民主主義国の一つが、決定的に倫理感に欠ける男を国家元首に選出してしまったのだ。トランプ氏は、自分の考えを隠そうともしなかった。家業を経営するのと同じように米国を運営すると約束した。つまり、縁故主義的、独裁主義的な統治をし、個人的な利益を優先して、ルールは軽視する。今、まさにその通りになっている。

■納税申告書の非公開を貫くトランプ氏

米大統領選でのロシアとトランプ陣営の共謀疑惑の捜査を指揮するモラー特別検察官は、着実にトランプ氏の周辺を埋めつつある=ロイター

 ホワイトハウスに最初に入った第2代大統領ジョン・アダムズは「少し善いことができたら」と「小さな野心」を持っていたが、トランプ氏は反縁故法を無視し、娘とその夫を重要なポジションに就かせた。自ら経営してきた「トランプ・オーガニゼーション」との利害関係は維持し、納税申告書については非公開を貫いている。大統領就任以降、3分の1の時間は、自分が所有する商業用不動産のいずれかで過ごしている。大統領は、米議会や司法、憲法に対して権力を行使することはできないと何度もくぎを刺されているが、その権限を持っている、もしくは持つべきだと主張し続けている。

 トランプ政権の閣僚は、同氏を見習ってかペテン師だらけだ。カーソン住宅都市開発長官が事務所のために3万1000ドル(約334万円)のダイニング家具を購入したのも、ジンキ内務長官が内務省に出入りするたびに同省の旗を掲揚、降納させているのも、プルイット環境保護局(EPA)長官が18人もの警護を抱えているのも、閣僚らがプライベートジェットを多用しているのも、虚栄心の強いトランプ氏をまねてのことだ。

■コーエン弁護士への捜査で「法の支配」と全面衝突へ

 トランプ氏が大統領を退任するまで、同氏がもたらす損害がしっかり検証されることはない。だが米連邦捜査局(FBI)が9日にトランプ氏の個人弁護士マイケル・コーエン氏の住居兼事務所を捜索したことで、トランプ氏はモラー特別検察官を解任しようとするかもしれないため、その影響、つまり米民主主義への打撃がいかほどかが判明するかもしれない。というのも今回の捜索へのトランプ氏の怒りを見ると、この捜索は同氏を「法の支配」と正面から衝突する方向に向かわせてしまったようだからだ。トランプ政権下でこうした事態が起きる可能性は、貿易戦争や軍事衝突が起きる可能性よりもともと高かった。

 米民主主義を汚すトランプ氏の行為を象徴する存在として、本人を除けばコーエン氏以上の人物はいない。トランプ・オーガニゼーションの弁護士として攻撃的な戦略を展開してきたコーエン氏は、トランプ氏の愛人に口止め料を支払ったり、記者を威嚇したりしたとされる。コーエン氏は米ニュースサイト「デイリービースト」の記者に「警告しておくが、気をつけて歩けよ。お前には最低なことをしてやる」と脅したと報じられている。コーエン氏は昨年、共和党全国委員会の財務副委員長に就任した。その頃には既に大統領選でトランプ陣営の顧問として「トランプのピット・ブル(闘犬)」という異名をとる原因となった戦術を政治においても駆使していることで知られていた。

 印象的なのは、CNNテレビに登場した時のことだ。トランプ氏の支持率低下の理由を尋ねられると、コーエン氏は「証拠を見せろ」と言いたげな能面のような表情を見せた。支持率が低い事実を受け入れようとせず、世論調査がそう示していると説明されても、「誰がそんなことを言っているのか」と何度も繰り返した。それはまさにトランプ流の現実否認だったが、全く説得力に欠ける反応だった。

 マンハッタンのホテルに構えるコーエン氏の住居兼事務所をFBIが捜査する原因になったとされる彼の企ても、米民主主義に打撃を与えたといえる。彼は、トランプ氏が大統領選で勝利する数週間前に元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏に口止め料を支払い、その証拠を隠滅しようとした。

 モラー特別検察官が捜査しているトランプ陣営とロシアとの共謀疑惑に比べれば、本件は取るに足らないことに思えるかもしれない。コーエン氏がステファニー・クリフォード氏(ダニエルズ氏の本名)に、トランプ氏と寝たことを口外しない代わりに13万ドルを支払ったことは、法的には問題ない。



迫真 激震朝鮮半島(3)打算の「血盟」復活 2018/4/18 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 激震朝鮮半島(3)打算の「血盟」復活」です。





 中国・北京の天安門広場にそびえる人民大会堂。その最大の宴会場に3月26日夜、国家主席である習近平(シー・ジンピン、64)の父、習仲勲と北朝鮮の朝鮮労働党委員長である金正恩(キム・ジョンウン)の父、金正日(キム・ジョンイル)が両手を握り合う姿が映し出された。1983年6月、金正日の初訪中時の映像だ。

訪中した金正恩氏(左)を習近平氏は手厚くもてなした=朝鮮中央通信・共同

 習は訪中した金正恩の歓迎演説で思い出を語った。「私の記憶によれば、父が駅で出迎え、猛暑のなか故宮の参観に同行した」。金正恩は「私の初外遊が中国の首都となったのは当然なことだ」と応じた。親子2代にわたる友好の演出だった。

 朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」の社説は「中朝は互いに血と生命を捧げて協力してきた」と、朝鮮戦争からの「血盟」の絆を強調。中国共産党機関紙の人民日報も「中朝は唇と歯のように密接な関係にある」と指摘。冷戦時代に使われた古い表現を持ち出して結束を誇示した。

 関係筋によれば、金正恩の訪中を持ちかけたのは北朝鮮側。米大統領、トランプ(71)との会談前に、後ろ盾となる中国との関係修復が不可欠だったためだ。非核化や6カ国協議への復帰表明という中国の要求に応じたのは訪中実現のためだった。

 もちろん、北朝鮮側の要求もあった。「トランプ米大統領を超える待遇をしてほしい」。3月上旬、北朝鮮の朝鮮労働党が派遣した7人の実務者は最高指導者のメンツを気にした。金正恩訪中を北朝鮮問題で主導権を回復する好機と位置づけていた中国にとってはお安い御用だ。

 習から正恩への贈り物は花瓶や茶器、30年ものの茅台酒など香港紙の推計では240万元(約4千万円)以上。金正恩の車列を先導した白バイは21台でトランプの訪中時と同じ。帰国の際には習自らが車が去るまで見送った。

 もっとも、双方の嫌悪感や警戒感が払拭されたわけではない。中国メディアは会談で習の発言をメモに取る金正恩の様子を放映した。北朝鮮側は中国で政治家が老いの象徴として嫌うメガネ姿の習の映像を流した。

 中国には今回の首脳会談で外交的立場を強化した北朝鮮がかえって非核化の動きを滞らせるとの不信感も根強い。一方、北朝鮮は中国による属国化を警戒する。中朝関係の専門家は語る。「会談でのメモ取りやメガネ姿の放映は、関係改善が短期の戦術的な動きにとどまっていることの証左だ」

(敬称略)



株式配当 こんな節税法も 所得税・住民税、選択を一工夫 自治体への届け出必要 2018/4/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマネー&インベストメント面にある「株式配当 こんな節税法も 所得税・住民税、選択を一工夫 自治体への届け出必要」です。





 上場株式の配当にかかる所得税と住民税で、異なる課税方式を選択することにより節税する方法が注目されている。2017年度の税制改正を受けて事実上、可能になった方法だ。税務署への確定申告と自治体への届け出が必要だが、ひと手間かければ、税金を減らせるケースは多い。年金生活者や自営業者であれば社会保険料負担の軽減につながることもある。どんな方法なのか見ていこう。

 「こんな節税方法があったなんて……」。ランドマーク税理士法人の清田幸弘代表税理士によると、注目の節税法を説明すると、相談者のほとんどが初めて知ったと驚くという。

 節税法はやや難解なので順を追って説明する。

;

 税制上、株式の配当は所得税(国税)と住民税(地方税)が別々に課され、それぞれ有利な課税方式を納税者が選択できる仕組みになっている(図A)。

税制改正で可能に

 ところが実際には有利な方式を住民税で選ぶことは従来できなかった。自治体側の税務対応が追いつかず、所得税で選んだ方式が自動的に住民税に適用される体制になっていたのだ。

 これを是正するため政府は制度を改正。自治体の窓口に申し出た人は、有利な課税方式が認められるようになった。16年の所得を基に計算する17年度の住民税から始まっている。

 ではどのように課税方式を選び分けるのが有利なのか。表Bは、投資家が実質的に負担する税率を、3つのパターンに分けて比較している。

 まず確認してほしいのがa。配当を両税とも申告しないパターンだ。配当は受取時にいったん税金20%(所得税15%、住民税5%)分が源泉徴収されるため通常、改めて申告などする必要はない(申告不要制度)。特定口座の利用者をはじめ投資家の多くはこのパターンに該当する。

 次に見てほしいのがb。総合課税を選び配当を申告する人たちで、どちらかと言えば少数派だ。総合課税には「配当控除」という負担軽減の仕組みがあり、所得水準によっては税率が源泉徴収税率の20%より低くなり、aよりも有利。配当控除は法人税との二重課税を調整するためにある仕組みだ。

 そして注目すべきがc。最近可能になった節税法がこのパターンだ。所得税は総合課税を選んで税務署に確定申告。そのうえで、市区町村の税務窓口に届け出て、住民税の扱いを申告不要とする方法だ。

 課税所得が900万円以下の一般的な水準の人で見ると、税率はaやbよりさらに低く、お得なことが確認できる。

 例えば課税所得「695万円超900万円以下」の人の税率は18%。計算法は省くが、内訳は所得税13%、住民税5%となっている。所得税は、総合課税を選ぶことで配当控除の恩恵を受けられる。住民税のほうは申告不要の扱いとすることで源泉徴収税率である5%だけで済むのが大きい。bのケースでは住民税の負担はもっと重い。

 総括すると、所得が900万円以下の人はcのパターンを選ぶのがよいだろう。一方、高額所得者は「両方とも申告不要のままでいるのが得策だ」(新宿総合会計事務所グループの瀬野弘一郎代表税理士)。

 事例を一つ紹介しよう。東京都武蔵野市に住む85歳のAさんは、保有株で年30万円ほどの配当を得ている。従来は配当控除を受けるため総合課税を選んでいた。表Bではbの税率7.2%のところにあたる。

社会保険料減額も

 より有利な方法(c)があると知ったAさんは今年3月、市役所を訪問。配当を申告不要の扱いとする届け出をした。税率は5%に下がり、住民税額が約7000円減った。

 注目したいのはAさんが得したのは税金だけではない点だ。実は後期高齢者医療の保険料が年3万円近くも減りそうだという。

 75歳以上が加入する同制度の保険料は、住民税の課税所得に連動する部分がある。「所得割」といい、武蔵野市の例で料率は約9%。Aさんのケースでは届け出をしたことで、課税所得に配当30万円分が上乗せされずに済んだ。結果として保険料負担を3万円近く軽減できる計算だ。

 所得割の仕組みは国民健康保険などにもある。加入者はAさんと同様、節税と保険料軽減とセットで得する可能性がある。

 住民税を申告不要の扱いにしたほうが得するケースは他にもある。例えば複数の証券会社で「源泉徴収あり」の特定口座を開設して株式を売買している人だ。

 図Cのようにa証券で利益、b証券で損失になったら、そのままにせず、確定申告して両口座間の損益通算を実行したほうが通常はよい。源泉徴収されていた税金の一部が還付される。申告分離課税といい、届け出なければ住民税も同じ方式になる(1)。

 ただし、国保などの加入者は、申告することで所得が増え、社会保険料負担が重くなる恐れがある。保険料が増えれば、税還付額を考慮しても全体で負担増になりかねない。しかし、住民税を申告不要としておけば保険料に響かないで済む(2)。

 「届け出の手続きは市区町村によるが、専用書類に記入したり、住民税申告書にチェックを入れたりする」(税理士の藤曲武美氏)。詳細や不明点は市区町村の税務窓口に問い合わせよう。

(後藤直久)



日本経済新聞の本日の記事から