米中衝突 摩擦の深層(4)「1党」対「独善」 2018/07/05 本日の日本経済新聞より

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「他に選択肢はない。時間切れだ」。6月19日、2千億ドル(約22兆円)相当の中国からの輸入品に追加関税の検討を指示したトランプ米大統領は経済界の会合で毒づいた。ナバロ大統領補佐官も5月以降の米中貿易協議が「何の進展もなかった」と3回繰り返した。

焦り映した強権

大統領に就任して初の審判となる米中間選挙まで4カ月。目に見える実績を示せなければ、2020年大統領選での再選も遠のく。わずか1カ月で中国との対話を見切り実力行使をほのめかす刹那主義や、毎朝、毎晩に指先からツイートを放って自己正当化する独善的なトランプ流は、焦りの裏返しでもある。

「民主主義は最悪の政治形態だといえる。これまで試されたあらゆる他の政治制度を除けば」。英国の宰相チャーチルが残したとされる名言は、自由主義と民主主義の優位を誇っていた。だが見つからなかったはずの「選択肢」が世界を揺るがし始めている。決定に時間を要さず、選挙も関係なく大方針が決まる中国の政治システムだ。

北京の南西100キロに位置する河北省雄安新区。6月半ばに訪れると、わずか半年前に一面の畑だった場所は次世代の先端技術を使ったスマートシティーのモデル地区に変わっていた。

斬新なデザインの建物が立ち並ぶ街の一角では、レジに店員がいない「無人スーパー」が営業を始めていた。顔認証技術を使って本人確認し、スマートフォンで支払いまで完結する仕組みだ。「政府の後押しでビッグデータを収集しやすい中国で人工知能(AI)が進化するのは確実だ。世界で勝負するにはプロジェクトに加わるしかない」。参加企業の関係者は漏らす。

一声で33兆円

雄安新区は東京都に匹敵する2千平方キロメートルの面積に人口200万人の新都市を築く壮大な計画だ。習近平(シー・ジンピン)国家主席の一声で2兆元(約33兆円)の費用と20年近い歳月を投じる決定は、共産党が一党支配する中国だからできる離れ業だ。

街中に監視カメラが設置されるなど、一党支配下の安定は究極の管理社会という大きな代償を伴う。それでも異論を排し事業を進める圧倒的なスピードは、議会を通じて利害調整する民主主義国にとって脅威だ。

国家主席の任期撤廃を取り付けた習氏は、基軸通貨ドルの地位もうかがう。

「『一帯一路』の共同建設を中心に実務協力を深めなければならない」。6月10日、習氏は訪中したイランのロウハニ大統領に呼びかけた。中国は米国からのイラン産原油の禁輸要請も拒む構えを見せるなど、自らの広域経済圏構想に取り込もうと秋波を送る。

中国は3月、上海市場で原油先物の人民元建て取引を始めた。世界最大の原油輸入国として、ドル一辺倒の原油取引に風穴を開ける狙いだ。産油国イランが加わり、ドル建ての金融規制を迂回した人民元の利用が広がれば、米中摩擦でドルが使いにくくなる事態にも備えができる。

数年単位と数十年単位。時間軸の違う民主主義と一党支配のせめぎ合いが米中による主導権争いの根底にある。米中の衝突は政治・経済システムの優劣をかけた戦いの始まりでもある。

=この項おわり

この項おわり



起業の担い手、雇用生む 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

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不法移民の摘発強化だけでなく合法移民も制限する現政権の政策は、特にミシガン州などラストベルト(さびた工業地帯)の経済に打撃を与える。

ミシガン州では、全人口の6%を占めるにすぎない移民がこの20年間、ハイテク分野の起業の4分の1を担ってきた。これらの企業は15万人の雇用を生んだ。移民の増加がなければ同州の人口は減少していただろう。

トランプ米大統領は永住権抽選制度の廃止や移民による家族・親戚の呼び寄せの規制を主張している。しかし保守系シンクタンクのケイトー研究所によると、こうした移民の半数は大卒で、米国生まれよりも教育水準が高い。

ラストベルトのブルーカラー有権者の多くはトランプ氏に投票した。鉄鋼などの伝統的な雇用が失われた地域で、移民が職を奪うといった恐怖をあおるのは簡単だ。しかし、それは誤りだ。

実際には移民を受け入れる多様な地域ほど経済的に繁栄する傾向がある。世界から移民を受け入れる政策こそが必要であって、ラストベルトのような地域では特に重要だ。トランプ政権は自分の当選に貢献した地域の経済を損なう政策をとっている。

トランプ政権の反移民政策は、外国人観光客や留学生の減少も招いている。世界中から人々が自由とより良い暮らしを求めて集まる「機会の地」であることが米国の力となってきた。比較的開かれた移民政策が米国を強くし、経済を成長させる。



米中衝突 摩擦の深層(2) 深まる相互依存 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

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中国から米国への年間輸出額が704億ドル(約8兆円)と全品目中トップでも、米政府の対中追加関税リストに登場していない商品がある。スマートフォン(スマホ)など携帯電話だ。

(画像:半導体国産化の大号令のもと、工場建設が急ピッチで進む(武漢市郊外))

スマホは制裁除外

米アップルのiPhoneは企画・デザインは米国、部品は日本や韓国、組み立ては中国という国際分業の象徴だ。だが付加価値の大半は商品企画や設計という「川上」と販売・アフターサービスという「川下」を押さえる米国が握る。

中国商務省の報告書によると、約650ドルのiPhone1台を売っても中国には計8.5ドルしか落ちない。貿易統計では中国の対米輸出額に計上されても、利益は米企業が手にする現実を米当局は熟知する。

だが貿易赤字を「損失」ととらえるトランプ米大統領の叫びはサプライチェーンを揺らし始めた。iPhoneを中国で受託製造する台湾の和碩聯合科技(ペガトロン)は年内にもインドに工場を新設する。童子賢董事長は「(世界貿易の)不確実性が非常に高まっている」と米中摩擦を理由の一つに挙げた。

中国有数の穀倉地帯である東北地方。吉林省の金川村を訪れると、一面にトウモロコシ畑が広がるなか、大豆の苗がぽつんと植えられていた。村の共産党委員会書記の畑だという。

中国政府は米国への報復関税リストに大豆を含め、大豆を栽培する国内農家への補助金を大幅に増やす通知を4月末に出した。だが末端の農家には通達が間に合わなかった。地元農家の任さんは「すでにトウモロコシを植え、肥料もまいていた。切り替えようがなかった」と話す。

大豆は中華料理で大量に使う油の原料や豚肉の飼料に用いられ、安価な米国産は中国の物価安定の要だった。それでも報復関税に踏み切るのは、米中間選挙を前にトランプ氏の票田である農業州を揺さぶる狙いだ。国産大豆の増産は一朝一夕には難しいが、中国は持久戦を覚悟しつつある。

自前で技術高度化

6月、湖北省武漢市で建設中のNAND型フラッシュメモリーの工場を訪れると、大型トラックが土煙を上げて出入りしていた。工場がある光谷地区には半導体産業が集積し、「中国の半導体 光谷の夢」の標語が近くに掲げられていた。

米国のハイテク制裁で自前技術を握る重要性を思い知った中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は「核心技術を手にして初めて経済や国防の安全を維持できる」と半導体国産化に大号令をかけた。米国の制裁が中国の技術高度化を加速させる皮肉な事態が進む。

「あらゆる選択肢を検討している」。3月、中国の崔天凱・駐米大使は米国債の購入減額に含みを持たせた。海外保有分の約2割を占める1兆1180億ドルの残高を抱える中国が米国債売りに回れば米長期金利は上昇し、世界的な金融市場の動揺が避けられない。中国にとってもかつては言及することすらためらわれる「禁じ手」だったが、摩擦の激化は両国当局者の理性を失わせつつある。

経済的な相互依存が深まる「不都合な真実」に目をつぶり、対決姿勢をエスカレートさせる米中。事態が合理性を超えて進むリスクを金融市場は織り込み始めている。



もがく農産物輸出(2) 和牛、引っ張りだこなのに 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

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「ランチは2人を除くと全員外国の方です」。6月26日、ステーキみその神戸本店(神戸市)店長の安藤哲矢(46)は店内を見渡しこう話した。インドネシアから訪れた男性は「これを食べるために日本にきた」とブランド牛の神戸ビーフを使った2万円を超えるコースをぺろりと平らげた。

(画像:神戸ビーフ目当ての訪日客は多いが…(ステーキみその神戸本店))

外国人が多く訪れる神戸発祥の神戸ビーフは海外での知名度が高い。観光客だけではない。6月中旬、白衣を着た約50人の米国人が神戸中央卸売市場を訪れた。米農務省の貿易担当次官をはじめ、畜産が盛んなオレゴン、アイダホ州などの農政担当者と食品企業が過去最大級の編成でそろい踏み、関心の高さをうかがわせた。2017年の和牛輸出額は前年比41%増の192億円で、生鮮品でトップクラスだ。

和牛の輸出先は香港が3分の1を占め、一部地域に偏っているのが現状だ。海外需要増と裏腹に生産現場では需要に応じた供給が進んでいない。「処理場が不足している」。4月、都内の自民党本部で開かれた農産物輸出促進対策委員会で伊藤ハム米久ホールディングス執行役員の野須昭彦(60)は訴えた。同社は南九州子会社の処理場を通じ輸出する。

海外で知名度の高い神戸ビーフも欧米向けには神戸港から直接輸出できず、鹿児島まで輸送して処理している。こうした状況を打開しようと17年に姫路市で開業した食肉処理施設、和牛マスター食肉センターは欧米基準に対応した認証取得を進める。社長の池田政隆(64)は「輸送費だけでなく、長距離移動で肉質が落ちる方法は変えたい」と意気込む。

内向きの規制が輸出を阻む例もある。国内でブランド牛として知られる松阪牛は三重県の一部地域で一定期間育て、地元か東京食肉市場でと畜する決まりだ。ところが東京食肉市場は欧米への輸出認証がない。特例的に群馬の施設を通じて米国などに輸出するが、数量はわずかだ。このため松阪牛でさえ、外国人からは神戸ビーフの一種と間違えられることもあるという。

生産者の落ち込みも拍車をかける。農林水産省によると17年の子牛を育てる繁殖農家の数は10年前から4割減少した。子牛の価格高騰で肥育農家の経営は厳しい。関東で肉用牛を育てる男性は「いつ経営が立ちゆかなくなるか分からない状況で輸出を増やせと言われても現実味がない」とため息をつく。

(敬称略)



コンパクトシティを考える(9)「縮退」が固定資産税増やす 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

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人口減少時代の都市経営はどうあるべきか、今後、すべての都市にとって一大課題となります。中長期的には高齢化と社会資本の老朽化で歳出は増加基調となります。これに対して人口減少が市町村の基幹税である住民税と固定資産税の税収に下落圧力を加えます。鎌倉市が2014年に行った財政シミュレーションでは、19年度に歳出が歳入を上回り、以後、その差は拡大していく見通しでした。

都市縮退化の戦略的な推進は2つの経路から都市経営に影響を与えます。第1に、社会資本の新設・更新を抑制し、歳出の増加要因を取り除きます。第2に、固定資産税収の増加を通じて歳入増に寄与します。

第2点について説明しましょう。日本の縮退化政策の先頭を走る富山市については前に紹介しました。実はその成果が地価上昇と固定資産税収の増加となって表れています。富山市では15年以降、4年連続で地価が上昇していますが、問題はその中身です。

18年の地価公示では市全体で平均0.2%の上昇に対し、富山駅と市内電車環状線周辺の複数地点では3~5%の上昇でした。地価上昇により18年度予算の固定資産税と都市計画税の税収は14年度から約8%増えています。両税は市税収の47%を占める基幹税です。

固定資産税は中心市街地のわずかな面積で大きな税収を生み出します。富山市の場合、市面積の5.8%の市街化区域から固定資産税と都市計画税の合計税収の75%を、さらに市面積のわずか0.4%の中心市街地から両税収の22%を得ています。つまり、縮退政策で中心市街地の魅力を高め、地価を維持することが、基幹税収を増やす上で決定的に重要なのです。

郊外大型店舗の誘致で一時的に固定資産税収が増えても、いずれ人口減少で閉鎖とならないでしょうか。郊外住宅開発で一時的に人口を増やしても、人口減少下では持続可能ではありません。何よりも郊外化は分散投資に他ならず、都市のエネルギーを拡散させて中心部の地価を押し下げる要因となります。縮退化にかじを切ることができず、郊外化を進める自治体は、その中長期的な費用と便益をよく勘案すべきでしょう。



制裁にゆがむ市場経済 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「制裁にゆがむ市場経済」です。





グローバル化が進み、各国の相互依存が増した世界では、貿易制裁は自らの経済も傷つけることになる。その懸念は、すでに素材の取引で顕在化している。

米国が鉄鋼とともに通商拡大法232条に基づく追加関税を3月に導入したアルミ。国際指標であるロンドン金属取引所(LME)相場に企業がどれだけ上乗せして現物を取引するかという「割増金(プレミアム)」は、米国だけが突出して拡大した。

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住友商事グローバルリサーチの調べでは、昨年10月時点で1トン200ドル程度だった米中西部地区の割増金は4月に500ドル近辺まで跳ね上がった。

日本アルミニウム協会のまとめで、2016年に米国が消費したアルミ新地金は512万トン。3千万トンを超す中国には遠く及ばないが、飲料缶や自動車部品、建材などの需要は旺盛で、世界第2の規模を持つ。

一方、米国のアルミ生産能力は80万トン強にすぎない。米国も1980年前後には400万トン超の精錬能力があった。だが、世界のアルミ生産は能力増強に走った中国や、オーストラリアなどの原料資源国、電力料金の安いアラブ首長国連邦(UAE)などの中東諸国にシフトし、米国の精錬設備は淘汰された。

こうした世界の構造変化が、関税を引き上げることで元に戻ることはない。逆に、自動車部品などを製造する米国の企業は、突出して高い原料調達コストを強いられる。

高炉大手によれば、日本の鉄鋼製品の対米輸出は追加関税導入後も大きな影響を受けていない。「自動車部品に使う特殊な線材や石油の掘削パイプなど米国製品で代替できないものが多い」(JFEスチールの柿木厚司社長)からだ。

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米商務省は6月、日本を含む鉄鋼製品の一部を追加関税の対象から外すことを決めた。コスト増に直面した米企業が政府に適用除外を申請したからだ。

米国の企業が日本製品を使うのは、そこに他にない付加価値があることが理由だ。これも関税引き上げで米企業に需要が戻るわけではない。

みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは「日本の自動車メーカーは(70年代から始まった)自動車摩擦を現地生産の拡大という対応で乗り切った。ただ、グローバル化が進んだ現在、対外圧力をかけてもこうした効果は期待できない」とみる。

貿易制限の連鎖は、市場での自由な価格形成をゆがめ、互いの経済を傷つけ、萎縮させるだけだ。

みずほ総合研究所の試算では、通商問題の報復がエスカレートし、米中間の貿易が20%減少した場合、中国の国内総生産(GDP)は3%強押し下げられる。

ただし、世界第2の経済国に成長した中国の失速は、米国にも1%弱のGDP減少として跳ね返る。貿易の減少を自国生産の増加で補えないからだ。その試算が現実に近いことは素材の取引市場で実感できる。



「インド太平洋軍」視線は対中・南シナ海 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

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米太平洋軍が名称を「インド太平洋軍」に変更した。米国は日本などと「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進している。同戦略に基づき、太平洋からインド洋に関わる軍だ、と明確にした。対象地域には中国が進出する南シナ海があり、同国をけん制する狙いが見え隠れする。改称に伴い、日本が関与拡大を求められる可能性もある。

(画像:デービッドソン米インド太平洋軍司令官(左)と握手する安倍首相(6月21日、首相官邸))

改称の発表は、5月30日にハワイで開いた米太平洋軍司令官の交代式の場だった。マティス国防長官が式典で公表し、インド太平洋戦略との連動性をアピールした。

活動地域は不変

太平洋軍は東は米西海岸の沖から西はインド洋まで、北は北極から南は南極までを管轄。地球の表面積の半分以上を占める広大な地域に、約37万5千人の軍人・軍属を擁する。日本や韓国に駐留する在日・在韓米軍もその傘下で活動している。

改称しても活動地域は同じ。「インド」の冠が加わったが、もともとインド洋も担当していた。名を変えるだけで実質も変わるのだろうか。

ハワイのシンクタンク、東西センターのロイ上席研究員は変更の狙いを「米軍が太平洋とインド洋で協力しながら影響力を行使することを強調するためだ」と解説する。「他国は名称変更の背景を推しはかる必要に迫られた」と、副次的な効果も期待できると話す。

インド太平洋戦略は、太平洋からインド洋にまたがる地域で、自由、法の支配、市場経済などの価値を共有する国が協力する構想だ。軍の名称に冠することで、軍事戦略も構想と連動すると考える国も出てくるだろう。

警戒感を隠さないのは中国だ。外務省の華春瑩副報道局長は記者会見で「名前をどう変えようが、米国は責任ある態度でアジア太平洋地域に存在し、地域の平和安定のために建設的な役割を果たすべきだ」と述べた。

中国は南シナ海の軍事拠点化など、海洋進出に積極的だ。インド太平洋地域では、習近平(シー・ジンピン)国家主席が唱える広域経済構想「一帯一路」もある。米国が名称変更を発表した際のマティス氏の演説では「インド太平洋地域には多くの帯、路がある」とのフレーズがあった。対中国の意識は明確だ。

演習に招待せず

名に実が伴う雰囲気もある。米海軍が主催し、日豪英仏など20カ国以上がハワイ沖で隔年実施する環太平洋合同演習(リムパック、6月27日~8月2日)だ。今回、2014年から続く中国の招待を取りやめた。米側は中国の南シナ海での軍事拠点化を理由に挙げる。

米軍が中国の演習参加拒否を発表したのは5月下旬。中国が南シナ海で初めて長距離爆撃機の離着陸訓練をした直後だ。米軍は矢継ぎ早に南シナ海周辺で「航行の自由」作戦も実施。軍艦2隻を西沙(英語名パラセル)諸島の12カイリ(約22キロ)内に向かわせ、複数の島の近くを航行させた。

米国の一連の対応に、日本は歓迎の立場を示す。そもそもインド太平洋戦略は安倍晋三首相が16年に提起した構想だ。首相は6月21日、司令官に就任したデービッドソン氏と首相官邸で会談し「戦略をともに進めていきたい」と呼びかけた。

小野寺五典防衛相は「インド洋と太平洋の間に南シナ海もある。米国が高い関心を持っている表れだ」と対中国の狙いを説く。会談出席者によると、デービッドソン氏は首相に「航行の自由」作戦の継続を強調した。

日本にも不安がある。米海軍第7艦隊の前司令官は、かつて自衛隊に「『航行の自由』作戦に参加できないか」と求めた。日本は南シナ海で直接、領有権問題はなく、断っていた。安全保障で同盟国に応分の負担を求めるのがトランプ米大統領の持論。政府関係者は「南シナ海の安定は日本のシーレーン(海上交通路)の確保に直結する。トランプ氏はただ乗りを許さないだろう」と語る。

日本が作戦に加われば対中関係は難しくなる。参加を断れば米国は代わりに防衛装備品の購入拡大を求めるかもしれない。明海大の小谷哲男准教授は「インド太平洋戦略は米国が域内の同盟国と良好な関係を築いて初めて機能する」と話す。

(地曳航也)



受け入れ、許容数超える 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「受け入れ、許容数超える」です。





不法移民を特赦すれば、さらに多くの流入を招く。国境警備と国内の取り締まりを強化し、国内の不法移民を大幅に減らすことが先決だ。

幼少時に米国に来て母国語も分からない(若者の救済措置である)DACAの対象者を送還するのは酷という主張があるが、そうした者はごく一部だ。DACAは入国時に16歳未満だった人が対象で、対象者の1割から4分の1はむしろ英語が不自由と推計される。

不法移民は賃金水準を押し下げ、米国民、特に低所得者層が職を得るのを難しくしている。建設業界が典型例だ。求職者の滞在資格を照会するシステムの導入を雇用主に義務付け、取り締まりを強化すれば、不法移民は職を得られず、自ら母国に帰るだろう。

合法移民も抑制が必要だ。特に「チェーンマイグレーション(連鎖移民)」が問題だ。配偶者や未成年の子供の呼び寄せは当然だが、成人の兄弟姉妹まで許すべきではない。移民の様々な親戚約400万人が既に永住権の発給を待っており、遡って規制しなければチェーンマイグレーションは当面続くことになる。

米国は常に移民国家であり続ける。だが現在の移民の受け入れ数は史上どの時点よりも多い。米国は合法移民だけで世界最多の年間100万人を受け入れており、許容水準を超えている。真剣に移民数の削減を検討すべきだ。(移民希望者を能力で選別する)メリットベース制も一案だろう。

 鳳山太成、芦塚智子、関根沙羅が担当しました。



反発相次ぐ「一帯一路」投資 2018/07/02 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「反発相次ぐ「一帯一路」投資」です。





中国アリババ集団の馬雲会長は6月半ば、マレーシアへ飛んだ。親しくしていたナジブ首相が5月の総選挙で退陣に追い込まれたことで、今度はマハティール新首相に取り入ろうとしたのだ。

馬氏にはアリババを売り込むと同時に、中国とマレーシアの関係を取り持つ狙いもあった。マハティール氏が先に、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の広域経済圏構想「一帯一路」で、ナジブ氏が多くの中国国有企業と結んだ「不平等契約」を見直すと表明していたからだ。馬氏はマハティール氏が前回首相だった1990年代、その「素晴らしい才覚」に触発されてアリババを創業したと述べ、ナジブ氏にしたようにマハティール首相を持ち上げた。

一帯一路の旗振り役だったマレーシアが、中国による投資のリスクを世に示す先例とならぬよう、中国政府は馬氏の適応力と人を引きつける力を見習う必要がある。

中国の融資で港を建設し、返済に窮したスリランカ政府が昨年、港の使用権を中国国有企業に移譲せざるを得なくなった例もあり、一帯一路は周辺国への影響力拡大を狙う中国の債務のわなだという指摘が多い。マレーシアでもナジブ氏は国を売り渡しているとみて、国民が批判を強めていた。

マハティール政権は総工費140億ドル(約1兆5000億円)の東海岸鉄道建設や2本のガスパイプラインの敷設など、投資に見合う価値が見込みにくい複数の大型インフラ計画について、中国と再交渉すると明言している。

中国政府高官は自国企業が法に従い、政府も常に「相互尊重」と「互恵」の精神に基づいて行動しているという常とう句で応じた。だがマレーシアでは、自国政府に説明責任と透明性を求める国民の声が強く、中国は事業を進めるうえで言葉だけでなく、真の譲歩を求められるだろう。

軍事的威嚇や経済支配、見返りの示唆という手法を組み合わせ、これまで東南アジアで思い通りに振る舞い続けてきた中国政府にとって、他国の言い分を受け入れるのは不愉快なことだ。近年、習氏は南シナ海の領有権問題で断固譲らない姿勢を示し、この問題で中国と対立するマレーシアやフィリピン、ベトナムの主張はかき消されてしまった。しかし一帯一路が掲げる数千億ドルものインフラ建設には力の誇示ではなく、関係国の政府と国民の支持が欠かせない。

東南アジアでは最近、各地で中国の投資に対する反発が相次いでいる。ベトナムでは6月、経済特区の土地を外国企業に貸し出す政府の計画に大規模な抗議デモが起きた。住民は中国企業への優遇策だと感じ取っている。インドネシアでは中国と進める総工費55億ドルの高速鉄道建設が滞ったままだ。首都ジャカルタとバンドンを結ぶもので、土地収用が進まず、費用の妥当性に疑問符がついた。

マハティール氏は中国の投資と技術は歓迎するが、事業の費用対効果と透明性を確保し、マレーシアの企業と労働者が恩恵を受けられるようにしたいと語った。途上国で事業をする中国企業には難題だ。何千人もの従業員を現地へ送り、公的な監視も置かずに国家丸抱えで工事を進めているからだ。

ただ、マレーシアの動きは中国にとっては本気で国有企業を合理化し、周辺国と互恵精神で事業を進めようとしていることを示す好機ともいえる。

(6月25日付)



「自分中心」が生む不快感 2018/07/02 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「「自分中心」が生む不快感」です。





ハラスメントをテーマにした企業人向けのシンポジウムに参加する機会があった。職場のハラスメントについては厚生労働省が、優位な立場にある人が、業務外のことで周囲に不快を感じる体験をさせるといった3つの該当要件を定めている。

(画像:イラスト・大塚いちお)

職場に限らず、こうした行動が良くないことは誰にでも分かるように思うが、後を絶たない。ハラスメントにあたる行動をするときに、自分中心の考えに縛られてしまうからだろう。

そのようにいうと「いや、相手のことを考えて言っているんだけど」と釈然としない気持ちを訴える人は多い。相手がきちんと仕事をしないから、その人のことを思い厳しいことを言った。相手の人が良い感じだから素直に口に出した。ハラスメントと考えられる行動がこうした相手に対する思いから生まれていることも多い。そうした思いがハラスメントだと否定されるのは納得がいかないと考える。

気持ちは分かるが、それでもハラスメントと呼ばれる可能性があるのは、気持ちが一方通行になっているかもしれないときだ。こころのなかで何か感情が動いているとき、私たちの考えは一瞬、内向きになる。まわりに目を向けるこころの余裕がなくなり、自分中心になる。感情のまま行動したり発言したりすると、関係が一方通行になり、相手を傷つけてしまうことがある。

そうならないためには、気持ちが動いたときに、それをすぐに口に出すのではなく、ちょっと相手の様子を確認することが大事だ。そして相手の様子に合わせて自分の態度を微調整できる余裕を持てるとよい。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



日本経済新聞の本日の記事から