2014/01/29 本日の日本経済新聞より「財界 地殻変動2 外交、さびつく官民連携」

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 「外国の方と領土問題が話題になったら皆さまの言葉で積極的に発信してほしい」。昨年12月18日、経団連の会合に出席した領土問題担当相の山本一太(56)は、企業の首脳らにこう呼びかけた。話の流れから言えば「商談の場で竹島や尖閣諸島を日本領だとPRしてほしい」とも解釈できる発言。同席した経営者は賛否を示さなかった。

中国の汪洋副首相(右)と握手を交わす日中経済協会の張富士夫会長(昨年11月、北京)=共同

 中韓関係者が積極的に発信する一方で、山本の要請は「筋違い」とは言い切れない。ただ現政権と経済界は領土や2国間関係のような高度な問題で連携できるほど、親密とはいえない。

 「今度の首相外遊に御社の社長に同行してもらいたい。誰にも相談せずに、返事は私のこの携帯にお願いしたい」。ある商社の渉外担当は、経済産業省幹部からこんな勧誘を受けた。

 首相の外遊で経済界が同行団を組む場合、以前は経団連がメンバーや段取りを整える窓口だった。今の安倍政権では首相補佐官の長谷川栄一(61)が企業のリストを練り、経産省が対象者を「一本釣り」で勧誘する。

 政府関係者は「学界や医者など幅広い人材を同行させたい」と狙いを説明する。だが国内外に経済界と政府の連携が薄い印象を与える可能性は否めない。

 2005年に首相の靖国神社参拝で日中関係が冷え込んだ時は、官民の関係が少し違った。

 当時、経団連会長の奥田碩(81)は訪中の際、首相の小泉純一郎(72)から「私は親中派だ」という伝言を預かり、中国首相の温家宝に伝達。直後に奥田は国家主席の胡錦濤との極秘会談を実現し、お互いの立場や考え方を意見交換したという。古くは中曽根政権でも首相が経団連会長を務めた稲山嘉寛(故人)に靖国問題に関する中国首脳の本音を探るよう依頼した。

 昨年11月末、直前に180人規模の訪中団を率いた日中経済協会会長の張富士夫(76)らは首相の安倍晋三(59)を訪れた。だが意見交換は主に日中の経済情勢だけ。今まで訪中団が会えていた首相クラスとは会談できなくなり、政治や外交の問題はほとんど素通りだった。

 トルコでの原発受注など、官民外交が実を結んだ分野もあるが、外交上の難局を官民の連携で打開しようという胎動は見られない。奥田は「相手国の首脳と個人的な関係をつくることが大事。今の経済界はそういう人間関係が薄くなったのかもしれない」とみている。(敬称略)

2014/01/23 本日の日本経済新聞より「大機小機 円高シンドロームの終焉」

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 昨年の日銀の新執行部の登場で、金融政策は「デフレ的レジーム」から「リフレ的レジーム」へと転換した。

 デフレの裏には円高がある。ロナルド・マッキノン米スタンフォード大学名誉教授と大野健一・政策研究大学院大学教授は1998年の著書『ドルと円』で日本の停滞の背景には、円高シンドロームがあると喝破した。ブレトン・ウッズ体制崩壊以来、日本の為替が購買力平価水準レート以上の円高傾向を示してきたことが日本経済の長期的な成長率低下に結び付いたという議論だ。

 そのマッキノン名誉教授は昨年のアジア開発銀行研究所のワーキングペーパーで再説し、アベノミクス発動以来の円安は長期的な円高を是正する動きと評価している。実際、円ドルレートは購買力平価よりも円安に転じ始めており、このまま続けば円高シンドロームも終焉(しゅうえん)を告げるであろう。

 レジーム転換を計量的にも裏付ける研究が出始めている。エコノミストの安達誠司氏はレジーム転換を数量的に実証し、金融政策と為替の両方でレジーム転換が起きつつあると論じている。

 金融政策のレジームが転換し、今後は円安基調になると予想される。ただしタンゴを踊るのと同じく、為替には相手側の動きもある。85年のプラザ合意が典型的だが、円高基調には日米経済摩擦があった。しかしプラザ合意当時の日本の対米貿易黒字が米国の国内総生産(GDP)比で1%を超えていたのに現在は0.5%程度。いま2%を超えているのは中国だ。かつてのような経済摩擦は問題になりにくい。

 諸外国の金融政策によって影響を受けるのも事実だが、仮に米国の金融緩和縮小が順調に進めば米国経済の回復と円安が見込める。懸念はユーロ危機だが、それには日銀も危機対応をして追加緩和をするほかない。

 為替と株価の関係は単純ではないが、近年の相関は非常に強い。株価は企業活動の将来にわたる収益の現在価値であり、円安で企業収益が改善することが株価に反映している。原材料費の高騰を気にする向きもあるだろうが、日本経済は円安から恩恵を受ける。中には円安警戒論が出ており、円安と株高の関係が分からないとの声もあるが、財界関係者には日本経済への大局的発言を期待したい。

(カトー)

新指数「JPX日経400」の横顔(中) 資産運用の新たな尺度に 2013/12/26 本日の日本経済新聞より

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なるほどREIT(上)オフィス投資が主流 三井不・菱地所系が2強 2013/12/26 本日の日本経済新聞より

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 デフレ脱却への期待から不動産投資信託(REIT)にマネーが流入している。2001年9月に2銘柄が上場して始まった日本のREIT市場はいまや43銘柄に達し、全体の時価総額は7兆円超と過去最高水準だ。顔ぶれも多彩なREITの世界に触れてみよう。

 東京都品川区のJR大崎駅そばに、ひときわ目立つ地上25階建てのビルがある。「NBF大崎ビル」だ。国内最大のREITである日本ビルファンドが今年2月、このビルの一部をソニーから666億円で買い取った。

 ビルファンドは国内初の上場REITのひとつだ。12年前に上場した時は、約2300億円相当のビルを計24棟保有していた。その後、増資などで資金を集めてビルを買い増し現在では71棟を持ち、その価値は約1兆円にのぼる。

 負債が5000億円ほどあり、東証でつく投資口価格(株価に相当)をもとに算出する時価総額は約8000億円で、やはり業界トップ。三井不動産が中心となって設立し、保有物件の過半は三井不が開発または仲介した物件だ。

 今年1~6月に半期としては過去最高の約1600億円をビル購入に充てた。ビルファンドの運用会社の田中健一社長は「不動産市況が好転する前に迅速に動けた」と胸を張る。

 2番目に資産規模が大きいのは三菱地所が中心となり設立したジャパンリアルエステイトだ。ビルファンドと同時に上場し、やはりオフィス投資に特化し菱地所が開発したビルの保有が多い。

 このトップ2銘柄の時価総額の合計はREIT全体の2割を占める。三井不系と菱地所系の2強の構図になっている。

 上場REITが保有する不動産は、ほぼ半分がオフィスビルだ。時価総額上位も主にオフィスに投資する銘柄が目立つ。ただ、なかでも森ヒルズリートや、大和証券オフィスなど東京都心部に集中して物件を保有する銘柄が市場では人気だ。景気がよくなると地方都市より都心部の方が賃料が上がりやすいからだ。

 次いで、ショッピングセンターなど商業施設や住宅に投資するREITが多い。商業施設はテナントとの契約期間がオフィスより長い傾向があり、賃料収入が比較的安定している。

 商業施設に投資する最大のREITは日本リテールファンドだ。三菱商事と金融大手UBSが設立し02年に上場した。今年はヨドバシカメラが入居する川崎ルフロン(川崎市)を300億円で取得。北海道から沖縄県まで全国で物件を持つ。

 住宅は商業施設より一段と収益の安定性が高い。一部の高級物件を除けば、住宅の賃料は好不況にそれほど連動しない。不況期には住宅REITの人気が相対的に上がる半面、景気が上向く時でも大幅な収益拡大が見込みずらく、投資マネーがやや流入しにくい。



真相深層 「デフレ勝ち組」窮地 アベノミクスが迫る再編 2013/12/26 本日の日本経済新聞より

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 「デフレの勝ち組」とされてきた回転ずし業界で大手同士による初めての再編が動き出した。業界2位のカッパ・クリエイトホールディングス(HD)が生き残りをかけ、5位の元気寿司と業務提携。2014年度中の経営統合を目指す。窮地に陥った外食チェーンの背景を探ると、景気回復をけん引する「アベノミクス」に足をすくわれた現状が浮かび上がる。

■円安でコスト増

 カッパHDの「かっぱ寿司」は「1皿100円」で先行し、より安い魚介類を求める海外調達網を内戦の続くシリアにも拡大。「平日1皿88円」などの低価格を打ち出し、09年までは業界首位を堅持してきた。

 最初のつまずきは低価格へのこだわりが商品の質の低下を招いたことだ。客足が鈍化し、ここ数年は既存店の不振が続いていた。すしネタの海外調達比率は現在、業界では飛び抜けて高い7割超。アベノミクスに伴う円安を受け、12年11月以降は食材コストが1割以上膨らみ、1皿5円程度とされる利益は吹き飛んだ。12年度の連結最終損益は7年ぶりの赤字に転落。13年度も赤字が続く見通しだ。

 回転ずしの国内の店舗数は約4000店。市場は飽和に近づきつつあり、業界首位のあきんどスシローや3位のくらコーポレーションも客足は鈍っている。円安による原料高は各社共通の課題。ファンド傘下にあるスシローの動向を含め、再編の火種はくすぶる。

 円安が誤算となったのは吉野家ホールディングスも同じ。牛丼に使う牛肉を全量、米国から輸入する吉野家HDは2月の輸入規制の緩和を受け、「10年に1度の勝負」(安部修仁会長)に打って出た。

 4月に牛丼の並盛りを1杯280円と100円値下げ。集客底上げによる収益回復を目指したものの、想定外の円安に直面。仕入れコストの高止まりは続く。値下げした牛丼は売れたにもかかわらず、原価率が4%上昇。13年3~8月期の国内牛丼事業の部門営業利益は前年同期比72%減の約4億円に低迷した。

 12年12月期に営業減益となった日本マクドナルドホールディングスもアベノミクスの逆風にあえぐ。

 マクドナルドの躍進を支えてきたのは05年から始めた「100円マック」。チーズバーガーなどを100円で販売し、消費者の支持を集めた。一方ではこの10年で計6回の価格改定を実施し、メニュー全体では2割以上も値上げ。安さを前面に打ち出す集客策の裏側で定番メニューや限定商品でしっかり稼ぐ仕組みだ。

 11年12月期まで8期連続の既存店増収、6期連続の営業増益を達成したマクドナルドの両面戦略も景気回復の期待感が高まるとともに効力は失われている。

■コンビニと競合

 背景にあるのはアベノミクスを受けた消費者の志向の変化だ。外食市場を見渡すと、好調なのはファミリーレストランなど客単価の高い業種のみ。25日に日本フードサービス協会が発表した11月のファミレスの全店売上高は前年同月比6.4%増という高い伸びを示した。「デニーズ」や「ロイヤルホスト」では1皿2000円を超えるステーキが人気。消費者は少しぜいたくな「ちょい高」のディナーに流れている。

 マクドナルドも1個1000円の高級バーガーの限定販売などで対抗するものの、客離れが続く。11月の既存店客数は14.4%減と10年ぶりのマイナス幅となり、13年12月期は2期連続の最終減益が確実だ。

 アベノミクスで足元が揺らぐ外食チェーンにとっては過去最高水準の新規出店を続けるコンビニエンスストアも大きな脅威となっている。米コンサルティング会社のアリックスパートナーズによると、12年の日本国内のレストラン市場は約12兆円。15年間で7%、約1兆円縮小した。この間、弁当や総菜など「中食」の市場は約3兆6000億円から約5兆9000億円に60%以上も拡大している。

 コンビニの10~12年の平均成長率は年8%。アリックスの深沢政彦・日本共同代表は「コンビニがこれほどまでに食機会を提供する国はほかにない」と指摘する。再浮上を目指す「デフレの勝ち組」はコンビニとの厳しい競合にも直面している。(横山雄太郎)



経営書を読む ジョンソン著「チーズはどこへ消えた?」(2) 成功体験に安住 変化への対処難しく 2013/12/24 本日の日本経済新聞より

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 大量にあったチーズが、ある日突然消えてしまいます。新しいチーズを探しに走り出すネズミを横目に、知性が高い小人は事実を受け入れることができず、現状にしがみついてしまうのです。

 大量のチーズを見つけた直後から、その予兆は表れていました。ネズミは大量のチーズを見つけた後も、それまでの生活と何ら変わることなく、毎朝勤勉に早起きして走ってC区画に通い、その日その日のチーズを楽しんでいました。

 小人たちは寝坊癖がついて、ゆっくり歩いての重役出勤。チーズは毎日そこにあって当然。だって、私が努力して勝ち取った「私のチーズ」なんだから。C区画のそばに引っ越し、安住します。

 チーズが消えたその日、小人は現実を受け入れられないばかりか、「オレのチーズを盗ったのは誰だ?」と憤りをあらわにします。新たな現実(変化)にどう対処すべきかという理性より、受け入れたくないという感情が小人を支配します。結局その日は、「こんなはずはない。明日になったら戻っているに違いない」と、家に帰ります。要は先送りです。

 翌日以降も消えたチーズは現れません。それでも小人は「新たなチーズを探しに迷路に飛び出していって、見つからなかったらどうするのか」と、失敗するリスクを理由にチーズ探しに踏み切れません。「バカなネズミと違って、我々なら必ず現状を打開できる」とC区画にしがみつきます。

 しまいには、「壁の中にチーズが隠されているに違いない」と、一発逆転を狙った根拠のない起死回生策を打ち出し、毎日朝から晩まで壁を削り続けます。そして、痩せ細っていきます。

 滑稽に見えますが、個人も企業も一度成功を収めてそこに安住してしまうと、変化を受け入れるのが難しくなるものです。成功すればするほど、その残像にしがみつく自分自身を自己正当化しようとするのが、人間という生き物なのでしょう。

 (ケーススタディーなど全文を「日経Bizアカデミー」に掲載)



FRB誕生100年 メルツァー教授に聞く ドルで世界秩序確立、金融危機後の対応に課題 2013/12/24 本日の日本経済新聞より

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 米連邦準備理事会(FRB)の創設を定めた連邦準備法の成立から23日で100年。FRBは超大国となった米国の通貨の番人として内外で影響力を拡大してきた。その歴史上の役割と今後の課題について、FRB研究の第一人者でカーネギーメロン大のアラン・メルツァー教授に聞いた。

 ――米国へのFRBの最大の貢献は何ですか。

 「権限がごく限られた組織として生まれたFRBは世界最強の中銀に進化する過程でドルを基軸通貨に押し上げた。米国が演じた“世界の警察官”の役割はドルの地位と裏表。米国はドル基軸を背景に世界中に米国債を売って資金を集め、国際秩序を担う力を得た」

 ――逆に、どんな不利益を生みましたか。

 「米国は(金・ドル本位制のもと為替相場を安定させる)ブレトンウッズ体制を維持できなかった。世界中にドルがあふれるなか主に1970年代に米国と世界にインフレの種をまいた」

 ――100年間で政策運営が最も成功した時期は。

 「景気の振幅が減り『大いなる安定』と呼ばれたグリーンスパン議長の時代だ。物価や成長率に基づいて政策を決めるルールを重視したことが大きい」

 ――同議長は金融危機の原因をつくったとも批判されています。

 「金融市場に近い人々がデフレの危険をあおった。ウォール街の大銀行はFRBに大きな影響を及ぼしてきた。この時も同じ。住宅市場にお金が流れるのを助けたが、政策は緩みすぎた」

 ――2008年の金融危機後の未曽有の量的緩和は効果を生みましたか。

 「FRBの行動は愚かだ。準備預金を積み上げただけで経済を巡るマネーは増えていない。米国の問題は実体経済。銀行も企業も巨額のお金を抱えるが投資が起きない。理由は増税や規制強化。1930年代後半、増税を加速させたルーズベルト大統領時代と同じだ」

 ――次期議長となるイエレン副議長の課題は。

 「FRBの独立を取り戻すことだ。政府の赤字を埋めている状況は独立とはいえない」

(聞き手は米州総局編集委員 西村博之)

 48年デューク大卒、58年カリフォルニア大学ロサンゼルス校で経済学博士号。金融政策、FRB研究の第一人者。88~89年に米大統領経済諮問委員会(CEA)顧問。日銀金融研究所の顧問も務めた。85歳。



経済観測 20年五輪と日本経済 期待がデフレ打ち破る 経済同友会副代表幹事(ローソン最高経営責任者) 新浪剛史氏 2013/12/24 本日の日本経済新聞より

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 2020年東京五輪(オリンピック・パラリンピック)は日本経済をどう変えるか。経済同友会で招致活動に取りくんできた新浪剛史副代表幹事(ローソン最高経営責任者)に聞いた。

時間軸の効果大

 ――同友会が組織をあげて五輪招致に熱心だったのはなぜですか。

 「若い世代に強い『気』を持ってもらいたかった。彼、彼女らが夢を語りにくい現状をうち破り、明るい時代が来るんだという確信を抱いてもらうひとつのきっかけが五輪だ。面白いことがあるという期待がデフレ解消にも有効。とくに20~40代のモチベーション(動機)を高めたかった」

 「納期が定まると日本人は強みを発揮する。過去二十数年は納期をはっきりさせないままに(経済再生を)何とかなるさでやってきた。五輪を成功に導くというゴールまで6年強。時間軸のコミットメント(公約)が定まった意義は経済再生の面からも大きい」

 ――アベノミクスに五輪効果も相まって産業界は活気を取りもどしました。

 「成長戦略の核である環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加も経済再生へのコミットメントだ。五輪も同じ。外へのコミットメントをてこに、内を変えてゆくことが大切だ」

 ――ローソンの事業展開に変化は?

 「来日者の増加にそなえてどういうサービスを提供すべきか、議論を始めている。たとえば食。宗教上の制約がある人にどう対応すべきか。また店舗のバリアフリーはどうすべきか。コンビニも変わるべきは変わらなければならない」

 「1964年との違いはものづくり主体の経済からサービス主体の経済への移行だ。ローソンに海外から客がもっと来るようになればローソンのグローバル展開にも弾みがつく」

 ――他社はどうですか。

 「五輪組織委が立ち上がり、骨格が固まるにつれて同じ動きが広がるだろう」

出生率も上昇へ

 ――20年へ向け景気はどんな軌道を描くでしょう。

 「足元で顕著なのは建設需要の増加。都心部ではクルマの渋滞が目立つ。消費税の増税はあるが、個人消費はそれを乗りこえるだろう。鍵は技術革新だ。ヘルスケア、農業などの分野にベンチャーをはじめとする新しい企業が誕生し、雇用を生み出し、消費が拡大する好循環が期待できる」

 「介護や子育て産業は女性の雇用を増やす。賃金引き上げは一過性ではいけない。少しずつだが合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子供の数)も上がってくるだろう」

 ――東京への一極集中がさらに進みます。

 「意識の高い地方自治体の首長は首都圏に限らず、五輪を生かして来訪者を呼びこもうとしている。日本食という面でも地方には東京とは違う魅力がある」

 ――五輪後が心配です。

 「パラリンピックは都市インフラのバリアフリー化を加速させる。その勢いを駆って超高齢時代の都市づくりを続ければよい。中国をはじめアジア各国が日本をみつめている。そのモデルになるような営みが日本経済を支えるだろう」

(聞き手は編集委員 大林尚)



攻めるプーチン(下) 巧みな社会統制 愛国主義で奉仕求める 2013/12/23 本日の日本経済新聞より

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 12月初め、クレムリン(大統領府)に一通の速達郵便が届いた。「国家資産を管理する連邦機構に改善措置を命じてほしい」。プーチン大統領にこう直訴したのは、大統領自身がリーダーとなって6月に正式に旗揚げした社会団体「国民戦線―ロシアのために(ONF)」のボロネジ州支部だ。

全国に監視体制

 肥沃な黒土が広がる中西部ボロネジ州で、連邦機構が5000ヘクタールの広大な国有農地を突然競売にかけた。約200人の農民が抗議したが、無視された。ONFが助け舟を出し、連邦機構の「無関心と怠慢」を糾弾した。

 「我々には大統領に直接訴える手段がある」。ONF州支部のワシリー・ポポフ共同議長は語る。直訴を受け、連邦機構は直ちに改善策の検討に入ったという。プーチン氏は10月末までにONF支部を全国に張り巡らし、地方の行政組織や支配層の活動を厳しく監視する体制を築いた。

 12月9日、報道界に激震が走った。大統領府がソ連時代から世界にニュースを発信してきた伝統ある通信社の再編を発表。国営メディアの中で比較的自由な報道方針で知られた同社に「ロシアの国家的利益を守るため」、海外への宣伝機関になるよう命じた。

 国家元首に返り咲いてから一年半余りのプーチン大統領が社会への統制色を強めている。2011年末から盛り上がり、一時はモスクワで10万人以上の抗議デモを起こした「反プーチン運動」を締め付け、野党勢力を抑え込んだ。13年は政権基盤の安定へ反転攻勢の年になった。その波は教育やビジネスなどあらゆる分野に押し寄せる。

 教育問題ではばらばらだった歴史教科書の記述内容を新たな統一概念に基づき編さんするよう指示した。「社会状況の安定」「経済危機の克服」など00年に始まった「プーチン体制」の肯定的側面を強調させた。経済分野では法人税など税関連の事件で起訴できる権限を捜査機関に与える法案を提出。ビジネス界ににらみをきかせた。

 プーチン流統治を正当化するのは愛国主義だ。大統領は19日の記者会見で「愛国主義は国家理念を前進させるためにとても重要だ」と主張。国への奉仕を求めた。「保守主義者」を自認するプーチン氏の信念でもある。

経済低迷足かせ

 大統領にとって経済の低迷が足かせとなる。過度の資源依存で13年の成長率は1.4%に下がる見通しで、投資の刺激が欠かせない。プーチン大統領が19日、政権と対立し服役中の元石油王ミハイル・ホドルコフスキー氏の恩赦を表明したのも、投資環境への内外の懸念を取り除こうとしたためだ。

 「反プーチン運動」の核となった都市部の中間層や知識層は冷淡だ。リベラル派の有力ニュースサイト「ガゼタ・ル」はONFを政権に従順でない人に対する「圧力の道具」と批判する。世論調査機関レバダ・センターによると、次期大統領にプーチン氏を「望まない」との回答は45%で、「望む」の33%を上回る。

 モスクワ支局 石川陽平、田中孝幸が担当しました。



日曜に考える 危機は去ったか(17) リーマン・ショック5年 米、中国頼みの代償 一極集中の時代終わり混迷 2013/12/22 本日の日本経済新聞より

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 リーマン・ショックは米国一極集中の時代を終わらせた。深手を負った米国は、かつてのように一国だけで世界の政治と経済を引っ張れなくなった。抜きんでた力を持つ国が現れないなか、急成長した中国は既存の秩序に揺さぶりをかける。世界は「極」のない不安定な時代に入った。

 2008年12月4日、北京の釣魚台迎賓館。中国副首相の王岐山と米財務長官のヘンリー・ポールソンが共同議長を務める米中戦略経済対話が始まった。

 メディアの傍聴を認める冒頭の数分間は、普段なら和やかな挨拶に終始する。だがこの日、王は記者やカメラマンが退室する前にいきなり本題に入った。

2008年12月、米中戦略経済対話で握手するポールソン米財務長官(中央左)と王岐山中国副首相=共同

 「米国が経済と金融市場の安定に向けて必要な措置をとり、中国が米国内に持つ資産の安全を確保するよう要望する」

 目の前に座ったポールソンは王の厳しい口ぶりに、一瞬たじろぐような表情を見せた。王が言及した「中国が米国内に持つ資産」とは、米国債のことである。

■日本抜き1位に

 中国は米国債の保有額で、リーマン・ショックが起きた08年9月に日本を抜いて世界一になった。ドルへの不安が高まった10月に入っても買いの手を緩めず、同月末の保有残高は9月末に比べて一気に700億ドル近くも増えた。

 中国が米国債を大量に買い増した時期は、米政府が国債の増発を迫られたタイミングと重なる。

 最大7000億ドルの公的資金を投じて金融機関から不良資産を買い取る米金融安定化法。10月3日に成立した直後に、ポールソンは同法の実行に必要な資金を手当てするため、国債の発行を増やすと表明した。

 「引き受け手はいるのか」。そういぶかる市場に、ポールソンは同月21日の講演で一つの答えを出す。「私は中国の王副首相と緊密に連絡をとっている」

 実は、ポールソンと王は10年来の友人だ。

 1990年代末、ゴールドマン・サックスの幹部だったポールソンは、広東省の副省長としてノンバンクの破綻処理にあたっていた王に実務的な助言をした。王はポールソンに深い信頼を寄せたという。

 「われわれが築いた中国政府との強いきずなは、米国の信用を保つうえで非常に役に立った」。ポールソンは回顧録でこう振り返る。危機から抜け出すために、世界最大の外貨準備を持つ中国に頼らざるを得なかったという告白だ。

 ただ、中国に借りをつくったツケは小さくなかった。中国は最大の債権者として、米国がつくり上げた国際金融の秩序に公然と異議を唱えるようになる。

 09年3月23日、中国人民銀行総裁の周小川が発表した論文が世界を驚かせた。「基軸通貨の発行国だけで世界に流動性を供給し、同時に通貨価値を安定させることはできない」。論文はドル基軸体制の限界を指摘し、ドルに代わる「超主権基軸通貨」創設を訴えた。

 中国がこうした主張を発信する場として活用したのが、09年6月に発足したBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)首脳会議だ。11年からは南アフリカも加わり、新興国が世界の多極化に向けて結束をアピールする舞台となった。

■「債権者の権利」

 中国は米国の軍事予算にも口出しするようになる。

 11年8月に米格付け会社が米国債の格下げを発表すると、中国国営の新華社は「米国の最大の債権者として、中国はドル資産の安全を保証するよう米国に要求するあらゆる権利を持つ」と訴える論評記事を配信した。具体的に求めたのが軍事費の削減だった。

 リーマン危機を機に、米国では中国と共に地球規模の問題に取り組む「G2論」が盛んになる。09年7月、米大統領バラク・オバマはワシントンで開いた米中戦略・経済対話で「我々は共に重い責任を負っている」と演説し、G2への意欲をにじませた。

 中国は乗らなかった。「国際問題は1、2カ国で決められない」。09年11月、中国首相の温家宝は訪中したオバマとの会談でG2論に反対の立場を伝えた。米国から責任を押しつけられたくないのが本音だ。

 米国一極集中の次の世界は、まだ見えない。=敬称略

 政治部次長 高橋哲史が担当した。

米中「G2論」の虚実

相互依存強めつつ、経済成長で同床異夢

 中国で天安門事件が起こり、ベルリンの壁が崩壊した1989年。米国の政治学者、フランシス・フクヤマは「歴史の終わり」と題する論文を発表した。

 君主制やファシズム、共産主義といったイデオロギーを打ち破った「リベラルな民主主義」は、人類にとって最後の統治形態になるかもしれない――。フクヤマの主張は当時、米欧に根づいた民主主義と市場経済の「勝利宣言」と受け止められた。

 それから四半世紀。ソビエト連邦の崩壊後、米国は金融をテコに繁栄を謳歌した。だが、リーマン危機は米国の時代が最終形でないことを示した。

 米国の経常赤字はピーク時の06年に8000億ドル(約80兆円)近くに上った。中国をはじめ世界各国がつくったモノを、米国が借金を膨らませて消費する不均衡を保つのは限界だった。

 天安門事件で崩壊に向かうと言われた中国は地力をつけていた。布石は92年に採択した「社会主義市場経済」。国が経済のあらゆる部門を握る「国家資本主義」が効率的に機能した。

 国家主席の習近平がめざすのは、19世紀のアヘン戦争前まで世界経済の3割を占めた超大国への復帰だ。しかし「中国は発展途上国である」との主張は変えず、世界的な課題の解決で米国と責任を分担する「G2論」には乗ろうとしない。

 中国は市場経済を掲げながら今も国有企業の力が絶大だ。「公的部門の膨張は市場をゆがめる」と考える米国とは折り合えない。二つの大国は相互依存を強めつつも基本理念で対立を乗り越えられずにいる。

「Gゼロ」でも通貨では依然ドルが支配的地位に 米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏

 ――米国など主導権をとる国がなくなる世界を「Gゼロ」と表現したのが2011年。この傾向は強まっていますか。

 「残念だが、ここ数年でGゼロの傾向は強まった。国際的な役割への米国の関心は薄れている。平均的な米国人は外交でなく、国内政策を重視している。それを心得るオバマ大統領も中東などへの関与を減らしている。米国は孤立主義に陥っているわけではない。だが、従来のようなリーダーの責務を果たす意欲を失いつつある」

 「一方、米国に代わる勢力はない。急成長する中国でさえ、外交、軍事、ソフトパワーなどの面で決定的に力を欠く。ロシアも地域的な影響力はあるものの、グローバルな大国ではない。欧州でもドイツが力を増してはいるが、フランスやイギリスが歴史的に担った役割を請け負う気はない」

 ――世界の構造変化に、金融危機はどんな役割を果たしましたか。

 「金融危機こそがGゼロの世界を生んだ。新興国が台頭するなかで米国と少数の同盟国が世界のルールを決め続ける体制はいずれ崩れる運命だった。海辺の桟橋も補修を怠ったまま波にさらされれば、ある日、強い波で大破する。金融危機は、米主導の世界秩序を崩した大波のようなものだ」

 「金融危機は世界恐慌以来の深刻な不況を招いただけでなく、自由な市場を核とする米国流の経済・政治モデルそのものにも根本的な疑問を突きつけた。そこに、中国の国家資本主義が付け入る隙ができた」

 ――20カ国・地域(G20)が率いる枠組みへの期待もありました。

 「メンバーの数が多く、立場の違いも大きい。例えば、中国は全体主義、国家資本主義の国だ。友好国を装った敵国ともいえ、経済の相互依存の裏で利害の衝突も増している。日本と中国の対立もあり、本質的に有効な組織になり得ない。G20は地域のリーダーの寄せ集めではあるが、グローバルな主導権は発揮できない」

 「結局、戦後の国際社会は米国が最終責任を負い、米国が率いてきた。米国抜きに国連もブレトン・ウッズ体制もなく、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、北大西洋条約機構(NATO)も存在しなかった。その意味では、世界を主導してきたのは主要7カ国(G7)ですらなく、『G1プラスその他』だった」

米中伯仲の時代、長く続く 世界は「G多数」に 東大大学院教授 飯田敬輔氏

 ――リーマン・ショックを機に、米国の衰退がはっきりとしてきました。

 「覇権を握っている国があれば、世界経済は安定するという『覇権安定論』と呼ばれる理論がある。この理論にのっとれば、今の覇権国である米国が衰退すると、世界経済も衰退する。リーマン・ショックは覇権安定論が大枠で正しかったことを示したといえる」

 ――米国に代わって中国が台頭してきています。

 「中国は大国としての自信を強め、以前だったらやらなかったことを平気でやるようになってきた。ただ中国が今後10~15年で米国を経済規模で追い抜くとしても、それ以後に米国を大きく引き離すとは考えにくい。米中の勢力が伯仲する時代が長期にわたって続く、というのが最もあり得るシナリオだ」

 ――米国には米中が世界を共同で管理すべきだとする「G2論」があります。

 「米国のG2論は両国が一緒に世界を統治する『共同覇権』の考え方だ。中国の温家宝前首相は、それをはっきりと否定した。そのような責任を負うのは荷が重すぎるということだろう」

 ――とすると、どこの国も覇権を握れない「Gゼロ」の世界が訪れるということですか。

 「Gというのはリーダーシップを発揮する国のことだ。現実はみんながリーダーシップをとりたがっていろんなことを画策するんだけど、結局はうまくいかないという状況になっている。それはGゼロというより『G多数』の世界だ」

 ――いずれにせよ、世界は不安定になりますね。

 「米国が覇権を握っていた時代は、みんなが『米国に相談すれば何とかなるだろう』と思っていた。しかし、これからは米国だけでなく『中国やインドにも相談してみるか』となる。だれが最初の方針を決めるのかがわからなくなり、調整はとりとめがなくなる」

 ――覇権国がもう現れない可能性もありますか。

 「戦後の米国は歴史的にみて、かなり特殊な地位にあった。あれだけ圧倒的な力を持った国は珍しい。唯一、戦後の米国と同じような状況の国があったとすれば、それは清の最盛期のころの中国だ。圧倒的な覇権国が現れるのは数百年に1回だと考えた方がいい」

(聞き手は、政治部次長 高橋哲史)

いいだ・けいすけ 07年から現職。リーマン危機を米経済覇権の「終焉の始まり」と位置づけ、「米中伯仲時代」を予想する。国際秩序の変化に「日本人も安閑としていられない」と警鐘を鳴らす。53歳。



日本経済新聞の本日の記事から