2015/03/28 本日の日本経済新聞より「珈琲店 郊外で沸く(下)多様な外食参入 競争激化、次の一手探す」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の消費Biz面にある「珈琲店 郊外で沸く(下)多様な外食参入 競争激化、次の一手探す」です。





 数少ない成長市場を巡り、郊外型コーヒー店の競争は激化する一方だ。ファミリーレストラン最大手のすかいらーくが3月に参入。迎え撃つコメダは年間100店近い出店を続ける。早くも企業淘汰を懸念する声も出始め、「珈琲(コーヒー)店」の勝ち残りには次の一手が求められている。

高原リゾートをイメージした店内は女性客でにぎわう(横浜市の「むさしの森珈琲」)

 すかいらーくが7日横浜市に開いた「むさしの森珈琲」のテラス席。家族と来た女性(30)は「おしゃれな感じ。コメダよりも好き」と話した。敷地には植栽が多く、店内は開放感のある雰囲気だ。「高原リゾートの喫茶店」をコンセプトに30~50代の女性に的を定め、先行する「コメダ珈琲店」との違いを出す。

 開業後の売上高は目標の2倍で「150店くらいすぐに出せる」と谷真社長は鼻息が荒い。外食業界2位の同社は「ガスト」など全国約3000店の拠点を持つ。1号店同様に既存店から転換を進めれば、一気に出店できる。同社の参入に他社の危機感は強まる。

 喫茶以外の外食企業の参入は同社に限らない。うどん店「丸亀製麺」のトリドールも「コナズ珈琲」を埼玉県や大阪府で運営。ハワイをイメージした店作りが特徴だ。

 「1970年代のファミレスブームと同じだ」。「高倉町珈琲」を展開する高倉町珈琲(東京・新宿)の横川竟会長は指摘する。同氏は、すかいらーく創業者の一人。過去にファミレス各社が大量出店し、経営が悪化した時代を知る。現在4店を運営し、年内に8~10店を開く。パンケーキを目当てに行列ができるが「来年には淘汰が始まる」(同氏)と警戒する。

 郊外店を増やし始めた「スターバックス」と珈琲店の違いは従業員がテーブルで提供すること。だが「セルフサービスのスタバの方が顧客と親しく会話している」(業界関係者)との指摘もあり、シニアらを満足させる接客は各社の課題だ。

 「元町珈琲」を約30店展開するスイートスタイル(東京・中央)は接客強化に動く。4月末、岐阜県岐南町の店を次世代型に改装する。厨房の設備や配置を見直して一定時間に作れる商品を5割増やし、代わりに接客に多くの時間を割く。

 コーヒー豆メーカーと共同で社内資格を設けるなど教育を強化し、コーヒーについて深く話せる人材を増やす。改革は日本マクドナルドやすかいらーくでの経験を買われ、14年に社長に登用された遠藤久氏が主導する。元町珈琲は3年内に100店へ拡大をめざす。遠藤社長は「10年、20年商売する店にすることが重要だ」と力を込める。

 店舗が広がり、都心のビルへのテナント出店など新たな立地も増えてきたコメダ。一部の店でコーヒーなど飲料を100円高くする実験を始めるなど次の一手を探る。

 似た店が増えて価格競争に陥り、商品や接客の質を落として顧客の支持を失ってきたのが外食業界の歴史だ。過去の「失敗の方程式」を教訓にできるかが勝敗を分ける。

 藤野逸郎、佐藤俊簡が担当しました。

珈琲店 郊外で沸く(下)多様な外食参入 2015/03/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「珈琲店 郊外で沸く(下)多様な外食参入」です。





数少ない成長市場を巡り、郊外型コーヒー店の競争は激化する一方だ。ファミリーレストラン最大手のすかいらーくが3月に参入。迎え撃つコメダは年間100店近い出店を続ける。早くも企業淘汰を懸念する声も出始め、「珈琲(コーヒー)店」の勝ち残りには次の一手が求められている。

(画像:高原リゾートをイメージした店内は女性客でにぎわう(横浜市の「むさしの森珈琲」))

すかいらーくが7日横浜市に開いた「むさしの森珈琲」のテラス席。家族と来た女性(30)は「おしゃれな感じ。コメダよりも好き」と話した。敷地には植栽が多く、店内は開放感のある雰囲気だ。「高原リゾートの喫茶店」をコンセプトに30~50代の女性に的を定め、先行する「コメダ珈琲店」との違いを出す。

開業後の売上高は目標の2倍で「150店くらいすぐに出せる」と谷真社長は鼻息が荒い。外食業界2位の同社は「ガスト」など全国約3000店の拠点を持つ。1号店同様に既存店から転換を進めれば、一気に出店できる。同社の参入に他社の危機感は強まる。

喫茶以外の外食企業の参入は同社に限らない。うどん店「丸亀製麺」のトリドールも「コナズ珈琲」を埼玉県や大阪府で運営。ハワイをイメージした店作りが特徴だ。

「1970年代のファミレスブームと同じだ」。「高倉町珈琲」を展開する高倉町珈琲(東京・新宿)の横川竟会長は指摘する。同氏は、すかいらーく創業者の一人。過去にファミレス各社が大量出店し、経営が悪化した時代を知る。現在4店を運営し、年内に8~10店を開く。パンケーキを目当てに行列ができるが「来年には淘汰が始まる」(同氏)と警戒する。

郊外店を増やし始めた「スターバックス」と珈琲店の違いは従業員がテーブルで提供すること。だが「セルフサービスのスタバの方が顧客と親しく会話している」(業界関係者)との指摘もあり、シニアらを満足させる接客は各社の課題だ。

「元町珈琲」を約30店展開するスイートスタイル(東京・中央)は接客強化に動く。4月末、岐阜県岐南町の店を次世代型に改装する。厨房の設備や配置を見直して一定時間に作れる商品を5割増やし、代わりに接客に多くの時間を割く。

コーヒー豆メーカーと共同で社内資格を設けるなど教育を強化し、コーヒーについて深く話せる人材を増やす。改革は日本マクドナルドやすかいらーくでの経験を買われ、14年に社長に登用された遠藤久氏が主導する。元町珈琲は3年内に100店へ拡大をめざす。遠藤社長は「10年、20年商売する店にすることが重要だ」と力を込める。

店舗が広がり、都心のビルへのテナント出店など新たな立地も増えてきたコメダ。一部の店でコーヒーなど飲料を100円高くする実験を始めるなど次の一手を探る。

似た店が増えて価格競争に陥り、商品や接客の質を落として顧客の支持を失ってきたのが外食業界の歴史だ。過去の「失敗の方程式」を教訓にできるかが勝敗を分ける。

藤野逸郎、佐藤俊簡が担当しました。



2015/03/27 本日の日本経済新聞より「珈琲店 郊外で沸く(上) 長居許して稼ぐ 外食離れのシニア照準」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の消費Biz面にある「珈琲店 郊外で沸く(上) 長居許して稼ぐ 外食離れのシニア照準」です。





 サービスや食事を充実させた郊外型コーヒー店が人気を集めている。1990年代以降、急速に増えたセルフサービス式のカフェとは対照的にゆっくり滞在できるのが魅力だ。短時間で多くの客を取り込み利益を追求してきた外食産業が見落としていた商機を掘り当てた。「珈琲(コーヒー)店」がシニア社会の主流の外食店になるとにらみ、大手の参入も相次ぐ。

午前中に店内でくつろぐ高齢者ら(名古屋市瑞穂区のコメダ珈琲店本店)

 名古屋市の住宅街にある「コメダ珈琲店本店」。3月の平日、午前6時半の開店直後から駐車場に次々と車が吸い込まれ、9時半には全202席が埋まった。「落ち着いた時間を過ごせる」と話す男性(77)は、60歳の定年前後から毎日のように通っているという。

 コメダ(名古屋市)の2013年度の売上高は前年度比44%増の159億円、営業利益は17%増の34億円と高収益だ。14年度も2ケタの増収増益となったもようだ。店舗数は現在約620と5年で1.7倍になった。

 得意客が好む大きな理由はゆったり過ごせる雰囲気だ。アンティーク調のソファは隣の席との間隔も広く、仕切りもある。新聞や雑誌も十数種類をそろえる。サンドイッチやデザート類などメニューは豊富。午前11時までコーヒー(420円)にトーストとゆで卵が無料で付く「お得感」も人気の理由だ。

 顧客の支払額は平均650円と一般的なファミリーレストランより3割安い。顧客の回転も速くないのに、どう利益を出すのか。郊外型の珈琲店は個人経営の喫茶店の良さを復活させたようにみえる。だが先駆者のコメダの経営には顧客にみえない舞台裏にコストを抑える工夫がある。

 看板商品のコーヒー。実は自社工場で集中的に焙煎(ばいせん)・抽出し、店で温めるだけで提供する。メニューは約100品目あるが食材の種類は約200に抑える。同じ食パンで10種類以上をつくるなど材料を増やさずに巧みに選択肢を広げる。結果として作業も簡略化でき、地盤の中部では厨房の担当者は店舗に一人で済むという。

 裏通りでも車で約15分の範囲に住民が多い立地を厳選し、売上高に占める家賃の比率を10%程度に抑える。ファミレスに比べ5~10ポイント低い。

 一方、同社を追撃する「星乃珈琲店」。運営するドトール・日レスホールディングスはグループ力を最大限活用する。店で1杯ずつ抽出するコーヒーは「ドトールコーヒーショップ」と共同で豆を調達する。料理はグループのパスタ店「洋麺屋五右衛門」などと共同で利用するセントラルキッチンで加工した材料を使いコストを抑えている。

 星乃の14年3~11月期の直営売上高は73億円と前年同期比で倍増のペースだ。16年2月期も約40店の出店を計画する。

 喫茶店の市場規模は80年代前半をピークに一貫して減少してきたが、12年から増加に転じた。郊外の珈琲店の押し上げ効果は大きい。安さと効率を前面に押し出してきたファストフードなど外食産業から年を重ねた顧客は離反した。珈琲店はそれを反省した外食産業からの答えなのかもしれない。

2015/03/27 本日の日本経済新聞より「経済教室 中国 習近平体制の行方(下) 環境対策、後発利益生かせ 周●(たまへんに韋)生 立命館大学教授」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「中国 習近平体制の行方(下) 環境対策、後発利益生かせ 周●(たまへんに韋)生 立命館大学教授」です。





 過去30年に及ぶ2桁ペースでの経済成長は、中国を名目上、米国に次ぐ第2の経済大国に変貌させた。しかし、成長至上主義の姿勢は、国内の大気、水、土壌、生態系に甚大な被害をもたらした。

 2015年の全国人民代表大会(全人代)では、これまでの高速成長から脱却し、持続可能な安定成長への転換を図ろうとする新常態(ニューノーマル)化が提起された。潜在的には様々な「内憂外患」を抱えるなかでも、「小康社会(ややゆとりのある社会)」の全面実現には環境問題が大きなボトルネックとなる。

 今回の全人代は、環境政策(あるいは経済の持続可能性)という観点からみた場合、2つの特徴が挙げられる。

 第一に、全面的に法制(法治)強化による環境保全効果の向上を打ち出したことである。今年1月、25年ぶりに改定された新「環境保護法」が施行された。李克強首相は全人代で「関連法規に違反する企業に対しては、どんな企業であろうと法に基づき責任を追及していく」と明言している。

 同法は中国史上最も厳しい環境法制といわれる。違反企業(汚染者)への罰金の上限をなくし、当局に工場閉鎖など法執行の権限を持たせた。監督管理を逃れて汚染物質を排出した場合には行政罰として拘留される。地方政府には深刻な大気・水質汚染が発生した際に警報を発令するなどの緊急措置を義務付けた。

 第二に、成長減速を容認する中国経済の「新常態」の下で、環境保護自体も経済成長をけん引する重要な推進力にすることである。環境規制と環境投資を両輪に、環境改善を図りつつ、経済発展をけん引することを期待している。

 第12次5カ年計画(11~15年)の環境分野への投資額は3.1兆元(約59兆円)と見込み、第11次計画(06~10年)の1.54兆元から急拡大した。清華大学学長から抜てきされた新環境保護相の陳吉寧氏は今後数年で環境分野への投資必要額が8兆~10兆元(約150兆~190兆円)に上るとの見方を示した。

 日本を含めた先進国は、経済発展、公害問題、そして地球温暖化といった環境問題を順番に経験してきた。中国の難しさは、3つの課題に同時に直面していることである。大気汚染だけでなく、もっと深刻な問題も抱える。水質汚濁、土壌汚染(重金属汚染など)、生態系破壊(黄砂、砂漠化など)といった、中国、ひいては人類の生存の根幹に関わる問題であり、回復には膨大な資金や人力、資源と時間がかかるとみられる。

 しかし、公害問題への対処は、すでに多くの先進国の失敗と成功の経験を参考にできる。例えば、60年前のロンドンは先発者として技術と政策的ノウハウが皆無の状態にあった一方、現在の中国は、多くの後発者利益を活用できるはずである。

 環境産業は「農業」「福祉」と並び21世紀の成長産業といわれる。日本企業の中国市場への進出を考える場合、現在最も有望と思われるのが、環境ビジネスである。

 例えば、07年の中国の年間火力発電量は2兆7229億キロワット時。05年の日本と中国の石炭火力発電の平均発電効率はそれぞれ43%と32%である。中国の石炭火力の発電効率を日本並みの効率まで向上できれば、二酸化炭素(CO2)削減量は7.1億トンに及ぶ。これは、日本のCO2排出量(11年度に11.7億トン)の約6割分に相当する。

 すなわち、火力発電分野での技術向上だけで中国の潜在的なCO2削減量は日本全体の排出量の半分を超える。実現すれば、中国の石炭消費量や大気汚染物質の削減、経済性の向上だけでなく、技術協力を通じて日本の産業振興と経済成長などに大いに寄与できるものと考えられる。

 では、日本も含めた国際的な環境協力には何が重要なのか。ここでは、モデル事業の構築について論じたい。

 対中環境協力を、すべての地域や分野で展開するのは不可能である。拠点となるような地域、施設を設け、そこに資源を集中して確固たる「点」をつくり、そこから「面」へと展開するような協力が効果的と考える。目に見える、手で触れる、模倣できる環境モデル事業である。環境協力効果の「見える化」は、今後の国際協力のポイントの一つになると考える。

 具体的には「東アジア低炭素共同体」構想の実現を提言したい。日本はすでに世界最高の省エネ・高効率化を達成しており、CO2を一層削減するにはコストが高く、劇的削減は不可能である。一方、CO2排出大国である中国は潜在的な削減可能量が大きく、費用対効果が高いが、自助努力に限界がある。

 そこで、革新的な技術の開発と適正な技術の移転、経済と社会システムの変革及び戦略的革新による、国境を越えた広域低炭素社会の実現が課題となる。筆者は、日中韓3カ国の協力を中心とする「東アジア低炭素共同体」に向け、中長期的に協力を進めていくべきだと考えている。

 広域循環経済圏の形成、すなわち、日中韓による循環経済モデル基地事業の推進も重要である。グローバルな規模で資源利用の最大化と廃棄物排出の最小化を実現するため、小循環(企業レベル)、中循環(地域レベル)、大循環(広域社会・国際レベル)という3つの循環経済の理念を念頭に置く必要がある。

 同モデル基地は、グリーン経済や気候変動などへの対応の必要性が増すなかにあって日中韓サミットで提案された連携事業であり、エコ、循環、低炭素などを主要な内容とする国際レベルの互恵補完型広域循環モデルの構築を目的とする。候補地は大連・庄河市が指定されている。

 経済と環境を統合する国際互恵補完型モデルのデザインにあたり重要なのは、まずローカル環境対策とグローバル環境対策の統合である。

 環境問題はグローバル対応の一方で、ローカルな生活の場から取り組まなければ実が上がらない。地道で着実な積み重ねが大事になる。特に低炭素社会実現にあたり、途上国に参加を促すには、生活に密着したローカル対策への支援が重要な視点となる。

 次に、市場メカニズムの技術移転への活用である。グローバル化された経済体制の下では、国際競争力こそが、企業存続の基本条件である。技術は民間企業が所有しているため、技術移転は移転国側の国際競争力の低下、産業・技術の空洞化を招きかねないと危惧されている。

 途上国の知的財産権の適切な保護の欠如、技術移転を促進する制度と資金メカニズムの欠如、技術移転・消化を促進するシステムの不備など、技術移転を阻害する要因が多くあり、進展を妨げているといわれる。したがって、技術移転を促進し、また移転された技術を効率よく活用するためには、市場経済メカニズムをより活用すべきである。

 さらに、先進国と途上国の利益の共有化である。CO2や硫黄酸化物(SOx)など環境汚染物質の削減効果のほかに、市場ニーズと双方の経済的な収益を踏まえ、プロジェクトを選定し、そこで得られた経済利益と環境利益を双方で共有化する。

 この方式では、先進国の技術移転によるリスクと、途上国側の技術移転のための資金負担がともに軽減されるため、旧型・老朽化した火力発電所などエネルギー多消費分野の効率的な改造が可能となる。結果として先進国側にも多くのビジネスチャンスを与えることになる。日中は技術移転を促すための人材確保や資金面での促進措置など、一定の政策インセンティブを推進する必要があるだろう。

〈ポイント〉

○「新常態」へ環境対策も経済のけん引役に

○環境モデル事業を国際協力の柱に据えよ

○技術移転の促進や利益の共有化がカギに

 しゅう・いせい 60年、中国生まれ。京都大工学博士。専門はエネルギー環境政策学

珈琲店 郊外で沸く(上) 2015/03/27 本日の日本経済新聞より

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サービスや食事を充実させた郊外型コーヒー店が人気を集めている。1990年代以降、急速に増えたセルフサービス式のカフェとは対照的にゆっくり滞在できるのが魅力だ。短時間で多くの客を取り込み利益を追求してきた外食産業が見落としていた商機を掘り当てた。「珈琲(コーヒー)店」がシニア社会の主流の外食店になるとにらみ、大手の参入も相次ぐ。

(画像:午前中に店内でくつろぐ高齢者ら(名古屋市瑞穂区のコメダ珈琲店本店))

名古屋市の住宅街にある「コメダ珈琲店本店」。3月の平日、午前6時半の開店直後から駐車場に次々と車が吸い込まれ、9時半には全202席が埋まった。「落ち着いた時間を過ごせる」と話す男性(77)は、60歳の定年前後から毎日のように通っているという。

コメダ(名古屋市)の2013年度の売上高は前年度比44%増の159億円、営業利益は17%増の34億円と高収益だ。14年度も2ケタの増収増益となったもようだ。店舗数は現在約620と5年で1.7倍になった。

得意客が好む大きな理由はゆったり過ごせる雰囲気だ。アンティーク調のソファは隣の席との間隔も広く、仕切りもある。新聞や雑誌も十数種類をそろえる。サンドイッチやデザート類などメニューは豊富。午前11時までコーヒー(420円)にトーストとゆで卵が無料で付く「お得感」も人気の理由だ。

顧客の支払額は平均650円と一般的なファミリーレストランより3割安い。顧客の回転も速くないのに、どう利益を出すのか。郊外型の珈琲店は個人経営の喫茶店の良さを復活させたようにみえる。だが先駆者のコメダの経営には顧客にみえない舞台裏にコストを抑える工夫がある。

看板商品のコーヒー。実は自社工場で集中的に焙煎(ばいせん)・抽出し、店で温めるだけで提供する。メニューは約100品目あるが食材の種類は約200に抑える。同じ食パンで10種類以上をつくるなど材料を増やさずに巧みに選択肢を広げる。結果として作業も簡略化でき、地盤の中部では厨房の担当者は店舗に一人で済むという。

裏通りでも車で約15分の範囲に住民が多い立地を厳選し、売上高に占める家賃の比率を10%程度に抑える。ファミレスに比べ5~10ポイント低い。

一方、同社を追撃する「星乃珈琲店」。運営するドトール・日レスホールディングスはグループ力を最大限活用する。店で1杯ずつ抽出するコーヒーは「ドトールコーヒーショップ」と共同で豆を調達する。料理はグループのパスタ店「洋麺屋五右衛門」などと共同で利用するセントラルキッチンで加工した材料を使いコストを抑えている。

星乃の14年3~11月期の直営売上高は73億円と前年同期比で倍増のペースだ。16年2月期も約40店の出店を計画する。

喫茶店の市場規模は80年代前半をピークに一貫して減少してきたが、12年から増加に転じた。郊外の珈琲店の押し上げ効果は大きい。安さと効率を前面に押し出してきたファストフードなど外食産業から年を重ねた顧客は離反した。珈琲店はそれを反省した外食産業からの答えなのかもしれない。



2015/03/26 本日の日本経済新聞より「経済教室 中国 習近平体制の行方(中) 資本の「純輸出国」に定着へ 梶谷懐 神戸大学教授」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「中国 習近平体制の行方(中) 資本の「純輸出国」に定着へ 梶谷懐 神戸大学教授」です。





 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の第3回会議が今月、北京で開かれた。李克強首相の政府活動報告では経済が「新常態」と表現される安定的成長段階に入ったことが強調され、成長率目標を前年までの年率7.5%前後から7%前後に引き下げることが表明された。

 では「新常態」を迎えた中国経済は具体的にどのような構造変化を遂げつつあるのだろうか。ここでは、中国が「資本の純輸出国」に変化しつつあることを示す一連の動きに注目しつつ、経済の中長期的な変化の方向性とその影響について考えたい。

 まず、外貨管理局が公表した国際収支勘定で、2014年10~12月期の直接投資を含む資本収支が912億ドルの赤字を示した(図参照)。同時期の直接投資は610億ドルの黒字なので、より投機性の高い証券投資などの形で1500億ドル以上の資本流出が生じたことになる。これは統計開始以降で最大規模である。こうした資本収支の赤字化を映し、外貨準備も14年全体で1188億ドルの減少をみせた。

 15年以降も、その流れが続いていることを示唆するのが、人民元の対ドル相場の下落である。3月3日の上海外国為替市場では一時1ドル=6.276元まで下落し、約2年5カ月ぶりの安値となった。

 ただし、これは市場ではすでに織り込み済みであった。元の1年物の対ドル先物レートは昨年12月に急落し、1ドル=6.35元から6.4元前後の水準で推移していたからである。このような元の対ドルレートの急落は、元を売ってドルを買う、すなわち資本の対外流出が大規模に起きていることと対応している。

 このような資本収支の動きとセットで理解すべきなのが、2月末に中国人民銀行(中央銀行)が昨年11月に次ぐ利下げを公表したことである。政策金利である預金基準金利(1年物)を0.25%引き下げ2.5%、貸出基準金利も0.25%下げ5.35%にすると発表した。同時に預金金利の上限が基準金利の1.2倍から1.3倍に引き上げられるなど、金利の自由化に向けた方向性が明らかにされた。

 利下げは不動産価格の下落に象徴される景気の下支えを狙ったものだが、同時に人民元の対ドルレートの下落に対し過度の介入はしないという人民銀の姿勢を示したものでもある。もし人民銀が元の下落を食い止めるために元買い介入を行ったとすると、市中から元を引き揚げる引き締め効果を持ってしまうため、利下げや準備率引き下げの効果が相殺されてしまうからだ。

 さて、このような中国からの急速な資本の流出、それに伴う資本収支の赤字化の背景は、一時的な現象ではなく、以下のような中国国内およびそれを取り巻く世界経済の中長期的な変化を反映したものだと考えられる。

 まず指摘しておきたいのが、対外資本投資および外貨取引を行う主体に変化がみられる点だ。それまで、人民元と外貨との取引は、QFII(適格外国機関投資家=政府の認可を経た海外の金融機関)によるものか、外貨を日常的に取り扱う貿易会社が為替動向をにらみ、決済時期を早めたり遅らせたりして手持ちの外貨と人民元の比率を調整する「リーズ・アンド・ラグズ」が主流であった。

 しかし、人民銀が2月15日に公表した「2014年中国クロスボーダー資金流動観測報告」は、「蔵匯於民(外貨が民間に保有される)」との言葉で表現される国内の外貨保有主体の多様化が、急速に進んでいると指摘する。

 背景には、中国政府が上海自由貿易試験区の創設などを通じて進めてきた人民元のクロスボーダー取引および資本投資に関する規制緩和の影響がある。この流れの延長線上に、昨年11月に始まった、上海と香港の株式市場を相互乗り入れする「滬港通(『滬』は上海を意味する)」が位置づけられる。また、深圳と香港の株式市場の相互乗り入れを行う「深港通」も検討段階に入っている。

 「滬港通」や「深港通」を通じた取引に参加するのにあたり、事前審査は不要である。制度が整備されることによって、今後ますます多様な民間企業や個人が対外証券投資や外貨取引の主体になっていくと考えられる。

 次に指摘できるのが、グローバル経済での資金の流れの変化である。リーマン・ショック以降、3回にわたって行われた米国の量的金融緩和(QE)の影響を受け、中国などには、投資資金の国内流入が生じていた。その米国のQEも昨年10月に終了したことで、米国内への資金の還流が急速に進みつつある。

 3つ目の大きな変化は、海外への積極的な資本投資と、それに伴う輸出の拡大を新たな成長エンジンにするという政府の発展戦略の転換である。それを象徴するのが、中国から中央アジアを経由して欧州に至る地域でのインフラ建設を掲げた「シルクロード経済ベルト」構想や、それを資金面で支える「中国版マーシャルプラン」である。

 今回の全人代における政府活動報告でも、「シルクロード経済ベルト」に「海のシルクロード」を合わせた「一帯一路」戦略の推進が強調された。これに合わせて、中国企業の海外進出(「走出去」)を促進させるための手続きを簡素化するという方針も明らかにされた。

 これら3つの動きはいずれも一時的な動きとは考えにくく、中国から海外への資本投資の流れは今後も拡大していくものと考えられる。また中国政府も、これまで米国債がほとんどを占め、収益率の低かった外貨準備が減少することを、基本的に歓迎していると考えられる。

 もっとも、海外への資金の流れは、中国国内の金融改革の動向にも大きく左右される。その意味で、3月12日に人民銀の周小川総裁が、預金保険制度を15年の上半期には正式に発足させ、年内に預金金利の上限規制を撤廃すると明言したことは非常に重要な意味を持つ。

 預金金利の自由化は、13年の中国共産党中央委員会第3回全体会議(3中全会)当時から重要課題として挙げられていたが、これまで具体的な進展がみられなかった。中国主導のアジアインフラ投資銀行に欧州諸国が相次いで参加を表明し、国際金融機関として本格的な始動が予想される現状からみても、政府は投資資金の移動の自由化を促進する金利の自由化に本気で取り組む公算が大きい。

 ただし、懸念材料もある。現在中国政府が取り組んでいる「新型都市化」の推進は、国内のインフラなどへの投資拡大を必要とする。したがって、海外に資本を輸出し、国内財の輸出拡大を図るものである「一帯一路」戦略との間に、「資金の奪い合い」が生じる可能性がある。また、国内の過剰な生産能力の「はけ口」を海外に求めることで、本来淘汰されるべき企業が延命し、生産効率性の低下をもたらすと警告する声もある。

 いずれにせよ、これまで外国からの投資を受け入れて成長してきた中国が資本の純輸出国へと転じることは世界、とりわけ東アジアの経済情勢に少なからぬインパクトを与えることが予想される。例えば昨年の後半から米国の不動産市場に中国人投資家の資金が流れ込んでいる、という報道が目に付くようになった。今後も、中国国内からあふれ出た投機的な資金が日本を含む世界の不動産・資本市場のかく乱要因となることは十分考えられる。

 必ずしも透明性の高くないチャイナマネーの動向を見極めるためには、今後の中国国内の金融改革の進捗状況に加え、都市化政策の進展など成長戦略との兼ね合いにも、絶えず目を配っておく必要があるだろう。

〈ポイント〉○国際収支は資本の大規模な海外流出示す○輸出拡大を軸とする発展戦略転換も背景○国内投資の財源や安易な輸出傾斜に不安

 かじたに・かい 70年生まれ。神戸大博士(経済学)。専門は現代中国経済

2015/03/26 本日の日本経済新聞より「反転うかがう地価(下)海外マネー流入 円安追い風、危うさも」

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 「日本の不動産に投資したい」。東京スター銀行の本店(東京・港)には、台湾の個人投資家から頻繁に打診がある。

東京スター銀行は台湾の個人向けに不動産投資ローンを扱う(東京都港区)

 同行は昨年6月に台湾の中国信託商業銀行が530億円を投じて買収し、アジア投資家の日本への橋渡し役となりつつある。昨年12月には台湾客向けに、日本の不動産購入に最大5億円を融資するローン商品「東京招福星」を扱い始めた。日銀の大規模緩和で利率も年2%程度と低く、海外勢の投資意欲を刺激する。

 2015年の公示地価は全国の商業地がマイナス圏から脱し、持ち直しの機運がある。要因の一つは、円安で「日本の不動産が割安だ」とみた海外マネーの流入だ。

投資額2.7倍に

 都市未来総合研究所によると、14年の国内の不動産取引額は約5兆600億円と前年比16%伸びた。とりわけ外資系ファンドなど海外企業の投資は1兆円弱と前年の2.7倍だ。円・ドル相場は1年間で14%も円安が進み、海外マネーを呼び込みやすい。

 投資規模も大きい。シンガポールの政府投資公社は昨年10月、東京駅前の「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」(東京・千代田)のオフィス部分を約1700億円で取得し、仏保険大手のアクサグループも「中野セントラルパーク」(同・中野)の東棟を約370億円で買い取った。

 大規模な金融緩和で国内マネーも不動産市場に向かいやすい。投資家から集めた資金で不動産を買い上げ、賃料収入などを分配する不動産投資信託(REIT)。急成長するのは非上場の私募REITだ。平均利回りは4%程度と相対的に高く、三井住友トラスト基礎研究所の集計では、資産規模は今年2月に1兆円を超えた。

 上場REITと異なり私募REITは金融機関などプロの投資家が対象で、多額の資金を振り向けるのは貸出先に乏しい地方銀行だ。資産1兆円のうち地域金融機関の資金は2割弱にあたる約1800億円に達し、昨年4月から700億円も増えた。「私募REITは運用難の銀行が利回りを確保できる数少ない分野」(大和証券の松野真央樹アナリスト)だ。

東京は価格高騰

 危うさもある。国内最大のREITである日本ビルファンド投資法人は、14年12月期の取得物件がゼロ。「相当数を検討したが東京はかなり価格が高騰している」(運営会社の田中健一社長)という。シンガポール公社が取得した東京駅前の物件も、国内勢は「賃料上昇をかなり強気にみている」(大手不動産幹部)と指摘する。円安の勢いが止まれば、海外の投機マネーは逆に流出に転じるリスクもある。

 不動産取引額が5兆円を超えた07年は「ミニバブル」といわれたが、その後のリーマン・ショックで市況は暗転した。今回も投機に終われば、地に足のついた地価回復にはつながらない。

2015/03/26 本日の日本経済新聞より「真相深層 中国軍艦船、じわり接近 尖閣めぐり「けん制」と「融和」 自衛隊無線には応答」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「中国軍艦船、じわり接近 尖閣めぐり「けん制」と「融和」 自衛隊無線には応答」です。





 どう、理解したらよいのだろう。尖閣諸島をにらみ、中国軍が「けん制」と「融和」という、正反対のアクセルを同時に踏んでいる。中国の真意はどこにあるのか。舞台裏を探ってみた。

 中国沿岸から、ざっと330キロのところにある尖閣諸島。その中間よりちょっと尖閣寄りの公海上には、ほぼいつも、2~3隻の中国軍艦船がとどまっている。

 そこに常駐するようになったのは、2012年9月に日本政府が尖閣を国有化してから。遠くから尖閣付近の様子をうかがい、時々、近づいたかと思うと、再び離れていく。そんな行動を繰り返している。

 複数の政府関係者によると、最近、このパターンに異変が起きている。以前はどんなに尖閣に近づいても、100~120キロ以上は一切、接近しなかった。ところが14年11月下旬ごろからは、最短70キロぐらいまでやってくるようになったというのだ。

 中国軍艦船の動きはいずれも公海上であり、国際法に違反しない。ただ、日本政府は「強い関心を持って、注視している」と、中国側にひそかに申し入れている。

 尖閣が国有化されて以来、中国はずっと、監視船を尖閣領海に侵入させつづけている。だが、これらの船は中国軍ではなく、日本の海上保安庁にあたる中国海警局の所属だ。

 その一方で、中国は「軍艦などによる挑発は、ずっと控えてきた」(日本の安全保障担当者)。軍が前面に出れば、緊張が一気に高まり、米軍が介入する口実を与えてしまう。こう判断しているようだ。

 では、中国はなぜ、ここにきて軍艦をさらに尖閣に近づけはじめたのか。軍事緊張も辞さない路線にかじを切るつもりなのだろうか。

 現場の動きを注意深くみると、真相はそう単純ではないように思える。中国軍は同じタイミングで、むしろ緊張を和らげるような行動にも踏み切っているからだ。

衝突防止へ転換

 「こちら○○。いま○○の方角に向かっている」。中国軍艦船は14年末ごろから、東シナ海で自衛隊艦船との無線交信に応じ、自分の位置や航路を伝えるようになったという。英語を操れる船員を乗せており、中国側から呼びかけてくることもある。

 こうした交信は意図しない衝突を防ぐのがねらいで、主要国間ではふつうに実施されている。ただ、尖閣の北方にいる中国軍艦船は、自衛隊艦船との交信には応じようとしなかった。この方針を転換したのである。

 中国は15年に入り、衝突を防ぐための「海上連絡メカニズム」協議や、日中安保対話の再開にも次々と応じている。「上層部からは、日中海上連絡メカニズムを早く設けるよう指示されている」。中国当局者は一連の協議で日本側にささやいた。

 中国は、南シナ海で環礁埋め立てなどの強硬策を続け、米国やアジア各国と対立を深めている。「2正面対立」を避けるため、東シナ海では軍事衝突を招かないよう注意しながら、淡々と尖閣に監視船を送り続けるつもりだ――。中国軍が東シナ海で衝突防止の対策をとりはじめた理由について、日米両政府の関係者らはこう分析する。

 だとすれば、中国軍艦船をさらに尖閣に近づけるようになったのは、どう理解すればよいのか。その疑問を解くヒントが、艦船の行動パターンにひそんでいる。

海警局と訓練?

 関係者らによると、彼らが尖閣に近寄ってくるのは、たいてい、海警局の監視船が尖閣領海に入ってくるときだという。将来、尖閣で危機が起きたとき、海警局と軍がうまく協力できるよう、連携を図る訓練をしている可能性がある。

 日本側は尖閣を念頭に、海保と自衛隊の連携を探るほか、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定し、米軍との協力も強めようとしている。これに対抗する動きともいえる。

 衝突は起こしたくないが、揺さぶりは強めていく。尖閣をめぐり、そんな底意をうかがわせる中国。それが事実なら、危機でも、平時でもない緊張状態が、これからも長く、続きそうだ。

(編集委員 秋田浩之)

2015/03/25 本日の日本経済新聞より「中国習近平体制の行方(上) 協調・強硬外交方針に矛盾 宮本雄二 元駐中国大使」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「中国習近平体制の行方(上) 協調・強硬外交方針に矛盾 宮本雄二 元駐中国大使」です。





 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)の全体会議が15日に閉会した。全人代の位置づけは日本の国会とは根本的に異なる。中国は「共産党が(すべてを)指導する国」である(図参照)。党が方針を決め、立法、司法、行政などの国家機関が実施する仕組みとなっている。しかも各機関には党組織があり、指導者は原則、全員が党員である。全人代での討議も、あくまでもその仕組みに沿ったものとならざるを得ない。

 この仕組みでは党のトップに権力が集中しないと、ものごとは決められないし、決めても前に進まない。2012年11月に成立した習近平政権は、まずトップへの権力集中(腐敗問題の処理)と党の方針確定にエネルギーを集中させざるを得なかった。その間、国務院(行政)と全人代(立法)はあまり大きな役割を果たさなかった。

 腐敗問題を利用した習主席への権力集中も進み、政権はこの2年でかなり力をつけてきた。いよいよ立法府と行政府による党の方針の具体化の段階に入る。つまり構造改革であり、李克強首相の今年の政府活動報告は経済体制改革に重点を置き改革を全面的に深化させるとうたった。それを法治国家の建設、すなわち法律で制度と仕組みを作り、その実施も法律で縛り、監督も法律に従うことにした。

 報告は「発展」の重要性を昨年以上に強く打ち出した。発展の速度は合理的なものであるべきだと断った上で「中進国の罠(わな)」を克服するには発展に頼るしかないと明記している。そこには本年の経済成長は昨年よりも難しくなったという判断がある。成長率見込みも昨年の7.5%前後から7%前後に引き下げた。それ故に改革をもっと進め、持続的な成長を確実なものにしなければならないという報告の結論になる。

 この基本認識は重要である。グローバル経済の下での経済成長、つまり発展をはかろうとすれば、安定した協調的な国際関係が不可欠になるからだ。李首相は、記者会見では「中国は発展を第一の重要な任務としており、平和な国際環境を必要とする」と、明確に述べている。

 筆者は13年12月26日付の本欄で、中国の改革派は、ほぼ国際協調派と重なり、日本は改革派と連携し、中国の国際協調路線を定着させるべきだと論じた。同年10月の周辺国外交座談会における習講話を踏まえての結論であった。昨年11月開催の対外工作会議での習講話により、この路線は再確認され、補強された。

 1つ目のポイントは、協力・ウィンウィンを中核とする新しい型の国際関係の構築である。これは経済発展を強く意識した方針でもある。

 2点目は、中国式価値観の提起である。「義利観」(『大学』には「国、利を以=もっ=て利と為さずして、義を以て利と為す」とある)外交を唱えており、これは周辺国外交の理念として打ち出された親善、誠実、互恵、包容の理念とも重なる。中国外交が価値観、それも伝統的価値観を口にし始めたということであり、注目される。

 問題は、中国のやることと言うことが違うではないかという点である。孟子は「力を以て仁を仮る者は覇なり」と言った。口で立派なことを言っても力で自分の意思を押しつけるのは覇道なのだ。

 3点目が新しい型の大国関係の推進と構築である。もともと既存の覇権国である米国と台頭する中国との不可避的な衝突を避けるために考え出され、現時点の内容は互いの核心的利益は尊重し合うという段階にとどまる。そして最後に、領土、主権、発展の利益を断固として擁護するという、おなじみとなった核心的利益外交がある。そして平和を強調し、紛争や問題を適切に処理することにも言及している。

 こうしたなかで軍事費の増大は続き、15年の軍事予算は前年比10.1%増となった。確かに国内総生産(GDP)比では米国やロシアよりは低い。予算全体の増加率と同じというのも、そうであろう。だが、何のためにその軍事力を使うかについては、依然としてはっきりしない。

 現代軍事理論は、脅威認識があり、それに対処するための戦略と戦術があり、それを支える兵器体系と部隊構成がある。民主主義国家では、まず国民にそのことを説明している。ところが中国ではここが曖昧なままなのだ。すでに日本の2倍をはるかに超えた軍事費の急速な増大と半ば無意識に顔を出す米国への対抗意識を考慮すれば、中国脅威論が消えることはない。そして強い軍隊は、ナショナリズムの象徴であり、対外強硬姿勢の強い支援者となるのだ。

 これらの総体が現時点における習外交である。まだ生成の途上にあるとみておいた方がよいであろう。特に価値観外交においては、そうだ。基本は、経済に重点を置いて協調的な姿勢に転じるが、必要な場合には強い姿勢をとることにちゅうちょしないし、そのために軍事力も増やしていくということになる。

 この図式では、経済の下振れが強まれば強まるほど、協調的な対外姿勢が求められる。だが経済が想定以上に下振れすれば、国民の不満は増大し、ナショナリズムは高まりやすく、それは対外強硬姿勢となる。中国外交の抱える根本的な矛盾は残されたままなのだ。

 中国の対日方針の基本もこの大きな枠組みのなかで、ほぼ固まった。基本は、日本との関係を改善するということだ。だが、日本の中国外交における位置づけは低下し、経済的な重要性も下がってきていることは、冷静に認識しておく必要がある。中国においても対日関係改善の動機づけは弱まっているのだ。

 このような状況のなかで、昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、日中首脳会談が実現した。その後、日中関係は前に進むはずだったのだが、戦後70周年の首相談話が出されることになり、中国側は警戒心を強めている。

 同時に中国を戦後世界秩序の擁護者として売り込み、日本を秩序への挑戦者として描き、安倍晋三首相への圧力を強めている。中国が、わざわざ世界反ファシズム戦争勝利70周年と銘打って国際的に大々的にやろうとしているのも、そのためだろう。

 だが、どうもピンとこない。反ファシズム戦争の本質は、全体主義に対する民主主義と普遍的価値の擁護であった。戦後秩序の根幹をなすものはこの理念にあるのであり、これを一貫して支持してきたのは日本であって中国ではない。この関連で軍事パレードまで登場させるのは、国威の発揚と習体制の安定ぶりを内外に誇示すること以外の理由を見いだせない。中国が本気で対日関係を改善させようとしているのか、日本側にも疑念はあるのだ。

 このように双方の疑心暗鬼はまだ続いている。だから両国政府は、自信を持って前に進めないでいるように感じられる。だが安定した日中の協力関係が世界の平和と発展に欠かせないことは、ますますはっきりしてきた。両国首脳は、まず相手の信頼を得るように行動すべきだ。そして、できるだけ早く再度会談し、昨年の4項目の了解事項を踏まえ日中関係を前に進める明確な意思を示すべきである。

〈ポイント〉○成長鈍化踏まえ基本戦略は対外協調路線○一方で下振れ時には強硬姿勢強まる矛盾○日中はなお疑心暗鬼続き相互信頼が急務

 みやもと・ゆうじ 46年生まれ。京大法卒。外務省に入り06~10年駐中国大使

2015/03/25 本日の日本経済新聞より「リー・クアンユー後のアジア 下 一党支配、もろ刃の剣に」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「リー・クアンユー後のアジア 下 一党支配、もろ刃の剣に」です。





 ベトナム南部、隣国カンボジア寄りの海域に位置するフーコック島。規制緩和で外資企業誘致を目指すこの経済特区は、成長への期待を込めた「ベトナムのシンガポール」という異名を持つ。

 東西冷戦の終結後、世界には「米国型民主主義の絶対優位」という一つの潮流ができた。抑圧的な共産圏に打ち勝った民主主義と市場経済の組み合わせは、繁栄の解とされた。一党支配の維持を探るアジア新興国は、「例外」であるリー・クアンユー氏が率いたシンガポールの成功モデルによりどころを求めた。

 リー氏が創設した人民行動党(PAP)は50年にわたって政権を維持する。自由な言論は制限し、政府が間接出資する企業が存在感を保つ。国家の生き残りを最優先する政治思想で「アジア型民主主義」と呼ばれる。人権問題で批判も受けるが、この手法が奇跡的な繁栄をもたらしたのも否定できない事実だ。

中国成長の原点

 1978年11月。シンガポール西部の工場街に小柄な男性の姿があった。中国の鄧小平副首相(当時)だ。リー氏肝煎りで開発したこの地域では、優遇税制や簡素な規制を武器に外資誘致が進んでいた。

 「外国人が工場を建てることでシンガポールが得ている利益が分かった」。視察後にこう語った鄧氏は翌12月、中国共産党の重要会議で「改革開放」を掲げて主導権を握った。文化大革命後の荒廃から「世界の工場」へと駆け上がる原点はシンガポールにあった。

 シンガポール国立大学の「リー・クアンユー公共政策大学院」はアジア型民主主義の実務を伝える機関だ。これまでの卒業生約2000人のうち、中国人留学生は500人強と4分の1を占める。将来を嘱望される若手官僚も少なくない。中国はいまでもシンガポールを成長の手本に据える。

 一党支配の下での成長というリー氏が示した「別の道」は普遍性を持つのか。中国やベトナムとの大きな違いは、リー氏が成長の条件として一党支配による政情安定を選んだのに対し、模倣者たちは体制延命の方策として成長を必要としていることだ。目的と手段のすり替えは、後発国の政治・経済のゆがみにつながっている。

汚職を許さず

 たとえば政治の透明性。リー氏は汚職を嫌い、疑いをもたれた官僚は即座に追放した。一方、多くのアジア新興国は賄賂が今なお横行し、巨大な政府を維持するために複雑な規制が残り、企業進出の妨げとなっている。

 経済の開放性も大きく違う。シンガポールでは2000年代に格安航空会社(LCC)の進出を警戒する声が上がった。だがリー氏は「LCCがシンガポール航空のシェアを食ってもかまわない。放っておけ」と一蹴した。シンガポールは日米中や新興国と自由貿易協定(FTA)を結ぶ。中国や東南アジアの国々は自国産業の保護にこだわり、質の高い通商自由化に踏み切れない。

 リー氏が導き出し、いびつな形で翻訳されて新興国に広がったアジア型民主主義。中国経済は成長が減速し、ベトナムも浮き沈みを続ける。本来は手段のはずの一党支配が成長の足かせに転じれば、不満のマグマが吹き出し、アジア新興国の「安定」を揺るがしかねない。

 吉田渉、谷繭子、菊池友美が担当しました。

日本経済新聞の本日の記事から