2015/01/18 本日の日本経済新聞より「揺れる国際政治 ダボス会議創設者に聞く 「負の力」抑制へ連携必要」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「揺れる国際政治 ダボス会議創設者に聞く 「負の力」抑制へ連携必要」です。





 世界各国の政府首脳や企業経営者らがスイス東部のダボスに集まる世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)が21日、開幕する。今年は「新たなる世界情勢」をテーマに不安定な世界経済や、テロなどに揺れる国際政治を討論する。同フォーラムの創設者であるクラウス・シュワブ会長(76)に論点を聞いた。

クラウス・シュワブ氏 1938年ドイツ生まれ。スイスのジュネーブ大学で経営学を講じた。71年、世界経済フォーラムを設立。

 ――世界経済の展望をどうみていますか。

 「まだ金融危機の余波に苦しみ、暗雲で覆われている。リスクも多い。中国は経済減速だけでなく、輸出依存から内需拡大への構造改革が立ちはだかる。米国は米連邦準備理事会(FRB)が利上げを始めたらどれだけもろいか。今年は振れの大きい一年になり、国際的な協力体制を築けなければ通貨安競争といった経済戦争になる」

 ――ウクライナ情勢やイスラム過激派の台頭など、国際政治も不安定です。

 「グローバル化が進むなかで、人々が変化に対応できず安易な答えを求めている。極端なナショナリズムや宗教解釈、それに過激思想だ。それが従来型の戦争ではなく、テロ行為やサイバー攻撃で不安定化を図る『ソフトな戦争』に結びつく。負の力を抑えるためにも主要国の連携が必要だ」

 ――今回は中国の李克強首相が参加します。

 「演説をして、経済界のリーダーらと会う予定だ。経済成長は輸出と投資だけでは持続可能ではない。改革が必要だ。金融バブルを恐れる人もいるが、政府はバブルをしぼませる政策に取り組んでいる。中国での金融崩壊の危険性をどうみているか、首相に聞ければ興味深いと思う」

 ――アベノミクスの進展の評価は。

 「第1の矢が放たれ、第2の矢は半分が放たれた。第3の矢はまだ弓を引いている状態。改めて議会の過半数を確保したので、世界は改革が比較的早く進むのかを気をもんでみている」

 ――ギリシャがユーロから離脱する可能性が取り沙汰されています。

 「欧州はギリシャをユーロ圏に残すために、すべてのことをしなくてはならない。経済・金融面ではギリシャを外した方が良いかもしれないが、政治的な視点ではギリシャの離脱は悪いシグナルになる。ユーロの理念に疑念が生じる

 ――欧州中央銀行(ECB)が量的緩和の一環でギリシャ国債を買うことに賛成できますか。

 「国の借金自体が悪いと思う。一般論として、得た収入を超えて支出はしないということだ。例外は良い未来のために教育や研究、インフラに投資すること。だが多くの国は消費の補助や不必要なインフラのために負債を抱え込んでいる。借金はいつか返済するもの。日本にとっても大事なことだ。若い世代がツケを払うのを懸念している

(ジュネーブ=原克彦)

2015/01/17 本日の日本経済新聞より「ヤーギン氏「原油価格、反転は来年」 エネルギー分析の第一人者に聞く 「米シェール革命続く」」

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 原油価格の急落は国際情勢や米国のシェールブームにどう影響するのか。エネルギー分析の第一人者であるダニエル・ヤーギン氏に聞いた。

 ――原油価格はなぜ急落しているのですか。

 「まず米国のシェールブームが供給増をもたらした。昨年8月以降には世界経済の成長の鈍化が意識され、欧州や中国で需要が鈍る懸念が出てきた。そこにリビアの生産が急回復し始めた」

 「サウジアラビアが『原油価格調整』の役割を放棄したことも下落に拍車をかけた。サウジは減産すれば、米シェールだけでなく、イランやイラクなど他の中東諸国にもシェアを奪われる恐れがあった。サウジが減産に応じないのはシェアを確保するという経済的な強い動機のためだ」

 ――価格はどこまで下がるとみますか。

 「まだ底値をつけていない。2015年は北米のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の年平均で1バレル50ドル近辺で推移し、16年は15年に比べ10~30%上がる見通しだ。米原油の増産基調は続き、15年の上半期まで減少はないと予想する。15年央に減り始める頃には(大きな混乱がなければ)価格について強気になる人が出始めるのではないか」

 ――1バレル100ドルの時代はもう来ないのか。

 「絶対ないとは言い切れない。思い出してほしい。過激派『イスラム国』が台頭した時、一時115ドルまで上昇した。生産地での政治的な混乱は今後も価格に影響を与える要素だ」

 ――倒産した米シェール企業もあります。

 「1バレル70ドルなら8割のシェール企業が成長できる。60ドルだと利益が出るのは半分だ。足元は40ドル台で、多くの企業にとり厳しい局面にある

 「ただコストは下がっている。見逃せないのは掘削や採集の技術が日々進化している点だ。今後はM&A(合併・買収)でコストを改善する企業も出てくるだろう。シェール革命は初期の段階だ。革命は続く」

 ――国際情勢に与える影響は。

 「ロシアは経済制裁と原油安のダブルパンチを受けている。資源分野での市場や資金の出し手を求め、中国により接近するだろう。イランのロウハニ大統領は経済改革を旗印に、米国と対話路線だ。原油安で経済が混乱すれば最高指導者が反米的なだけに、政治的に苦しい立場となる

 「勝者は原油を輸入に頼っていた日本と中国だ。特に日本はエネルギーの高コストが製造業の競争力を損なっている事実がある。安倍晋三首相は安いエネルギーで経済を活性化する政策を『4本目の矢』として推進すべきではないか」

(聞き手はワシントン=稲井創一)

2015/01/16 本日の日本経済新聞より「途上国の経済発展に8条件 民と連携インフラ整備を 中尾武彦 アジア開発銀行総裁」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「途上国の経済発展に8条件 民と連携インフラ整備を 中尾武彦 アジア開発銀行総裁」です。





 かつてアジアは、貧困の代名詞であった。アジア開発銀行(ADB)も1966年の設立当初は、人口が多く、その伸びも大きなアジアの人々が飢えに苦しまないよう、どう農業を支援するかが課題だった。しかし、その後の成長や貧困削減の進展はめざましく、多くの識者の予想を裏切るものとなっている。

 絶対的貧困の人口比率(1日当たりの所得が2005年基準で1.25ドル以下)は90年の55%から10年には19%まで低下した。日本などを含めたアジアの世界の国内総生産(GDP)に占める比率は70年の約15%から13年には30%強に達した。08年の世界金融危機の後も成長は強固だ。

 同時に、各国間の発展に大きな差があるのも事実だ。65年にはタイを上回る所得水準を誇ったフィリピンが、なぜ東南アジア諸国連合(ASEAN)の先行5カ国で最下位になったのか。ガーナより所得の低かった韓国はどうやって高所得国に達したのか。中国は改革開放以降の高成長で高中所得国(上位の中所得国)にまでなったのに、なぜ同じアジアの大国であるインドが低中所得国(下位の中所得国)にとどまっているのか。

 13年4月末にADB総裁に就任して以来、筆者は20カ国以上の域内途上国を訪れ、各国の指導者や当局者と政策課題について率直な対話をしてきた。財務省や国際通貨基金(IMF)勤務を含め、開発問題に様々に関わってきたが、今は、各国の発展は人的資源や自然資源、伝統などによって運命的に決まるというより、政策のあり方が大きく左右するとの考えを強く持つに至った。それは以下のような8つの条件に集約できる。

 第1は、インフラへの投資だ。電力、道路、鉄道などが整備されなければ、国内産業は発展しないし、外国からの直接投資も来ない。良い道路がないと、学校や病院へ通うのも難しいし、就労機会も損なわれる。インフラはADBの貸し付けや技術支援の柱だ。その際、環境社会配慮や公正な調達に関する国際基準を適用し、各国における新たな社会的要請にも応えている。

 GDPに占める公共投資の比率(2010年)をみると、中国の22%に対して5%以下にとどまっている国も多く、それらの国の発展は遅れがちだ。昨年のADBの研究によれば、インフラ投資をGDP比で1.0ポイント高めると、成長率は1.3ポイント上昇する。

 税収を確保して基本的なインフラを整備するとともに民間資金をどう活用するかが課題だ。ADBは官民パートナーシップ(PPP)を推進しており、ベトナムやフィリピンでは基本法の制定や専門部局の創設も助けている。

 第2は、教育や保健など人的資本への投資だ。ほとんどの国で小学校への入学率は高くなっているが、卒業率、中等・高等教育の質など課題は多い。ADBはバングラデシュなどで産業界を関与させて雇用ニーズにより即した職業教育改革を進めている。また、医療へのIT(情報技術)の活用と国民皆保険制度への移行を支援している。

 第3は、マクロ経済の安定だ。インフレ率が2ケタ、財政赤字が大きく金利も高いような環境では、将来のための貯蓄や投資は阻害される。アジアでは90年代後半の通貨危機以降、健全な財政政策、安定した金融政策、適切な金融セクターの規制・監督の重要性が再認識されている。

 第4は、開放的な貿易・投資体制、民間セクターの促進だ。旧計画経済国のみならずインドやインドネシアでも、社会主義や反植民地主義の影響から輸入代替政策、価格統制、産業の国有化などを進めた時期があり、成長を大きく妨げた。今は、市場機能が基本であることを理解しない指導者はいない。グローバルに経済統合が進むなかで、外国からの直接投資や技術移転は、従来以上に成長を大きく左右するようになっている。

 政権交代後のインドのモディ首相、インドネシアのウィドド大統領との面会では、一層の経済開放、過剰な規制の合理化、エネルギー補助金の削減などの改革に強くコミット(関与)していると感じた。ADBは各国に、構造改革を条件とする財政支援型ローンも提供している。ADBも協力しているASEANの経済共同体構想は、関税の引き下げや通関手続きの簡素化、基準の標準化などに大きな役割を果たす。

 第5は、政府のガバナンス(統治)だ。汚職は社会正義に反するのみならず、人々のエネルギーを非生産的な行動に向けて成長を阻害する。政府や国有企業の透明性、説明責任の向上も不可欠だ。中央アジアを含む多くの国で、これらの問題に取り組む機運が高まっている。また、13年のADBのレポートは、行政の執行能力や規制の質が各国のパフォーマンスと密接に結びついていることを指摘している。その点、有能な職業官僚集団の存在も重要だ。

 第6は、社会の平等度だ。資産家と庶民の格差があまりにも大きな国では、成長という目標が国民に共有されないし、教育や技術習得への意欲は弱まり、労働者の質も高くなりにくい。公教育の強化、税制による所得の再分配、農村と都市の格差是正、農家や中小企業向けの金融などが必要だ。健全な中間層は、消費をけん引し、政治的な安定性をもたらす役割もある。

 第7は、将来へのビジョン、戦略だ。韓国やシンガポールを見れば、この点における政府の貢献は明らかだ。民間が成長のエンジンであることは言うまでもないが、政府には、自国がどの強みで発展していくべきなのかを見極め、戦略を国民と共有し、それに基づき財政支出を行い、民間セクターにも指針を与えていく責任がある。もちろん、このことは、閉鎖的な国内産業保護を意味しない。

 第8は、むしろ最初に来るべき条件で、政治や治安の安定、周辺国との良好な関係だ。スリランカでは09年5月にタミール関係の内戦が終結した後、平均7%台半ばの高成長を続けている。ミャンマーは経済改革とともに民主化と少数民族との和解を進め、国際社会との関係を改善したことが投資ブームを招いた。最近のフィリピン政府とミンダナオ島のイスラム勢力との包括合意も明るいニュースだ。

 これらの政策をきちんと実行すれば、多くの国が少なくとも高中所得国のレベルに到達できると考えられる。各国で強く印象付けられたのは、指導者の間で発展に必要な政策についての考え方が収斂(しゅうれん)してきているということだ。しかし、改革は既得権益に手をつけることになり政治的な対立にも巻き込まれがちであり、そのまま実施できるかが課題となる。

 一方、高所得国への移行は、上記の基本的な8条件に加え、技術革新を促し、人的資源を向上させ、産業を高度化し、成長を持続的なものにする、さらなる政策努力が必要になるだろう。

 東京大学の末広昭教授が近著で明らかにしているように、アジアの発展モデルは世界的なIT革命や生産システムの変化もあってキャッチアップのプロセスが短縮化し、より複雑なネットワーク型になってきている。日本を先頭とする従来の雁行(がんこう)モデルではとらえきれない。

 しかし、高品質のインフラ整備、公共交通の整った住みやすい都市づくり、高齢化に備えた社会保障やその財源の設計、環境配慮や災害対策など、先行している日本の経験は、その反省点も含め、役に立つ。ADBは上記の8条件に加え、そうした日本の経験や、他の先行国の経験も踏まえながら、アジアの発展に引き続き寄与していきたい。

〈ポイント〉○経済発展のカギは各国の適切な政策選択○マクロ経済の安定、貿易・投資の開放必須○高所得国移行へ革新や産業高度化も課題

 なかお・たけひこ 56年生まれ。東大経卒、カリフォルニア大修士。元財務省財務官

2015/01/16 本日の日本経済新聞より「防衛指針・TPP、日米の鍵 戦後70年談話、未来志向で ジョンズ・ホプキンス大 ケント・カルダー氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「防衛指針・TPP、日米の鍵 戦後70年談話、未来志向で ジョンズ・ホプキンス大 ケント・カルダー氏」です。





 【ワシントン=吉野直也】日米両政府は4月下旬からの大型連休中にワシントンでオバマ米大統領と安倍晋三首相の会談を開く調整に入った。戦後70年という節目の会談で両首脳はどんなメッセージを出すべきか。知日派のケント・カルダー米ジョンズ・ホプキンス大ライシャワーセンター東アジア研究所長(66)に聞いた。

 ――中国の台頭で日米同盟強化の必要性が増しています。

 「同盟は自動的には強化されない。強化に向けては2つの課題がある。1つはアジア太平洋や地球規模での政治的、軍事的な課題。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定は非常に大事だ。もう1つは、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の妥結という経済的な課題だ」

 「米メディアは東京特派員の数を減らし、多くが拠点を韓国に移している。大きな事件が起きれば、その拠点に深く根差しながらそれを報じる。一方で、中国や韓国は以前よりワシントンでの活動に力を入れている。日米は同盟維持へ誤解や誤認識を避けるための取り組みが重要だ」

 ――首脳会談までに課題を解決できますか。

 「最良の展開は、両首脳が会談でガイドライン改定とTPP交渉の妥結を発表できることだ。TPPは妥結までに2つの段階がある。1つは大統領貿易促進権限(TPA)法案の可決、もう1つがTPA法案可決の後の交渉だ」

 「野党・共和党が主導権を握る新議会が6日に招集された。彼らはこの議会で何か実績を残す必要がある。米経済界を中心に共和の支持層はTPPを後押ししており、TPP交渉の先行きには楽観的だ。ただTPP交渉を首脳会談までに妥結させるというのは少し野心的な目標かもしれない」

 ――安倍首相は戦後70年談話をまとめます。

 「安倍首相は(過去の植民地支配と侵略を認めた)村山首相の談話を継承し、歴史的立場は変えないと語っている。北朝鮮問題を見据え日米韓の連携が重要なのは自明だ。米国は日韓関係の悪化は望んでいない。戦後70年談話は未来志向であるべきだと考えている」

 ――オバマ氏が残り2年間の任期中に被爆地の広島や長崎を訪問する可能性はあるとみますか。

 「今年はワシントンで首脳会談があるため、順番でいくとオバマ氏の日本訪問は来年になる。(広島や長崎への訪問が)あるとすれば来年になるのだろう。訪問が実現した場合、オバマ氏が何らかの声明や姿勢を示すことになるのは確実だ。その内容は米国にとって細心の注意を要する問題になる」

2015/01/15 本日の日本経済新聞より「大機小機 格差時代の給付付き税額控除」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「格差時代の給付付き税額控除」です。

大機小機に書いてあることはいつも注目していますが、今回の記事も極めて秀逸。

そもそも財源不足を補うために10%への税率変更は必至です。生活困窮者の税負担軽減策は、何も生活必需品を軽減税率の対象とするだけではないはずです。むしろ、この記事で述べられている通り住宅など高額商品の消費が鈍り、経済への波及効果を押し下げることの心配の方が大きいはずで、これに対して軽減税率を適用し、消費を拡大するという発想の方が理に適っていると考えます。





 昨年の総選挙では、残念ながら経済政策の議論は盛り上がらなかった。要因として、「全体」と「全員」を区別するという基本が与野党に欠如していた点が挙げられる。これは経済学の初歩で学ぶ重要な基本認識だ。

 例えば国内総生産(GDP)が増えたら、全体として経済は良くなったということは言える。しかしだからといって、全員の生活が良くなるとは限らない。現実に今、世界中の国が深刻な格差問題を抱え、全員を良くしようと苦慮している。

 この命題には、もう一つ意味がある。それは、全体が良くならない限り全員が良くなることはありえない、という点だ。

 アベノミクスの3本の矢は、全体を良くする政策だ。少なくとも昨年4月の消費増税までは、日本経済は全体として着実に良くなっていた。増税後の経済は脆弱だが、それでも昨年の株価上昇率は7%と、米国並みの伸びを確保した。

 選挙戦での民主党など野党の最大の問題は、全体が良くなっていることをきちんと認めず、アベノミクスを頭から否定したことだ。全員を良くするための建設的な提言こそ野党の務めである。

 日本が目指すべきは、全体をさらに良くするためのアベノミクス、とりわけ成長戦略を加速させることである。加えて、全員を良くするための新たな政策を追加する必要がある。具体的には、究極のセーフティーネットとしての「給付付き税額控除」を検討すべきだ。

 導入の必要条件であるマイナンバーが来年1月から活用できる。マイナンバー活用については、成長戦略にも「今年度中に利用範囲拡大の方向性を明らかにする」と明記されている。

 日本は、本格的な格差時代に突入しようとしている。政府も低所得者対策の観点から食料品などで軽減税率を検討しているようだが、これは、格差是正の決定版にはなりえない。むしろ軽減税率は、住宅など高額商品にこそ適用すべきものだ。付加価値税が高い欧州では、住宅に大幅な軽減税率を適用している。

 英国ではブレア政権の1999年に給付付き税額控除が導入され、2003年に現在の形になった。フランスやオランダも導入している。特区などで思い切った規制緩和が求められる日本も、一方で、こうしたセーフティーネットの整備が必要になる。

(夢風)

2015/01/15 本日の日本経済新聞より「アジアVIEW フィリピン 伸びぬ直接投資 外資規制 インフラに壁」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のアジアBiz面にある「フィリピン 伸びぬ直接投資 外資規制 インフラに壁」です。

フィリピンは英語圏で人口ボーナス期というアドバンテージがありながら、先日の電力不足の件やこの記事を見ると、投資適格という評価にまで評価改善しながらも、実際はなかなか投資対象になり得ないまま、時間が経過しているように見えます。





 内需のけん引で経済成長が続くフィリピン。アキノ政権になってから財政状況も改善し、国債は投資適格に格上げされた。ところが外国からの直接投資は伸びていない。特に投資を呼び込む基盤となるインフラ整備に関連する事業では、日本をはじめ外国企業の名はほとんどみられない。

「日本企業はインフラに関心がある」と話すアキノ大統領だが…(11月4日、マニラ首都圏の大統領府)

 国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2013年のフィリピンへの直接投資額は38億ドル(約4500億円)にすぎない。インドネシア(184億ドル)、タイ(129億ドル)、ベトナム(89億ドル)など周辺国に比べても見劣りする。

 フィリピンは人口1億人で平均年齢が23歳と若いが、産業が足りないため完全失業率が7%程度で高止まりしている。経済自体は成長の伸びが鈍化しているものの、14年7~9月期の実質国内総生産(GDP)が前年同期比5.3%増となるなどまだ堅調だ。その勢いがあるうちに、製造業などの外資を積極的に誘致し、成長を持続させなければならないのだが。

 比較的安価で英語が堪能な労働力を持つフィリピンは日本を含む外国企業から注目され始めている。工業団地の入居件数も増加傾向にある。日本の地銀も相次いで地場銀行と提携して中小企業の進出を支援する。ネックとなっているのがインフラへの投資だ。

 アジアでは巨額投資と技術が必要なインフラ整備には外資の力を借りるのが一般的だ。だが、政府の肝煎りである官民パートナーシップ(PPP)事業でも落札するのはほとんどが地元企業。ある日系商社は「選定過程が不透明で、いくら入札のチャンスがあっても参入できない」と漏らす。

 フィリピンは自国民を保護する観点から、外資による資産の保有を大幅に制限している。マスメディアや払込資本金額が250万ドル未満の小売業などでは外資の参入を認めていない。土地の保有も40%までに限られており、外資が参入しにくいのも確かだ。16世紀以来、スペインなどに長く植民地化されていたことが影響しているようだ。

 昨年11月の記者会見でアキノ大統領に日本などからのインフラ案件が少ないことを聞いてみると「日本企業とは長い間協力しているし、インフラには関心を持っているはず。もっと参加を期待したい」と述べた。フィリピン政府がこうした状況を甘く認識し、何も手を打たないのであれば、持続的な成長の足かせになりかねない。

(S)

2015/01/14 本日の日本経済新聞より「大機小機 民主党再生の条件」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の面にある「民主党再生の条件」です。

民主党が沈没して長く浮上しない理由を明確にした秀逸な記事です。

日本人の国民性として、米国にあこがれ、真似をしたくなる面があります。政治の世界でも、共和、民主両党のように、政権交代可能な二大政党を夢見ました。民主党のプロパガンダに国民が酔いしれ、そもそもは政治を担う力が無い組織が自民党の対抗軸にまで上り詰め、政権を担った期間に日本をボロボロにしてしまいました。

維新の党が伸びきれないのも、政治家集団としての資質を怪しんでいるからではないでしょうか。何しろ、都道府県政と国政は全く違います。大阪都構想などといった地方統治の枠組みで新機軸を打ち出しましたが、その功罪は実現してみないと分からないことだらけです。二重行政の無駄、という最もらしいプロパガンダを大阪府民がどのように見ているか、この春の直接投票の結果が待たれます。

しかし、これを以ってしても、大阪府の統治機構の問題であり、国政とは何ら関係がありません。仮に、大阪都構想が大成功したとしても、その後、国政で打ち出すマニュフェストが日本の将来に資するとは限りません。それどころか、失敗した時に国民が被るダメージは、民主党政権が示した通りです。





 遠い昔のような気がするが、まだ5年半ばかり前のことである。2009年の衆院選。民主党は308という歴史的な議席を得て政権についた。今やその面影はなく、代表選は一向に盛り上がらない。「政権交代可能な二大政党制」は、風前のともしびである。

 振り返ってみれば、民主党による政権交代は一夜にしてできたものではなかった。原点は第1次安倍政権時代の07年参院選で圧勝し、参院で109議席を占めたことだ。

 その後、2年間、民主党は衆参ねじれ国会を存分に活用し、福田、麻生と続いた自民党政権を機能不全の状態に追い込んだ。手法は相当、手荒かったが、世論の批判は無力な自民党に集中した。 09年の選挙で有権者が選んだのは、民主党というよりも、「政権交代」だったともいえた。政権が視界に入ると、候補者もおのずと集まる。官僚、地方議員、サラリーマン……。自民党の世襲の枠組みに入れなかった多様な人材が民主党に活路を求め、ほぼすべての小選挙区を埋めた。

 この成功体験に倣うならば、民主党の再生のためには、まず来夏の参院選に勝たなければならない。ところが前回の参院選で惨敗したために、非改選は17人にすぎず、改選議員は41人もいる。これではどんなに健闘しても、政権の受け皿というよりも、批判勢力にとどまるのが関の山だろう。

 そうなると次期衆院選の候補者も集まらない。負の連鎖である。苦境を脱する道は2つしかない。一つは民主党の中にもある野党再編。要は非自民勢力の大同団結だ。

 03年に当時の民主党と自由党が合併したのが典型で、「反自民」票を吸収しやすいメリットがある。半面、企業合併と同様、船頭が多く、内部抗争がつきまとう。民主党はこれで政権を失ったといっても過言ではない。

 もう一つは巨大化した与党を分裂させることだ。長く権力の中枢にある自民党は、政権にある間は決して割れないという伝説がある。しかし、長期化する安倍政権は人事にも慎重で、ポストに就ける人とつけない人の格差は確実に広がっている。派閥も半ば有名無実化し、「ポスト安倍」も定かにはみえない。

 いずれの道でも、肝心なのは自民党総裁以上に期待がもてるトップを民主党が選ぶことだ。今回の代表選への疑問は、ここにある。

(蜻蛉)

2015/01/13 本日の日本経済新聞より「経営書を読む 伊丹敬之著「経営戦略の論理・第4版」(1) 見えざる資産 情報をうまく使い蓄積」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のキャリアアップ面にある「伊丹敬之著「経営戦略の論理・第4版」(1) 見えざる資産 情報をうまく使い蓄積」です。





 「経営戦略の論理」は一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏の代表作で、1980年に初版が刊行され、2012年に第4版が刊行された30年を超すロングセラーです。この本は成功する経営戦略には偶然ではない、論理があると解明しています。

 今でこそ、企業の経営資源はヒト、モノ、カネ、情報の4つだと広く理解されていますが、4つめの情報を「見えざる資産」と名付け、その重要性を強調したのが、30年前のこの本です。

 本書では成功する戦略は5つの要因にうまく適合していると言います。5つとは顧客、競争、資源、技術、心理です。前2者は外的要因、後3者は内的要因です。

 著者は適合という言葉を能動的な意味で使っています。顧客ニーズをそのまま受け入れるのは受動的な適合ですが、それでは多様な製品を安く売るだけになり、利益が上がりにくくなります。

 能動的な適合では顧客ニーズを先取りし市場を創造します。競合に対しても自社の強みを活かし、弱みを突きます。

 より高いレベルではテコ的な適合があると指摘しています。顧客が顧客を呼ぶような状態や、競合が反撃しにくくなる状況を作り出すことが、テコ的な適合です。

 内的要因に関しても、今ある経営資源の範囲で間に合わせる受動的適合ではなく、経営資源をより良く生かすことも可能です。ヒト、モノ、カネは簡単には増えませんが、見えざる資産の情報はうまく使えば、増やすことができます。

 戦略を実行して、見えざる資産が蓄積されるというサイクルを描くものが、成功する経営戦略なのです。身の丈の適合ではなく、ストレッチした適合を目指すことが可能になるのです。

 身の丈に甘んじてじり貧に陥る企業や、むちゃな投資で経営難になる企業が多いのですが、本書が今も読まれているのは、そうした状況から脱出するヒントがあるからではないでしょうか。

(ケーススタディーなど全文を「日経Bizアカデミー」に掲載)

2015/01/12 本日の日本経済新聞より「経営の視点 「給与はサイコロ次第」の意図 創造力、面白がってこそ 編集委員 村山恵一」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「「給与はサイコロ次第」の意図 創造力、面白がってこそ 編集委員 村山恵一」です。

あの面白法人カヤックのユニークな給与制度を引き合いに出し、人材が主体的に働ける環境が企業に求められていることを示した記事です。会社が人を抱え込もうとしないので、人財ではあるが、人事管理しようという発想が少ないように感じられます。これは創業期の会社によくあるように思われます。





 1998年の設立で広告やゲームなどインターネットサービスを手がけるカヤックが2014年12月、東証マザーズに上場した。スマートフォンと劇場のスクリーンを連動させた映画観賞、普通の黒板をプロジェクターで電子化するシステムなどユニークな技術が売り。「面白法人」を名乗り、給与制度がその象徴だ。

 金額は社員の相互評価で決まる。デザイナーやエンジニアなど200人の社員は、日ごろ一緒に働く20~30人にグループ分けされ、半年ごとに10段階で査定し合う。「すごい技術を編み出した」「職場のムードメーカーだ」。大勢の目でいいところを見つける。等級制度、年功序列はない。

 さらに社員は毎月、給料日が近づくと全員がサイコロをふる。1が出れば月給の1%、6なら6%が上乗せされる。もちろん悪ふざけではなく、大まじめ。

 柳沢大輔最高経営責任者(CEO)がいう。「他人の評価を気にしていたら面白く働けず、面白いものがつくれない」。運任せのサイコロ給は他人の評価がすべてではないとのメッセージ。結果は出ている。会社は設立以来増収で、国内外で広告賞の常連だ。

 ぐっと歯を食いしばり、汗水流して……。そんな悲壮感の漂うがんばりより、柔らかアタマの斬新なアイデアが価値を持つ知識・ソフト経済の時代。変化の早い21世紀は「まじめに面白がる」が経営の重要テーマになるのではないか。

 パナソニック出身の岩佐琢磨氏が07年に設立したネット家電会社Cerevo。米ラスベガスの見本市で世界の大企業にまじって製品発表するなど実績を上げる。14年秋、東京・秋葉原にできた、ものづくり系スタートアップ(創業間もないベンチャー)向けシェアオフィスに引っ越した。

 3Dプリンターなど5億円分の最新設備がそろい、技術者には心躍る空間だ。「ほかのスタートアップにも接し発想が豊かになる」と岩佐氏。社員の創造力こそ成長をけん引する。

 一方で会社という枠組みを窮屈に感じ始めた人がいるのがいまのIT(情報技術)業界だ。大阪市の鈴木光行氏は20年近くゲーム会社に勤め、起業も経験したが、現在はネットで仕事を受注するフリー技術者。世界で増殖するクラウドワーカーのひとりだ。「先の保証はないが、時間配分、仕事選びが自由でいい」。夢だった教育ゲームの開発、配信を実現した。

 カヤックも新たな会社のカタチを探っている。人材は無理に抱え込まない。会社を辞めたほうが実力を出せるという社員がいれば送り出し応援する。退職者の実績や進路などをサイトで紹介し、必要ならパートナーとして仕事を続ける。

 上場によってゲーム開発の加速など成長への資金を手に入れた。半面、情報開示など従うべきルールが増える。それでも面白法人の持ち味を保てるか、大きな挑戦だ。柳沢氏は「ブレスト(社員がアイデアを出し合う会議)に株主を巻き込みたい」と前を向く。

 やらされていると思うのではなく、主体的に働けば成果は上がる。何もIT産業に限った話ではない。あなたは自分の仕事を面白がれていますか――。

2015/01/12 本日の日本経済新聞より「グローバルオピニオン 欧州にとって試練の年 米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「欧州にとって試練の年 米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏」です。

この記事は欧州の今年を予言した記事と言えます。ギリシャ、スペイン、イギリス、こういった国々の選挙結果次第とも言えますが、各国が内向きになればなるほど、ブレマー氏が懸念する事態を招きそうです。




 ユーロ圏が債務危機の渦中にあった2011~12年には、欧州連合(EU)加盟国は経済的混乱を乗り切るべく政治的に結束していた。今日、経済は再び懸念すべき状況だが、パニックは去っているため政治的結束も失われてしまった。政権担当者にとっても、域内経済にとっても、今年は試練の年になりそうだ。

 まず、反EU政党が加盟国内で勢力を増すと考えられる。その口火を切りそうなのがギリシャだ。1月25日の総選挙で大衆迎合的な急進左派連合が勝利を収める可能性がある。スペインでは、過去3年間の構造改革が実を結び、今年は高い成長率を実現する可能性はあるものの、失業率は引き続き高止まりするだろう。カタルーニャ州で分離独立の機運再燃が予想され、さらに反体制的な新党の急伸で、10月の総選挙後は政府が一段と弱体化しかねない。

 イタリアとフランスの有権者はこうした状況をにらみつつ、自国政府への圧力を強めるだろう。その結果次第では、欧州で進行中の経済改革は事実上中断しかねない。フランス、英国、ドイツでも反EU政党が人気を得ている。

 とはいえ、欧州で緊縮論が財政出動論より優勢な状況は変わりそうもない。現行政策を主導するドイツのメルケル首相にとって政策を変更すべき理由がないからだ。フランスのオランド大統領の支持率は歴史的に低く、発言力は低下している。英国のキャメロン首相は5月の総選挙で勝利を確実にするため、EU離脱の賛否を問う国民投票の実施を公約に掲げている。強いドイツ、弱いフランス、不在の英国という組み合わせでは、現状維持策になることは確実だ。

 ユーロ圏がデフレに陥る恐れがあるにもかかわらず、メルケル氏の今年の最優先課題は自国の財政均衡の実現であり、他の経済目標はすべてこれに従属する。財政を引き締めれば、ドイツの有権者は他国にも規律を求めるだろう。よってEUで大規模な財政刺激策が講じられる可能性はまずない。いずれはドイツの苦い薬が好結果を生むのかもしれないが、15年に欧州経済の成長や政治的安定の実現に寄与するとは思えない。欧州中央銀行(ECB)が量的緩和に踏み切っても、ドイツが反対すれば、効果は限定的だろう。

 欧州は外交面の難題にも直面している。ロシアとの対決は15年に深刻化するだろう。プーチン大統領はウクライナ問題で譲歩する気がなく、欧米はロシア経済を苦しめる制裁をやめないつもりだ。制裁が自国経済に与える影響を懸念する欧州の人々にとっては、対ロ強硬路線はますます心配のタネとなりそうだ。こうした事情は、欧州と米国の同盟関係にも影を落とす。

 そのうえイスラム国によるテロの脅威で、事態は一段と混迷を深めている。この脅威は、世界で中東以外のどの地域よりも欧州に迫っている。欧州の多数の市民がイラクとシリアで戦闘に参加しているほか、欧州には大規模なイスラム教徒の共同体もある。

 賢明な指導者は、危機を機会に変えなければならないと心得ている。実際に欧州の指導者は債務危機の際に悲劇を防ぐべく結束したし、危険な嵐を切り抜けるための構想と勇気を示してきた。だが危機は過ぎ去ったわけではなく、いまや深刻さを増している。15年は欧州にとって重要な年になると同時に、ますます楽観を許さなくなるだろう。

(イアン・ブレマー氏の寄稿を定期的に掲載します)

 Ian Bremmer 世界の政治リスク分析に定評。ユーラシア・グループは米調査会社。著書に主導国のない時代を論じた「『Gゼロ』後の世界」など。45歳。

日本経済新聞の本日の記事から