真相深層 グーグル、起業の苗床に 旺盛なM&A、米でリスクマネー循環 日本、資金の出口課題 2014/02/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 グーグル、起業の苗床に 旺盛なM&A、米でリスクマネー循環 日本、資金の出口課題」です。





 世界のM&A(合併・買収)で今年、先陣を切ったのは米IT(情報技術)大手のグーグルだ。買収の対象は2社。家庭用サーモスタット(自動温度調整装置)の米ネスト・ラボと、人工知能(AI)を開発する英ディープマインド・テクノロジーズで、どちらもベンチャー企業だ。

 「生活関連の全情報を収集するビジネスへ布石を打つものだ」(米シリコンバレーの投資家)。主軸である検索・広告事業から、多角化を進めていく買収に他ならない。

月1件ペース

 ネストのサーモスタットは家族の行動パターン情報を集める。ディープマインドは車の自動運転などに使えるAI技術を持っている。シリコンバレーでは早くも「次の標的は家電か自動車産業」とささやかれる。

 世界のITをリードするグーグルが仕掛ける買収戦略は、常に関心の的だ。トムソン・ロイターの集計によれば、2005年から14年1月までにグーグルが実施したM&Aは合計130件。金額にして250億ドル(2兆5千億円)に達する。

 ならせば毎月1件ずつというペース。同じ米検索大手のヤフーと比べても積極姿勢は鮮明だ。ヤフーの同期間のM&Aは85件、56億ドルであり、グーグルは件数で1.5倍、金額は4.5倍だ。

 圧倒的な検索事業を苗床とし、芽が出て間もない新興企業をM&Aで手に入れて育成、自身の成長を加速させてきたのがグーグルだ。携帯電話の基本ソフト(OS)のアンドロイド、世界地図のグーグルアース、動画共有サイトのユーチューブ。どれも05年前後に買収した企業が源流だ。

 もちろん、連戦連勝ではない。「過去10年の買収の3分の1は失敗だった」。同社の新規事業担当者が12年に米メディアで語ったこともある。10年に約2億ドルで買収したソーシャルゲーム開発のスライドは失速。12年に買収したモトローラの携帯事業も期待した成長が見込めず売却に動いた。

 見逃せないのは、グーグルが米国でリスクマネーを循環させる舞台装置になっている点だ。新興企業に出資するベンチャーキャピタル(VC)にとって、グーグルに買収してもらうことで投資回収の機会を得られる。

 ネストの場合、創業直後に米老舗VCクライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)が出資。グーグルによる買収で、KPCBは出資額を20倍に増やしたとされる。その投資収益は次のベンチャー企業への種まきに使われていく。

 VCがグーグルへの売却を視野に創業間もない企業に投資。企業もいずれはグーグルに買われる前提で事業を拡張――。「グーグル・エコシステム」とでも言うべきリスクマネーの道筋がある。

 日本に目を向ければ、ベンチャー育成による開業率の向上は、アベノミクス(安倍晋三首相の経済政策)の重要政策の一つだ。かつてハードルが高かった新規株式公開(IPO)も、今は赤字企業でも可能になった。米VCから直接資金を得る例もある。クラウドを使った会計ソフトを開発するフリー(東京・港)は創業直後から米有力VCのDCMが出資した。

 ただ、それで十分とはいえない。起業を促進していくには「M&Aを通じて国内でリスクマネーの循環経路を確立することが課題だ」(早稲田大学ビジネススクールの長谷川博和教授)。

IPOに偏る

 日本でVCが投資を回収する道は、IPOに大きく偏っている。「IPOとM&Aの両方がある米国に比べ、日本のVCの収益率は低くならざるをえない」(同教授)。それゆえ、国内の年金基金でさえ、日本よりも海外のVCへの出資を選ぶ場合が多い。

 「大企業のR&D(研究・開発)費をリスクマネーに」。日米で活動するベンチャーキャピタリスト、伊佐山元氏の提案だ。同氏によれば、今年度はトヨタ自動車を筆頭に、上位10社で総額5兆円規模の資金をR&Dに費やす。この1%の500億円でも、M&Aを通じてベンチャーに毎年向かえば、「相当のインパクトになる」(同氏)。

 日本でグーグルのようにマネーを循環させる役目を果たす企業が現れるか。大企業が潤沢な手元資金の使い道を模索する今、市場の関心はそこに向かっている。

(編集委員 小平龍四郎)

Taxウオーズ 改革 法人税(上) 「減税の逆説」に挑む 2014/02/15 本日の日本経済新聞より

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 「ムーミン」で知られる北欧フィンランド。スマートフォン(スマホ)ゲーム関連の新興企業が180社も集積し、米シリコンバレーに続く「起業家の聖地」とされる同国は今年1月、法人税率を24.5%から20%に引き下げた。

フィンランドはカタイネン首相自ら企業を誘致する=写真 Tuomo Lampinen

 「投資家や企業にもっと効率的な環境をつくる」。首相のユルキ・カタイネン(42)は昨年11月、世界中から起業家ら6千人を招いたイベントで企業誘致の先頭に立った。ベンチャー企業投資を優遇するエンジェル税制も拡充。法人税率下げは2012年に続き、首相就任以降2度目だ。

 携帯電話大手ノキアはかつてフィンランドの輸出の2割を占め、同国法人税収の約2割を納めた。だが11年まで14年連続で世界首位だった携帯端末事業はスマホの時流に乗れず衰退、米マイクロソフトへの売却が決まった。カタイネンは新たな成長のけん引役を求め、自ら世界に訴える。

「優しさ」に呼応

 世界の企業や投資家はフィンランドのメッセージに呼応し始めた。韓国サムスン電子は北欧で初の研究開発(R&D)センターを開いた。独化学・医薬品大手バイエルは500万ユーロ(約7億円)を投じ、同国南西部に工場を増設する。

 スマホゲーム「パズル&ドラゴンズ」が大ヒットし、昨年10月にフィンランドのスマホゲーム会社スーパーセルをソフトバンクとともに買収したガンホー・オンライン・エンターテイメント。低い法人税率を理由に本社のフィンランド移転を一時検討した、と海外メディアに報じられた。ガンホーは事実関係を否定するが、「企業に優しい」が売り物の税制には成長企業の視線が集まる。

 ノルウェー(28%→27%)、デンマーク(25%→24.5%)、ポルトガル(25%→23%)。欧州各国は1月、法人税率を相次ぎ引き下げた。昨年4月、23%に下げた英国も今年4月にはさらに21%に引き下げる。

 欧州連合(EU)加盟国の法人税率は平均で23%を下回る。安倍政権が日本の法人実効税率(35.64%、14年度)下げの目標とするアジアの平均にすでに並んでいる。

成長企業を優遇

 欧州で広がる法人税率の引き下げ競争。その背景には「法人税のパラドックス(逆説)」と呼ばれる経験がある。EU統計局によると、EUの法人税率は1995年の平均35.0%から07年の25.5%に下がったが、法人税収は国内総生産(GDP)比で2%から3%へ、逆に増えた。

 各国政府は税率下げで利益を生む成長企業を優遇する一方、旧態依然とした政策減税はやめ、法人税の課税範囲は広げた。ドイツや英国は、日本の消費税に当たる付加価値税率の引き上げと法人税率の引き下げを組み合わせて、成長と財政健全化の両立に成功した。

 「各国経済に有害だ」。経済協力開発機構(OECD)は法人税率下げ競争に警告を発する。過熱すれば、各国が終わりなき減税を繰り返す事態にもなりかねない。

 減税の功罪は相半ばする。80年代、米レーガン政権は減税で経済成長を高めれば税収も増えると唱えた。だが現実には税収不足を招き、財政と貿易の「双子の赤字」を生んだ。一方で減税が米IT産業勃興の基礎をつくったとの評価もある。

 富と雇用を生む企業の誘致は各国共通の課題だ。法人税を中心に税制改革を競う各国。それは成長戦略の競争そのものだ。

(敬称略)

 安倍政権が法人税率引き下げの検討に入った。法人税改革の世界的な潮流と、日本の制度の問題点に迫る。

2014/012/14 本日の日本経済新聞より「新指数「JPX日経400」連動投信に資金流入 500億円超す NISA開始、追い風に」

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ROE重視の投資姿勢が主流になってきており、JPX日経インデックス400が注目を集めていることが良くわかる記事です。連動する投信も多く発売されているようで、三菱UFJ投信のETFは信託報酬が0.08%と極めて低いコストで買えるようです。

ROEはしばらく基軸的な判断材料となりそうですから、JPX日経インデックス400には注目しておいた方がよさそうです。





2014/02/13 本日の日本経済新聞より「規制 岩盤を崩す ドリルを手にとれ(3) 進まぬ「ペーパーレス」 医療・納税…電子化拒む」

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要するに、ペーパーの電子化は、利便性という誰しもが認めるメリットはあるものの、証憑の信頼性、操作性でまだ社会の信任を受けておらず、結局、普及が進みづらいということです。そこを人類の英知が越えるのに何年かかるか、見ものです。





 医師が患者の症状に合わせて医薬品を指定する処方箋。厚生労働省は省令で紙での発行や保管を義務づけてきたが、電子化の解禁を検討していると聞いた。

倉庫に眠る書類の群れ。この風景はいつまで…

 病院の診察室で、医師がパソコン画面を見ながら初診の患者に告げる。「アレルギーがありますね。この薬はやめておきましょう」。画面には別の病院も含め、患者が過去に服用した薬がずらり。初診でも、簡単に患者の状況がわかる。

 大分県別府市。14の医療機関と30の薬局が処方箋を電子データにしてやりとりする実証実験だ。紙だと難しい情報の共有が可能になり、処方のミスも減る。紙の保管場所も要らない。

■「調剤しにくい」

 さぞや評判だろう。別府市医師会の担当者に聞くと「薬剤師さんたちは嫌がっています」。紙をパソコンなどの端末に替えると、すぐそばに置けなかったり操作が必要だったりして、調剤しにくいという。

 検討を始めて約10年。省令改正は2015年度中のはずだが、中身は白紙だ。医療情報を共有すればムダな投薬が減るはずなのに、その機運は乏しい。電子カルテは認められているが、導入は全国の病院の2割どまりだ。医療関係者からこんな話も聞いた。「電子処方箋は医療用医薬品のインターネット販売を可能にする。販売解禁論を警戒しているのでは」

 05年施行の「e―文書法」。企業などが紙で保管してきた文書を原則、電子データで保存できるようにした。だが個別の法令による骨抜きは多い。たとえば、領収書や契約書などの税務書類。7年間の保存が義務づけられているが、電子保存は普及していない。

■スマホ画像は×

 「スマートフォン(スマホ)で撮影した領収書の画像ではダメですか」。昨年9月、ソフトバンクモバイル情報システム本部課長の冨永歩さん(49)と担当の黒石真美子さん(29)は東京国税局の担当官に頼み込んだ。グループ会社も含め、1年で約2万枚も集まる領収書を、画像での収集と保存に切り替えたい。担当官の答えは「ノー」だった。

 電子保存の条件は厳しい。紙を画像データにする装置は高性能の大型スキャナーのみ。書類発行から1週間以内に読み取る。24時間以内に直属の上司が電子署名をし、日時を示すタイムスタンプを押す。手間も費用もかかる。黒石さんは国税局に断念を伝えた。

 企業は紙の税務書類の保存に年3000億円をかけているとの試算もある。それでも13年までに税務署の承認で電子化した件数は全国でたった120件だ。

 国税庁に聞いた。「紙の質感というか色合いというか。不正があると、なんだかピンと来る。画像データだとそうはいかない」。担当者は企業に立ち入り調査をした若いころを思い出しながら話してくれた。

 批判も多い。政府の規制改革会議の議事録をのぞいた。「電子データの捏造(ねつぞう)を発見するソフトは発達している」(大阪大の森下竜一教授)。「職員をコンピューターに替えなければならなくなることを心配しているのでは」(久保利英明弁護士)

 スマホの普及などで「ペーパーレス」の流れは加速する一方。電子政府をうたうなら、時代に取り残された規制はなくすべきだ。国にそう訴えたい。でも紙の書類しか受けつけませんと言われたら面倒だ――。

2014/02/12 本日の日本経済新聞より「経常赤字の足音(上)気がつけば輸入大国 「技術で稼ぐ」転換道半ば」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「経常赤字の足音(上)気がつけば輸入大国 「技術で稼ぐ」転換道半ば」です。





 海外とのモノやサービス、配当などのやり取りをまとめて示す経常収支の黒字が減り、赤字の足音が聞こえてきた。日本の経常収支の悪化は何を意味するのだろうか。

 「円安なのに輸出が伸びないな」。経済産業省の幹部は首をひねる。昨秋から省内でひそかに分析すると、浮かんだのはかつて「お家芸」とされた電機産業の衰退だ。

スマホで敗戦

 2.3兆円――。経産省はスマートフォン(スマホ)の普及による貿易収支の悪化額をはじく。単純計算で2013年の貿易赤字の2割に達する。貿易赤字は経常黒字を減らす主因だ。

 米アップル製などのスマホの輸入が急増し、「電話」の貿易赤字は3年間で0.5兆円から2兆円に膨らんだ。日本が強かったデジタルカメラなどの需要もスマホに食われた。13年のデジカメ輸出は5491万台でピークの10年の半分と、「スマホ敗戦」を裏付ける。

 一方、日本は輸入大国に変わりつつある。

 石油や天然ガスなど化石燃料の13年の輸入額は00~09年の10年間の平均より13.4兆円も多い。東日本大震災後の原子力発電所の停止が響き「対ドル1円の円安で燃料費は3千億円膨らむ」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)。

 フランスが05年に経常赤字に転落した際は、原油高に伴う燃料輸入の増加が響いた。日本には原油高に加え、原発を容易に動かせないというフランスにない要因もある。

 燃料以外の輸入も堅調だ。国内の供給量に占める輸入品の比率を示す輸入浸透度を1998年と13年で比べると上昇が際立つ。スマホなど「情報通信機械」は10%から48%に、衣類など「繊維」で20%から54%にそれぞれ大幅に上昇。鉱工業全体でも15%から24%に上がった。大和総研の斎藤勉エコノミストは「いまの円安水準でも16年度までは貿易赤字が続くのではないか」と話す。

ブランド力弱く

 赤字膨張に打つ手はないのか。経産省は、この10年で経常黒字を4倍に増やしたドイツに注目する。石炭の産出国でユーロ導入が競争条件を有利にした面を割り引いても、独企業の経営は参考になるという。

 為替の影響を除いた輸出価格を日独で比べると95年比で日本企業が10~15%下がったのに、独企業は5%の下落にとどまった。新興国との競争にさらされる条件は同じ。経産省幹部は「日本企業はブランド力や価格交渉力が弱い」とみる。

 工場の海外立地が進んで貿易黒字が減るのは、グローバル化に向き合う先進国の宿命でもある。モノの赤字を特許、実用新案、著作権など、技術や知恵で稼いで補えるかが分かれ目だ。

 こうした「技術貿易収支」を分析すると、日本の黒字は11年度に2兆円まで伸びてきた。それでもなお米国の20年前の水準にとどまり、グループ会社以外からの収入が伸び悩む。技術で稼ぐ経済への転換は道半ばだ。

2014/02/11 本日の日本経済新聞より「経営書を読む アンダーヒル著「なぜこの店で買ってしまうのか」(1) ショッピングの科学 買い物客視点で分析」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のキャリアアップ面にある「経営書を読む アンダーヒル著「なぜこの店で買ってしまうのか」(1) ショッピングの科学 買い物客視点で分析」です。





 本書はショッピングの科学を論じた本です。1999年に米国でベストセラーとなり、2008年にはインターネットに触れた新版が出ました。消費者が製品を手に取る現場について理解を深めることは小売業者にとどまらず、製造業に携わる人にも役立つでしょう。

 ショッピングの科学とは「調査、比較、分析を通して商店や商品を買い物客により適合させるための高度に実践的な学問」で、「都会の文化人類学者のツールを利用して、ショッピング環境への人びとのかかわりを研究してはどうか」という著者のアイデアから生まれました。店舗での消費者行動をビデオカメラで撮影、分析もしますが、基本はトラッカー(追跡者)が、買い物客を尾行し、行動を逐一記録することにあります。

 マーケティングはブランド・ロイヤルティーの重要性や広告でどうメッセージを届けるかについてアイデアを提供してきました。しかし、現在では多くの購買決定が店頭でなされるようになり、ブランド・ロイヤルティーや広告宣伝効果の低下が顕著になっています。今ではショッパーズ・マーケティングの重要性は広く認知されていますが、「ショッピングの科学」はその嚆矢(こうし)といえるでしょう。

 「買い物客は店にいる時間が長くなればなるほどたくさん買う。客が店内に滞留する時間は、その場がいかに快適で楽しいかによる」とあり、ショッピングの科学を3段階で論じています。第1段階は快適な店づくりのための人間に共通する特徴への配慮。第2段階は性別や年齢によって行動パターンが違うことへの理解。最後は買い物に際し何が最大の誘因となるかを探ることです。

 過去の分析の多くは供給者視点でした。本書は買い物客視点で書かれています。経営書というと戦略、組織などを論じがちですが、消費者、買い物客、顧客に対する想像力が働かないと、具体的な仮説が描けません。

2014/02/10 本日の日本経済新聞より「グローバルオピニオン 米経済、「日本病」克服を 米エール大学シニアフェロー スティーブン・ローチ氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバルオピニオン 米経済、「日本病」克服を 米エール大学シニアフェロー スティーブン・ローチ氏」です。





 金融市場などは米国が古典的な景気回復に近づいているとみる。本当にそうなのか。

 実質成長率は2013年後半に平均4%に近づいて過去4年間のほぼ2倍に達し、失業率は7%を下回った。米連邦準備理事会(FRB)も量的緩和の縮小に乗り出し、楽観的な見通しを裏づける。

 それでも祝杯をあげるのはまだ早い。実質成長率は10年4~9月に年率平均3.4%、11年10月~12年3月には同4.3%を記録したが、いずれも勢いは長続きしなかった。

 またも同様な事態が起きるかもしれない。成長率が加速した主因は在庫の大幅な積み増しだからだ。在庫への投資を除く最終需要の伸びは、13年1~9月で平均1.6%にすぎない。在庫投資が高水準を維持する可能性は低く、成長率は最終需要のさえないペースに収束するとみられる。

 深刻なのは(債務返済優先の)バランスシート不況だ。米経済の7割を占める消費需要は、リーマン・ショック後の景気低迷の大きな要因といえる。実質個人消費の伸びは危機前の水準に届かない。

 過去には自動車、旅行などへの支出が抑えられると、その後に「鬱積された需要」が大きく伸びた。だが、今回はそうなっていない。それも当然だ。米消費者は危機の震源だった。不動産バブルに賭け、含み益で気前よく消費した。足りなければ借金をした。

 住宅、信用のバブルが相次ぎ崩壊すると、米消費者は「日本病」の米国版に直面した。エコノミストのリチャード・クー氏は日本のバブル経済崩壊後、企業部門を中心にバランスシート不況が長引くと指摘した。この分析は米国にも当てはまる。過剰な借り入れを支えた担保の価値が大幅に下がると、クー氏のいう「債務の最小化」動機が生まれ、支出よりも債務返済が優先される。

 類似点はほかにもある。日本では本来なら倒産していた“ゾンビ企業”が経済の健全性を脅かした。米国のバランスシート修復に関する指標には、力強い回復の兆候がほとんどない。家計の所得債務比率は109%で、00年までの30年間の平均を35ポイント上回る。

 個人貯蓄率は13年後半が4.9%で1970~99年平均より4.4ポイント低い。家計のバランスシート修復は途上だ。

 一方、楽観論者は家計の債務返済コストと失業率の大幅低下を材料に、長い悪夢は終わったと主張する。これは希望的観測だ。返済コストが低下したのはFRBのゼロ金利政策のおかげである。家計はなお巨額の債務残高を抱えている。求職意欲を失う人の増加が失業率を下げた。労働参加率の上昇は遅れている。

 米経済はいくらか前進しているが、本格的に回復するにはさらに数年かかるだろう。

((C)Project Syndicate)

Stephen Roach 米連邦準備理事会(FRB)調査スタッフ、香港駐在のモルガン・スタンレー・アジア会長など歴任。著書に「The Next Asia」。68歳。

〈記者の見方〉緩和の幕引き慎重に

 米経済は足元で寒波の影響が懸念されるが、基本的には回復軌道に乗ったという見方が多い。2013年10~12月期の成長率は前期比年率3.2%。FRBは量的緩和第3弾(QE3)の縮小に着手した。それでも金融危機で家計が負った傷はなお癒えていないとローチ氏は指摘する。見方は様々だが、同氏の主張通り、労働参加率が低く、失業率は実勢より低めに出ているとみられる。こうした点にFRBは留意すべきだ。前例のない金融緩和の幕引きを成功させるには慎重さも必要だ。

(編集委員 清水功哉)

2014/02/09 本日の日本経済新聞より「あなたの「副腎」疲れてない? 体調不良の原因に 朝起きられない・思考力が低下… 」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「あなたの「副腎」疲れてない? 体調不良の原因に 朝起きられない・思考力が低下… 」です。





 ストレスなどから体を守るホルモンを出すのが副腎だ。左右の腎臓の上にある小さな臓器だが、生命維持に不可欠な役割を持つ。ホルモンの分泌量が大きく増減すると、高血圧や体重減少など多くの体調変化を招く恐れがある。副腎の機能低下は慢性的な疲労感につながる例もあるので、副腎の基礎を知っておきたい。

 副腎は腎臓の機能を助けるのではなく、主に5種類のホルモンを製造・分泌している。体内では下垂体や甲状腺、肝臓などもホルモンを分泌しているが、副腎は日常生活を送るのに欠かせないホルモンを出す。

■顔のむくみ要注意

 副腎のうち周辺の皮質という部分から分泌されるのはステロイド(副腎皮質)ホルモン。その代表であるコルチゾールはストレスから自分の体を守るのに必須だ。ストレスを受けた時に分泌して血液中に放出し、体中に行き渡る。

 コルチゾールの過剰分泌でなる副腎の病気にクッシング症候群がある。副腎や脳下垂体の腫瘍が原因だ。人によって症状が違い、顔のむくみや紅潮、ニキビ、腹部の肥満などの症状がみられる。高血圧や糖尿病、骨粗しょう症などになる恐れがある。

 皮質から出る別のホルモンであるアルドステロンの過剰で起こる病気もある。原発性アルドステロン症で、副腎に腫瘍ができて高血圧などが起きる。高血圧症の患者の10%程度がアルドステロン症といわれている。

 さまざまな病気になる恐れのある副腎だが、最近は一部のクリニックなどが「副腎自体が疲労する」という考え方を取り入れ始めた。米国の専門家が唱えた概念で、精神的ストレスの積み重ねによる慢性的な疲労感や体調不良、性欲の減退、朝に起きられないなどの症状が当てはまるという。

 順天堂大学の白澤卓二教授は「研究途上の領域だが、診断基準ができれば一気に該当者が出てくる可能性がある」と指摘する。ストレスを受けた副腎がその対処のためコルチゾールを分泌し続けると副腎が疲弊してしまい、いずれコルチゾールを十分分泌できなくなるという考え方だ。

■十分な睡眠を

 コルチゾールが分泌できないと、さまざまなストレスと闘えなくなる。これらの症状があっても普通は副腎の機能が低下していると気づかない。「うつ病や更年期障害を疑って心療内科などを訪れることが多い」と銀座上符メディカルクリニック(東京・中央)の上符正志院長は話す。「心療内科などで解決できなければ、副腎の疲労を疑ってもよい」

 副腎の疲労は採血などで判定する。血液中のコルチゾール濃度を朝と夕方に測り、一定の値を下回っているか調べる。この値とともに、全身の疲れがたまっているなどの症状が当てはまれば、副腎が疲労している可能性がある。

 症状の緩和には「まず原因を取り除くのが大事だ」(白澤教授)。全身の疲労感が抜けないのであれば、不規則な生活を見直し、十分な休息や睡眠をとる。特に疲労感が強い時間帯に休もう。また就寝前にスマートフォン(スマホ)を操作すると、画面からの青い光(ブルーライト)が睡眠を促すホルモンの分泌を妨げて睡眠の質を下げかねないので、なるべく避けたい。

 副腎をいたわるために食生活を見直すことも大切だ。副腎が疲れると不足しがちなビタミンCなどを多めに摂取するよう気を配ろう。上符院長は「一回の食事の中に炭水化物、脂肪、たんぱく質を取り入れ、バランスをとるのが理想だ」と話し、炭水化物は玄米などをすすめる。カルシウム、ミネラルなどの栄養素も症状の改善によい。

 一度、生活習慣を見直してみてもよさそうだ。

(山本優)

2014/02/09 本日の日本経済新聞より「風見鶏 外交の意外な「ツボ」」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「風見鶏 外交の意外な「ツボ」」です。





 体には不思議なところにツボがある。手のひらだったり、足裏だったり。無関係のようでいて、そこを押すと、体の疲れが癒やされる。そんな場所だ。

 日本の外交でも、一見しただけでは分からないが、さすってみると意外な「効用」が表れるツボがある。その一例がフランスや英国ではないだろうか。

 なぜか。英仏はまず、米中ロと並び、国連安保理のれっきとした常任理事国だ。たとえば、北朝鮮問題などで日米と中ロがぶつかったとき、「英仏を味方につければ、国連の議論を有利に運べる」(国連幹部)。

 さらに、日本になじみが薄い中東やアフリカに英仏はパイプを持ち、仏は一部に軍隊も駐留させている。2011年、コートジボワールで争乱となり、日本大使公邸が襲われた。「そのとき、大使らを危機一髪で救出したのもフランス軍だった」(外務省幹部)

 そうしたなか、日仏にとって先月上旬、大きなできごとがあった。外務・防衛担当閣僚級協議(2プラス2)が創設され、パリで初会合が開かれたのである。日本が懸念する対中武器輸出について合同委員会をつくることでも合意した。

 日本が2プラス2を設けているのは安全保障上、優先度が高いとみている米国、オーストラリア、ロシアだけ。これにフランスも加わったわけだ。

 しかし、未公表の2プラス2のやり取りを探ると、一筋縄ではいかない現実がみえてくる。

 会合は、日本から岸田文雄外相と小野寺五典防衛相が参加し、昼食を含めて約2時間半におよんだ。

 このうち、司会のファビウス外相が多くの時間を割いたのが、アフリカやソマリア沖の海賊対策、防衛品の共同開発などの協力。いずれも、フランスの関心が強いテーマだ。

 逆に、中国の軍拡や防空識別圏(ADIZ)、対中武器輸出規制については、日本が詳しく現状を説明し、危機感を示したものの、フランス側から目立った反応はなかった。

 それもそのはずである。「フランスは経済を軸に中国とも良い関係を保っている」(欧州外交筋)。しかも、今年は中仏の国交正常化50周年。習近平国家主席が3月にもパリを訪れ、祝う予定なのだという。

 フランスにかぎらず、アジアから遠く離れた欧州と日本では、対中観にそもそも大きな溝がある。

 「いちばんの脅威はテロリストからの攻撃、次がサイバー攻撃、そして大規模災害だ。あえて脅威国をあげれば、イランになる。中国の軍拡への切迫感は正直、日本ほどにはない」。英政府に近い同国の安全保障専門家もこう認める。

 それでも、欧州との絆を強める意味はある。日本の選択肢が広がるからだ。情報ひとつとっても、そうだ。昨年のアルジェリア人質事件では、英国から貴重な情報が寄せられた。

 2010年春には、韓国哨戒艦が撃沈され、朝鮮半島が緊迫した。「北朝鮮などについて、国連安保理常任理事国の中でどんな議論が交わされているのか。ときにはフランスから、他国より詳しい情報を提供してもらうこともあった」。当時、外相だった岡田克也氏はこう振り返る。

 中国が歴史問題の反日宣伝を駆使し、欧州を味方につけようとするのも、外交戦の要所だと心得ているからだろう。だとすれば、歴史対立の土俵には乗らず、淡々と日欧の協力を積み重ねていく。これが安倍政権の要諦である。

(編集委員 秋田浩之)

2014/02/07 本日の日本経済新聞より「「新興国不安」過度のドル依存課題 BRICs命名者ジム・オニール氏に聞く ドイツ・中国、責任分担を」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「「新興国不安」過度のドル依存課題 BRICs命名者ジム・オニール氏に聞く ドイツ・中国、責任分担を」です。





 新興国経済の先行きに、市場が疑念を強めている。有力新興国を「BRICs」と最初に呼んだ英エコノミストのジム・オニール氏(前ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長)に考えを聞いた。

 ――BRICsの命名者として、新興国の市場混乱は心配ですか。

 「新興国不安という状況認識は単純すぎる。新興国だけが問題ではない。米連邦準備理事会(FRB)が政策の方向性を変えるだけで世界中に影響が及ぶ、米ドル中心の金融体制こそ課題だ」

 ――アルゼンチンやトルコなどの経常赤字が問題の引き金でした。

 「確かにトルコは短期的な問題の解決を強いられている。(3月の)地方選挙でエルドアン首相が苦戦すれば、顕著な政策の変更があろう。ただ(潜在成長率が高い)トルコ経済はジェットコースターのように激しく浮き沈みする。過剰な経常赤字を抱えれば、結果として経済が減速し赤字も減っていく。(新興国不安の)発端となったアルゼンチンの経済規模はギリシャ以下。米株価に影響を及ぼすはずがない」

 ――中国も景気の陰りと「影の銀行」問題が懸念材料です。

 「中国経済の減速は、政府が7%程度の成長を望んだためだ。古い不良債権が影の銀行の問題を膨らませたが、中国は意図的にこの問題の存在を認めている。変化を探っている証しだ」

 ――1997年のアジア危機のような不安の連鎖はないとみますか。

 「むしろ94年に米が利上げを始めた時の混乱と類似している。FRBが利上げを開始した週に、豪州国債の利回りは3日間で1%も上昇した。世界の金融がFRBの政策に振り回されすぎだ。もっと骨太な国際金融体制が欠かせない。ドイツや中国がもっと重い責任を担う必要がある」

 ――具体的には。

 「ドイツは欧州中央銀行(ECB)が2%近い物価上昇という使命を果たせるよう、インフレ恐怖症を克服すべきだ。ドイツの政治家が今後3年で3%のインフレを許容するといえば、市場は大いに沸き立つ。中国は国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の算定に人民元を加えさせ、(通貨改革などの)首尾一貫した政策をとると宣言すべきだ」

 ――国際的な政策協調の余地は。

 「米国の金融緩和縮小はFRBの使命に沿っており、共感している。主要20カ国・地域(G20)の協調をもっと深めるべきだ。米国が緩和縮小を始めた同じ日に、ECBが物価目標の達成に努めると宣言すれば、市場は冷静だったはずだ」

 「大きな問題は新興国でなく、日本と米国の株価がさえないこと。理由は不透明だが、市場は米経済が十分に良好で強力だという通説を信じなくなったのではないか。それを心配している」

 ――最近の日本株の下落は際立っています。

 「円安が進んだ昨年は楽だった。今年は簡単ではない。安倍晋三首相は第1の矢(の金融政策)は忘れることだ。これ以上の円の下落を、他国は受け入れない。第3の矢となる女性活用、労働供給力の強化、生産性の向上に真剣に取り組まねばならない。安倍氏は強い言葉こそ発しているが、実行する証拠がない」

(聞き手は欧州総局編集委員 菅野幹雄)

 ▼BRICsとMINT BRICsは2001年にジム・オニール氏が有望な新興経済国としてブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字を取って作った。最後のSを大文字にして南アフリカを含む5カ国にすることもある。オニール氏は次の成長期待国としてメキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコをMINTと呼ぶ。

日本経済新聞の本日の記事から